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22:不運とラッキースケベ
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アイディーはヨザックの家で、のんびりとヨザックが淹れてくれたお茶を飲んでいた。久しぶりに思いっきり身体を動かしたので疲れてはいるが、それ以上にスッキリとした爽やかな気分である。
ヨザックと鍛練用の剣でやり合うのは本当に楽しかった。ヨザックとは高等学校1年目の夏前に知り合い、それから1ヶ月も経たないうちに、毎日のように暇さえあれば一緒に剣の鍛練をするようになった。ヨザックが卒業するまでは生傷が絶えない日々だったが、本当に楽しかった。
やはり身体はかなり鈍っていたが、それでも以前と同じ様にヨザックと剣でやり合うのが本当に楽しかった。アイディーはお茶が入ったマグカップに口をつけたまま、チラッと真正面に座って熱いお茶を飲んでいるヨザックの顔を見て、目を細めてふっと口元を弛めた。
ヨザックがアイディーを真っ直ぐに見て、ニッと笑った。
「これ飲んだら、何か食いに行かねぇか?腹減ってるだろ」
「あ?材料ありゃ作っけど」
「ないな。俺、自炊してねぇから」
「飯、どうしてんだ?」
「詰所の食堂か、近所の定食屋か、持ち帰りの惣菜とか?働き始めた年は自炊してたんだけどな。勤務が基本的に不規則だろ?何度か食材を捨てる羽目になって、勿体ないし止めた」
「ふーん」
「近くに安くて旨い定食屋があるんだよ。一緒に行こうぜ。勿論、俺の奢り。デートしてくれよ」
「あ?デート?」
「そ。デート」
「……飯、食いに行くだけじゃねぇの?」
「一緒に飯を食うのもデートだろ」
「そ、そっか……」
デートという言葉の響きが何やら気恥ずかしい。ていうか、ちゃんとした恋人でもないのにデートってしていいのか。しかし、ヨザックと一緒に食事をしたい。アイディーはコクンと頷いた。ヨザックが嬉しそうにニッと笑ったので、アイディーもつられてヘラッと笑った。
お茶を飲み終わった後、ヨザックが出掛ける前に風呂場の脱衣場にある鏡の前で整髪剤を使って髪を整えるところを、アイディーは少し後ろからなんとなく眺めていた。ヨザックは側頭部と後頭部を短く刈り上げており、前髪や頭の天辺は少し髪が長い。整髪剤を使って、ふんわり前髪を後ろに流している姿に、なんだか胸がドキドキして目が離せない。何だこれ。
お茶を飲んでから、ヨザックがシャワーを使った。ヨザックが風呂場から出て来て、下だけ服を着た状態で髪を拭いているところを見てから、何故だか心臓の音が煩い。逞しい胸筋に、がっつり割れた腹筋、しっかりとした肩や筋肉質な腕。ヨザックの引き締まって鍛えられた戦える男の身体に、なんだか落ち着かない気分になった。本当に何だこれ。ピッタリとした黒い襟なしのシャツを着ているヨザックの背中は、背筋のラインが分かり、なんだか本当に目が離せない。心臓がドキドキと煩い。ぼーっとヨザックの後ろから、ついでに髭を剃り始めたヨザックを眺めていると、鏡越しにヨザックと目が合った。髭を剃りながら、ヨザックが目を細めて笑った。
「熱烈な視線をありがとな。そんなに見つめられると、ときめいちゃうんだが」
「……アホか」
「ははっ。ん、剃り残しはないな」
「……先輩ってよぉ、髭似合いそうだよな」
「ん?そうか?」
「ん。顎髭とか似合うんじゃね?」
「伸ばすわ。髭」
「マジか」
「おう。アイディー」
「あ?」
「髪を整えてやるよ。つーか、前髪ちょっと伸びすぎだろ」
「あー……半年ちょい?髪切ってねぇからな」
「前髪、目にかかりそうだぞ」
「あー……自分で切るかぁ?」
「なんなら髪、切ってやろうか?俺、家庭用の魔導バリカン持ってるぜ」
「あ?マジで?」
「おう。髪を切りに行く暇が作れねぇ時とか、横と後ろは自分で刈ってんだよ。一応、散髪用の鋏もある」
