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15:穏やかな日々

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久しぶりに神子4人が集まったのに、話す内容がほぼ猥談ってどうなのだろうか。その時はまぁ楽しかったので気にならなかったが、冷静になって考えると、正直どうかと思う。

夜更けに、フェリはクラウディオが住む官舎の上空で、ふわふわと風に身を任せて浮いていた。クラウディオに夕方に一応連絡したけれど、忙しかったのか『すまん!あとでこっちから連絡する!』と言って通信が切れたのだ。待てど暮らせどクラウディオから連絡がこないので、仕方ないからフェリはクラウディオの家に行くことにした。
仕事の邪魔をするつもりはない。ただ、ちょっと顔が見たいだけだ。
ぼーっとしながら浮いていると、少し遠目にクラウディオの姿が見えた。フェリは風を操って、彼の前にふわりと降りた。


「あ!フェリ!」

「久しぶり。クラウディオ」

「久しぶり。あ、しまった。連絡まだしてなかったな……すまん」

「いいよ。忙しかったんだろ?ちょっと顔が見たかっただけだから。明日も仕事?」

「あぁ」

「なら俺は戻るよ。本当に顔が見たかっただけだから」

「すまない……4日後はまだこっちにいるのか?」

「ん?んー……今のところ10日くらいはいる予定」

「4日後は休みの予定なんだ。その日にデートしないか?」

「喜んで」

「じゃあ、4日後に。そうだな……博物館に行かないか?」

「昆虫展?」

「いや、それは終わってる。今は素人絵画展をやってるんだ」

「へぇ!面白そうだな。絵は観るのも好きなんだ」

「それなら博物館で決まりでいいかな?」

「うん。楽しみにしてる」

「俺も」


疲れた顔で嬉しそうに笑うクラウディオにものすごくキスがしたい。フェリはキョロキョロ周りを見回して、近くに人がいないことを確認すると、クラウディオに一瞬触れるだけのキスをした。クラウディオがキョトンと目を丸くした。その顔がなんだか可笑しくてフェリはクスクス笑いながら風を身にまとい、空中に浮き上がった。


「じゃあ4日後に。またな。仕事、無理はするなよ」

「あ、あぁ。ありがとう」

「おやすみ。クラウディオ」

「おやすみ。フェリ。会いに来てくれてありがとう」


フェリは空中に浮かんだまま、素早くクラウディオの頬に1度だけキスをして、家がある土竜の森目指して飛び上がった。できればクラウディオとイチャイチャしたかったが、予想以上にクラウディオが疲れた顔をしていたので諦めた。

人は誰しもが魔力を有している。魔力には属性があり、風の魔力を持つ者は風の民、水の魔力を持つ者は水の民、土の魔力を持つ者は土の民、火の魔力を持つ者は火の民と呼ばれている。
クラウディオは土の民だ。そしてフェリは風の神子である。風の神子は風の魔力の塊のようなものなので、風の民にとっては動く栄養剤というか、一緒に過ごすと疲労回復効果がある。もしクラウディオが風の民だったら、一緒に寝たりセックスをすれば疲れをとってやれるのだが、残念ながらクラウディオは土の民だ。風の神子とセックスをしても疲れはとれない。むしろ、より疲れるだけだ。フェリは少し残念に思いながら、サンガレアの空を飛んだ。
4日後のデートを楽しみに、それまではたまーにしか会わない神子達や孫達と過ごそう。そう決めた頃に自分の家に着いた。
暇だしマーサとセックスをしたいが、今はリーとお楽しみ中だろう。交ぜてもらいたい気もするが、多分マーサが嫌がる。
部屋の隅に積んでいる画材道具が目に入った。たまにはゆっくり絵を描くのもいいかもしれない。フェリは真っ白なキャンパスを取り出し、絵を描くのに必要なものを引っ張り出して、早速絵を描き始めた。描くものは務め中に見かけた綺麗な滝だ。フェリは風景画を描くことが多い。人物もたまには描くが、風景画がなんだか1番性に合っている。滝を見た記憶を頭の中に思い浮かべながら、絵筆を動かした。






