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俺を愛でてよマスター
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坂上彰は哀愁溢れる溜め息を吐いた。ポメラニアンの姿で。彰はポメガだ。疲れが溜まったり、ストレスが溜まると、人間の姿からポメラニアンに変化する。ポメラニアンになってしまうと、誰かにちやほや甘やかされまくらないと人間に戻れない。今までは、ポメラニアンになってしまうと、家族が全力で彰を撫でたり褒めたりして甘やかしてくれていたが、今はそんな優しい家族から離れて暮らしている。
彰は大学進学を機に、都会に出てきた。都会ならば、彰の運命のマスターがいる筈だと思ったからだ。マスターにちやほや甘やかしてもらえると、すぐに人間の姿に戻れるらしい。受験の時は頻繁にポメラニアンになってしまって、家族にちやほやされても中々人間の姿に戻れない時があった。疲れやストレスが溜まらないように普段から気をつけているが、疲れやストレスが溜まる度にポメラニアンになってしまうようじゃ、社会人になった時に、ストレス社会を生き抜けない。自分はまともに働くことができるのだろうかと、常に不安を抱えている。
彰は大学三回生だ。そろそろ卒論に本腰を入れなくてはいけないし、就活の準備もある。一応バイトもしているので、ここ最近、特に疲れ気味であった。気をつけていたつもりだったが、コンビニバイトの帰り道で、都会に出て初めてポメラニアンになってしまった。泣きたい。
彰が抜け殻になった服と鞄の前で、へにょっと凹んでいると、少し遠くから足音が聞こえてきた。
足音はどんどん近づいてくる。彰が項垂れていた顔を上げると、どこにでもいそうな普通の若いサラリーマンが近くに立っていた。サラリーマンが路上に落ちている服や彰を見て、小首を傾げた。
「君、もしかしてポメガ?」
彰はこくこくと頷いた。
サラリーマンが、『ほぁ――』と気の抜けた声を出した。
「本当にいるんだなぁ。ポメガって。初めて見た。もしかして、困ってる?」
彰はこくこくとまた頷いた。こんな路上でポメラニアンになってしまっては、仮に人間に戻っても、全裸の露出狂と間違われかねない。最悪、警察を呼ばれてしまうだろう。なにより、ポメラニアンの姿だと喋れない。小さな身体では、自分の服や鞄を持つこともできない。詰んでる感が半端ない。
彰がしょんぼりしているのが分かったのか、サラリーマンが何かを考えるかのように、自分の顎を指先で擦りながら、口を開いた。
「とりあえず、俺の家に来る? 天気予報が当たれば、多分そろそろ雨が降るし。あ、怪しい者じゃないから。俺の家に着いたら、名刺でも渡すよ。俺の家、すぐそこのアパートなんだ」
彰は一瞬悩んだが、サラリーマンの言葉にこくこくと首を上下に動かした。雨に降られてしまったら本当に困る。鞄の中には財布とかスマホとか推敲中のレポートとかが入っているし、何より濡れてしまうのが嫌だ。
サラリーマンが彰の前にしゃがみ、彰の前足の下辺りを握って、ぷら――んと彰を持ち上げた。
「おぉ。もふもふ。結構軽いなぁ。急いだ方がよさそうだから、抱っこで連れていくよ。ちゃんと服とかも持っていくな」
「わふっ(ありがとうございます)」
「よし。じゃあ、急いで帰ろう。雲がどんよりしてるし」
サラリーマンが彰を片手で抱っこして、彰の服や鞄を器用に片手で持ち、急ぎ足で歩き始めた。
サラリーマンの家は本当にすぐそこだった。5分もかからず到着したアパートは、木造で、見た感じかなり古かった。サラリーマンが軋む階段を上がり、ニ階の角部屋の前で一度彰を地面に下ろして、ガチャッと鍵を開けた。
再び片手で抱え上げられ、そのままサラリーマンの家の中に入った。サラリーマンの家の中は、めちゃくちゃ汚かった。キレイ好きな彰からすると信じられないくらい、サラリーマンの部屋は本当に汚かった。あちこちにゴミ袋が散乱しているし、脱ぎ散らかした服があっちこっちにある。ポメラニアンになって敏感になっている鼻が、靴下の匂いと思われるくっさい臭いを感知して、彰は思わず顔をくしゃっと歪めた。
足の踏み場もない床を、そこら辺に落ちているものを蹴りながら、サラリーマンが一人用のソファーの前に移動し、ソファーの上の雑誌等を適当に床に落として、ソファーの上に彰を下ろした。サラリーマンが電気をつけたので、サラリーマンを見上げれば、今時のこざっぱりした髪型の普通の顔立ちの男だった。
サラリーマンがスマートフォンを操作し始めたので、大人しくソファーの上で待っていると、サラリーマンがスマートフォンをローテーブルの上に置いた。
「ざっと調べてみたけど、なんか甘やかしたら元に戻れるらしいな。犬の撫で方も一応調べた。犬なんて触ったことねぇし。あ、名刺。ちょっと待ってろよ。……あったあった。ほい。俺は山下智。これでも一応銀行勤め」
「わふっ(ありがとうございます)」
「ポメガって初めて見たけど、結構可愛いなぁ。とりあえず撫でるわ。大丈夫なら一回、嫌なら二回鳴いてよ」
「わふっ(はい)」
「では、撫でます。おぉ。もふもふしてる」
「わふっ(大丈夫です)」
サラリーマン改め山下が、やんわりと彰のもふもふの首の周りや背中を撫で始めた。ぎこちない動きがいまいち微妙だが、贅沢は言うまい。これで元に戻れないと困る。彰は、『戻れ。戻れ。戻れ』と念じながら、大人しく山下に撫でられていた。
30分程、山下に撫でられていたが、彰は元には戻らなかった。やはり初対面の、しかも犬の扱いを分かっていないド素人では、難しいものがあるのだろう。山下が困ったように眉を下げた。
「戻らないなぁ」
「くぅーん(マジか……)」
2人揃って困っていると、ピンポンッとやけに短いインターホンの音が聞こえた。山下が彰から離れて、床に落ちているものを蹴りながら、玄関に向かっていった。山下とは違う男の声が聞こえてくると同時に、なんだかほんのりいい匂いがした。初めて嗅ぐ匂いだ。上手く形容できないが、なんだか嗅いでいるだけで、胸がほわほわしてくる。
彰はなんの匂いか気になって、おずおずとソファーから飛び下り、ゴミ袋や落ちている服をできるだけ避けながら、玄関へと向かった。トトトッと玄関に行くと、狭い玄関の所で、山下と少しぽちゃっとした体格の男が話していた。どうやら、いい匂いはぽちゃっとした男から香ってきている。彰はふんふん鼻を鳴らしながら、靴も脱いでいない男の足元に近寄り、ふんふん男の匂いを嗅いだ。
ぽちゃっとした男が彰を見下ろして、眉間に皺を寄せた。男の顔を見上げれば、全体的に丸っこい印象を受ける優しい顔立ちをしていた。
「おい。智。このアパート、ペット禁止だっただろ」
「ペットじゃねぇよ。さっき拾ったポメガ」
「ポメガ。へぇ。本当にいるんだな。……なんかすげぇ匂い嗅がれてんだけど」
「あ、裕二。試しに撫でてみてくれよ。俺が撫でても元に戻らなかったんだよな」
「別にいいけど。ほい。よぉしよしよしよし――」
「わふ――ん!」
裕二とかいうぽちゃっとした男がその場にしゃがみ、彰の首周りや背中をわしゃわしゃと撫で回した。裕二とやらの柔らかい手が触れた瞬間、不思議な多幸感が胸の中に広がった。彰が無意識のうちに尻尾をぶんぶん振っていると、すぐにぽんっと人間の姿に戻った。
「うぉっ!? ビックリした」
