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12:いざ、薬師街へ

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ブライアンは大荷物を抱えて、薬師街行きの馬車に揺られていた。
昨夜、カーティスから連絡蝶がきて、今日から一週間の休みに入ったと知らせがあった。タイミングよく、ブライアンも今日と明日は休みである。カーティスが疲れているかもしれないと思ったが、どうしてもカーティスに会いたくて、食事を作りに行くという名目でカーティスの家に行く。食材は勿論、調味料も持参してきた。最低限の調理器具はあると聞いているので、多分大丈夫だろう。
ブライアンはドキドキと胸を高鳴らせながら、馬車の窓の外に目を向けた。

薬事研究所の前で馬車が止まり、ブライアンは馬車から降りた。カーティスからの連絡蝶に、カーティスが住んでいる官舎までの地図が書かれていたので、それを見ながら歩き始める。
初めて訪れる薬師街は、静かで、ほんのり薬のような匂いが漂っていた。

官舎は魔術研究所の近くにあり、5分程で到着した。カーティスが住んでいるのは、官舎の2階の角部屋である。
ブライアンは緊張しながら階段を上り、カーティスの家の呼び鈴を押した。

すぐに玄関のドアが開いて、無精髭を生やしたカーティスが顔を出した。目の下には、うっすら隈があり、顔に疲れが滲んでいるが、カーティスはブライアンを見るなり、ふわっと嬉しそうに微笑んだ。


「いらっしゃい。久しぶり」

「久しぶり。ごめんね。疲れてる時に来ちゃって」

「いや。その……会えて嬉しい」

「……俺も」


なんとも照れくさい空気が流れた。お互いに照れながら、ブライアンはカーティスの家に入った。カーティスの家の中は薬の匂いしかしなかった。薬の材料と思われる植物が天井から釣り下がっていたり、謎の瓶がたくさん壁際の棚に置いてあった。蛇が入った瓶やムカデがみっちり詰め込んである瓶は見なかったことにした。
台所と風呂トイレ以外は一部屋しかないらしく、家の中に入るとすぐにベッドが目に入った。多分、少し前まで寝ていたのだろう。布団が乱れたベッドを見ると、ちょっとだけ腹の奥が甘く疼いた。

カーティスが疲れた顔でゆるく笑って口を開いた。


「薬臭いだろ?大丈夫?」

「平気。朝ご飯は食べた?」

「まだ。さっきまで寝てた」

「じゃあ、さくっとご飯作るね。出来上がるまで寝てなよ。出来たら起こすから」

「いいの?」

「勿論。君、すごく疲れた顔をしてるよ」

「あー……まぁ、最後の追い込みで暫く研究室に泊まり込んでたから」

「研究職って大変だね」

「そうでもないかな。好きでやってる事だし」


カーティスが小さく笑った。本当に自分の仕事が好きなのだろう。そんなところも格好いいと思う。
ブライアンはカーティスをベッドに寝かせると、早速台所へ移動した。狭い台所は埃被っていて、普段使っていないことが分かる。ブライアンは手早く簡単に掃除をしてから、疲れた身体にも優しい消化のいい料理を作り始めた。

野菜たっぷりのミネストローネとガーリックトースト、生ハムとアボカドのサラダが完成すると、ブライアンはベッドの中のカーティスの元へ向かった。
カーティスはぐっすり眠っていて、なんだか起こすのが少し可哀想になるくらい気持ちよさそうに寝ている。
いつも一つの三つ編みにしてある長い髪が枕に広がっている。カーティスの髪は癖がなくて、触れてみれば、サラサラの指通りだった。無精髭が生えたカーティスもワイルドで格好いい。
ブライアンはカーティスの寝顔を暫く眺めてから、カーティスを起こした。