「頼んでいいか?」
「おーう。勿論。飯食う前?後?」
「腹減ってるから後」
「了解。待たせたな。行くか」
「おう」
アイディーは身支度を整えたヨザックに少しだけ前髪を弄られた後、一緒にヨザックの家を出て、近所にある安くて旨いという定食屋に向かった。
家を出てすぐに、ヨザックに手を握られた。外で手を握られるのは初めてだ。アイディーはゴツくて固いヨザックの手の感触と体温に、なんだかドキドキしながらヨザックと肩を並べて歩いた。
ーーーーーー
シャキッ、シャキッと静かな部屋に響いていた鋏の音が途切れ、固い温かい指に、短くなった前髪を優しくかき混ぜられた。アイディーはそっと目を開けた。
ヨザックが満足気な様子でニッと笑った。
「中々いい感じにできたぜ」
「ありがと。頭軽っ」
「結構切ったからな」
「本当、助かるぜ」
魔導バリカンで短く刈ってもらった自分の後頭部を撫でると、じょりじょりとした短い毛の感触がして、アイディーはニッと笑って目の前に立つヨザックを見上げた。
「前の髪型と似たような感じにしたぞ」
「おーう。すげぇな、先輩」
アイディーは髪が伸びる前は、丸刈りとまではいかないが、結構髪を短くしていた。ヨザックがアイディーの肩にかけていたタオルをとり、別のタオルでアイディーの顔や首などを軽くパタパタ叩いて短い切った髪の毛を落とす。パサッパサッと小さな音がして、椅子の下に敷いている新聞紙に細かな髪の毛が落ちた。
アイディーは立ち上がり、腰に巻いている大判のタオルを軽く叩いて、ついていた髪の毛を新聞紙に落とした。アイディーはパンツ1枚の状態で、腰に大判のタオルだけを巻いて髪を切ってもらっていた。服を着たままだと、服に細かい髪の毛がついた時に中々とれなくなる。その意味で、正直大判のタオルは必要ないと思うのだが、ヨザックが絶対にやれと譲らなかったので、アイディーは渋々腰にタオルを巻いた。細かい髪の毛がついたタオルから、全ての髪の毛を取り除くのはめちゃくちゃ面倒なのに。パンパンしたくらいでは短い髪の毛はとれない。カーペットなどの掃除に使う粘着テープで地道にチマチマとっていくしかない。それでもとりきれない時は諦める。そのうち、とれると信じて。
後片付けは全てヨザックがしてくれるというので、アイディーは服を片手に風呂場へと向かった。狭い脱衣場に置いてある魔導洗濯機の蓋をして、その上に畳んだ淡い黄色のワンピースを置いた。ヨザックから事前に渡されていたタオルもその上に置き、腰に巻いていた大判のタオルをとって髪の毛が付着している方の面が内側になるようにして丸め、床に置く。
パンツを脱いで、タオルの上に置いた瞬間、悲劇が起きた。脱いで丸めたパンツを無造作にタオルの上に置いたのだが、置き方が悪かったのか、タオル上での置いた位置が悪かったのか、パンツがゆっくり転がり、そのまま落ちた。魔導洗濯機の後ろへ。
「うっそ!マジかよ!?」
慌てて魔導洗濯機の上から魔導洗濯機の後ろを覗き込んだ。暗くて分かりにくいが、淡い色合いの布地がうっすら見える。よりにもよって1番取りにくいど真ん中に落ちている。壁と魔導洗濯機との間は狭く、アイディーの太い腕では入らない。魔導洗濯機のすぐ右側には洗面台があり、こちらの隙間も狭くて無理だ。左側は壁で、これも無理。魔導洗濯機を前面に動かさない限り、アイディーの使用済みパンツの救出は不可能である。
「……マジかぁ……」
アイディーは魔導洗濯機の上で、ぐったり項垂れた。ここが自宅化しているロバートの家ならば、新たなパンツを取ってきて、魔導洗濯機を動かして使用済みパンツを回収、洗濯ができるのだが、ここはヨザックの家である。アイディーのパンツは、埃まみれであろう洗濯機の後ろに落ちた使用済みパンツのみ。仮に救出できても、埃だらけだろうから洗わないと使えない。使えないことはないだろうが、率直に言うとそんな汚いパンツを穿きたくない。