「あ、戻った」
「わぉ。本当にポメガだったんだ」
裕二とかいう男が驚いたように身体を引き、山下がのほほんと興味津々な様子で全裸の彰を見てきた。彰はなんとなく股間を隠しながら、じっと裕二とやらを見つめた。あのすごくいい匂いと、触れられた瞬間に感じた多幸感。きっと間違いない。目の前のぽちゃっとしている男が、彰のマスターだ。
彰は全裸のまま玄関に正座して、流れるような動きで裕二とやらに向かって土下座した。
「マスター! 俺を愛でてくださいっ!」
「はぁ!?」
「え? なに? 裕二がマスターなの?」
「はいっ! 間違いないです! 俺は坂上彰と申します。末永くよろしくお願いいたします!」
「え、いや。無理だから。僕はゲイだし、君はまるで好みじゃない」
「裕二は老け専のデブ専だもんな」
「デブと言うな。ぽっちゃりと言え。あと老け専じゃない。髭が似合う年上の優しいおじ様に甘やかされたいだけだ」
「はいはい。えーと、彰君だっけ? 君、ノンケ? ノンケなら裕二はやめておいた方がいいんじゃない?」
「ノンケですけど、裕二さん? は確かに俺のマスターなんです!!」
彰は顔を上げて、懇願するように、じっと裕二という男の顔を見つめた。彰はひょろりと背が高くて細身で、顔立ちは割と整っている方だ。スッキリとした涼やかな男前だと言われた事がある。じっと裕二という男を見つめていると、男が困ったように太めの眉を下げた。
「いや、いきなりマスターって言われてもなぁ」
「マスターの生活の邪魔はしません! 家事は一通りできます! 俺と一緒に暮らしてくださいっ! お願いしますっ! じゃないと、まともに働く事もできないんです!」
「え? なんで?」
「疲れやストレスが溜まるとポメラニアンになるんだってよ。ポメガって」
「へぇ。それは難儀な」
「で、ポメガったら、なんか甘やかしてやらないと元に戻れないんだと」
「ふぅん」
「マスターが甘やかしたら、すぐに元に戻るらしいぜ。ネットでざっと調べた」
「そうなの? 坂上君とやら」
「はいっ! ……俺は大学の三回生で、卒論とか就活の準備で今忙しくて……それに無事に就職できても、今のままじゃまともに働けないんです。……油断するとポメラニアンになっちゃうから……」
「そりゃまた気の毒な。でもなぁ。同居はちょっとなぁ……」
「マスターの生活の邪魔はしません! 恋人がいらっしゃる時は外に出てます! ポメラニアンになった時にだけ少し構ってもらえたら、すぐに人間の姿に戻れるんです! お願いします! 俺、俺、ちゃんと人並みに働きたいんです!」
ガンッと床に額をぶつけながら、彰は裕二とやらに再び土下座をした。暫しの沈黙の後で、裕二の溜め息が聞こえた。
「坂上君。とりあえず頭を上げて。君の事情はなんとなく分かったから。とりあえず、お試しで一ヶ月だけ僕の家に住んでいいよ。部屋は居間以外には一部屋しかないから、ソファーで寝てもらうことになるけどね」
「あ、ありがとうございますっ! 俺は何処ででも寝れるので大丈夫です!」
「あらそう」
「いいのか? 裕二」
「まぁ、この子のマスターらしいしねぇ。一ヶ月同居してみて嫌になったら出ていってもらうようにするし」
「ふぅん。まぁ、これも何かの縁ってやつかな。よかったな。彰君」
「はいっ! あっ! あの、山下さんもありがとうございました。山下さんに助けてもらわなかったら、マスターにも出会えませんでした。本当にありがとうございます。後日、改めてお礼をさせてください」
「いいよいいよ。気にしなくて。君、学生でしょ。学生がそんなに気を使わなくていいの。気持ちだけ受け取っておくよ。俺と裕二は幼馴染でさ。裕二の事でなんか悩んだら相談にのってやるよ。スマホは持ってるだろ? 連絡先交換しとこうぜ」
「ありがとうございます! 本当に助かります。……あの、マスター」
「ん? なに?」
「俺、マスターの邪魔にならないように頑張りますんで、よろしくお願いいたします」
「まぁ、程々でいいよ。今はフリーだし。君に手を出す事はないから安心してよ。僕の好みの対極に位置してるから」
「あ、はい。あの……マスターのお名前を聞いてもいいですか?」
「あぁ。遠山裕二。今年で28。仕事は在宅勤務のプログラマーやってる」
「あの、えっと……来週にでも引っ越していいですか?」
「あくまで一ヶ月のお試しだから、住んでるアパートとかは解約するなよ? あ、それとも実家住まい?」
「いえ。学生用のアパートを借りてます。実家は九州です」
「そりゃまた遠い所から来たね。来週の木曜なら1日フリーの予定だから、このアパートの前で集合ってことでいい?」
「はいっ! よろしくお願いいたします!」
「あ、うん。まぁ、よろしく。……ところでさ」
「はい?」
「いつまで全裸でいるのかな?」
「あっ! き、着替えてきます!」
彰は慌てて立ち上がり、バタバタと汚い部屋に戻って、山下がローテーブルの上に置いてくれていた服を着た。鞄からスマートフォンを取り出して、玄関に戻る。2人と連絡先を交換してから、彰は何度も2人に頭を下げて山下の家を出た。
小雨が降る中、自宅のアパートに向かって歩きながら、彰はドキドキと高鳴る胸を押さえた。まさか本当に自分のマスターが見つかるだなんて思っていなかった。奇跡が起きた。マスターはゲイらしいけど、別にマスターがゲイでも問題ない。ポメラニアンになってしまった時に、甘やかしてくれたら、すぐに人間の姿に戻ることができる。これできっと、彰も人並みに働いたりすることができるようになる。彰は嬉しくて嬉しくて、軽やかな足取りで自宅に戻り、早速お試し同居の準備を始めた。
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裕二は煩い目覚ましのアラームを消すと、のろのろと起き上がり、くわぁと大きな欠伸をしながら、ぼりぼりと髭が少し伸びている顎を掻いた。寝間着のジャージ姿のまま仕事部屋兼寝室を出れば、ふわっと味噌汁のいい香りがした。ペタペタと歩いて台所を覗けば、背がひょろりと高い細身のイケメンが、エプロンを着けて軽やかに包丁で野菜を切っていた。
細身のイケメンこと彰が、裕二に気づいて振り返り、ふわっと嬉しそうに笑った。笑うと少し幼くなる。まだ21歳だからだろう。
「おはようございます。マスター。今朝の味噌汁はジャガイモと玉ねぎです」
「いいねぇ」
「あと、今朝は鮭を焼きます。あとちょっとで焼き上がりますよ。お昼は親子丼を作っておくので、温めて食べてください」
「あ、うん」
裕二は料理をする彰の邪魔にならないように台所を出て、洗面台がある脱衣所に向かった。髭剃りで髭を剃り、顔を洗って居間に行けば、ローテーブルの上に美味しそうな匂いがする朝食が並んでいた。今朝は、ジャガイモと玉ねぎの味噌汁に、ほかほかのご飯、ふっくらとした形のいい卵焼き、ほうれん草のお浸し、焼いた鮭、デザートに牛乳寒天まである。裕二はぼりぼりと後頭部を掻きながら、どこか褒めて欲しそうな様子の彰を見て、口を開いた。
「朝からこんなに頑張らなくてもいいんだけど」
「えっ。嫌でしたか!?」
「いや、嫌ではないんだけど、大変でしょ」
「全然です! 料理は好きなんで!」
「あ、そう。……じゃあ、いただきます」
「はいっ! いただきます」
