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4:夜のお仕事
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ロバートは自室のベッドに寝転がって、ぼーっと天井を見上げていた。
毎晩聞いていたミケーネの泣き声は、今日はまだ聞こえてこない。アイディーがミケーネの相手をして、寝かしつけているのだろう。
なんだか何もやる気が起きない。魔術書を読む気も起きないし、酒を飲む気分でもない。寝ようかと思ったが、昼間に寝過ぎたからか眠れない。
ひたすらぼーっとしていると、部屋のドアが小さくノックされた。アイディーだろう。ベッドのヘッドボードに置いてある時計をチラッと見れば、もうそろそろ日付が変わる時間である。こんな時間に一体何の用なのか。
ロバートは動く気が起きなかったので、部屋のドアに向かって『入れ』と言った。すぐにドアが開き、布面積が小さいフリフリレース付きの女物のパンツ1枚しか身につけていないアイディーが部屋に入ってきた。うっすら胸毛が生えている逞しい胸板に割れた腹筋、臍の辺りから陰毛の辺りまで毛が繋がるように生えている。完全に視覚の暴力過ぎる。ロバートは確かに男しか愛せないが、線の細い儚げな美少年が好みだ。アイディーのようなゴリゴリの筋肉だるまは完全に範疇外である。悪人面の筋肉だるまが可愛らしいデザインのパンツを穿いていても、気持ち悪いとしか思わない。
ロバートは思わず、おえ、と小さく呟いた。
「……何の用だ。というか、何だその格好。服を着ろ」
「どうせ脱ぐだろ」
「……は?」
「坊っちゃん寝たから夜の仕事しに来た。坊っちゃん起きたら、すぐに坊っちゃんのとこに行くけどな」
「……は?」
「さっさと終わらせてくれよ。明日もやることが多いしよ」
「……は?」
ロバートが寝転がっているベッドにアイディーがずかずか無造作に近づいてきた。ロバートはアイディーが言う『夜の仕事』の見当がつかず、ロバートを見下ろしているアイディーの顔をぽかんと見上げた。
「……何の話だ?」
「俺の職務内容に旦那様の夜の相手も含まれてる」
「…………はぁぁぁぁぁぁ!?」
「求人表と契約書見せただろ」
「ちょっ、ちょっ、ちょっと待てっ!」
ロバートは慌てて起き上がり、机の上に適当に放り投げていた求人表と契約書を手にとって読んでみた。本当に書いてあった。馬鹿すぎる自分を全力でフルボッコしたい。いくら何でもあんまり過ぎる求人の内容に、本気で泣きたくなってしまう。
思わず床に崩れ落ちたロバートに、勝手にロバートのベッドに上がったアイディーが声をかけてきた。
「ローション突っ込んできたから、さっさと突っ込んでくれ。そんでさっさと出してくれ。俺の朝は早いんだよ」
色気も糞もない。というか、こんなロバートの好みとはかけ離れた、ゴツくてむさい悪人面を本当に抱かねばならないのか。無理だ。勃起する気がまるでしない。
ロバートは床に突っ伏したまま、情けない声を出した。
「……無理だ。お前じゃ勃起しない」
「契約内容はきっちりやらなきゃいけねぇんだよ。なんとかしろ。頑張れ。ちんこ擦りゃ勃つだろ」
「……男はめちゃくちゃ繊細なんだぞっ!?」
「知るか。どうでもいいから、さっさとやれ」
「お前雇われの身分なのに偉そうだな!?」
「別に偉そうでも何でもねぇよ。口がわりぃのは気にすんな。直そうとしたこともあっけど、無理だったしよぉ」