アイディーはのろのろと魔導洗濯機から離れ、風呂場へと入り、本日2度目のシャワーを浴び始めた。
流石にパンツはヨザックから借りられない。ヨザックに申し訳ないし、洗濯済みのものであっても、ヨザックのパンツを穿くのは普通に嫌だ。シャワーから出たら、すぐに魔導洗濯機を動かして使用済みパンツを回収し、手洗いで洗濯、ギリッギリの時間までベランダに干させてもらう。今日はかなり天気がいいので、透ける程薄い布地のパンツなんて1時間もあれば乾く。乾いてくれる筈。多分、大丈夫だ。最悪、生乾きのパンツを穿いて、保育園までミケーネを迎えに行けばいい。パンツを穿かずに帰るという選択肢はない。そんな変態丸出しなこと、絶対にしたくない。唯でさえ、女装にすっかり慣れたとはいえ、風でスカートが捲れたりするのが気になったりするのだ。パンツを穿かずに強風でスカートが捲れたら、完全に終わりだ。確実に変態認定を受けるし、最悪領軍に通報される。
アイディーは大急ぎで髪や身体を洗ってシャワーで流し、雑に拭いてから淡い黄色のワンピースを着た。
脱衣室を出て、小さなテーブルの所で珈琲を飲んでいるヨザックの側に行った。
「先輩」
「お。出たか。鏡見たか?いい感じだったろ?」
「鏡は後で見る。とりあえず魔導洗濯機をよぉ、ちょっと動かしていいか?」
「ん?何でだ?」
「パンツが落ちた。後ろに」
「…………アイディーさん。つかぬことをお聞きします」
「あ?」
「もしかして、今パンツは……」
「穿いてねぇ」
「やっぱりっ!!なんだこの試練っ!!」
「あ?どうした先輩」
「ごほん。気にするな」
「おーう。で、魔導洗濯機動かしていいか?ちゃんと戻すし」
「いいぞ。俺も手伝うわ」
「あざーっす。助かるぜ」
「おーう」
アイディーはヨザックと共に狭い脱衣所へと移動した。何気なくヨザックの横顔を見れば、なんだか頬が赤い。熱でも出たのだろうか。アイディーは並んで魔導洗濯機の前に立っているヨザックの頬にピトリと右手を当てた。ヨザックが驚いたように目を開けて、アイディーの手に自分の手を重ねて、そのままアイディーの方を向いた。
「……アイディー」
「熱ねぇ?頭痛とかは?」
「……うん!全然大丈夫!」
「でも、赤ぇぞ」
「何の問題もないぞ!頑張れ俺の理性仕事しろ!」
「あ?」
「気にするな。とりあえずこいつを動かそうぜ」
「おう」
アイディーはヨザックの頬から手を離し、魔導洗濯機に手をかけて、『せーの』と2人で魔導洗濯機を前に出した。魔導洗濯機と壁の間は本当に埃だらけで、アイディーのパンツは、綿埃もついて、見事に白っぽくなっていた。
アイディーは指先で自分のパンツの紐のところを掴み、目の前でブラブラ揺らした。
「やっぱ駄目だったな。洗うか。先輩、風呂場、もっかい借りるぜ……って何やってんだ?」
隣を見れば、何故かヨザックがその場で蹲り、股間を押さえていた。ヨザックがそのままアイディーを見上げた。何故か妙にキリッとした顔で。
「すまん。勃った」
「あ?」
「落ち着くから、とりあえず時間をくれ」
「おう?」
「不快かもしれんが、俺だってまだ男の子なんだよ」
少し赤く頬を染めて、拗ねたように唇を尖らせているヨザックは、なんだかいつもより子供っぽくて微妙に可愛い。めちゃくちゃ格好いい先輩だと思っていたのだが、意外なところで可愛いところがあった。
というか……。アイディーは使用済みパンツを片手に首を傾げた。
「つーか、先輩、俺でちんこ勃つのかよ」
「めちゃくちゃ勃つ」
「マジかよ」
「マジ」
「……俺の女装どう思う?」
「絶望的に似合ってねぇなって、いつも思ってる」
「先輩の頭と目が正常で何よりだぜ」
「おう。まぁな」
「とりあえず、こいつ洗ってくるわ」
「んー。それまでにはなんとか落ち着いとく」
「頼むぜー」
「おーう」
アイディーは脱衣所にヨザックを残し、風呂場に入って、脱衣所と風呂場の間のドアを閉めた。
アイディーは自分のパンツを洗いながら、じわじわと込み上げてくる羞恥と戦っていた。