裕二は彰と向かい合って座り、早速味噌汁から食べ始めた。ジャガイモがほくほくしていて、玉ねぎの自然な甘さが美味しい。ちゃんといりこで出汁をとっているので、顆粒の出汁の素よりもずっと美味しい。実家から送られてきたという麦味噌も優しい味わいだ。卵焼きが甘いのには未だに慣れないが、デザートだと思って食べれば普通にイケる。ほうれん草のお浸しも少し薄味だが十分美味しいし、鮭の焼き加減も抜群である。程よい塩気がつやつやほかほかのご飯によく合う。デザートの牛乳寒天も甘さ控えめで、口がサッパリしていい。
裕二はガツガツと朝食を食べきると、彰が淹れてくれたお茶を飲んで、ふぅと満足気な溜め息を吐いた。彰は予想外に料理上手だ。一度聞いてみたら、子供の頃から母親と一緒に料理をしていたらしい。『今時、男でも家事全般できなきゃ駄目よ』と、小さな頃から、母親から家事を習っていたそうだ。彰と同居し始めて、そろそろ一週間になるが、早くも胃袋を掴まれかけている。普段は面倒なので、冷凍ミールやコンビニ弁当で済ませることが多い。作りたての美味しい食事を朝晩食べられて、昼も電子レンジでチンするだけで美味しいものが食べられる。彰は裕二の守備範囲外だから好きになる可能性はまるで無いが、こんなに美味しい料理が食べられるのなら、恋人ができるまでの間は同居してもいいかなぁと思うようになってきた。
裕二が残さず朝食を食べきり、『ごちそうさま』と手を合わせると、彰が嬉しそうに笑って、『お粗末様でした』と食器を片付け始めた。
「今日はバイトなんで、少し遅くなります。今夜は鰯を煮ます。昨日、スーパーでいいのを見つけたんです」
「お。いいね。鰯は久しぶりだわ」
「脂がのってそうだったから、多分美味しいですよ」
「そいつは楽しみだ」
裕二がゆるく笑うと、彰がパァッと嬉しそうに笑った。今は人間の姿だから尻尾はないのだが、なんだか尻尾を振っていそうな雰囲気である。彰は人間の姿の時も、どことなく犬っぽい気がする。ポメガだからだろうか。
手早く朝食の後片付けを終わらせて大学に行く彰を玄関で見送ると、裕二は仕事をすべく、自分の部屋に向かった。カタカタとキーボードを打ちながら、彰が裕二好みの男だったらよかったのになぁと思った。
夕方になり、ベランダに干していた洗濯物を取り込んでいると、玄関のドアが開く音がした。彰が帰ってきたようである。彰には合鍵を渡してある。洗濯籠を片手に居間に戻るが、中々彰がやって来ない。いつもなら、『ただいまです!』と元気よく居間に来るのだが。裕二は訝しく思って、玄関へと向かった。
玄関では、抜け殻になった服と鞄が落ちていて、くったりとした様子のポメラニアンが項垂れていた。どうやら、ポメガったらしい。毎日、朝早くから炊事や洗濯、掃除をしているので、きっと疲れが溜まっていたのだろう。大学の三回生でバイトもしていたら、唯でさえ忙しくて疲れやすい筈だ。
裕二は、心なしかしょんぼりしているポメラニアンの彰を抱き上げて、居間に戻った。ポメラニアンの彰のもふもふの背中をやんわりと撫でながら、裕二はちょっと彰を窘めた。
「坂上君さぁ。頑張り過ぎだよ。君。もっと手を抜きなよ」
「くぅーん」
「よしよしよしよし。わしゃわしゃわしゃわしゃ」
「わんっ!」
裕二がわしゃわしゃわしゃわしゃと彰を撫で回すと、彰が嬉しそうにぶんぶん尻尾を振り、次の瞬間、ぽんっと人間の姿に戻った。肋が浮きそうなくらいほっそりとした身体をしている。反射的に彰の股間を見れば、皮被りの体格の割に小ぶりなペニスとちょっと大きめな陰嚢がぶら下がっていた。
彰が慌てた様子で、あわあわと自分の股間を手で隠した。
「す、すいません! お手間をおかけして……き、着替えてきます!」
「あ、うん」
前の恋人と別れて5年、最後のワンナイトは2年前。裕二は不覚にも、彰の裸にちょっぴりムラッとしてしまった。裕二の好みは、髭が似合う年上のぽっちゃりさんだ。甘やかすより甘やかされたい派である。彰は裕二の好みと真逆なのに、ちょっぴりムラッとしてしまったのが、若干悔しい。ペニスは大きい方が好きだが、意外と無垢な色合いをしていた彰の小ぶりな皮被りペニスをちょっと可愛いと思ってしまった。もしかして、胃袋を掴まれかけているからだろうか。
裕二は彰から『ご飯できました』と声をかけられるまで、居間のソファーに座って、悶々と己の煩悩と闘っていた。
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彰と同居し始めて、もうすぐ一ヶ月になる。仕事の打ち合わせから家に帰ると、彰の姿が無かった。今日は土曜日で、バイトも休みだから家にいる筈である。買い物にでも行っているのかと思って、特に気にせず自室に入れば、自分の服が何故かベッドの枕の辺りにこんもりと積まれていた。訝しく思った裕二が服の山の中を覗けば、ポメラニアンの姿の彰が静かな寝息を立てて眠っていた。どうやら、裕二が不在の間に、またポメラニアンになってしまったらしい。最近、バイトのシフトが多かったようだし、複数のレポート提出が間近だと言っていた。それなのに、家事は一切手を抜かない。間違いなく疲れがピークに達したのだろう。ポメガについて、軽くインターネットで調べている。ポメガはマスターの服等の匂いでも落ち着くらしい。
すよすよと穏やかに寝ているポメラニアンの彰を見下ろし、裕二は小さく溜め息を吐いた。この頑張り過ぎる子を放っておけない気がしてきた。食事はいつも美味しいし、何かと気を使ってくれているのは分かっている。彰はまだ21歳だ。まだまだ遊びたい年頃だろうに、友達と遊ぶこともせず、いつも家の事をしたり、勉強したりしている。チラッと聞いたのだが、どうやら彰は同じゼミの人達と距離を置いているようだ。ポメガだと知られたくないらしい。あまり深く突っ込まなかったが、子供の頃に、ポメガだということで周囲の子供達から酷く揶揄われたり、苛められていたようである。裕二は眠るポメラニアン姿の彰のふわふわした毛並みの背中をやんわりと撫でながら、そろそろ腹を括ろうかと思った。
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彰がふと目覚めると、裕二のいい匂いに包まれていた。身体は人間に戻っているようだが、それでも裕二の匂いはいい匂いだと思う。ふわふわと心地よく微睡んでいると、裕二の声が彰の名前を呼んだ。目を開ければ、裕二がすぐ目の前にいた。彰が驚いて目を見開くと、裕二がくしゃっと彰の髪を掻き混ぜるように頭を撫でた。嬉しくて嬉しくて、思わずだらしなく笑ってしまう。人間の姿の時でも、裕二に撫でてもらえると素直に嬉しい。裕二はいつもすごく美味しそうに彰が作った料理を食べてくれるし、ポメラニアンになった時は、『頑張り過ぎ』と言いながら、優しく撫でてくれる。マスターだからなのかは知らないが、彰はすぐに裕二のことが大好きになった。
裕二の体温や匂いを感じる距離に、彰が嬉しくてへらっと笑うと、裕二がゆるく笑って、口を開いた。
「坂上君。いっそ僕の恋人になる?」
「なります!」
「わぁ。すごい食い気味。君はさぁ、なんか放っておけないんだよね。ちょっとでも目を離すと頑張り過ぎるし」
「えっと、すいません……」
「謝らなくていいよ。頑張り屋なのは美徳でもあるから。でも、君の場合は欠点でもあるかな。腹を括って、この先ずっと君と一緒にいるよ。これも何かの縁だしね」
「……本当にいいんですか?」