ロバートが呆然と見ている前で、アイディーが唯一身につけていた女物のパンツを脱いだ。思わずアイディーの股間を見てしまう。もじゃもじゃの陰毛の下にぶらんと萎えているペニスと陰嚢がぶら下がっている。大きさは結構デカいが、ペニスの色はキレイなピンク色だ。顔や体格に似合わなすぎて、微妙に笑ってしまいそうになる。使ったことが少ないのだろうか。
アイディーが適当な仕草で手招きをした。
「勃たねぇなら舐めてやっから、さっさと来いよ。マジで早く終わらせてぇんだよ。坊っちゃんが泣き出すかもしれねぇし」
アイディーの言葉に従う必要などないのだが、ロバートは立ち上がって、のろのろと全裸のアイディーがいるベッドに近づいた。
ベッドの前に立つと、アイディーがロバートのパジャマのズボンとパンツをまとめて下にずらした。アイディーがロバートの萎えている赤黒いペニスを片手で掴み、眉間に皺を寄せて、ロバートのペニスを睨んだ。
「……やんのは初めてだから上手くできなくても文句言うなよ」
そう言ってアイディーがロバートのペニスに唇を近づけ、舌を伸ばしてロバートのペニスの先っぽを舐めた。ロバートは天井を見上げて目を閉じた。不器用に自分のペニスを這っている舌をハルファや好みの美少年のものだと思えば、なんとか興奮できそうな気がする。ぎこちない舌での愛撫がじわじわ気持ちいい。そういえば、セックスもオナニーも久しくしていなかった。忘れかけていた性欲が全速力で戻ってくる。ロバートのペニスはアイディーのぎこちないフェラですぐに勃起した。
アイディーの舌と手がペニスから離れたので、下を見下ろせば、アイディーがこちらに背を向けて四つん這いになっていた。片手で自分の尻たぶを掴んで広げており、アイディーの意外すぎる程キレイな色のアナルが丸見えになっている。濡れて微かにてらてら光っているのはローションを中に仕込んできたからだろう。アイディーのアナルは無駄にキレイな色で、毛も生えていない。普段露出している部分の肌はがっつり日焼けしているが、尻は割と白くてむっちりしている。何故か口内に唾液が溜まる感覚がした。ロバートは小さくこくっと唾を飲んでから、自分の赤黒い勃起したペニスを片手で掴んで、アイディーのアナルにペニスの先っぽを押しつけた。腰をゆっくり動かすと、じわじわアイディーのアナルの中へ自分のペニスが入っていく。かなりキツい。身体を鍛えているからだろうか。少し痛いくらいのキツいアナルの締めつけが気持ちよくて、ロバートはすぐに腰を振り始めた。目を閉じて、腰を振って、自分の快感をどんどん高めていく。アイディーが全然声をもらさないのをいいことに、ロバートは好みの美少年に突っ込んでいる妄想をしながら、まるでオナホのようにアイディーのアナルを使って、アイディーの中に射精した。
ーーーーーー
アイディーは泣いているミケーネを抱っこしてあやしながら、アナルの痛みに少しだけ眉間に皺を寄せた。アナルが本当にくっそ痛い。痛いだろうと予想はしていたが、地味に辛い痛さである。自分で指を突っ込んでアナルを解してローションを中に仕込んでいる時も痛かったが、ロバートのペニスを受け入れるのはもっと痛かった。痛くて思わず声をもらしそうになったが、声を出したらロバートが萎えるかもしれないと思い、口内の頬の肉を噛んで、なんとか耐えた。口の中が今でも血の味がする。
アナルは痛いが、ロバートが1回出しただけで終わったのでよかった。ミケーネが泣き出したからなのだが。泣いてくれたミケーネに感謝である。
アイディーはセックスをしたことなんてなかった。オナニーだって滅多にしない。こんなに痛いもののどこがいいのだろうか。突っ込む側は気持ちいいのかもしれないが。
それでも花街の娼館で見せられたような酷いことはされなかった。ただアイディーがロバートのペニスを舐めて、アナルにペニスを突っ込まれただけだ。アイディーは運がいい。ロバートはアイディーを無駄に痛めつけたりするような趣味は持っていないらしい。アイディーは本当に運がいい。