ヨザックはアイディーで勃起するらしい。ヨザックは確かにアイディーを好きだと言うし、キスだってしてるけど、それ以外では普通に頭を撫でるだけだ。性を匂わすようなことをしてこなかった。だからアイディーは、なんとなく安心していたのだが。
今、自分がパンツを穿いていないことが急に恥ずかしくなってくる。膝丈のワンピースの防御力なんて、ないに等しい。アイディーは真っ赤な顔で、洗って濯いだパンツを全力でギリギリ絞った。
アイディーがドキドキしながら脱衣所へのドアを開けると、ヨザックはいなかった。ほっと安心すると同時に、少し寂しく感じるという訳が分からない自分の感情を見ないフリをして、アイディーは脱衣所からも出た。
台所の方からお湯を沸かしているような音が聞こえる。どうやらヨザックは珈琲のお代わりを淹れてくれているようである。
アイディーはベランダに出て、物干し竿に自分の洗ったパンツを干した。日当たりがいいし、風もそれなりに吹いているので、多分1時間程である程度乾くと思われる。
アイディーは部屋とベランダとの間の小さな段差の所で、ぼんやり外を眺めた。今日は本当にいい天気だ。見事に真っ青な青空で、頬を撫でる風が気持ちいい。ゆらゆらとワンピースの裾がアイディーの脚を撫でる。
「アイディー。干したか」
「おう」
背後からヨザックの声が聞こえたので、アイディーは振り返った。その瞬間、一際強い風が吹いた。
「「あ」」
ふわっと大きくワンピースの裾が舞い上がった。
アイディーはガチッと固まったまま、ひらっと元に戻っていく自分のワンピースの裾を目で追っていた。アイディーはすとんと元通りになったワンピースの裾をそっと押さえて、床を見つめながら、口を開いた。
「……見た?」
「……見た」
「忘れろ」
「無理だろ」
「何でだよ」
「いや無理だろ。これは無理だろ。本当無理だろ」
「無理じゃねぇよ。頑張れよ」
「どう頑張れと?」
「記憶がなくなるまで殴る」
「やめろ」
アイディーは物凄い勢いで込み上げてくる羞恥に、プルプル小さく震えていた。ヨザックにパンツを穿いていない自分の股間を見られた。別に普通に全裸の状態ならまだいい。しかし今は似合わない女装をしているのだ。自分でも訳が分からないが、いっそ全裸を見られた方が余程恥ずかしくない。
アイディーが俯いてプルプルしていると、すぐ目の前にヨザックが立つ気配がした。
「アイディー」
「……あんだよ」
「俺は紳士でありたいのだよ」
「おう」
「でも無理だわ」
「頑張れ」
「いや、本当無理」
「そこをなんとか」
「無理。悪い。キスだけさせて」
「…………本当にキスだけ?」
「おう」
「………………いいけど」
アイディーは小さく頷いた。
ヨザックと鍛練用の剣でやり合うのは本当に楽しかった。ヨザックとは高等学校1年目の夏前に知り合い、それから1ヶ月も経たないうちに、毎日のように暇さえあれば一緒に剣の鍛練をするようになった。ヨザックが卒業するまでは生傷が絶えない日々だったが、本当に楽しかった。
やはり身体はかなり鈍っていたが、それでも以前と同じ様にヨザックと剣でやり合うのが本当に楽しかった。アイディーはお茶が入ったマグカップに口をつけたまま、チラッと真正面に座って熱いお茶を飲んでいるヨザックの顔を見て、目を細めてふっと口元を弛めた。
ヨザックがアイディーを真っ直ぐに見て、ニッと笑った。
「これ飲んだら、何か食いに行かねぇか?腹減ってるだろ」
「あ?材料ありゃ作っけど」
「ないな。俺、自炊してねぇから」
「飯、どうしてんだ?」
「詰所の食堂か、近所の定食屋か、持ち帰りの惣菜とか?働き始めた年は自炊してたんだけどな。勤務が基本的に不規則だろ?何度か食材を捨てる羽目になって、勿体ないし止めた」
「ふーん」
「近くに安くて旨い定食屋があるんだよ。一緒に行こうぜ。勿論、俺の奢り。デートしてくれよ」
「あ?デート?」
「そ。デート」