「いいよ。君がいいならね。恋人になるのは、君とセックスがしたいから。君がいるのに他の男とどうこうなるのも気が引けてねぇ」
「あ、あの! む、無理しなくていいです。恋人ができたら、俺、邪魔にならないようにしますし」
「ほら。そういうところ。君は気を使い過ぎだよ。だから、放っておけないんだよなぁ」
「……えっと……」
「もう胃袋も掴まれちゃってるしね。君は君で責任をとるということで。今日から君は僕の恋人だ。嫌かな?」
「嫌じゃないです!!」
「あ、よかった。……って、おいおい。泣かないでくれよ」
「だ、だって……うれしい……」
「しょうがない子だなぁ」
嬉しくて、嬉しくて、勝手に涙が溢れてくる。裕二が優しく笑って、彰の身体をぎゅっと抱きしめてくれた。裕二の体温と匂いに包まれて、もっと嬉しくなって、涙がどんどん溢れ出てくる。彰は泣き疲れるまで、裕二に優しく抱きしめられていた。
泣き疲れた彰が再びポメラニアンになると、裕二が優しく撫で回してくれた。すぐに、ぽんっと人間の姿に戻れた。彰は自分の短小包茎なペニスを裕二に見られるのが恥ずかしくて、慌てて股間を手で隠した。
全裸であわあわしている彰を眺めて、裕二がにっこりと笑った。
「すっぽんぽんだし、セックスしとく?」
「へぁ!?」
「ていうか、したい。ちょっと準備してくるから、そのまま待っててよ」
「え? 準備? なんの?」
「深く突っ込むなよ。男には色々あるんだよ。大人しく此処で待ってなさい。覗きに来たらお尻ペンペンの刑だから」
「あ、はい」
裕二がどっこらしょっと起き上がり、一緒に寝転がっていたベッドから下りて、部屋から出ていった。彰は童貞である。それなりに告白されることもあるが、ポメガだと家族以外には知られたくなくて、いつも断っていた。小学生の頃、ポメガだということを理由に苛められていた。だから、中学は地元の中学校ではなく、私立の中高一貫校に通って、親しい友達もつくらず、ずっと1人でいた。いきなりの展開に、頭がついてこない。裕二のことは大好きだ。マスターだからなのか、裕二だからなのか。多分、両方だと思う。裕二は本当に優しい。ポメガの彰を馬鹿にせず、いつも気遣って優しくしてくれる。
彰は裕二が戻ってくるまで、嬉しくて、またちょっとだけ泣いた。
小一時間程で、裕二が部屋に戻ってきた。トランクス一枚の姿の裕二の身体は、全体的にぽちゃっとしていて、丸っこい。なんだか柔らかそうな身体をしている。彰は急速に顔が熱くなるのを感じた。本当にセックスをするのだろうか。セックスなんて、彰にとっては未知の世界である。ゲイビデオなるものがあることくらいは知っているが、観たことはない。男同士だとアナルを使うのは流石に知っているが、具体的にどうやってセックスをするのだろうか。
なんとなく彰がベッドのシーツの上で正座をしていると、裕二がぽすんとベッドに腰掛け、トランクスを脱ぎ捨てた。
彰がドキドキしながら正座をしていると、全裸になった裕二がころんと仰向けに寝転がった。裕二が楽しそうに笑いながら、彰を手招きした。
「おいで」
「はいっ!」
彰はいそいそと寝転がり、裕二と向き合った。裕二のベッドはセミダブルで、男2人だと少し狭い。裕二の温かいぽにゃっとした肌が、直に彰の肌に当たっている。彰はぶわっと顔が熱くなった。耳まで熱い気がする。顔が間近にある裕二が、クックッと楽しそうに笑った。
「初めて?」
「は、はい」
「じゃあ、今日は僕がリードしよう。キスをしようか」
「ふぁ、ふぁい!」
「そんなに緊張しないで。よしよし。あ、キスをする時は鼻で息するのは知ってる?」
「あ、そうなんですね」
「うん。じゃあ、キスするね」
裕二の顔が更に近づいてきて、鼻先をすりすりと彰の鼻先に擦りつけた後、唇にむにっと柔らかい感触がして、ちゅくっと優しく下唇を吸われた。ドキドキして溜まらない。男相手なのに、彰のペニスは早くも勃起してしまった。恥ずかしくて、裕二にバレないように腰を引くと、裕二のぷにっと柔らかい手が彰の腰に触れ、ぐいっと引き寄せられた。裕二の下腹部辺りに自分の勃起したペニスが当たってしまう。彰がキスをされながら、あわあわしていると、唇を触れ合わせたまま、裕二が楽しそうに笑った。
「もう勃ってる。若いねぇ」
「すっ、すいません」
「謝らなくていいよ。僕も勃ってる。ほら」
「わ、わ、わ……」
裕二が腰をくねらせて、彰のペニスに自分のペニスを擦りつけた。ペニスに硬くて熱いものが触れた瞬間、彰はじわっとした微かな快感と興奮で、ぴゅっと少量の精液を吐き出した。裕二がキョトンとした後、優し気な笑みを浮かべた。
「ちょっと出ちゃった?」
「すっ、すいません!!」
「大丈夫。大丈夫。一緒に気持ちよくなろう。そんなに緊張しなくていいからさ。僕の乳首を舐めてくれる?」
「は、はいっ!」
裕二がころんと寝返りをうって仰向けになったので、彰はドキドキしながら、起き上がって裕二の身体を跨いだ。
裕二が柔らかそうな少し弛んだ胸肉を、むにぃっと両手で寄せた。アダルトビデオで観た貧乳の女の子よりもおっぱいがある気がする。裕二の乳首は茶褐色で、ぷるんっと女の乳首みたいに肥大していた。彰はごくっと生唾を飲み込んでから、おずおずと裕二の胸の谷間に顔を擦りつけ、すぅっと匂いを嗅いだ。石鹸の匂いに混じって、ほんのり裕二の体臭がする。落ち着く匂いと柔らかな肌の感触と温もりが心地よい。胸の谷間にすりすりと顔を擦りつけてから、彰はベロッと裕二の乳首を舐めてみた。ぷるんっとした意外と硬い乳首の感触が舌に楽しい。ペロペロと乳首全体を舐めていると、裕二が自分の胸肉から手を離し、彰の頭をやんわりと撫でた。
「乳首の先っぽだけチロチロ舐めて。……あぁっ、そう、上手。はぁ……っ、吸って、んっ! いいよ。上手いね」
「んっ!」
裕二に言われるがままに乳頭をチロチロ舌先で舐め、ぷっくりした乳首を咥えてちゅくちゅく吸うと、裕二が褒めるように彰の頭を撫でてくれた。彰は嬉しくなって、反対側の乳首も同じように舐めて吸った。なんだか楽しいし、興奮する。ちゅぽっと咥えていた乳首から口を離し、少し顔を上げると、彰の唾液で濡れて微かにてらてら光っている裕二の乳首が見えた。なんだかエロい。
彰がおずおずと裕二の柔らかい少し弛んだ胸肉をふにふに揉みながら、裕二の下唇にやんわりと吸いつくと、間近にある裕二の丸っこい目が楽しそうに細まり、彰の上唇を優しく吸ってくれた。指でクリクリと乳首を弄りながら、またキスをする。何度もお互いの唇を吸い合っていると、ぬるりと裕二の舌が彰の口内に入ってきた。裕二の舌が歯列をなぞり、歯の裏側を擽って、上顎をねっとりと舐めてくる。上顎を舐められると、腰の辺りがぞわぞわして、なんだか気持ちがいい。彰は裕二の真似をして、裕二の口内に舌を入れて、おずおずと裕二の口内を舐め回した。裕二がぬるりと舌を絡めてきて、そのまま舌同士を擦り合わせるように、ゆるゆると舌を絡め合う。これも気持ちがいい。彰がうっとりしていると、キスをしながら裕二が彰の頭を撫でてくれた。嬉しくて、幸福感が胸に溢れてきて、本当に堪らない。
唇を離した裕二が、彰の肉付きが薄い尻をやんわりと撫でた。
「流石に最初からちんこを舐めるのはハードルが高いだろうから、今回は無しでいこうかね。仰向けに寝転がってごらん」
「はい」