アイディーは泣いているミケーネの小さな身体を、まるでアイディーの方がすがりつくように抱き締めた。
ーーーーーー
アイディーはまだ半分眠っているミケーネをおんぶ紐でおんぶした状態で、洗濯物を干していた。朝食は既に出来ているが、まだ朝食には少しだけ早い時間だ。昨夜は結局一睡もしていない。ミケーネが中々泣き止まなかったし、泣き止んだ後もアナルの痛みが地味に辛くて眠れなかった。終わった後すぐに直腸に浄化魔術をかけたので、腹を下すことにはなっていない。随分と前に、男同士のセックスの基礎知識を教えてくれた遊び人の友達に感謝である。アイディーにも数は少ないが一応友達と呼べる奴らがいた。もう会うことはないだろうけど。
今日は買い出しがてら、便箋と封筒をちゃっかり買おう。ガーディナに手紙を書かなければ。ミケーネは多少手がかかるが、アイディーが小学生の頃に子守りをしていた子供に比べたら、本当に天使のようだ。アイディーが子守りをしていた子供は、気難しく癇癪持ちで、すぐに人に手を出したり物や食べ物を投げたりして、もっと大変だった。実の親ですら持て余していた面倒で色々と激しい子供を、アイディーは何年も相手していた。少ない金の為に。それに比べればミケーネは本当に可愛らしいものだ。少なくとも、人にも物にも当たらない。ただ泣くだけだ。アイディーを引っ掻いたり、噛みついたりもしない。スープが入ったカップを投げつけたりもしない。本や木の玩具で頭や顔を殴ったりもしない。頑張って作った料理を床にぶちまけたりもしない。
アイディー的にはミケーネは天使のように優しく可愛らしい。
ミケーネが気に入ったらしい歌を歌いながら、アイディーは洗濯物を干し終えた。ロバートが起きたらロバートのパジャマやシーツも洗わなくては。朝食をミケーネに食べさせたら、手早く掃除を済ませて、ミケーネを連れて買い出しに出掛けよう。昨日は似合わない女装をしているから、道行く人にじろじろと変なものを見るような目で見られた。更にミケーネを抱っこしていたからか、領軍に不審者として通報された。念のため雇用契約書を持ち歩いていて助かった。職業斡旋所に軍人と共に行き、受付の男に証言してもらったお陰で、面倒なことにはならなかった。アイディーは運がいい。
アイディーが歌いながら空になった洗濯籠を抱えて庭から家の中に入ると、ぼさぼさ頭のロバートがパジャマのまま廊下を歩いていた。ロバートは身綺麗にしたら、ものすごくモテそうな美形だ。今は無精髭でぼさぼさ頭の小汚ないオッサンだけど。
アイディーはロバートに声をかけた。
「おはようさん。旦那様。坊っちゃん。パパに挨拶しな」
「やー」
「おはよー、だぞ。お、は、よ、う」
「おあよー」
「そうそう。上手だぜ、坊っちゃん。坊っちゃんは頭がいいな」
身体を少しくねらせて、背中のミケーネを軽く揺すってやると、ミケーネが歓声を上げてアイディーの首にしがみついた。少しミケーネの爪が首に刺さる。後で爪を切ってやらなくては。
ロバートの方を見れば、ぼんやりとこちらを眺めている。すごい魔術師ですごい金持ちだと聞いているが、アイディーにはロバートはぼんやりした情けない馬鹿なオッサンにしか見えない。
「旦那様」
「……なんだ」
「坊っちゃんに朝の挨拶」
「…………ミケーネ。おはよう」
「んー」
背中のミケーネを見れば、ミケーネは片手の親指を咥えながら、目線だけロバートの方へ向けていた。ロバートはそんなミケーネをぼんやり見ている。
朝の挨拶は済んだ。朝食の時間である。
