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59:旅立ちと新たな恋の予感?
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トリッシュが無事に中学校を卒業した。16歳になり、成人を迎えたトリッシュは卒業式の数日後のよく晴れた日にジャンと一緒に旅立っていった。
旅立つ前日の夜に、クラウディオが特注した仕込み武器を仕込みまくった飛行ジャケットと靴の先端からナイフが飛び出る仕様の仕込みブーツを渡したら、トリッシュには引かれ、ジャンには呆れられた。こんなに重いと飛行に支障が出ると、クラウディオのプレゼントはトリッシュの部屋に保管されることになった。解せぬ。せめて仕込みブーツくらい履いてくれてもいい筈だ。
空に高く舞い上がった2つの飛竜の姿を見上げて、クラウディオは溜め息を吐いた。ジャンのモルガは当然として、トリッシュのベイヤードも素人目に見ても安定して飛んでいるように見える。愛娘の成長は素直に嬉しい。でも同時にひどく寂しい。空っぽになった竜舎を見つめて、クラウディオは肩を落とした。
ーーーーーー
フリオがエドガーに会いにたまに訪れたり、アルジャーノが時々クラウディオに会いに来てくれるが、広い家でクラウディオ1人だけの生活が始まった。以前は1人暮らしを長くしていたというのに、10年以上常に家族が一緒の賑やかな生活をしていたからか、しんと静まった家の中が寂しくて堪らない。自分はこんなに寂しがり屋だっただろうかと不思議に思う程寂しい。
フェリが帰ってきている時以外は、ひたすら仕事に没頭していた。
そんな寂しいクラウディオの元に、夏休みでロヴィーノ達が会いに来てくれた。皆とハグをして頬にキスをして、クラウディオは熱烈に歓迎した。今年の夏休みはジャンとトリッシュは不在である。フェリが言うに、今は火の宗主国を飛んでいるらしい。火の宗主国をひとしきり飛び回ったら、1度サンガレアに戻ってくるとのこと。いつになるのやら。フェリは神子の務めの合間にトリッシュ達と会っているそうで、2人とも元気だと教えてくれる。元気に過ごしてくれているのなら、それでいい。
クラウディオはフェリと手を繋いで街中を歩いていた。ロヴィーノとフェルナンドも一緒だ。アルジャーノはフーガ様とアーベルを連れてアマーリエの家に行き、フリオは今日は朝からエドガーとデートである。クラウディオは早朝にフリオの髪を少し複雑に編み込んで結い上げてやった。たまには少し違う髪型もいいだろう。露になったフリオの白いうなじが実に眩しかった。これにはエドガーも喜んで食いつく筈である。前回来た時に一緒に買いにいった服を着て嬉しそうなフリオが玄関から出ていく姿を見送ってから、皆で街に繰り出した。
昼食をどこで食べるか話ながら歩いていると、クラウディオもたまに利用している手芸用品店の前にリー様の姿があった。長男・ルーカス様と年子で産まれたマリアンナ様、現在7歳になる末っ子のカルロス様も一緒である。リー様は3人子供を産んでいる。3人目をリー様が妊娠した時は、フェリとマルク様は心底羨ましがっていた。
フェリがリー様達に声をかけた。
「よぉ。リー。来てたのか」
「あ、兄さん。やっほー。皆でお出かけ中?」
「そう」
「皆、こんにちはー」
「「「こんにちは」」」
「ちょっと見ない間に3人とも大きくなったなー」
「でしょー。ルーカスなんてこの半年で身長が10センチも伸びたんだよ」
「マジか。成長期だなー。羨ましい」
「俺も背が伸びたよ!」
「お、そうか。カルロス。よかったな」
「うん!」
「兄さん達お昼食べた?」
「まだ」
「じゃあ一緒に食べようよ!今から焼き肉行くとこなんだ!」
「お、いいなー。いいか?3人とも」
「勿論、フェリ」