「……飯、食いに行くだけじゃねぇの?」
「一緒に飯を食うのもデートだろ」
「そ、そっか……」
デートという言葉の響きが何やら気恥ずかしい。ていうか、ちゃんとした恋人でもないのにデートってしていいのか。しかし、ヨザックと一緒に食事をしたい。アイディーはコクンと頷いた。ヨザックが嬉しそうにニッと笑ったので、アイディーもつられてヘラッと笑った。
お茶を飲み終わった後、ヨザックが出掛ける前に風呂場の脱衣場にある鏡の前で整髪剤を使って髪を整えるところを、アイディーは少し後ろからなんとなく眺めていた。ヨザックは側頭部と後頭部を短く刈り上げており、前髪や頭の天辺は少し髪が長い。整髪剤を使って、ふんわり前髪を後ろに流している姿に、なんだか胸がドキドキして目が離せない。何だこれ。
お茶を飲んでから、ヨザックがシャワーを使った。ヨザックが風呂場から出て来て、下だけ服を着た状態で髪を拭いているところを見てから、何故だか心臓の音が煩い。逞しい胸筋に、がっつり割れた腹筋、しっかりとした肩や筋肉質な腕。ヨザックの引き締まって鍛えられた戦える男の身体に、なんだか落ち着かない気分になった。本当に何だこれ。ピッタリとした黒い襟なしのシャツを着ているヨザックの背中は、背筋のラインが分かり、なんだか本当に目が離せない。心臓がドキドキと煩い。ぼーっとヨザックの後ろから、ついでに髭を剃り始めたヨザックを眺めていると、鏡越しにヨザックと目が合った。髭を剃りながら、ヨザックが目を細めて笑った。
「熱烈な視線をありがとな。そんなに見つめられると、ときめいちゃうんだが」
「……アホか」
「ははっ。ん、剃り残しはないな」
「……先輩ってよぉ、髭似合いそうだよな」
「ん?そうか?」
「ん。顎髭とか似合うんじゃね?」
「伸ばすわ。髭」
「マジか」
「おう。アイディー」
「あ?」
「髪を整えてやるよ。つーか、前髪ちょっと伸びすぎだろ」
「あー……半年ちょい?髪切ってねぇからな」
「前髪、目にかかりそうだぞ」
「あー……自分で切るかぁ?」
「なんなら髪、切ってやろうか?俺、家庭用の魔導バリカン持ってるぜ」
「あ?マジで?」
「おう。髪を切りに行く暇が作れねぇ時とか、横と後ろは自分で刈ってんだよ。一応、散髪用の鋏もある」
「頼んでいいか?」
「おーう。勿論。飯食う前?後?」
「腹減ってるから後」
「了解。待たせたな。行くか」
「おう」
アイディーは身支度を整えたヨザックに少しだけ前髪を弄られた後、一緒にヨザックの家を出て、近所にある安くて旨いという定食屋に向かった。
家を出てすぐに、ヨザックに手を握られた。外で手を握られるのは初めてだ。アイディーはゴツくて固いヨザックの手の感触と体温に、なんだかドキドキしながらヨザックと肩を並べて歩いた。
ーーーーーー
シャキッ、シャキッと静かな部屋に響いていた鋏の音が途切れ、固い温かい指に、短くなった前髪を優しくかき混ぜられた。アイディーはそっと目を開けた。
ヨザックが満足気な様子でニッと笑った。
「中々いい感じにできたぜ」
「ありがと。頭軽っ」
「結構切ったからな」
「本当、助かるぜ」
魔導バリカンで短く刈ってもらった自分の後頭部を撫でると、じょりじょりとした短い毛の感触がして、アイディーはニッと笑って目の前に立つヨザックを見上げた。
「前の髪型と似たような感じにしたぞ」
「おーう。すげぇな、先輩」
アイディーは髪が伸びる前は、丸刈りとまではいかないが、結構髪を短くしていた。ヨザックがアイディーの肩にかけていたタオルをとり、別のタオルでアイディーの顔や首などを軽くパタパタ叩いて短い切った髪の毛を落とす。パサッパサッと小さな音がして、椅子の下に敷いている新聞紙に細かな髪の毛が落ちた。