カーティスがボサボサの頭のまま起き上がり、大きな欠伸をした。ブライアンはベッドに腰掛けて、なんとなくカーティスの長い髪に触れ、寝癖を直すように髪を手櫛で梳いた。


「すげーいい匂いがする」

「ミネストローネでよかった?」

「うん。好き」

「お昼には早いけど食べようか」

「うん」


カーティスが嬉しそうに笑った。カーティスの久しぶりの笑顔に、なんだか胸の奥がぽわっと温かくなる。
ブライアンは小さく笑って、カーティスの手を握って、ベッドからテーブルまでの短い距離を歩いた。

ブライアンは頬杖をついて、カーティスの食べっぷりを眺めて笑みを浮かべていた。今カーティスが食べているのは、ミネストローネおかわり3杯目である。沢山作ったつもりだったのだが、もう殆ど鍋に残っていない。フリンも気持ちよく食べてくれるが、カーティスも負けていない。嬉しそうなほわほわした空気を纏って、美味しそうに食べてくれる。作った甲斐があるというものだ。サラダもガーリックトーストもキレイに無くなっている。
結局、鍋いっぱいに作ったミネストローネは、殆どカーティスの胃袋におさまった。キレイに中身が無くなった鍋を見て、ブライアンは笑みを浮かべた。


「足りた?」

「うん。腹いっぱい。すげぇ美味かったです」

「それはよかった」

「疲れて研究所に食いに行くのも面倒だったから、マジでありがたいわー。ほんと、ありがと」

「いえいえ。材料はまだあるから、晩ご飯は違うものを作るよ」

「ありがとう。めちゃくちゃ嬉しい」


カーティスはほわっとした笑みを浮かべた。普段はもう少しキリッとしているので、なんだかリラックスしてゆるい雰囲気のカーティスが新鮮で可愛い。
ブライアンは上機嫌で、手早く鍋や食器類を片付けた。

改めてカーティスの部屋を見ると、ブライアンの部屋よりずっと物が多い。ベッドと小さめのテーブルがあるスペース以外は、殆ど箱や瓶、紙の山、本で埋まっている。蛇やムカデがみっちり詰まった瓶は全力で見ないフリをした。どちらかといえば虫は平気な方だが、瓶にみっちり詰まった状態は流石に直視するのがキツい。おそらく、あれも薬の材料になるのだろう。

ベッドに腰掛けたカーティスが、ゆるく笑って両手を広げた。


「ちょっと元気を補充させてよ」

「ははっ。いいよ」


ブライアンは笑ってカーティスのすぐ前に立った。カーティスがブライアンの腹に抱きついて、すーはーすーはーと深呼吸をし始めた。脇や首の後ろにカーティスから貰った練り香をつけているが、流石に腹にはつけていない。汗臭くないだろうかと心配になるが、ブライアンの腹にすりすりと懐いているカーティスが可愛くて、ブライアンは微笑みながらカーティスの頭をやんわりと撫で回した。


「……ブライアン」

「ん?」

「ごめん。その、ごく一部がですね、ものすごく元気になっちゃいました」

「疲れてるんじゃないの?」

「うー。いや、確かにまだ疲れは残ってるんだけど……したい、です」

「ふふっ。いいよ。どっちがいい?」

「どっちも好き」

「じゃあ、先に抱いていい?」

「うん」


ブライアンはカーティスの肩をやんわりと押して、カーティスをベッドに押し倒した。ふわっとカーティスの長い髪が広がり、なんだかすごく色っぽくてキレイだ。
ブライアンは目を細めて、カーティスに覆い被さり、カーティスの唇に触れるだけのキスをした。


「カーティス」

「ん」

「会いたかった」

「うん。俺も会いたかった」


間近にあるカーティスの瞳は、早くも熱が篭っている。するりとカーティスの腕がブライアンの首に絡みつき、カーティスがブライアンの下唇を優しく吸って、唇を触れ合わせたまま囁いた。


「もう我慢できない」

「俺もだよ」


ブライアンは早くもペニスが硬くなってもっこりしている自分の股間をブライアンの股間に擦り付けた。ズボン越しに硬いものが触れ合う。カーティスも、もう勃起していた。
ブライアンはカーティスと貪り合うようなキスをしながら、カーティスのシャツのボタンを外し始めた。

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