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33:逢瀬
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ファビラへの旅行から家に帰って、1週間程経った。
今日はロバートは仕事、ミケーネは保育園、ガーディナは丸1日ロバートから出された課題をやる日だ。
課題をするガーディナの邪魔をしてはいけないからと、自分に言い訳をして、アイディーは運動用の服を着て、着替えと鍛練用の剣、土産の焼き菓子を持って、ヨザックの家へと向かい歩いていた。
ガーディナがロバートの弟子になると決まった後から、ずっと慌ただしく過ぎていき、漸く少し落ち着いてきた。ロバートはかなりスパルタな方らしく、アイディーにガーディナの転校手続きその他諸々を丸投げして、弟子になると決まったその日から、嬉々としてガーディナをしごき始めた。ガーディナは若干顔を引きつらせながらも、ロバートにガンガン食いついている。ガーディナがぼそっと『あの人、鬼過ぎじゃね?』と少しぼやく程度には、ロバートは厳しいみたいだ。
アイディーは魔力量は人並みやや上くらいだ。初級の結界くらいはできるが、本格的な魔術は使えない。ロバートの休みいっぱいファビラに滞在し、アイディーがガーディナの引っ越しの準備をする傍ら、ガーディナはずっとロバートにしごかれていた。
ガーディナもロバートの家に引っ越し、来週から中央の街の中学校に通うことになっている。ガーディナが弟子になってから、ロバートが毎日楽しそうである。『弟子をもつって、ちょっと憧れてた』とはにかんで笑っていた。
ミケーネもガーディナに懐いてくれたので、本当によかった。ガーディナを『がーちゃん』と呼んで、ちょこちょこガーディナに構ってもらいに行っている。
家事をしながらアイディーが歌っていると、余裕がある時はガーディナも一緒に歌う。ミケーネはそれが楽しいらしく、隙あらばガーディナにも歌をせがんでいる。
女装のことは、ガーディナがロバートの弟子になると決まった日の夜に伝えた。ガーディナはとても驚いていたし、『俺の師匠って変態かよ……』と引いていたが、そういう契約内容だからと納得させた。中央の街のロバートの家に帰り、ガーディナに初めて女装した姿を見せた時は、『……キッツいわ、これ』と、両手で顔を覆って、天を仰いでいた。
正直に言えば、ガーディナに似合わない女装をしている姿を見られたくなかったが、そんなアイディーの心情よりも、ガーディナの魔術師になるという夢の方が大事であるし、何より、またガーディナと一緒に暮らせることの方が大事なので、なんとか割り切った。1度開き直ってしまえば、自分の情けない滑稽な姿をガーディナに見られても、存外気にならなくなった。
そんなことよりも、ミケーネの世話をして成長を見守り、日々ロバートにしごかれるガーディナのサポートをすることが、アイディーの重要な責務である。
ロバートには本当に感謝をしている。会えないと思っていたガーディナと会わせてくれただけでなく、一緒に暮らせるようにしてくれて、ガーディナが夢を追いかけられるようにしてくれた。
ロバートは本当にどうしようもない程優しい。ロバートへの返しきれない程の恩は、仕事で返す。アイディーは家事も育児も以前よりも気合いを入れて取り組み、ロバートの夜の相手も色々頑張っている。ガーディナにロバートの夜の相手をしていることは言っていないので、前よりも慎重にこっそりロバートの部屋に行って、必ず防音結界を厳重にロバートにかけてもらってから、セックスをしている。
ヨザックが住む領軍官舎が見えてきた。ヨザックと2人きりで会うのは、少し久しぶりだ。既にドキドキと心臓の音が煩い。ついにヨザックとセックスをするのだろうか。