アイディーは立ち上がり、腰に巻いている大判のタオルを軽く叩いて、ついていた髪の毛を新聞紙に落とした。アイディーはパンツ1枚の状態で、腰に大判のタオルだけを巻いて髪を切ってもらっていた。服を着たままだと、服に細かい髪の毛がついた時に中々とれなくなる。その意味で、正直大判のタオルは必要ないと思うのだが、ヨザックが絶対にやれと譲らなかったので、アイディーは渋々腰にタオルを巻いた。細かい髪の毛がついたタオルから、全ての髪の毛を取り除くのはめちゃくちゃ面倒なのに。パンパンしたくらいでは短い髪の毛はとれない。カーペットなどの掃除に使う粘着テープで地道にチマチマとっていくしかない。それでもとりきれない時は諦める。そのうち、とれると信じて。
後片付けは全てヨザックがしてくれるというので、アイディーは服を片手に風呂場へと向かった。狭い脱衣場に置いてある魔導洗濯機の蓋をして、その上に畳んだ淡い黄色のワンピースを置いた。ヨザックから事前に渡されていたタオルもその上に置き、腰に巻いていた大判のタオルをとって髪の毛が付着している方の面が内側になるようにして丸め、床に置く。
パンツを脱いで、タオルの上に置いた瞬間、悲劇が起きた。脱いで丸めたパンツを無造作にタオルの上に置いたのだが、置き方が悪かったのか、タオル上での置いた位置が悪かったのか、パンツがゆっくり転がり、そのまま落ちた。魔導洗濯機の後ろへ。
「うっそ!マジかよ!?」
慌てて魔導洗濯機の上から魔導洗濯機の後ろを覗き込んだ。暗くて分かりにくいが、淡い色合いの布地がうっすら見える。よりにもよって1番取りにくいど真ん中に落ちている。壁と魔導洗濯機との間は狭く、アイディーの太い腕では入らない。魔導洗濯機のすぐ右側には洗面台があり、こちらの隙間も狭くて無理だ。左側は壁で、これも無理。魔導洗濯機を前面に動かさない限り、アイディーの使用済みパンツの救出は不可能である。
「……マジかぁ……」
アイディーは魔導洗濯機の上で、ぐったり項垂れた。ここが自宅化しているロバートの家ならば、新たなパンツを取ってきて、魔導洗濯機を動かして使用済みパンツを回収、洗濯ができるのだが、ここはヨザックの家である。アイディーのパンツは、埃まみれであろう洗濯機の後ろに落ちた使用済みパンツのみ。仮に救出できても、埃だらけだろうから洗わないと使えない。使えないことはないだろうが、率直に言うとそんな汚いパンツを穿きたくない。
アイディーはのろのろと魔導洗濯機から離れ、風呂場へと入り、本日2度目のシャワーを浴び始めた。
流石にパンツはヨザックから借りられない。ヨザックに申し訳ないし、洗濯済みのものであっても、ヨザックのパンツを穿くのは普通に嫌だ。シャワーから出たら、すぐに魔導洗濯機を動かして使用済みパンツを回収し、手洗いで洗濯、ギリッギリの時間までベランダに干させてもらう。今日はかなり天気がいいので、透ける程薄い布地のパンツなんて1時間もあれば乾く。乾いてくれる筈。多分、大丈夫だ。最悪、生乾きのパンツを穿いて、保育園までミケーネを迎えに行けばいい。パンツを穿かずに帰るという選択肢はない。そんな変態丸出しなこと、絶対にしたくない。唯でさえ、女装にすっかり慣れたとはいえ、風でスカートが捲れたりするのが気になったりするのだ。パンツを穿かずに強風でスカートが捲れたら、完全に終わりだ。確実に変態認定を受けるし、最悪領軍に通報される。
アイディーは大急ぎで髪や身体を洗ってシャワーで流し、雑に拭いてから淡い黄色のワンピースを着た。
脱衣室を出て、小さなテーブルの所で珈琲を飲んでいるヨザックの側に行った。
「先輩」
「お。出たか。鏡見たか?いい感じだったろ?」
「鏡は後で見る。とりあえず魔導洗濯機をよぉ、ちょっと動かしていいか?」
「ん?何でだ?」
「パンツが落ちた。後ろに」
「…………アイディーさん。つかぬことをお聞きします」
「あ?」
「もしかして、今パンツは……」
「穿いてねぇ」
「やっぱりっ!!なんだこの試練っ!!」
「あ?どうした先輩」
「ごほん。気にするな」
「おーう。で、魔導洗濯機動かしていいか?ちゃんと戻すし」
「いいぞ。俺も手伝うわ」
