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1:勇者召喚
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500年ぶりに魔王が現れた。魔物達が急激に増殖し、世界に暗雲が立ち込めている。急速に滅びへと向かう世界を救えるのは、伝説に残る異世界から訪れる『勇者』だけである。
魔術師達が古の術式を漸く解明し、勇者召喚の儀式が行われることになった。
王の名代として第一王子が立ち会う中、精鋭の魔術師達による召喚が行われた。
魔術陣が目を開けていられない程強く光り輝き、光が徐々におさまるにつれ、魔術陣の中央に人影が見えるようになった。召喚成功である。
わぁっと歓声が上がる。召喚時の強い光の影響で、まだハッキリと勇者の姿は確認できない。しかし、第一王子の胸は興奮で高鳴っている。これで世界が救われる。それに、幼い子供の頃から密かに憧れていた『勇者』に会える。第一王子は勇者の伝説が大好きである。胸躍る冒険に、美しくも逞しく、更には心優しい勇者。分かりやすい『正義の味方』の存在は、第一王子の男の子魂を揺さぶるものだった。
勇者の姿は逆光でハッキリ見えない。光がおさまるのをワクワクしながら待つ。
やっと魔術陣の光が静まり、中央に佇んでいる人物がハッキリと見えた。
第一王子は目を見開いた。
「へ、へ、へ……変っ態だぁぁぁぁぁ!?」
魔術陣の中央に立っていた人物は、伝説と同じ黒髪の持ち主だったが、裸だった。いや、正確に言うと、ピンク色の女物の下着だけを身に着けていた。女ではない。確かに男である。ややたるみ気味の身体は完全に男のそれで、可愛らしいデザインのパンツに包まれた股間ももっこりとしている。顔立ちはいまいち分からない。何故ならば、女が使うパンティーストッキングをすっぽり頭に被っているからだ。パンティーストッキングで顔がかなり愉快なことになっている。愉快な形相だが、笑えない。これが勇者か。変態ではないか。
第一王子は白目を剥いて気絶したくなった。周囲もざわざわして、魔術陣から現れた変態に、明らかにドン引きしている。
第一王子は見なかったことにしたくなったが、召喚してしまったものは仕方がない。異世界より無理矢理呼びつけたのは、こちらの都合だ。それ相応の待遇をして、世界を救ってもらわなくてはならない。
第一王子は震えそうな声で、変態、いや、勇者に声をかけた。
「よ、よくぞお出でくださった。勇者殿。我が名はリーンデルト。聖王国の第一王子だ。貴殿のお名前をお伺いしたい」
「パンストおじさんだよ?」
「……っ変っっ態だぁぁぁぁぁ!!」
勇者改め変態、いやパンストおじさんは、くいっくいっと腰を振って、自分の可愛らしいパンツを自慢するかのように、いやらしく股間を見せびらかしてきた。変態である。心底気持ちが悪い。
第一王子は近くにいた半泣きの魔術師長の胸ぐらを掴んだ。気持ちが悪い動きをしている変態改めパンストおじさんをビシッと指差す。
「変態じゃないかっ!!どこが勇者だっ!!気持ちが悪いっ!気持ちが悪いっ!!」
「ま、ま、間違いなく、ゆ、ゆ、勇者の筈ですぅぅ!」
「ど・こ・が・だ!」
「ゆ、勇者なら聖剣が使える筈ですっ!」
「ちっ。試すだけ試すか」
勇者召喚は、魔王が現れた時にのみ、一度しか発動できない。そういう制限がかかっている魔術だった。パンストおじさんを逆召喚して、別の勇者を召喚するなんてことはできない。
はぁはぁと荒い息を吐きながら、腕を上げて両手を後頭部につけ、汚い脇毛を見せびらかしながら股間を膨らませているパンストおじさんに、第一王子はじりじりと近づいた。
変態丸出し過ぎるパンストおじさんに声をかけるどころか、その姿を視界に入れるのも嫌だが、この現場の最高責任者は自分だ。自分がこの場をなんとかしなくてはならない。
パンストおじさんを聖剣が丁重に保管されている部屋に連れて行くと、勇者にしか鞘から抜けない筈の聖剣は、あっさりと抜けてしまった。
第一王子はその場に崩れ落ち、がっくりと項垂れた。パンストおじさん、勇者確定である。
「どゅふふふ……パンストおじさんの聖剣も見る?見る?」
