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13:頑張るんだ!俺っ!(説得編)

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シュルツとフレディがバーバラの街に来て、1ヶ月が経った。
シュルツの首の傷はすっかり治ったが、やはりどうしても傷痕が残った。シュルツは別に気にしないのだが、フレディが『見てるだけで痛い』と言って、何枚も首に巻くようにとバンダナをくれた。フレディからのプレゼントが嬉しくて、シュルツが思わず『大事にしまって家宝にしますっ!』と叫んだら、フレディに『使え馬鹿』と無理矢理首にバンダナをつけられた。本当に全部大事にとっておくつもりだったのに。フレディは毎朝シュルツの首にバンダナを巻いてくれる。フレディのその優しい手つきに、シュルツは毎朝ドキドキすると共に、堪らなく幸せを感じている。

シュルツはバーバラの新居へ引っ越してから、毎晩フレディと一緒のベッドで寝ている。フレディの豪快な鼾さえ愛おしい。フレディの体温を感じて、ぷにっとしたフレディの身体にしがみつき、フレディの匂いに包まれて眠れるのだ。幸せなんてレベルではもはやない。なんかもう、それ以上の何かだ。残念ながら初夜は未だに完遂できていない。しかし、シュルツは漸く必要となる諸々を入手した。あとは決行するのみである。





ーーーーーー
フレディの新しい喫茶店の開店が3日後に迫った。フレディの父親ジャックやその旦那のニルグに協力してもらい、なんとか1ヶ月程で開店できるまで準備が整った。2人の新居は元々喫茶店をやっていた建物らしく、大掛かりな内装工事などはしなくてもよかったのが大きい。この1ヶ月、毎日喫茶店の開店準備やバーバラの街に慣れる為に2人で走り回っていた。
そして漸く諸々が落ち着いた今夜、シュルツはいよいよあることを決行する気であった。ブツは手に入れた。あとはどれだけシュルツが羞恥に耐えられるか。全てはそれにかかっている。

夕食の後片付けも終え、風呂にも各々入り、あとは寝るばかりということで、2人で寝室に移動した。欠伸をしながらベッドに潜り込んで、早速寝る気満々なフレディにシュルツは声をかけた。既に寝室に必要なブツは紙袋に入れて置いてあった。シュルツはベッドの下に隠しておいた紙袋を取り出し、不思議そうな顔をするフレディに見せた。


「必要なものを揃えてきました」

「え?なんに?」

「まぁ、見てください」


シュルツはベッドの上に正座して、紙袋の中身を取り出して、ベッドの上に並べた。
紙袋の中身は、ローションのお徳用のデカいボトル、5本の大きさの違う、俗にいうバイブ(魔石内蔵で動くやつ)とディルドである。
ベッドの上に並べられた所謂大人の玩具と呼ばれる卑猥なブツの数々に、フレディの顔がひきつった。