ーーーーーー
朝日が昇る頃に、朝食を作る手伝いをする為に母屋の台所に行くと、マーサとリーがいた。他の人はまだ誰もいない。


「あら。おはよう、兄さん」

「おはよー!」

「おはよう。どうだった?リー」

「もう最っ高!ちょー気持ちよかった!」

「よかったな」

「うん!姉さんってば、流石土の神子って感じだよね!」

「ふっふっふ……照れます」

「マーサ上手いもんなー」

「ねー」


リーと話していると、チーファが台所にやってきた。とりあえずシモ系の話は止める。子供に聞かせる話ではない。4人で朝食の準備を本格的に始めた。フェリはリーが好きな豆のトマト煮込みを作る。リーはマーサから味噌汁の作り方を習いながら一緒に作っていた。チーファは野菜のお浸し等の副菜を手際よく作っている。
朝食の準備は、毎朝欠かさずに行われるリチャードを筆頭とする剣術馬鹿達の朝稽古が終わる時間までに済ませなければならない。4人で台所をバタバタしながら、朝食を急いで作った。

朝食を終え、片付けも終わると、今度は洗濯を手伝い、マーサの畑仕事を手伝い、マーサ指導で行われるリーや孫のアーダルベルトの勉強に付き合ってやったりと慌ただしく1日を過ごした。夜になると、自分の家で絵の続きを描く。マーサとセックスしてもいいが、どうせなら先にクラウディオとセックスしたい。それに、サンガレアに来ればマーサとはいつでもセックスできるが、クラウディオとはそうではないのだ。何せクラウディオには仕事がある。それに普通に人間だから睡眠は必要不可欠だ。多分、今日クラウディオの家に行ったら、寝てなければ家に入れてくれるだろう。そしてうっかり朝までセックスしちゃうのだ。昨日見た感じ、クラウディオはだいぶお疲れのようだった。今夜はゆっくり休んで欲しい。ならば、クラウディオの家に行かないのが正解だ。フェリは一時的にクラウディオのことを頭の中から閉め出して、目の前のキャンパスに意識を集中した。






ーーーーーー
約束のデートの日がきた。
フェリはリー達に冷やかされながら家を出て、街へと出かけた。待ち合わせの時間についてはクラウディオから昨日連絡が来たが、どこで落ち合うかは聞いていない。そのため、フェリは待ち合わせの時間より少し早めにクラウディオの家を訪ねた。いつもなら窓から入るが、折角のデートの日なのだ。玄関から入ってみよう。
フェリはクラウディオの自宅に着くと、玄関の呼び鈴を鳴らした。なんだか意味もなくドキドキする。ほんの少し待つと、玄関が開いた。整髪料をつけていない長い前髪を下ろしているクラウディオが出てきた。服は洒落たシャツを着ているから、多分身支度の途中なのだろう。


「あ、フェリ!」

「おはよう」

「おはよう。俺、時間間違えてたか?」

「時間はまだだよ。でも集合場所聞いてなくてさ」

「あ。あー……すまん。抜けてた」

「いいよ」

「とりあえず上がってくれ。すぐに支度を終わらせるから」

「うん。焦らなくていいぞ」

「あぁ」


居間の椅子に座って、バタバタと身支度をしに行くクラウディオを見送る。前回家に来たときよりも少し散らかっているから、きっとずっと忙しかったのだろう。タイミングが悪かったかな、と思っていると、髪型をいつも通りばっちり決めたクラウディオが戻ってきた。


「わるい。待たせたな」

「いいぞー」

「じゃあ行こうか」

「うん」


2人で家を出て、クラウディオが鍵を閉めると、手を握られた。そのままクラウディオが歩きだした。


「ク、クラウディオ。その、大丈夫なのか?」

「何が?」

「その……手」

「いや?」

「いやじゃないけど」

「じゃあ、いいな。もうどうせ噂になってるし、隠すことでもないから」

「……うん」


全然嫌ではないが、少し恥ずかしい。フェリは頬を染めてクラウディオと並んで歩いた。手を繋いで話ながら博物館へと向かう。クラウディオが楽しそうにフェリが不在の時のサンガレアの話をしてくれるのを、フェリは笑いながら聞いていた。
博物館での素人絵画展は中々面白く、欲しいなぁ、と思う絵が何枚かあった。昼食を近くの最近街で話題の店でとり、雑貨屋などを2人で見て回る。小さな可愛らしい雰囲気の雑貨屋で、クラウディオと色違いのお揃いのマグカップを買った。小さな可愛らしいヒヨコが描かれている。クラウディオがオレンジで、フェリが黄緑だ。市場で夕食の材料を買って、クラウディオの家に戻った。2人で並んで台所に立って、一緒に料理をする。今夜のメニューはカボチャのシチューと生ハムのサラダだ。美味しいパン屋でバゲットも買ってある。何ヵ月も離れていたとは思えないくらい、変に緊張したりなどせず、互いに自然に接することができるのが、なんだか照れくさく、同時に嬉しい。
出来上がった料理とワインを手に夕食を2人で楽しむ。会話は途切れることなく続き、フェリは楽しくてずっと笑っていた。