「いいですね」
「いいよー」
ぞろぞろと団体で焼肉屋を目指して歩く。フェルナンドがマリアンナ様の荷物を持ってやっていた。マリアンナ様はリー様譲りの黒髪と褐色の肌の美人さんである。明るい笑顔が素敵で、いつもニコニコ笑っているような感じの子だ。現在15歳のマリアンナ様は、ここ1年程で随分と美しく成長している。
「マリアンナと会うのは久しぶりだね」
「うん。5年ぶりくらいじゃない?」
「あれ?もうそんなに経ってる?」
「タイミングが合わない感じだったもの。フリオ様とはこっちでたまに会うけど。今日はフリオ様は一緒じゃないのね」
「うん。フリオ叔父上はデート中」
「噂の神殿警備隊の人?」
「そう。中々のイケメン」
「歌がすごく上手なんでしょ?ドリーシャが言ってたわ。たまに一緒に歌うんですって」
「そうなんだ。歌は確かに上手いよ。うちでもたまに楽器弾きながら歌ってくれるんだ」
「あら。いいなー。私も聴いてみたいわ。歌を聴くの好きなの」
「じゃあ、今度うちにおいでよ。エドガー君が来てる時なら多分歌ってくれるし」
「いいの?フェルナンド様達の家って竜舎もあるんでしょ?」
「うん。おじいちゃんとトリッシュの飛竜用のがね」
「竜舎って見たことないの。それも見てみたいわ。フェルナンド様も飛竜を持ってるの?」
「うん。雄でね、バルトロって名前なんだ」
「飛竜ってすごく格好いいわよね。母上の火竜にはたまに乗せてもらうんだけど、私空を飛ぶのすごく好きだわ」
「俺も好きだよ。風になったみたいな気がする」
「分かる!」
中々に盛り上がっているフェルナンドとマリアンナ様の会話をなんとなく聞いているうちに焼肉屋に着いた。店に入ると、人数が多いので2つのテーブルに別れて座った。
クラウディオはフェリとリー様の男の子達2人と、ロヴィーノ達親子はリー様とマリアンナ様と一緒のテーブルだ。
ルーカス様とカルロス様と話をしながら、肉を焼いてひたすら食べる。食べ盛りの男の子達の食べる勢いは中々のもので、見ていて楽しい。フェリと2人で笑いながら2人に肉を焼いてやった。満腹になるまで肉をとことん腹に詰め込むと、会計をしてから店を出た。
リー様親子とは焼肉屋の前で別れた。今から4人で芝居を観に行くそうだ。クラウディオ達は博物館に行く予定である。リー様達に手を振って別れて、クラウディオ達は博物館目指して歩きだした。
博物館の展示を楽しんで近くの喫茶店に入り、ゆっくりと香りのいい珈琲を楽しんでいるとフェルナンドが口を開いた。
「ねぇ、父上」
「んー?」
「俺、マリアンナと結婚するわ」
「ごっほっ!」
突然のフェルナンドの言葉にロヴィーノが珈琲を吹き出した。フェリはきょとんと目を丸くした。クラウディオも驚いてフェルナンドの顔をじっと見た。冗談を言っている感じではない。
口元を拭いたロヴィーノがフェルナンドに話を聞き始めた。
「どうした、突然」
「や。久しぶりに会ったら、なんかめちゃめちゃキレイになってるし、話しててすごい楽しかったから」
「え、や、そうかもしれんが、まだ未成年だぞ?」
「来年成人するじゃん」
「まぁそうだけど……」
「父上、火の王に話してみてよ」
「えー……いやまぁいいけど。でも火の王ってマリアンナを溺愛してるだろ?確か。ですよね、母上」
「あぁ。もうめちゃくちゃ可愛がってる」
「火の宗主国と風の宗主国じゃ遠すぎるし、普通に嫌がるんじゃないか?」
「転移陣使えば一瞬で行き来できるじゃん。なんならサンガレアに来たら気兼ねなく会えるし」
「……まぁ、そうだけど」
「マリアンナが下手に火の宗主国の貴族に嫁ぐより俺と結婚した方が会いやすいと思うけど。貴族なり火の宗主国近辺の他国の王族に嫁いだら、それこそ殆んど会えなくなるじゃん」
「いやまぁ、確かに」
「お互い、結婚するにあたって、国元の面倒な貴族の力関係とかに頭を悩ませずにすむよ?」