アイディーは熱くなった頬を両手でパァンと叩いた。セックスよりも先に剣の鍛練である。浮わついた状態でヨザックに勝てる訳がない。アイディーは頭を切り替えて、ヨザックの家の玄関の呼び鈴を押した。
ヨザックはすぐに玄関のドアを開けてくれた。
ヨザックはアイディーを見ると、ニッと笑顔を浮かべた。顎髭がよく似合っている。ちょっとドキッとしてしまった。
「……ちーっす。先輩」
「よお。アイディー。俺のことは名前で呼ぶんじゃなかったのか?」
「う、……ヨ、ヨザック」
「ぷはっ。顔、真っ赤だぜ。ハニー。そんなに慣れねぇ?」
「……そのうち慣れっし」
アイディーはクックッと楽しそうに笑うヨザックの形のいい鼻をふにっと指で摘まんだ。ヨザックが楽しそうに鼻を摘まむアイディーの手に触れ、そのまま固い剣胼胝のある手でアイディーの手を握った。
「イチャイチャする前に、一暴れするか?」
「おう」
「鞄置いて来いよ」
「おーう」
アイディーはヨザックの家の中に入り、テーブルの上に着替えと土産が入った鞄を置いた。ベッドはできるだけ見ないようにして、鍛練用の剣だけを持って、玄関で待っているヨザックの元へ行く。
2人で家を出て、裏庭に移動した。ヨザックが楽しそうに、アイディーの頭をガシガシ撫でた。
「ちょっと久しぶりだし、手加減してやるか?」
「まさか。全力でやんに決まってんだろ」
「ははっ!そうこなくっちゃな」
「ぜってぇ勝つ」
「お前が勝ったら、お前のお願いを1つ聞いてやろうか?」
「お願い?」
「あれが欲しいとか、これをやってほしいとか、そういうの」
「言ったな。後からやっぱなしはなしだぜ?」
「男に二言はねぇのよ」
「ははっ!意地でも勝ってやらぁ」
「よっしゃ。こいっ!アイディー」
「おう!」
柔軟体操を終えると、アイディーは真っ直ぐにヨザックに斬りかかっていった。
アイディーとヨザックは、獰猛な獣がじゃれ合うように笑いながら、気が済むまで暴れまわった。
ーーーーーー
「くっそ。負けたー」
「ははっ。惜しかったな」
ヨザックの家へと戻る為に疲れた身体で階段を上りながら、アイディーが少し拗ねて唇を尖らせると、ヨザックがアイディーの頭をガシガシ撫でた。
身体のあちこちが鈍く痛む。本当に手加減無しでやったので、全身打撲傷や擦過傷だらけだ。
ヨザックが玄関のドアの鍵を開けて、家の中に入った。アイディーもヨザックの背中を追って、家の中に入る。
「先にシャワー使えよ」
「おーう。ありがとな」
「シャワー浴びたら珈琲飲んどけよ。淹れておくから。練乳もあるぞ」
「ありがと。遠慮なく貰うわ」
「おう」
ヨザックがニッと笑った。テーブルの上に置いていた鞄から着替えを取り出す。土産の焼き菓子も一緒に入れていたので、それも取り出した。
「せ、ヨザック」
「んー?」
「土産」
「お、ファビラのか?」
「おう。日持ちするもん買ったけど、早めに食った方がいいかもしれねぇ」
「じゃあシャワーから出たら珈琲と一緒に貰うわ。ありがとな。アイディー」
「……そんな大したもんじゃねぇんだけど、地元じゃ評判がいい菓子屋のなんだよ」
「アイディーの故郷の味か。それは楽しみだな」
「……そんな大袈裟なもんでもねぇし」
「汗が冷える前にシャワー浴びてこいよ」
「おーう。先に借りるわ」
「シャワーから出たら薬塗るぞ」
「ん。頼んだ」
アイディーは着替えを片手に風呂場へと向かった。
頭から熱いシャワーを浴びて、頭と身体を洗う。
本当にセックスをするのだろうか。アイディーはガシガシと念入りに身体を洗った。剣を振り回して暴れている時は全然平気だったのに、今はまたバクバクと心臓の音が煩い。
ヨザックと触れあえる。素直に嬉しいが、同時に酷く恥ずかしい。
アイディーはパァンと両手で自分の頬を強く叩いた。
腹をくくるしかない。男は度胸だ。セックスだろうがなんだろうが、どんとこい。