「拡張します」

「…………僕を?」

「まさか。俺をです」

「え、なんで?」

「今のままじゃ物理的に入りませんもん」

「えー……まぁ、そうでしょうけど。ていうか、これどうしたんですか?」

「この街にも規模はそんなに大きくはないんですが花街があるんです。そこの大人の玩具専門店で買ってきました」

「あ、そう。よく知ってましたね、そんなとこ」

「ニルグさんに聞きました」

「なんつーこと聞いてんのっ!?」

「……だって、知ってる可能性のある知り合いなんてニルグさんしかいないですもん。お義父さんには流石に聞けませんよ」

「ニルグさんでも気まずいわっ!父さんの旦那なんですけどっ!」

「だってー。拡張にはどうしてもこいつらが必要なんですもーん。買いに行くの、すっごく恥ずかしかったんですからね!」

「じゃあ買いに行くなよ」

「俺は身体も含めて、ぜーんぶフレディのお嫁さんになるんだもん」

「え、えぇぇ……」

「と、いうわけなんで。じゃあ、お願いします」

「は?なにを?」

「拡張」

「……え、なに?僕がアンタのケツの穴弄るの?」

「『ケツの穴』なんて言い方しないでください。『お尻』か『アナルちゃん』でお願いしますぅ」

「そこはかとなくキモい」

「ひどい」

「えぇー?えぇー?いやいやいやいや。マジで?マジで?」

「……貴方もう俺のお尻見たことあるし、なんなら無理矢理突っ込んだでしょ。親にしか見せたことないのに。責任は最後までちゃんととってください」

「いやいや。アンタが言ってんのは座薬のことだろ?単なる医療行為じゃないですか」

「それでも俺は本っっっ当にっ!恥ずかしかったんですからね!」

「知るか」

「と・に・か・く!お願いします」

「……自分で頑張ってみるとか……」

「なんか怖くて無理」

「何言ってんだ元軍人」

「軍人でも怖いものは怖いんですー!お尻なんて鍛えられないしー!」

「えー。まぁ、そうかもしれませんけどぉ」

「お風呂でめちゃくちゃ身体洗ってきましたし、更には浄化魔術もかけてきました」

「……準備万端かよ」

「あとは旦那様であるフレディのお仕事です」

「え?何で?何でそうなるの?」

「お嫁さんを夜的な意味で仕込むのは旦那様のお仕事であり楽しみでしょう?」

「え?何その認識。え?そうなの?」

「世間一般的にはそうですよ。よく考えてくださいよ。女も初めての結婚の時は処女じゃないですか。まぁ、2人目以降は仕込まれ済みですけど」

「……あぁ。言われてみれば?」

「俺は今まで清い身体を保ってきたんです。ということで、清い俺を仕込むのは旦那様であるフレディのお仕事です」

「え、そう……なるんですか?」

「はい」

「えぇぇ……いやでもケツの穴ですよ?」

「『お尻』もしくは『アナルちゃん』」

「呼び方はどうでもいいです。いや、そりゃ座薬は突っ込みましたよ?でもあれは単なる医療行為ですし?それとこの卑猥物突っ込むのとは訳が違うでしょう」

「言っておきますけど。突っ込まれる俺の方が恥ずかしいんですからねっ!」

「え。じゃあ、無理にしなくてよくない?」

「やだ。俺は貴方の名実ともに奥さんになるんだもん」

「書類上は奥さんじゃないですか」

「やだ。実生活でも奥さんがいい。夜的なもの含めて」

「えぇぇぇ……」


フレディが頭を抱えた。シュルツだって恥ずかしくて堪らないのを我慢して、ニルグに店の場所を聞いて、卑猥なものしか置いていない大人の玩具専門店に行ってこれだけの量の卑猥なものを買ってきたのだ。今だって本当は恥ずかしくて堪らないのだ。それに耐えてでも、シュルツはフレディに抱かれたい。フレディだって『腹を括りました』とか言ってたのだから、この為に頑張ってくれてもいい筈である。

シュルツが羞恥でほんのり頬を染めたまま、頭を抱えて唸るフレディをじーーーっと見つめていると、フレディが顔を上げて小さく溜め息を吐いた。


「……分かりました。拡張はやります。でも1つ大きな問題があります」

「なんです?」

「僕が男の貴方で勃起するかどうかです」

「男なんて単純だから舐めれば勃つわよ、って専門店のお兄さん?いや、お姉さん?が言ってましたよ」

「……所謂オカマさんだったんですか」

「えぇ、まぁ。あ。な、舐めてみますかっ!?」

「いや今日はいいです」

「あ、はい」

「うー……やります。一応やってみます」

「あ、こっちはおまけでくれた小冊子です。バイブとかの使い方と初めての拡張の方法が載ってるそうです」

「あ、これはご丁寧にどうも」


フレディはシュルツから紙袋に入れていた小冊子を受け取った。すぐに小冊子を開いて読み始める。本当に拡張してくれるらしい。嬉しいが恥ずかしくて堪らない。現時点でこんなに恥ずかしいのに、本当にシュルツは拡張の羞恥に耐えられるのだろうか。少し不安になってしまう。
それでもフレディがやってくれることになった。フレディの説得という第一段階は無事にクリアである。
あとは実践と、それにいかに耐えるかだ。頑張れ俺。羞恥に耐えれば名実ともにフレディの奥さんだ。羞恥に耐えろ俺。やればできるぞ俺。

シュルツは恥ずかしさで頬を赤く染めながら、小冊子を熟読しているフレディの前で密かに自分自身に気合いを入れた。

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