「うっ……まぁな」
「火の宗主国の王女でリー様の娘なら、うちの面倒くさい貴族達も黙るだろうし、結婚を期に火の宗主国との貿易にも力を入れられるよ?」
「うー」
「国と国の間が遠いけど、飛竜乗り達に頼めば問題ないし」
「まぁな……」
「父上にも可愛い娘ができるよー。なんなら孫も」
「ぐぅ……は、母上」
「ん?」
「一先ず母上からリー様に打診してみてください。俺から火の王に話を持っていくより、多分そちらの方が確実です」
「お、マジか。まぁいいけど。あ、でもマリアンナ本人の了承がないとダメだからな」
「やった!!」
「ルーカス様達は1週間くらいサンガレアにいるそうだから、とりあえずマリアンナ様をデートに誘ってみたらどうだ?フェルナンド」
「そうするよ、お祖父様。芝居は今日観に行くって言ってたからさ、家に呼んでいい?確か明日もエドガー君休みだよね?」
「あぁ。今夜はうちに泊まるってフリオが言ってた」
「よっしゃ!エドガー君の歌と竜舎をだしにマリアンナを誘うわ」
「まー、いいけどな?絶対に手はまだ出すなよ?相手は未成年で他国の王女なんだから」
「分かってるよ、おばあ様」
「100歩譲って本人の許可を得たらキスまではいいけど、舌は入れるなよ」
「了解。お祖父様」
「下手なことしたら火の王から首をはねられかねんからな。本当に気をつけろよ」
「大丈夫だよ、父上。家で歌を聞いたり、竜舎見たりしながら楽しくお喋りするだけだよ」
「なら、いいけど……」
「多分、そろそろ芝居も終わってる時間だよね。劇場方面に行かない?早速マリアンナを誘いたいんだけど」
「おー。いいぞ」
フェリの一声でフェルナンドは待ちきれないようにすぐに椅子から立ち上がった。
そわそわしているフェルナンドを待たせて、会計を済ませてから喫茶店を出る。
数年前にフリオが落ち着いたと思ったら、今度はフェルナンドである。なんとなくクラウディオもワクワクしながら、フェリと手を繋いで、早足に劇場方面に向かい歩きだしたフェルナンドの後を追った。
旅立つ前日の夜に、クラウディオが特注した仕込み武器を仕込みまくった飛行ジャケットと靴の先端からナイフが飛び出る仕様の仕込みブーツを渡したら、トリッシュには引かれ、ジャンには呆れられた。こんなに重いと飛行に支障が出ると、クラウディオのプレゼントはトリッシュの部屋に保管されることになった。解せぬ。せめて仕込みブーツくらい履いてくれてもいい筈だ。
空に高く舞い上がった2つの飛竜の姿を見上げて、クラウディオは溜め息を吐いた。ジャンのモルガは当然として、トリッシュのベイヤードも素人目に見ても安定して飛んでいるように見える。愛娘の成長は素直に嬉しい。でも同時にひどく寂しい。空っぽになった竜舎を見つめて、クラウディオは肩を落とした。
ーーーーーー
フリオがエドガーに会いにたまに訪れたり、アルジャーノが時々クラウディオに会いに来てくれるが、広い家でクラウディオ1人だけの生活が始まった。以前は1人暮らしを長くしていたというのに、10年以上常に家族が一緒の賑やかな生活をしていたからか、しんと静まった家の中が寂しくて堪らない。自分はこんなに寂しがり屋だっただろうかと不思議に思う程寂しい。
フェリが帰ってきている時以外は、ひたすら仕事に没頭していた。
そんな寂しいクラウディオの元に、夏休みでロヴィーノ達が会いに来てくれた。皆とハグをして頬にキスをして、クラウディオは熱烈に歓迎した。今年の夏休みはジャンとトリッシュは不在である。フェリが言うに、今は火の宗主国を飛んでいるらしい。火の宗主国をひとしきり飛び回ったら、1度サンガレアに戻ってくるとのこと。いつになるのやら。フェリは神子の務めの合間にトリッシュ達と会っているそうで、2人とも元気だと教えてくれる。元気に過ごしてくれているのなら、それでいい。
