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35:家族の家

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3日後。
子供達が夏休みでサンガレアにやってきた。新しい家は内装も終わり、あとは家具を作って入れるだけである。クラウディオは休みの度に作業しているようで、今日も朝から家具を作ると言って現場に向かっていた。
フェリとジャンは聖地神殿で子供達を出迎えて、子供達が荷物を置いたあと、馬車を借りて新居へと移動した。アルジャーノはちょいちょいサンガレアに来ているので、新しい家がどんなものか知っている。道すがらその話を聞いていると、すぐに新居に着いた。
揃いのつなぎを着た男達は、家具を作る組と竜舎を建てる組とに分かれているようで、クラウディオは家の側で家具を作っていた。


「クラウディオー」

「お、フェリ。おかえり、皆。元気か?」

「久しぶり。ただいま父上」

「ただいま。何を作っているんだ?」

「ロヴィーノの部屋に置く予定のベッド。頑丈にしとくよ」

「この模様キレイだな」

「折角だから、1人1人違う模様を彫ろうかと思ってな。其々のイメージでな。ちなみに俺の独断と偏見で選んでる」

「いいな、これ」


ロヴィーノが嬉しそうに笑った。クラウディオが使っていた道具を1度片付けて立ち上がった。


「家自体は出来上がってるんだ。案内するよ」

「うん」


家族をぞろぞろ引き連れて、クラウディオが新居に入っていく。フェリも中に入るのは初めてだ。家に入った途端、新しい木の匂いがした。


「1階は居間と台所と風呂場と洗濯部屋、トイレだけにしたんだ。洗濯部屋とトイレは兎も角、他3つは広い方がいいからな。風呂は全員で入っても余裕があるぞ。檜作りだから香りもいいしな」

「洗濯用の部屋も作ったのか?」

「あぁ。狭いけどな。全員揃うと人数が少し多いから、魔導洗濯機が1台じゃ多分足りないからな。いっそ業務用のデカイのを2台置いた方がいいと思ってな」

「なるほど」

「2階、3階は各自の部屋と一応客間が1つ、各階にもトイレがある。それと各会報誌と写真集とか置く専門の書斎な。本当は各部屋にシャワー室をつけたかったんだが、設計上の問題と予算の関係で無理だったんだよなー」