「……変態ぃぃぃぃぃ!!」
こうして、第一王子達の心を絶望に染めながら、パンストおじさんの勇者生活が始まったのである。
(つづく)
魔術師達が古の術式を漸く解明し、勇者召喚の儀式が行われることになった。
王の名代として第一王子が立ち会う中、精鋭の魔術師達による召喚が行われた。
魔術陣が目を開けていられない程強く光り輝き、光が徐々におさまるにつれ、魔術陣の中央に人影が見えるようになった。召喚成功である。
わぁっと歓声が上がる。召喚時の強い光の影響で、まだハッキリと勇者の姿は確認できない。しかし、第一王子の胸は興奮で高鳴っている。これで世界が救われる。それに、幼い子供の頃から密かに憧れていた『勇者』に会える。第一王子は勇者の伝説が大好きである。胸躍る冒険に、美しくも逞しく、更には心優しい勇者。分かりやすい『正義の味方』の存在は、第一王子の男の子魂を揺さぶるものだった。
勇者の姿は逆光でハッキリ見えない。光がおさまるのをワクワクしながら待つ。
やっと魔術陣の光が静まり、中央に佇んでいる人物がハッキリと見えた。
第一王子は目を見開いた。
「へ、へ、へ……変っ態だぁぁぁぁぁ!?」
魔術陣の中央に立っていた人物は、伝説と同じ黒髪の持ち主だったが、裸だった。いや、正確に言うと、ピンク色の女物の下着だけを身に着けていた。女ではない。確かに男である。ややたるみ気味の身体は完全に男のそれで、可愛らしいデザインのパンツに包まれた股間ももっこりとしている。顔立ちはいまいち分からない。何故ならば、女が使うパンティーストッキングをすっぽり頭に被っているからだ。パンティーストッキングで顔がかなり愉快なことになっている。愉快な形相だが、笑えない。これが勇者か。変態ではないか。
第一王子は白目を剥いて気絶したくなった。周囲もざわざわして、魔術陣から現れた変態に、明らかにドン引きしている。
第一王子は見なかったことにしたくなったが、召喚してしまったものは仕方がない。異世界より無理矢理呼びつけたのは、こちらの都合だ。それ相応の待遇をして、世界を救ってもらわなくてはならない。
第一王子は震えそうな声で、変態、いや、勇者に声をかけた。
「よ、よくぞお出でくださった。勇者殿。我が名はリーンデルト。聖王国の第一王子だ。貴殿のお名前をお伺いしたい」
「パンストおじさんだよ?」
「……っ変っっ態だぁぁぁぁぁ!!」
勇者改め変態、いやパンストおじさんは、くいっくいっと腰を振って、自分の可愛らしいパンツを自慢するかのように、いやらしく股間を見せびらかしてきた。変態である。心底気持ちが悪い。
第一王子は近くにいた半泣きの魔術師長の胸ぐらを掴んだ。気持ちが悪い動きをしている変態改めパンストおじさんをビシッと指差す。
「変態じゃないかっ!!どこが勇者だっ!!気持ちが悪いっ!気持ちが悪いっ!!」
「ま、ま、間違いなく、ゆ、ゆ、勇者の筈ですぅぅ!」
「ど・こ・が・だ!」
「ゆ、勇者なら聖剣が使える筈ですっ!」
「ちっ。試すだけ試すか」
勇者召喚は、魔王が現れた時にのみ、一度しか発動できない。そういう制限がかかっている魔術だった。パンストおじさんを逆召喚して、別の勇者を召喚するなんてことはできない。
はぁはぁと荒い息を吐きながら、腕を上げて両手を後頭部につけ、汚い脇毛を見せびらかしながら股間を膨らませているパンストおじさんに、第一王子はじりじりと近づいた。
変態丸出し過ぎるパンストおじさんに声をかけるどころか、その姿を視界に入れるのも嫌だが、この現場の最高責任者は自分だ。自分がこの場をなんとかしなくてはならない。
パンストおじさんを聖剣が丁重に保管されている部屋に連れて行くと、勇者にしか鞘から抜けない筈の聖剣は、あっさりと抜けてしまった。
第一王子はその場に崩れ落ち、がっくりと項垂れた。パンストおじさん、勇者確定である。
「どゅふふふ……パンストおじさんの聖剣も見る?見る?」
「……変態ぃぃぃぃぃ!!」
こうして、第一王子達の心を絶望に染めながら、パンストおじさんの勇者生活が始まったのである。
(つづく)
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