彰が言われた通りに覆い被さっていた裕二から身体を離し、コロンと裕二のすぐ隣に仰向けに寝転がると、裕二が身体を起こした。彰が裕二に言われてベッドの真ん中に移動すると、裕二がベッドから下りて、パソコン等が置いてある机の引き出しから、何かのボトルと小さめの箱を取り出した。裕二が箱のパッケージを彰に見せて、にっこり笑った。
「コンドーム。着けてあげる」
「え、あ、は、はいっ!」
コンドームの着け方なんて、ふわっとしか知らない。彰は寝転がったまま肘をついて少しだけ上体を上げると、裕二が箱からコンドームを取り出すところをガン見した。裕二がピッとコンドームの袋を破り、中からアダルトビデオでしか見たことがないコンドームを取り出して、何故かふっとコンドームに息を吹きかけた。彰の短小包茎ペニスに、裕二がコンドームを被せ、そのまま顔を彰の股間に伏せて、唇でコンドームを下げ始めた。ペニスにほんのり擦れるぬるついたコンドームの感触と熱い裕二の口内の感触が酷く気持ちよくて、彰はくぅんと堪らず声をもらした。
ペニスの根元まで、すっぽり裕二の口内におさまったかと思えば、裕二がゆっくりと彰のペニスを唇で扱くようにしながら頭を上げて、コンドームを着けた裕二のペニスから口を離した。裕二が今度は何かのボトルを見せてきた。
「これはローションね。男同士の必需品。一応中に仕込んできたけど、念の為足しておくよ」
「は、はい」
裕二が楽しそうに笑って、ボトルの口を開けて、ローションを自分の掌に垂らした。コンドームを着けた彰のペニスにローションを馴染ませるように、ペニスをぬるぬるの手で撫で回される。それだけでもう射精しちゃいそうになるが、彰は下腹部に力を入れて、ぐっと堪えた。
彰の股間に跨った裕二が、にまにま笑いながら、勃起している自分のペニスを見せつけるように手で擦った。裕二のペニスは彰のものよりも大きくて、皮もしっかり剥けていた。なんだか不思議とエロい。
「今すぐ挿れたいから、前戯を楽しむのは次回ね。次はもっと色々教えてあげるよ。ふはっ。それじゃあ、入りまーす」
「うっ、あぁっ……!!」
ペニスの先っぽが熱くぬるついたものに触れたかと思えば、裕二が腰を下ろし始めた。キツい締めつけのところを通り過ぎれば、熱くて柔らかいものにペニスが包まれていく。いっそ射精しちゃいそうなくらい気持ちがいい。
彰のペニスをアナルで飲み込んだ裕二が、にまにまと楽しそうに笑った。
「はっ……っあぁっ……あ――、かったい。ふふっ。いいねいいね。ちょうど当たってる」
「あ、当たる?」
「僕の前立腺に君のちんこがいい感じに当たってるんだよ」
「ぜんりつせん」
「詳しい事は終わった後で。動くよ」
「うぁっ……わ、わ、わ、あぁっ……」
裕二が後ろ手に両手をつき、膝を立てて、両足を大きく開いた。そのまま、小刻みに上下に動き始めた。ペニスが熱くて柔らかいものに擦れて、アナルのキツい締めつけのところがキツく彰のペニスを扱いてくる。気持ちよくて、気持ちよくて、本当に堪らない。裕二を見れば、裕二が動く度に、ぶらんぶらんと裕二の大きなペニスが上下に揺れている。なんだかいやらしい。
裕二が腰をくねらせると、ペニスに触れている熱い腸壁にペニスが揉みこまれるような感じがして、気持ちよ過ぎて堪らず喘いでしまう。
裕二も気持ちよさそうな顔で低く喘ぎながら、片手で自分のぷっくりとした乳首を引っ張った。途端に、キュッと更にアナルが締まる。もう込み上げてくる射精感に抗えそうにない。彰は裏返った声で裕二の名前を呼びながら、コンドームの中に精液をぶち撒けた。
はっ、はっ、と荒い息を吐いて、快感の余韻に浸っていると、裕二がゆっくりと腰を上げて、半分萎えてる彰のペニスをアナルから引き抜いた。裕二がゆっくりと彰のペニスからコンドームを引き抜いた。コンドームの先っぽの方に、白い精液が溜まっている。裕二が上を向いて、精液入りのコンドームを口の上で逆さにして、垂れ落ちていく彰の精液を赤い舌で受け止めながら飲み始めた。あまりのいやらしさに頭がクラクラする。彰のペニスは再び熱く硬くなった。
コンドームを適当にシーツの上に放り投げた裕二が、再び完全に勃起している彰のペニスを見て、嬉しそうに笑った。
「若いね。今度はバックで挿れてみる?」
「い、挿れたいです」
「いいよ。コンドームを着けてあげる」
さっきと同じようにコンドームを着けてもらったら、彰は身体を起こして、四つん這いになった裕二のすぐ後ろに膝立ちになった。少し弛んでいる肉付きがいい尻肉に触れると、ふにっと柔らかくて、いつまでも揉んでいたい気分になる。裕二の尻肉を両手で掴んで、アナル周りを広げると、ローションで濡れたアナルが丸見えになった。裕二のアナルはぷっくりとしていて、アナルの皺が細かくなったり、広がったりしながら、ひくひくと物欲しげに収縮している。アナルの周りにはちょろっと縮れた短い毛が生えていた。ローションで肌に貼りついているケツ毛すら、酷くいやらしいものに見える。
彰はごくっと生唾を飲み込むと、自分のペニスを片手で掴み、片手で裕二のアナル周りの尻肉を広げ、ひくひくしている赤黒い裕二のアナルにペニスの先っぽを押しつけた。ゆっくりと腰を動かしていけば、どんどん裕二のアナルの中にペニスが飲み込まれていく。両手で尻肉を掴み、裕二のアナルがよく見えるようにしながら、ゆっくりと腰を引いてペニスを引き抜けば、裕二のアナルの縁が微かに赤く捲れ、腰を突き出していけば、アナルの中にペニスが飲み込まれていく。気持ちがよくて、興奮して、頭の中が沸騰してしまいそうだ。彰はすぐに我慢できなくなって、唯本能が赴くままに、激しく小刻みに腰を振り始めた。下腹部を裕二のむっちりとした尻に打ちつける度に、ぶるんぶるんと裕二の尻肉が揺れる。彰はぷにっとした裕二の腰を両手で掴んで、無我夢中で腰を振りまくった。
「あっあっあっ! すげぇ! いいっ! 上手っ! もっと! もっと突いてっ! あぁぁぁぁっ! 堪んねえ!!」
「はっ、はっ、はっ、マスター! マスター! 気持ちいいよぉ!」
「ははっ! 僕もっ! あぁぁぁぁっ! いいっ! いいっ! いくいくいくいくぅ!!」
「あぁっ!! そんなっ、締めないでっ! 出ちゃうっ! 出ちゃうっ!」
「あ、あ、あぁぁぁぁっ!!」
「んあぁぁっ!」
一際強くペニスをアナルで締めつけられて、彰は我慢の限界がきて、またコンドームの中に射精した。
はっ、はっ、はっ、と荒い息を吐きながら、汗でしっとりしている裕二の柔らかい尻肉を揉んでいると、裕二が顔だけで振り返った。
「まだできるだろ?」
「したいです」
「いい子。ちょっと抜いて」
「はい」
彰はゆっくりと腰を引いて、裕二のアナルからペニスを引き抜いた。裕二が身体ごと振り返り、彰のペニスからコンドームを外して、再びコンドームに溜まっている彰の精液を飲んだ。最高にいやらしくて、本当に堪らない。
膝立ちの彰の股間に裕二が顔を寄せ、ゆるく勃起したままの彰のペニスの裏筋をべろぉっと舐めた。射精したばかりで敏感になっているペニスには、少々刺激が強過ぎる。彰が堪らず喘ぐと、裕二が彰の陰嚢まで舐め始めた。丁寧に丁寧に陰嚢もペニスも舐められて、彰は我慢しきれずに、裕二の顔に精液を吐き出してしまった。裕二の優しそうな顔が白い精液で彩られ、一気に卑猥になってしまう。彰はあわあわしながらも、興奮し過ぎて、いっそ鼻血が出そうな感じだった。