アイディーはニッと笑って、ミケーネとロバートに声をかけ、洗濯籠を脱衣場に置いてから台所へと足を向けた。
毎晩聞いていたミケーネの泣き声は、今日はまだ聞こえてこない。アイディーがミケーネの相手をして、寝かしつけているのだろう。
なんだか何もやる気が起きない。魔術書を読む気も起きないし、酒を飲む気分でもない。寝ようかと思ったが、昼間に寝過ぎたからか眠れない。
ひたすらぼーっとしていると、部屋のドアが小さくノックされた。アイディーだろう。ベッドのヘッドボードに置いてある時計をチラッと見れば、もうそろそろ日付が変わる時間である。こんな時間に一体何の用なのか。
ロバートは動く気が起きなかったので、部屋のドアに向かって『入れ』と言った。すぐにドアが開き、布面積が小さいフリフリレース付きの女物のパンツ1枚しか身につけていないアイディーが部屋に入ってきた。うっすら胸毛が生えている逞しい胸板に割れた腹筋、臍の辺りから陰毛の辺りまで毛が繋がるように生えている。完全に視覚の暴力過ぎる。ロバートは確かに男しか愛せないが、線の細い儚げな美少年が好みだ。アイディーのようなゴリゴリの筋肉だるまは完全に範疇外である。悪人面の筋肉だるまが可愛らしいデザインのパンツを穿いていても、気持ち悪いとしか思わない。
ロバートは思わず、おえ、と小さく呟いた。
「……何の用だ。というか、何だその格好。服を着ろ」
「どうせ脱ぐだろ」
「……は?」
「坊っちゃん寝たから夜の仕事しに来た。坊っちゃん起きたら、すぐに坊っちゃんのとこに行くけどな」
「……は?」
「さっさと終わらせてくれよ。明日もやることが多いしよ」
「……は?」
ロバートが寝転がっているベッドにアイディーがずかずか無造作に近づいてきた。ロバートはアイディーが言う『夜の仕事』の見当がつかず、ロバートを見下ろしているアイディーの顔をぽかんと見上げた。
「……何の話だ?」
「俺の職務内容に旦那様の夜の相手も含まれてる」
「…………はぁぁぁぁぁぁ!?」
「求人表と契約書見せただろ」
「ちょっ、ちょっ、ちょっと待てっ!」
ロバートは慌てて起き上がり、机の上に適当に放り投げていた求人表と契約書を手にとって読んでみた。本当に書いてあった。馬鹿すぎる自分を全力でフルボッコしたい。いくら何でもあんまり過ぎる求人の内容に、本気で泣きたくなってしまう。
思わず床に崩れ落ちたロバートに、勝手にロバートのベッドに上がったアイディーが声をかけてきた。
「ローション突っ込んできたから、さっさと突っ込んでくれ。そんでさっさと出してくれ。俺の朝は早いんだよ」
色気も糞もない。というか、こんなロバートの好みとはかけ離れた、ゴツくてむさい悪人面を本当に抱かねばならないのか。無理だ。勃起する気がまるでしない。
ロバートは床に突っ伏したまま、情けない声を出した。
「……無理だ。お前じゃ勃起しない」
「契約内容はきっちりやらなきゃいけねぇんだよ。なんとかしろ。頑張れ。ちんこ擦りゃ勃つだろ」
「……男はめちゃくちゃ繊細なんだぞっ!?」
「知るか。どうでもいいから、さっさとやれ」
「お前雇われの身分なのに偉そうだな!?」
「別に偉そうでも何でもねぇよ。口がわりぃのは気にすんな。直そうとしたこともあっけど、無理だったしよぉ」
ロバートが呆然と見ている前で、アイディーが唯一身につけていた女物のパンツを脱いだ。思わずアイディーの股間を見てしまう。もじゃもじゃの陰毛の下にぶらんと萎えているペニスと陰嚢がぶら下がっている。大きさは結構デカいが、ペニスの色はキレイなピンク色だ。顔や体格に似合わなすぎて、微妙に笑ってしまいそうになる。使ったことが少ないのだろうか。
アイディーが適当な仕草で手招きをした。