アイディーは自分に気合いを入れてから、シャワーの栓を止めた。
今日はロバートは仕事、ミケーネは保育園、ガーディナは丸1日ロバートから出された課題をやる日だ。
課題をするガーディナの邪魔をしてはいけないからと、自分に言い訳をして、アイディーは運動用の服を着て、着替えと鍛練用の剣、土産の焼き菓子を持って、ヨザックの家へと向かい歩いていた。
ガーディナがロバートの弟子になると決まった後から、ずっと慌ただしく過ぎていき、漸く少し落ち着いてきた。ロバートはかなりスパルタな方らしく、アイディーにガーディナの転校手続きその他諸々を丸投げして、弟子になると決まったその日から、嬉々としてガーディナをしごき始めた。ガーディナは若干顔を引きつらせながらも、ロバートにガンガン食いついている。ガーディナがぼそっと『あの人、鬼過ぎじゃね?』と少しぼやく程度には、ロバートは厳しいみたいだ。
アイディーは魔力量は人並みやや上くらいだ。初級の結界くらいはできるが、本格的な魔術は使えない。ロバートの休みいっぱいファビラに滞在し、アイディーがガーディナの引っ越しの準備をする傍ら、ガーディナはずっとロバートにしごかれていた。
ガーディナもロバートの家に引っ越し、来週から中央の街の中学校に通うことになっている。ガーディナが弟子になってから、ロバートが毎日楽しそうである。『弟子をもつって、ちょっと憧れてた』とはにかんで笑っていた。
ミケーネもガーディナに懐いてくれたので、本当によかった。ガーディナを『がーちゃん』と呼んで、ちょこちょこガーディナに構ってもらいに行っている。
家事をしながらアイディーが歌っていると、余裕がある時はガーディナも一緒に歌う。ミケーネはそれが楽しいらしく、隙あらばガーディナにも歌をせがんでいる。
女装のことは、ガーディナがロバートの弟子になると決まった日の夜に伝えた。ガーディナはとても驚いていたし、『俺の師匠って変態かよ……』と引いていたが、そういう契約内容だからと納得させた。中央の街のロバートの家に帰り、ガーディナに初めて女装した姿を見せた時は、『……キッツいわ、これ』と、両手で顔を覆って、天を仰いでいた。
正直に言えば、ガーディナに似合わない女装をしている姿を見られたくなかったが、そんなアイディーの心情よりも、ガーディナの魔術師になるという夢の方が大事であるし、何より、またガーディナと一緒に暮らせることの方が大事なので、なんとか割り切った。1度開き直ってしまえば、自分の情けない滑稽な姿をガーディナに見られても、存外気にならなくなった。
そんなことよりも、ミケーネの世話をして成長を見守り、日々ロバートにしごかれるガーディナのサポートをすることが、アイディーの重要な責務である。
ロバートには本当に感謝をしている。会えないと思っていたガーディナと会わせてくれただけでなく、一緒に暮らせるようにしてくれて、ガーディナが夢を追いかけられるようにしてくれた。
ロバートは本当にどうしようもない程優しい。ロバートへの返しきれない程の恩は、仕事で返す。アイディーは家事も育児も以前よりも気合いを入れて取り組み、ロバートの夜の相手も色々頑張っている。ガーディナにロバートの夜の相手をしていることは言っていないので、前よりも慎重にこっそりロバートの部屋に行って、必ず防音結界を厳重にロバートにかけてもらってから、セックスをしている。
ヨザックが住む領軍官舎が見えてきた。ヨザックと2人きりで会うのは、少し久しぶりだ。既にドキドキと心臓の音が煩い。ついにヨザックとセックスをするのだろうか。
アイディーは熱くなった頬を両手でパァンと叩いた。セックスよりも先に剣の鍛練である。浮わついた状態でヨザックに勝てる訳がない。アイディーは頭を切り替えて、ヨザックの家の玄関の呼び鈴を押した。
ヨザックはすぐに玄関のドアを開けてくれた。