裕二が鼻筋や唇に垂れている彰の精液を指で掬い取って、彰の精液付きの自分の指を口に含んだ。裕二の唾液で濡れた指で、唇をなぞられ、反射的に裕二の指を咥えると、裕二が楽しそうに笑った。裕二の指は、なんだかエグミのある形容しがたい味がした。多分、彰の精液の味なんだと思う。
裕二が彰の口内の上顎を指の腹で優しくすりすりしてから、彰の口から指を引き抜いた。裕二も膝立ちになり、抱きしめられながら、何度も互いの唇を吸い合って、舌を絡め合う。興奮がおさまる気配がまるでない。彰は唇を触れ合わせたまま、裕二にねだった。
「あの、もう一回」
「ふはっ! いいよ。おいで」
裕二が楽しそうに笑って、顔を離し、わしゃわしゃと彰の頭を撫で回した。裕二がまた彰のペニスにコンドームを着けた後、ころんと仰向けに寝転がり、自分の膝裏を持って、両足を広げ、少しだけ腰を浮かせた。彰は裕二の足の間を陣取り、コンドームを着けたペニスを片手で掴んで、再び裕二のアナルの中にペニスを押し込んだ。入り口辺りのキツい締めつけも、柔らかく絡みつく熱い腸壁の感触も、気持ちがよくて、本当に堪らない。
彰は上体を伏せて、柔らかい裕二の胸肉に顔を埋めながら、短いストロークで腰をガンガン激しく動かし始めた。多分、腹側の方を突くと、裕二の『前立腺』とやらにペニスが当たっていた気がする。そこを突くと、裕二のアナルがきゅっと更にキツく締まる。彰は裕二のぷっくりとした乳首を咥えて、ちゅくちゅく乳首を吸いながら、腹側を擦るように意識をして、がむしゃらに腰を振りまくった。
裕二が大きく喘ぎながら、彰の頭を両手で抱きしめて、彰の腰に両足を絡めた。胸の奥がキュンキュンと高鳴って、汗で濡れた肌が触れ合って、ペニスをアナルで締めつけられて、彰は『あぁ。今、マスターと一つになってる』と感動しながら、めちゃくちゃに激しく腰を振りまくり、大きく気持ちよさそうに喘ぐ裕二に頭を優しく撫でられながら、またコンドームの中に精液をぶち撒けた。
ーーーーーー
彰は玄関のドアから家の中に入るなり、ほっと気が抜けて、ぽんっとポメラニアンの姿になった。無事に大学を卒業して、小さな不動産会社で働き始めて3年が経つ。仕事には慣れてきたが、どうしても疲れるし、ストレスも溜まる。ここ最近は特に、仕事を任されることが増えて、家に帰るなり気が抜けてポメラニアンになってしまう。
彰はもぞもぞと脱げたスーツの中から抜け出して、トトトッと裕二の部屋へと向かった。
裕二の部屋のドアは、いつでも開けっ放しにしてくれている。ポメラニアンの姿では、ドアを開けることができないので、裕二がいつもドアを開けてくれるようになった。裕二の部屋に入り、パソコンを使っている裕二の足元に行くと、裕二がキーボードを打っていた手を止め、彰を見下ろした。
「おかえり。またポメガったかぁ」
「わふっ(はい)」
「君の事だから、また頑張り過ぎたんでしょ。ほら。おいで」
「わんっ! (はい!)」
裕二が手を伸ばして、足元にいる彰を抱き上げて、膝の上に乗せてくれた。裕二が優しい笑みを浮かべながら、わしゃわしゃと優しくポメラニアンの姿の彰を撫で回してくれる。裕二の優しい手の感触と胸に広がる多幸感にうっとりしていると、ぽんっと人間の姿に戻った。彰は慌てて裕二の膝の上からどいた。
「すいません。マスター。重かったですよね」
「いいよいいよ。君、ほっそいし。そんなに重くないよ。ほら。ただいまのちゅーは?」
「はいっ!」
裕二がおっとりと笑って、彰に向かって両手を広げた。彰は嬉しくてだらしなく頬をゆるめながら、裕二に抱きつき、ちゅくっと裕二の唇に吸いついた。満足するまで何度もお互いの唇を吸い合って、『ただいまのちゅー』は完了である。幸せ過ぎて、いっそ怖い。
彰が裕二の柔らかい頬にすりすりと頬擦りしていると、裕二が彰の頭を優しく撫でてくれた。
「今夜の晩ご飯は何かな」
「イカと里芋の煮物がメインです。あとは胡瓜の酢の物と牛蒡サラダと……茸の味噌汁にします」
「いいねぇ。楽しみだ」
「気合を入れて作りますっ!」
「うん。お願いします。あ、智が明後日、ご飯食べに来るって」
「あ、山下さんから俺の方にも連絡きてました。お酒に合いそうなものを作りますね!」
「よろしく。智もすっかり君に胃袋掴まれてるからねぇ」
「へへっ。嬉しいです」
彰は照れ臭くて笑った。山下とも交流があり、裕二と恋人になった後から、たまに一緒に飲み会をするようになった。山下も美味しそうにもりもりと沢山彰の手料理を食べてくれるので、とても作り甲斐がある。
山下が来る時に何を作るか考える前に、まずは今夜の晩ご飯の支度である。彰は名残惜しく裕二から身体を離すと、裕二の頬にキスをしてから、まずは脱げたスーツを回収して服を着るべく、裕二の部屋を出た。
台所で手早く料理をしながら、今夜も美味しそうに食べてくれる裕二の笑顔を頭に思い浮かべて、彰はゆるく口角を上げた。
彰のマスターは、とっても優しくて、とっても格好いいのである。セックスの時は未だにリードされているが、裕二に頭をよしよし撫でられたりするのが大好きなので、これでいいかなぁと思っている。
彰は気合を入れて作った料理が完成すると、裕二を呼びに行った。二人で向かい合って座り、『いただきます』をしたら、楽しい夕食の始まりである。
彰は、美味しそうにもりもり食べてくれる裕二を眺めながら、幸せだなぁと微笑んだ。
(おしまい)
彰は大学進学を機に、都会に出てきた。都会ならば、彰の運命のマスターがいる筈だと思ったからだ。マスターにちやほや甘やかしてもらえると、すぐに人間の姿に戻れるらしい。受験の時は頻繁にポメラニアンになってしまって、家族にちやほやされても中々人間の姿に戻れない時があった。疲れやストレスが溜まらないように普段から気をつけているが、疲れやストレスが溜まる度にポメラニアンになってしまうようじゃ、社会人になった時に、ストレス社会を生き抜けない。自分はまともに働くことができるのだろうかと、常に不安を抱えている。
彰は大学三回生だ。そろそろ卒論に本腰を入れなくてはいけないし、就活の準備もある。一応バイトもしているので、ここ最近、特に疲れ気味であった。気をつけていたつもりだったが、コンビニバイトの帰り道で、都会に出て初めてポメラニアンになってしまった。泣きたい。
彰が抜け殻になった服と鞄の前で、へにょっと凹んでいると、少し遠くから足音が聞こえてきた。
足音はどんどん近づいてくる。彰が項垂れていた顔を上げると、どこにでもいそうな普通の若いサラリーマンが近くに立っていた。サラリーマンが路上に落ちている服や彰を見て、小首を傾げた。
「君、もしかしてポメガ?」
彰はこくこくと頷いた。
サラリーマンが、『ほぁ――』と気の抜けた声を出した。
「本当にいるんだなぁ。ポメガって。初めて見た。もしかして、困ってる?」
彰はこくこくとまた頷いた。こんな路上でポメラニアンになってしまっては、仮に人間に戻っても、全裸の露出狂と間違われかねない。最悪、警察を呼ばれてしまうだろう。なにより、ポメラニアンの姿だと喋れない。小さな身体では、自分の服や鞄を持つこともできない。詰んでる感が半端ない。
彰がしょんぼりしているのが分かったのか、サラリーマンが何かを考えるかのように、自分の顎を指先で擦りながら、口を開いた。
「とりあえず、俺の家に来る? 天気予報が当たれば、多分そろそろ雨が降るし。あ、怪しい者じゃないから。俺の家に着いたら、名刺でも渡すよ。俺の家、すぐそこのアパートなんだ」