クラウディオはフェリと手を繋いで街中を歩いていた。ロヴィーノとフェルナンドも一緒だ。アルジャーノはフーガ様とアーベルを連れてアマーリエの家に行き、フリオは今日は朝からエドガーとデートである。クラウディオは早朝にフリオの髪を少し複雑に編み込んで結い上げてやった。たまには少し違う髪型もいいだろう。露になったフリオの白いうなじが実に眩しかった。これにはエドガーも喜んで食いつく筈である。前回来た時に一緒に買いにいった服を着て嬉しそうなフリオが玄関から出ていく姿を見送ってから、皆で街に繰り出した。
昼食をどこで食べるか話ながら歩いていると、クラウディオもたまに利用している手芸用品店の前にリー様の姿があった。長男・ルーカス様と年子で産まれたマリアンナ様、現在7歳になる末っ子のカルロス様も一緒である。リー様は3人子供を産んでいる。3人目をリー様が妊娠した時は、フェリとマルク様は心底羨ましがっていた。
フェリがリー様達に声をかけた。
「よぉ。リー。来てたのか」
「あ、兄さん。やっほー。皆でお出かけ中?」
「そう」
「皆、こんにちはー」
「「「こんにちは」」」
「ちょっと見ない間に3人とも大きくなったなー」
「でしょー。ルーカスなんてこの半年で身長が10センチも伸びたんだよ」
「マジか。成長期だなー。羨ましい」
「俺も背が伸びたよ!」
「お、そうか。カルロス。よかったな」
「うん!」
「兄さん達お昼食べた?」
「まだ」
「じゃあ一緒に食べようよ!今から焼き肉行くとこなんだ!」
「お、いいなー。いいか?3人とも」
「勿論、フェリ」
「いいですね」
「いいよー」
ぞろぞろと団体で焼肉屋を目指して歩く。フェルナンドがマリアンナ様の荷物を持ってやっていた。マリアンナ様はリー様譲りの黒髪と褐色の肌の美人さんである。明るい笑顔が素敵で、いつもニコニコ笑っているような感じの子だ。現在15歳のマリアンナ様は、ここ1年程で随分と美しく成長している。
「マリアンナと会うのは久しぶりだね」
「うん。5年ぶりくらいじゃない?」
「あれ?もうそんなに経ってる?」
「タイミングが合わない感じだったもの。フリオ様とはこっちでたまに会うけど。今日はフリオ様は一緒じゃないのね」
「うん。フリオ叔父上はデート中」
「噂の神殿警備隊の人?」
「そう。中々のイケメン」
「歌がすごく上手なんでしょ?ドリーシャが言ってたわ。たまに一緒に歌うんですって」
「そうなんだ。歌は確かに上手いよ。うちでもたまに楽器弾きながら歌ってくれるんだ」
「あら。いいなー。私も聴いてみたいわ。歌を聴くの好きなの」
「じゃあ、今度うちにおいでよ。エドガー君が来てる時なら多分歌ってくれるし」
「いいの?フェルナンド様達の家って竜舎もあるんでしょ?」
「うん。おじいちゃんとトリッシュの飛竜用のがね」
「竜舎って見たことないの。それも見てみたいわ。フェルナンド様も飛竜を持ってるの?」
「うん。雄でね、バルトロって名前なんだ」
「飛竜ってすごく格好いいわよね。母上の火竜にはたまに乗せてもらうんだけど、私空を飛ぶのすごく好きだわ」
「俺も好きだよ。風になったみたいな気がする」
「分かる!」
中々に盛り上がっているフェルナンドとマリアンナ様の会話をなんとなく聞いているうちに焼肉屋に着いた。店に入ると、人数が多いので2つのテーブルに別れて座った。
クラウディオはフェリとリー様の男の子達2人と、ロヴィーノ達親子はリー様とマリアンナ様と一緒のテーブルだ。
ルーカス様とカルロス様と話をしながら、肉を焼いてひたすら食べる。食べ盛りの男の子達の食べる勢いは中々のもので、見ていて楽しい。フェリと2人で笑いながら2人に肉を焼いてやった。満腹になるまで肉をとことん腹に詰め込むと、会計をしてから店を出た。