「あざーっす。助かるぜ」
「おーう」
アイディーはヨザックと共に狭い脱衣所へと移動した。何気なくヨザックの横顔を見れば、なんだか頬が赤い。熱でも出たのだろうか。アイディーは並んで魔導洗濯機の前に立っているヨザックの頬にピトリと右手を当てた。ヨザックが驚いたように目を開けて、アイディーの手に自分の手を重ねて、そのままアイディーの方を向いた。
「……アイディー」
「熱ねぇ?頭痛とかは?」
「……うん!全然大丈夫!」
「でも、赤ぇぞ」
「何の問題もないぞ!頑張れ俺の理性仕事しろ!」
「あ?」
「気にするな。とりあえずこいつを動かそうぜ」
「おう」
アイディーはヨザックの頬から手を離し、魔導洗濯機に手をかけて、『せーの』と2人で魔導洗濯機を前に出した。魔導洗濯機と壁の間は本当に埃だらけで、アイディーのパンツは、綿埃もついて、見事に白っぽくなっていた。
アイディーは指先で自分のパンツの紐のところを掴み、目の前でブラブラ揺らした。
「やっぱ駄目だったな。洗うか。先輩、風呂場、もっかい借りるぜ……って何やってんだ?」
隣を見れば、何故かヨザックがその場で蹲り、股間を押さえていた。ヨザックがそのままアイディーを見上げた。何故か妙にキリッとした顔で。
「すまん。勃った」
「あ?」
「落ち着くから、とりあえず時間をくれ」
「おう?」
「不快かもしれんが、俺だってまだ男の子なんだよ」
少し赤く頬を染めて、拗ねたように唇を尖らせているヨザックは、なんだかいつもより子供っぽくて微妙に可愛い。めちゃくちゃ格好いい先輩だと思っていたのだが、意外なところで可愛いところがあった。
というか……。アイディーは使用済みパンツを片手に首を傾げた。
「つーか、先輩、俺でちんこ勃つのかよ」
「めちゃくちゃ勃つ」
「マジかよ」
「マジ」
「……俺の女装どう思う?」
「絶望的に似合ってねぇなって、いつも思ってる」
「先輩の頭と目が正常で何よりだぜ」
「おう。まぁな」
「とりあえず、こいつ洗ってくるわ」
「んー。それまでにはなんとか落ち着いとく」
「頼むぜー」
「おーう」
アイディーは脱衣所にヨザックを残し、風呂場に入って、脱衣所と風呂場の間のドアを閉めた。
アイディーは自分のパンツを洗いながら、じわじわと込み上げてくる羞恥と戦っていた。
ヨザックはアイディーで勃起するらしい。ヨザックは確かにアイディーを好きだと言うし、キスだってしてるけど、それ以外では普通に頭を撫でるだけだ。性を匂わすようなことをしてこなかった。だからアイディーは、なんとなく安心していたのだが。
今、自分がパンツを穿いていないことが急に恥ずかしくなってくる。膝丈のワンピースの防御力なんて、ないに等しい。アイディーは真っ赤な顔で、洗って濯いだパンツを全力でギリギリ絞った。
アイディーがドキドキしながら脱衣所へのドアを開けると、ヨザックはいなかった。ほっと安心すると同時に、少し寂しく感じるという訳が分からない自分の感情を見ないフリをして、アイディーは脱衣所からも出た。
台所の方からお湯を沸かしているような音が聞こえる。どうやらヨザックは珈琲のお代わりを淹れてくれているようである。
アイディーはベランダに出て、物干し竿に自分の洗ったパンツを干した。日当たりがいいし、風もそれなりに吹いているので、多分1時間程である程度乾くと思われる。
アイディーは部屋とベランダとの間の小さな段差の所で、ぼんやり外を眺めた。今日は本当にいい天気だ。見事に真っ青な青空で、頬を撫でる風が気持ちいい。ゆらゆらとワンピースの裾がアイディーの脚を撫でる。
「アイディー。干したか」
「おう」
背後からヨザックの声が聞こえたので、アイディーは振り返った。その瞬間、一際強い風が吹いた。
「「あ」」
ふわっと大きくワンピースの裾が舞い上がった。
アイディーはガチッと固まったまま、ひらっと元に戻っていく自分のワンピースの裾を目で追っていた。アイディーはすとんと元通りになったワンピースの裾をそっと押さえて、床を見つめながら、口を開いた。
「……見た?」
「……見た」
「忘れろ」
「無理だろ」
「何でだよ」
「いや無理だろ。これは無理だろ。本当無理だろ」
「無理じゃねぇよ。頑張れよ」
「どう頑張れと?」
「記憶がなくなるまで殴る」
「やめろ」
アイディーは物凄い勢いで込み上げてくる羞恥に、プルプル小さく震えていた。ヨザックにパンツを穿いていない自分の股間を見られた。別に普通に全裸の状態ならまだいい。しかし今は似合わない女装をしているのだ。自分でも訳が分からないが、いっそ全裸を見られた方が余程恥ずかしくない。
アイディーが俯いてプルプルしていると、すぐ目の前にヨザックが立つ気配がした。
「アイディー」
「……あんだよ」
「俺は紳士でありたいのだよ」
「おう」
「でも無理だわ」
「頑張れ」
「いや、本当無理」
「そこをなんとか」
「無理。悪い。キスだけさせて」
「…………本当にキスだけ?」
「おう」
「………………いいけど」
アイディーは小さく頷いた。
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鳥羽ミワ
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ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
鈴木さんちの家政夫
ユキヤナギ
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「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
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【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
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美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
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ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
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自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
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王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
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王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
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男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
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転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
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