彰は一瞬悩んだが、サラリーマンの言葉にこくこくと首を上下に動かした。雨に降られてしまったら本当に困る。鞄の中には財布とかスマホとか推敲中のレポートとかが入っているし、何より濡れてしまうのが嫌だ。
サラリーマンが彰の前にしゃがみ、彰の前足の下辺りを握って、ぷら――んと彰を持ち上げた。
「おぉ。もふもふ。結構軽いなぁ。急いだ方がよさそうだから、抱っこで連れていくよ。ちゃんと服とかも持っていくな」
「わふっ(ありがとうございます)」
「よし。じゃあ、急いで帰ろう。雲がどんよりしてるし」
サラリーマンが彰を片手で抱っこして、彰の服や鞄を器用に片手で持ち、急ぎ足で歩き始めた。
サラリーマンの家は本当にすぐそこだった。5分もかからず到着したアパートは、木造で、見た感じかなり古かった。サラリーマンが軋む階段を上がり、ニ階の角部屋の前で一度彰を地面に下ろして、ガチャッと鍵を開けた。
再び片手で抱え上げられ、そのままサラリーマンの家の中に入った。サラリーマンの家の中は、めちゃくちゃ汚かった。キレイ好きな彰からすると信じられないくらい、サラリーマンの部屋は本当に汚かった。あちこちにゴミ袋が散乱しているし、脱ぎ散らかした服があっちこっちにある。ポメラニアンになって敏感になっている鼻が、靴下の匂いと思われるくっさい臭いを感知して、彰は思わず顔をくしゃっと歪めた。
足の踏み場もない床を、そこら辺に落ちているものを蹴りながら、サラリーマンが一人用のソファーの前に移動し、ソファーの上の雑誌等を適当に床に落として、ソファーの上に彰を下ろした。サラリーマンが電気をつけたので、サラリーマンを見上げれば、今時のこざっぱりした髪型の普通の顔立ちの男だった。
サラリーマンがスマートフォンを操作し始めたので、大人しくソファーの上で待っていると、サラリーマンがスマートフォンをローテーブルの上に置いた。
「ざっと調べてみたけど、なんか甘やかしたら元に戻れるらしいな。犬の撫で方も一応調べた。犬なんて触ったことねぇし。あ、名刺。ちょっと待ってろよ。……あったあった。ほい。俺は山下智。これでも一応銀行勤め」
「わふっ(ありがとうございます)」
「ポメガって初めて見たけど、結構可愛いなぁ。とりあえず撫でるわ。大丈夫なら一回、嫌なら二回鳴いてよ」
「わふっ(はい)」
「では、撫でます。おぉ。もふもふしてる」
「わふっ(大丈夫です)」
サラリーマン改め山下が、やんわりと彰のもふもふの首の周りや背中を撫で始めた。ぎこちない動きがいまいち微妙だが、贅沢は言うまい。これで元に戻れないと困る。彰は、『戻れ。戻れ。戻れ』と念じながら、大人しく山下に撫でられていた。
30分程、山下に撫でられていたが、彰は元には戻らなかった。やはり初対面の、しかも犬の扱いを分かっていないド素人では、難しいものがあるのだろう。山下が困ったように眉を下げた。
「戻らないなぁ」
「くぅーん(マジか……)」
2人揃って困っていると、ピンポンッとやけに短いインターホンの音が聞こえた。山下が彰から離れて、床に落ちているものを蹴りながら、玄関に向かっていった。山下とは違う男の声が聞こえてくると同時に、なんだかほんのりいい匂いがした。初めて嗅ぐ匂いだ。上手く形容できないが、なんだか嗅いでいるだけで、胸がほわほわしてくる。
彰はなんの匂いか気になって、おずおずとソファーから飛び下り、ゴミ袋や落ちている服をできるだけ避けながら、玄関へと向かった。トトトッと玄関に行くと、狭い玄関の所で、山下と少しぽちゃっとした体格の男が話していた。どうやら、いい匂いはぽちゃっとした男から香ってきている。彰はふんふん鼻を鳴らしながら、靴も脱いでいない男の足元に近寄り、ふんふん男の匂いを嗅いだ。
ぽちゃっとした男が彰を見下ろして、眉間に皺を寄せた。男の顔を見上げれば、全体的に丸っこい印象を受ける優しい顔立ちをしていた。
「おい。智。このアパート、ペット禁止だっただろ」
「ペットじゃねぇよ。さっき拾ったポメガ」
「ポメガ。へぇ。本当にいるんだな。……なんかすげぇ匂い嗅がれてんだけど」
「あ、裕二。試しに撫でてみてくれよ。俺が撫でても元に戻らなかったんだよな」
「別にいいけど。ほい。よぉしよしよしよし――」
「わふ――ん!」
裕二とかいうぽちゃっとした男がその場にしゃがみ、彰の首周りや背中をわしゃわしゃと撫で回した。裕二とやらの柔らかい手が触れた瞬間、不思議な多幸感が胸の中に広がった。彰が無意識のうちに尻尾をぶんぶん振っていると、すぐにぽんっと人間の姿に戻った。
「うぉっ!? ビックリした」
「あ、戻った」
「わぉ。本当にポメガだったんだ」
裕二とかいう男が驚いたように身体を引き、山下がのほほんと興味津々な様子で全裸の彰を見てきた。彰はなんとなく股間を隠しながら、じっと裕二とやらを見つめた。あのすごくいい匂いと、触れられた瞬間に感じた多幸感。きっと間違いない。目の前のぽちゃっとしている男が、彰のマスターだ。
彰は全裸のまま玄関に正座して、流れるような動きで裕二とやらに向かって土下座した。
「マスター! 俺を愛でてくださいっ!」
「はぁ!?」
「え? なに? 裕二がマスターなの?」
「はいっ! 間違いないです! 俺は坂上彰と申します。末永くよろしくお願いいたします!」
「え、いや。無理だから。僕はゲイだし、君はまるで好みじゃない」
「裕二は老け専のデブ専だもんな」
「デブと言うな。ぽっちゃりと言え。あと老け専じゃない。髭が似合う年上の優しいおじ様に甘やかされたいだけだ」
「はいはい。えーと、彰君だっけ? 君、ノンケ? ノンケなら裕二はやめておいた方がいいんじゃない?」
「ノンケですけど、裕二さん? は確かに俺のマスターなんです!!」
彰は顔を上げて、懇願するように、じっと裕二という男の顔を見つめた。彰はひょろりと背が高くて細身で、顔立ちは割と整っている方だ。スッキリとした涼やかな男前だと言われた事がある。じっと裕二という男を見つめていると、男が困ったように太めの眉を下げた。
「いや、いきなりマスターって言われてもなぁ」
「マスターの生活の邪魔はしません! 家事は一通りできます! 俺と一緒に暮らしてくださいっ! お願いしますっ! じゃないと、まともに働く事もできないんです!」
「え? なんで?」
「疲れやストレスが溜まるとポメラニアンになるんだってよ。ポメガって」
「へぇ。それは難儀な」
「で、ポメガったら、なんか甘やかしてやらないと元に戻れないんだと」
「ふぅん」
「マスターが甘やかしたら、すぐに元に戻るらしいぜ。ネットでざっと調べた」
「そうなの? 坂上君とやら」
「はいっ! ……俺は大学の三回生で、卒論とか就活の準備で今忙しくて……それに無事に就職できても、今のままじゃまともに働けないんです。……油断するとポメラニアンになっちゃうから……」
「そりゃまた気の毒な。でもなぁ。同居はちょっとなぁ……」
「マスターの生活の邪魔はしません! 恋人がいらっしゃる時は外に出てます! ポメラニアンになった時にだけ少し構ってもらえたら、すぐに人間の姿に戻れるんです! お願いします! 俺、俺、ちゃんと人並みに働きたいんです!」
ガンッと床に額をぶつけながら、彰は裕二とやらに再び土下座をした。暫しの沈黙の後で、裕二の溜め息が聞こえた。