夕食の後片付けを終えると、一緒に風呂に入る。幹部用の官舎とはいえ、一応単身者向けの家なので風呂場はそんなに広くない。裸のまま2人で密着するようにして、時折ふざけながら互いの身体を洗いあう。身体の泡をお湯で流して、クラウディオの胸に背を預ける形で湯船に浸かった。
クラウディオがフェリのうなじにキスをしながら、悪戯に指でフェリの乳首を弄ってくる。じわじわ気持ちがいいし、興奮して、フェリのぺニスは勃起してしまう。フェリの尻にすっかり固く勃ち上がっているクラウディオのぺニスが当たっている。クラウディオがフェリの肩を舐めながら、フェリの勃起したぺニスに触れた。ゆるく握られ、先っぽを指でくりくりと優しく撫でられる。フェリははぁ、と熱い息を吐いた。


「ベッドに行く?」

「……うん」


クラウディオがフェリを抱えて立ち上がり、浴槽から出た。フェリは風を操って2人の身体を乾かした。横抱きにされているので、フェリはクラウディオの首に腕を巻きつけ、キスをしかけた。戯れるように何度も軽く唇に吸いつくと、クラウディオがクックッと笑いながら同じように応えてくれる。寝室に入ると、2人でベッドに潜りこんだ。じゃれるようなキスがドンドン深く、情熱的になっていく。互いの口内を舐めあい、舌を絡ませる。クラウディオがフェリの下腹部に触れ、ぺニスを軽く弄ったあと、女のソコに指を伸ばした。フェリのソコはすっかり濡れている。


「……すごいね。濡れてる」

「……うん」


クラウディオがぬるぬるとソコの入り口あたりを指で擦るので、フェリもクラウディオのぺニスに手を伸ばした。興奮しているのだろう。先走りがじんわり滲んで濡れているクラウディオのぺニスの先っぽを指先でくりくりと弄ってやる。


「そっちも濡れてる」

「久しぶりだからな」


2人で顔を見合わせて小さく笑いながら、互いに性器を手で弄り合う。勢いまかせの激しいセックスも好きだが、こういう、じゃれ合うようなのんびりしたセックスも楽しい。フェリとクラウディオは、笑いながらのんびり時間をかけて前戯を楽しんだ。
フェリは仰向けに寝転がったクラウディオに跨がって、自分でクラウディオの大きなぺニスを支えて自分のソコに押しつけ、ゆっくりと腰を下ろした。じわじわ膣内を熱くて固いぺニスで押し広げられる感覚が堪らない。クラウディオのぺニスを全部飲み込んだら、思わず熱い溜め息を吐いた。クラウディオと手を繋いで、そのままゆるゆると腰を動かす。じわじわ身体中に広がる快感が心地いい。
結局この日はお互い激しく動いたりせず、ゆったり時間をかけてセックスを楽しんだ。







ーーーーーー
ベッドでセックスを2回して、風呂場で1回した後、フェリはベッドでクラウディオに腕枕をしてもらっていた。ピッタリとクラウディオにくっつく。触れあう互いの裸の感触がなんだかすごく落ち着く。


「あ、そうだった」

「ん?」

「フェリ。渡すものがあるんだ」

「渡すもの?」

「ちょっと待っててくれ」


そう言ってクラウディオが起き上がった。何だろう、と不思議に思いながら、寝室から全裸のまま出ていくクラウディオを見送った。クラウディオはすぐに戻ってきた。起き上がってベッドの上に座るフェリの手を掴んで、フェリの掌に小さな硬いものを置いた。鍵だ。


「これ、俺の家の合鍵。持っててくれ」

「いいのか?」

「あぁ。いつ来てくれてもいいから」

「……ありがとう!」


フェリは嬉しくなってクラウディオに抱きついた。そのまま何度もクラウディオの顔中にキスをする。クラウディオが楽しそうに笑って受け入れてくれる。
貰ったばかりの合鍵を大事にハンカチで包んで、鞄に入れた。
その夜。フェリはクラウディオに抱き締められながら、幸せな気持ちで眠りについた。
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