リー様親子とは焼肉屋の前で別れた。今から4人で芝居を観に行くそうだ。クラウディオ達は博物館に行く予定である。リー様達に手を振って別れて、クラウディオ達は博物館目指して歩きだした。
博物館の展示を楽しんで近くの喫茶店に入り、ゆっくりと香りのいい珈琲を楽しんでいるとフェルナンドが口を開いた。
「ねぇ、父上」
「んー?」
「俺、マリアンナと結婚するわ」
「ごっほっ!」
突然のフェルナンドの言葉にロヴィーノが珈琲を吹き出した。フェリはきょとんと目を丸くした。クラウディオも驚いてフェルナンドの顔をじっと見た。冗談を言っている感じではない。
口元を拭いたロヴィーノがフェルナンドに話を聞き始めた。
「どうした、突然」
「や。久しぶりに会ったら、なんかめちゃめちゃキレイになってるし、話しててすごい楽しかったから」
「え、や、そうかもしれんが、まだ未成年だぞ?」
「来年成人するじゃん」
「まぁそうだけど……」
「父上、火の王に話してみてよ」
「えー……いやまぁいいけど。でも火の王ってマリアンナを溺愛してるだろ?確か。ですよね、母上」
「あぁ。もうめちゃくちゃ可愛がってる」
「火の宗主国と風の宗主国じゃ遠すぎるし、普通に嫌がるんじゃないか?」
「転移陣使えば一瞬で行き来できるじゃん。なんならサンガレアに来たら気兼ねなく会えるし」
「……まぁ、そうだけど」
「マリアンナが下手に火の宗主国の貴族に嫁ぐより俺と結婚した方が会いやすいと思うけど。貴族なり火の宗主国近辺の他国の王族に嫁いだら、それこそ殆んど会えなくなるじゃん」
「いやまぁ、確かに」
「お互い、結婚するにあたって、国元の面倒な貴族の力関係とかに頭を悩ませずにすむよ?」
「うっ……まぁな」
「火の宗主国の王女でリー様の娘なら、うちの面倒くさい貴族達も黙るだろうし、結婚を期に火の宗主国との貿易にも力を入れられるよ?」
「うー」
「国と国の間が遠いけど、飛竜乗り達に頼めば問題ないし」
「まぁな……」
「父上にも可愛い娘ができるよー。なんなら孫も」
「ぐぅ……は、母上」
「ん?」
「一先ず母上からリー様に打診してみてください。俺から火の王に話を持っていくより、多分そちらの方が確実です」
「お、マジか。まぁいいけど。あ、でもマリアンナ本人の了承がないとダメだからな」
「やった!!」
「ルーカス様達は1週間くらいサンガレアにいるそうだから、とりあえずマリアンナ様をデートに誘ってみたらどうだ?フェルナンド」
「そうするよ、お祖父様。芝居は今日観に行くって言ってたからさ、家に呼んでいい?確か明日もエドガー君休みだよね?」
「あぁ。今夜はうちに泊まるってフリオが言ってた」
「よっしゃ!エドガー君の歌と竜舎をだしにマリアンナを誘うわ」
「まー、いいけどな?絶対に手はまだ出すなよ?相手は未成年で他国の王女なんだから」
「分かってるよ、おばあ様」
「100歩譲って本人の許可を得たらキスまではいいけど、舌は入れるなよ」
「了解。お祖父様」
「下手なことしたら火の王から首をはねられかねんからな。本当に気をつけろよ」
「大丈夫だよ、父上。家で歌を聞いたり、竜舎見たりしながら楽しくお喋りするだけだよ」
「なら、いいけど……」
「多分、そろそろ芝居も終わってる時間だよね。劇場方面に行かない?早速マリアンナを誘いたいんだけど」
「おー。いいぞ」
フェリの一声でフェルナンドは待ちきれないようにすぐに椅子から立ち上がった。
そわそわしているフェルナンドを待たせて、会計を済ませてから喫茶店を出る。
数年前にフリオが落ち着いたと思ったら、今度はフェルナンドである。なんとなくクラウディオもワクワクしながら、フェリと手を繋いで、早足に劇場方面に向かい歩きだしたフェルナンドの後を追った。
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