「勃たねぇなら舐めてやっから、さっさと来いよ。マジで早く終わらせてぇんだよ。坊っちゃんが泣き出すかもしれねぇし」
アイディーの言葉に従う必要などないのだが、ロバートは立ち上がって、のろのろと全裸のアイディーがいるベッドに近づいた。
ベッドの前に立つと、アイディーがロバートのパジャマのズボンとパンツをまとめて下にずらした。アイディーがロバートの萎えている赤黒いペニスを片手で掴み、眉間に皺を寄せて、ロバートのペニスを睨んだ。
「……やんのは初めてだから上手くできなくても文句言うなよ」
そう言ってアイディーがロバートのペニスに唇を近づけ、舌を伸ばしてロバートのペニスの先っぽを舐めた。ロバートは天井を見上げて目を閉じた。不器用に自分のペニスを這っている舌をハルファや好みの美少年のものだと思えば、なんとか興奮できそうな気がする。ぎこちない舌での愛撫がじわじわ気持ちいい。そういえば、セックスもオナニーも久しくしていなかった。忘れかけていた性欲が全速力で戻ってくる。ロバートのペニスはアイディーのぎこちないフェラですぐに勃起した。
アイディーの舌と手がペニスから離れたので、下を見下ろせば、アイディーがこちらに背を向けて四つん這いになっていた。片手で自分の尻たぶを掴んで広げており、アイディーの意外すぎる程キレイな色のアナルが丸見えになっている。濡れて微かにてらてら光っているのはローションを中に仕込んできたからだろう。アイディーのアナルは無駄にキレイな色で、毛も生えていない。普段露出している部分の肌はがっつり日焼けしているが、尻は割と白くてむっちりしている。何故か口内に唾液が溜まる感覚がした。ロバートは小さくこくっと唾を飲んでから、自分の赤黒い勃起したペニスを片手で掴んで、アイディーのアナルにペニスの先っぽを押しつけた。腰をゆっくり動かすと、じわじわアイディーのアナルの中へ自分のペニスが入っていく。かなりキツい。身体を鍛えているからだろうか。少し痛いくらいのキツいアナルの締めつけが気持ちよくて、ロバートはすぐに腰を振り始めた。目を閉じて、腰を振って、自分の快感をどんどん高めていく。アイディーが全然声をもらさないのをいいことに、ロバートは好みの美少年に突っ込んでいる妄想をしながら、まるでオナホのようにアイディーのアナルを使って、アイディーの中に射精した。
ーーーーーー
アイディーは泣いているミケーネを抱っこしてあやしながら、アナルの痛みに少しだけ眉間に皺を寄せた。アナルが本当にくっそ痛い。痛いだろうと予想はしていたが、地味に辛い痛さである。自分で指を突っ込んでアナルを解してローションを中に仕込んでいる時も痛かったが、ロバートのペニスを受け入れるのはもっと痛かった。痛くて思わず声をもらしそうになったが、声を出したらロバートが萎えるかもしれないと思い、口内の頬の肉を噛んで、なんとか耐えた。口の中が今でも血の味がする。
アナルは痛いが、ロバートが1回出しただけで終わったのでよかった。ミケーネが泣き出したからなのだが。泣いてくれたミケーネに感謝である。
アイディーはセックスをしたことなんてなかった。オナニーだって滅多にしない。こんなに痛いもののどこがいいのだろうか。突っ込む側は気持ちいいのかもしれないが。
それでも花街の娼館で見せられたような酷いことはされなかった。ただアイディーがロバートのペニスを舐めて、アナルにペニスを突っ込まれただけだ。アイディーは運がいい。ロバートはアイディーを無駄に痛めつけたりするような趣味は持っていないらしい。アイディーは本当に運がいい。
アイディーは泣いているミケーネの小さな身体を、まるでアイディーの方がすがりつくように抱き締めた。