ヨザックはアイディーを見ると、ニッと笑顔を浮かべた。顎髭がよく似合っている。ちょっとドキッとしてしまった。
「……ちーっす。先輩」
「よお。アイディー。俺のことは名前で呼ぶんじゃなかったのか?」
「う、……ヨ、ヨザック」
「ぷはっ。顔、真っ赤だぜ。ハニー。そんなに慣れねぇ?」
「……そのうち慣れっし」
アイディーはクックッと楽しそうに笑うヨザックの形のいい鼻をふにっと指で摘まんだ。ヨザックが楽しそうに鼻を摘まむアイディーの手に触れ、そのまま固い剣胼胝のある手でアイディーの手を握った。
「イチャイチャする前に、一暴れするか?」
「おう」
「鞄置いて来いよ」
「おーう」
アイディーはヨザックの家の中に入り、テーブルの上に着替えと土産が入った鞄を置いた。ベッドはできるだけ見ないようにして、鍛練用の剣だけを持って、玄関で待っているヨザックの元へ行く。
2人で家を出て、裏庭に移動した。ヨザックが楽しそうに、アイディーの頭をガシガシ撫でた。
「ちょっと久しぶりだし、手加減してやるか?」
「まさか。全力でやんに決まってんだろ」
「ははっ!そうこなくっちゃな」
「ぜってぇ勝つ」
「お前が勝ったら、お前のお願いを1つ聞いてやろうか?」
「お願い?」
「あれが欲しいとか、これをやってほしいとか、そういうの」
「言ったな。後からやっぱなしはなしだぜ?」
「男に二言はねぇのよ」
「ははっ!意地でも勝ってやらぁ」
「よっしゃ。こいっ!アイディー」
「おう!」
柔軟体操を終えると、アイディーは真っ直ぐにヨザックに斬りかかっていった。
アイディーとヨザックは、獰猛な獣がじゃれ合うように笑いながら、気が済むまで暴れまわった。
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「くっそ。負けたー」
「ははっ。惜しかったな」
ヨザックの家へと戻る為に疲れた身体で階段を上りながら、アイディーが少し拗ねて唇を尖らせると、ヨザックがアイディーの頭をガシガシ撫でた。
身体のあちこちが鈍く痛む。本当に手加減無しでやったので、全身打撲傷や擦過傷だらけだ。
ヨザックが玄関のドアの鍵を開けて、家の中に入った。アイディーもヨザックの背中を追って、家の中に入る。
「先にシャワー使えよ」
「おーう。ありがとな」
「シャワー浴びたら珈琲飲んどけよ。淹れておくから。練乳もあるぞ」
「ありがと。遠慮なく貰うわ」
「おう」
ヨザックがニッと笑った。テーブルの上に置いていた鞄から着替えを取り出す。土産の焼き菓子も一緒に入れていたので、それも取り出した。
「せ、ヨザック」
「んー?」
「土産」
「お、ファビラのか?」
「おう。日持ちするもん買ったけど、早めに食った方がいいかもしれねぇ」
「じゃあシャワーから出たら珈琲と一緒に貰うわ。ありがとな。アイディー」
「……そんな大したもんじゃねぇんだけど、地元じゃ評判がいい菓子屋のなんだよ」
「アイディーの故郷の味か。それは楽しみだな」
「……そんな大袈裟なもんでもねぇし」
「汗が冷える前にシャワー浴びてこいよ」
「おーう。先に借りるわ」
「シャワーから出たら薬塗るぞ」
「ん。頼んだ」
アイディーは着替えを片手に風呂場へと向かった。
頭から熱いシャワーを浴びて、頭と身体を洗う。
本当にセックスをするのだろうか。アイディーはガシガシと念入りに身体を洗った。剣を振り回して暴れている時は全然平気だったのに、今はまたバクバクと心臓の音が煩い。
ヨザックと触れあえる。素直に嬉しいが、同時に酷く恥ずかしい。
アイディーはパァンと両手で自分の頬を強く叩いた。
腹をくくるしかない。男は度胸だ。セックスだろうがなんだろうが、どんとこい。
アイディーは自分に気合いを入れてから、シャワーの栓を止めた。
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