「デカイ風呂があるんなら別になくてもよくないか?」

「んー。まぁ、申請して温泉ひいてるから、風呂にはいつでも入れるんだが。ほら、セックスしたあと、うっかり鉢合わせたら気まずいだろ?」

「あ、あー……」

「あー、うん。まぁ、それは、ね」

「マーサ様の結界を家の周囲に張っているから、今後はロヴィーノ達もこっちに泊まれるし。そうなるとマーサ様もロヴィーノがいる時はここに来たりもするだろ?」

「あ、うん」

「次にロヴィーノ達が来るときには全部完成して住んでるだろうから、洗濯の仕方を教えるな。流石に使用済みのシーツとかまとめて洗うの気まずいし」

「あ、はい」


あっけらかんと言うクラウディオにロヴィーノが恥ずかしそうに顔を赤らめた。フェリもなんとなく恥ずかしくて少し頬を染めた。


「其々の部屋にはベッドと衣装箪笥、本棚と書き物ができるくらいの机と椅子は置くが、あとは好きにしてくれて構わない」

「父上ー。俺は基本、本読まないから本棚はいいよ」

「ん?そうか?じゃあ、アルジャーノの部屋には本棚はなしで」

「本棚より飛竜に乗る時に使うもの入れる箱か棚が欲しい」

「分かった。具体的にどんな感じのものがいいか、あとで教えてくれ」

「うん」

「他に今のところ部屋に関して希望がある者は?」

「俺は特にないな」

「本棚は大きめがいい」

「俺は弓とか置けるとこ欲しいかなぁ。こう……壁に弓をかけられるような感じ」

「フリオが本棚大きめで、フェルナンドは弓な。フェリとジャンは?」

「俺?えー……んー……俺も本は殆んど読まないからなぁ。本棚じゃなくて画材置けるスペース欲しいから、いっそベッドと衣装箪笥だけでいいかな。書き物も基本しないし」

「フェリは水彩画も描くだろう?机なくて平気か?」

「あ、そうか。んー、まぁ欲しくなったらその時作ってもらうってのはできる?」

「あぁ、勿論」

「じゃあ、それで」

「分かった。ジャンは?」

「俺も飛竜に乗るときに使うものを置ける所が欲しいな。ただ、本も読むから、そっちは小さくて構わないから本棚も欲しい」

「部屋の広さ的にも多分大丈夫だろ。そもそもが城とかの部屋に比べたら格段に狭いしな。ここは一応一般家庭の家なんで」

「すげー。一般家庭って単語がここまで似合わない面子そうそういないぜ」

「まぁ、ほぼ王族だしな。ていうか、平民俺だけだろ」

「まぁな」

「あ、今更かもしれんが、使用人とかいるか?」

「いらない。自分のことくらい自分でできる」

「あ、じゃあいいな。他に気になるとことかあるか?」

「庭はどうするんだ?」

「んー、今のところ空いた所に果樹を植えるくらいしか考えていないな。桃とか柚子とか。あと木苺は植えたい。どれも使い道があって楽しいしな」

「桃!いいね!」

「フェルナンドは桃好きだものな」

「うん」

「何か植えたいものはあるか?」

「マンゴーは植えられるか?」

「気候的に微妙だな。あれはもっと南の火の宗主国との境の地域で育てているから」

「バナナは?」

「バナナも同様って感じ」

「食べたくなったら俺が風竜で飛んで買ってくればよくないか?」

「それもそうですね」

「できたら庭にベンチが欲しいな。外で本読んだりしたい」

「あぁ。いいな。ベンチとベンチに高さを合わせたテーブルも作ろう。日除けと雨避けに厚地の布でちょっとした屋根を作ったらいいな」

「ふふっ。次来る時が楽しみだな」


ロヴィーノがとても楽しそうにしている。フェリやジャン、他の子供達も皆笑顔だ。クラウディオがそんな様子を見て、嬉しそうに優しく微笑んだ。

夜は皆で焼き肉を食べに行った。フェルナンドのリクエストだ。わいわい言いながら旨い肉を食べていると、ふと思いついたようにフリオが口を開いた。


「そういえば、ジャンのことは何て呼ぶんだ?」

「ジャン父上でいいんじゃないか?クラウディオ父上とジャン父上」

「長くないですか?それ」

「まぁ……マーサはスティーブンとクラークを父上と親父殿って呼んでるな。リチャードのことは子供達には父様って呼ばせてる」

「んー、親父殿か父様、いっそパパかな」

「……母上。俺達の年で父親をパパ呼びはキツいものがあります」

「え、そうか?」

「はい。その3つなら俺は父様がいいです」

「俺も父様に1票」

「俺もー」

「じゃあ、ジャンは父様と呼ぶってことで」

「父上。俺は?」

「フェルナンドは……おじいちゃんあたりでいいんじゃないか?」

「分かったー」


子供達の間で話がまとまった。父様と呼ばれたジャンが照れたように少し顔を赤らめた。誤魔化すようにエールを口に含む姿をクラウディオが生暖かい目で見ていた。フェリもなんだか微笑ましくてほんわかしてしまう。
そこそこ遅い時間まで食事や酒を楽しみ、子供達を領館へと送った。ジャンは今夜は1人でフェリの家に泊まることになった。
クラウディオと並んで歩いて、家の話やこれから家族でしたいことなどを話していたら、あっという間にクラウディオの家に着いた。
フェリは家に入るなり、軽く浮き上がってクラウディオの首に腕を絡めてキスをした。クラウディオもフェリを抱き締めて、情熱的に応えてくれる。
そのまま2人でキスをしながら寝室に移動して、ゆっくり互いの身体を貪りあった。
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