ーーーーーー
アイディーはまだ半分眠っているミケーネをおんぶ紐でおんぶした状態で、洗濯物を干していた。朝食は既に出来ているが、まだ朝食には少しだけ早い時間だ。昨夜は結局一睡もしていない。ミケーネが中々泣き止まなかったし、泣き止んだ後もアナルの痛みが地味に辛くて眠れなかった。終わった後すぐに直腸に浄化魔術をかけたので、腹を下すことにはなっていない。随分と前に、男同士のセックスの基礎知識を教えてくれた遊び人の友達に感謝である。アイディーにも数は少ないが一応友達と呼べる奴らがいた。もう会うことはないだろうけど。
今日は買い出しがてら、便箋と封筒をちゃっかり買おう。ガーディナに手紙を書かなければ。ミケーネは多少手がかかるが、アイディーが小学生の頃に子守りをしていた子供に比べたら、本当に天使のようだ。アイディーが子守りをしていた子供は、気難しく癇癪持ちで、すぐに人に手を出したり物や食べ物を投げたりして、もっと大変だった。実の親ですら持て余していた面倒で色々と激しい子供を、アイディーは何年も相手していた。少ない金の為に。それに比べればミケーネは本当に可愛らしいものだ。少なくとも、人にも物にも当たらない。ただ泣くだけだ。アイディーを引っ掻いたり、噛みついたりもしない。スープが入ったカップを投げつけたりもしない。本や木の玩具で頭や顔を殴ったりもしない。頑張って作った料理を床にぶちまけたりもしない。
アイディー的にはミケーネは天使のように優しく可愛らしい。
ミケーネが気に入ったらしい歌を歌いながら、アイディーは洗濯物を干し終えた。ロバートが起きたらロバートのパジャマやシーツも洗わなくては。朝食をミケーネに食べさせたら、手早く掃除を済ませて、ミケーネを連れて買い出しに出掛けよう。昨日は似合わない女装をしているから、道行く人にじろじろと変なものを見るような目で見られた。更にミケーネを抱っこしていたからか、領軍に不審者として通報された。念のため雇用契約書を持ち歩いていて助かった。職業斡旋所に軍人と共に行き、受付の男に証言してもらったお陰で、面倒なことにはならなかった。アイディーは運がいい。
アイディーが歌いながら空になった洗濯籠を抱えて庭から家の中に入ると、ぼさぼさ頭のロバートがパジャマのまま廊下を歩いていた。ロバートは身綺麗にしたら、ものすごくモテそうな美形だ。今は無精髭でぼさぼさ頭の小汚ないオッサンだけど。
アイディーはロバートに声をかけた。
「おはようさん。旦那様。坊っちゃん。パパに挨拶しな」
「やー」
「おはよー、だぞ。お、は、よ、う」
「おあよー」
「そうそう。上手だぜ、坊っちゃん。坊っちゃんは頭がいいな」
身体を少しくねらせて、背中のミケーネを軽く揺すってやると、ミケーネが歓声を上げてアイディーの首にしがみついた。少しミケーネの爪が首に刺さる。後で爪を切ってやらなくては。
ロバートの方を見れば、ぼんやりとこちらを眺めている。すごい魔術師ですごい金持ちだと聞いているが、アイディーにはロバートはぼんやりした情けない馬鹿なオッサンにしか見えない。
「旦那様」
「……なんだ」
「坊っちゃんに朝の挨拶」
「…………ミケーネ。おはよう」
「んー」
背中のミケーネを見れば、ミケーネは片手の親指を咥えながら、目線だけロバートの方へ向けていた。ロバートはそんなミケーネをぼんやり見ている。
朝の挨拶は済んだ。朝食の時間である。
アイディーはニッと笑って、ミケーネとロバートに声をかけ、洗濯籠を脱衣場に置いてから台所へと足を向けた。
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