「坂上君。とりあえず頭を上げて。君の事情はなんとなく分かったから。とりあえず、お試しで一ヶ月だけ僕の家に住んでいいよ。部屋は居間以外には一部屋しかないから、ソファーで寝てもらうことになるけどね」
「あ、ありがとうございますっ! 俺は何処ででも寝れるので大丈夫です!」
「あらそう」
「いいのか? 裕二」
「まぁ、この子のマスターらしいしねぇ。一ヶ月同居してみて嫌になったら出ていってもらうようにするし」
「ふぅん。まぁ、これも何かの縁ってやつかな。よかったな。彰君」
「はいっ! あっ! あの、山下さんもありがとうございました。山下さんに助けてもらわなかったら、マスターにも出会えませんでした。本当にありがとうございます。後日、改めてお礼をさせてください」
「いいよいいよ。気にしなくて。君、学生でしょ。学生がそんなに気を使わなくていいの。気持ちだけ受け取っておくよ。俺と裕二は幼馴染でさ。裕二の事でなんか悩んだら相談にのってやるよ。スマホは持ってるだろ? 連絡先交換しとこうぜ」
「ありがとうございます! 本当に助かります。……あの、マスター」
「ん? なに?」
「俺、マスターの邪魔にならないように頑張りますんで、よろしくお願いいたします」
「まぁ、程々でいいよ。今はフリーだし。君に手を出す事はないから安心してよ。僕の好みの対極に位置してるから」
「あ、はい。あの……マスターのお名前を聞いてもいいですか?」
「あぁ。遠山裕二。今年で28。仕事は在宅勤務のプログラマーやってる」
「あの、えっと……来週にでも引っ越していいですか?」
「あくまで一ヶ月のお試しだから、住んでるアパートとかは解約するなよ? あ、それとも実家住まい?」
「いえ。学生用のアパートを借りてます。実家は九州です」
「そりゃまた遠い所から来たね。来週の木曜なら1日フリーの予定だから、このアパートの前で集合ってことでいい?」
「はいっ! よろしくお願いいたします!」
「あ、うん。まぁ、よろしく。……ところでさ」
「はい?」
「いつまで全裸でいるのかな?」
「あっ! き、着替えてきます!」
彰は慌てて立ち上がり、バタバタと汚い部屋に戻って、山下がローテーブルの上に置いてくれていた服を着た。鞄からスマートフォンを取り出して、玄関に戻る。2人と連絡先を交換してから、彰は何度も2人に頭を下げて山下の家を出た。
小雨が降る中、自宅のアパートに向かって歩きながら、彰はドキドキと高鳴る胸を押さえた。まさか本当に自分のマスターが見つかるだなんて思っていなかった。奇跡が起きた。マスターはゲイらしいけど、別にマスターがゲイでも問題ない。ポメラニアンになってしまった時に、甘やかしてくれたら、すぐに人間の姿に戻ることができる。これできっと、彰も人並みに働いたりすることができるようになる。彰は嬉しくて嬉しくて、軽やかな足取りで自宅に戻り、早速お試し同居の準備を始めた。
ーーーーーー
裕二は煩い目覚ましのアラームを消すと、のろのろと起き上がり、くわぁと大きな欠伸をしながら、ぼりぼりと髭が少し伸びている顎を掻いた。寝間着のジャージ姿のまま仕事部屋兼寝室を出れば、ふわっと味噌汁のいい香りがした。ペタペタと歩いて台所を覗けば、背がひょろりと高い細身のイケメンが、エプロンを着けて軽やかに包丁で野菜を切っていた。
細身のイケメンこと彰が、裕二に気づいて振り返り、ふわっと嬉しそうに笑った。笑うと少し幼くなる。まだ21歳だからだろう。
「おはようございます。マスター。今朝の味噌汁はジャガイモと玉ねぎです」
「いいねぇ」
「あと、今朝は鮭を焼きます。あとちょっとで焼き上がりますよ。お昼は親子丼を作っておくので、温めて食べてください」
「あ、うん」
裕二は料理をする彰の邪魔にならないように台所を出て、洗面台がある脱衣所に向かった。髭剃りで髭を剃り、顔を洗って居間に行けば、ローテーブルの上に美味しそうな匂いがする朝食が並んでいた。今朝は、ジャガイモと玉ねぎの味噌汁に、ほかほかのご飯、ふっくらとした形のいい卵焼き、ほうれん草のお浸し、焼いた鮭、デザートに牛乳寒天まである。裕二はぼりぼりと後頭部を掻きながら、どこか褒めて欲しそうな様子の彰を見て、口を開いた。
「朝からこんなに頑張らなくてもいいんだけど」
「えっ。嫌でしたか!?」
「いや、嫌ではないんだけど、大変でしょ」
「全然です! 料理は好きなんで!」
「あ、そう。……じゃあ、いただきます」
「はいっ! いただきます」
裕二は彰と向かい合って座り、早速味噌汁から食べ始めた。ジャガイモがほくほくしていて、玉ねぎの自然な甘さが美味しい。ちゃんといりこで出汁をとっているので、顆粒の出汁の素よりもずっと美味しい。実家から送られてきたという麦味噌も優しい味わいだ。卵焼きが甘いのには未だに慣れないが、デザートだと思って食べれば普通にイケる。ほうれん草のお浸しも少し薄味だが十分美味しいし、鮭の焼き加減も抜群である。程よい塩気がつやつやほかほかのご飯によく合う。デザートの牛乳寒天も甘さ控えめで、口がサッパリしていい。
裕二はガツガツと朝食を食べきると、彰が淹れてくれたお茶を飲んで、ふぅと満足気な溜め息を吐いた。彰は予想外に料理上手だ。一度聞いてみたら、子供の頃から母親と一緒に料理をしていたらしい。『今時、男でも家事全般できなきゃ駄目よ』と、小さな頃から、母親から家事を習っていたそうだ。彰と同居し始めて、そろそろ一週間になるが、早くも胃袋を掴まれかけている。普段は面倒なので、冷凍ミールやコンビニ弁当で済ませることが多い。作りたての美味しい食事を朝晩食べられて、昼も電子レンジでチンするだけで美味しいものが食べられる。彰は裕二の守備範囲外だから好きになる可能性はまるで無いが、こんなに美味しい料理が食べられるのなら、恋人ができるまでの間は同居してもいいかなぁと思うようになってきた。
裕二が残さず朝食を食べきり、『ごちそうさま』と手を合わせると、彰が嬉しそうに笑って、『お粗末様でした』と食器を片付け始めた。
「今日はバイトなんで、少し遅くなります。今夜は鰯を煮ます。昨日、スーパーでいいのを見つけたんです」
「お。いいね。鰯は久しぶりだわ」
「脂がのってそうだったから、多分美味しいですよ」
「そいつは楽しみだ」
裕二がゆるく笑うと、彰がパァッと嬉しそうに笑った。今は人間の姿だから尻尾はないのだが、なんだか尻尾を振っていそうな雰囲気である。彰は人間の姿の時も、どことなく犬っぽい気がする。ポメガだからだろうか。
手早く朝食の後片付けを終わらせて大学に行く彰を玄関で見送ると、裕二は仕事をすべく、自分の部屋に向かった。カタカタとキーボードを打ちながら、彰が裕二好みの男だったらよかったのになぁと思った。
夕方になり、ベランダに干していた洗濯物を取り込んでいると、玄関のドアが開く音がした。彰が帰ってきたようである。彰には合鍵を渡してある。洗濯籠を片手に居間に戻るが、中々彰がやって来ない。いつもなら、『ただいまです!』と元気よく居間に来るのだが。裕二は訝しく思って、玄関へと向かった。
玄関では、抜け殻になった服と鞄が落ちていて、くったりとした様子のポメラニアンが項垂れていた。どうやら、ポメガったらしい。毎日、朝早くから炊事や洗濯、掃除をしているので、きっと疲れが溜まっていたのだろう。大学の三回生でバイトもしていたら、唯でさえ忙しくて疲れやすい筈だ。
裕二は、心なしかしょんぼりしているポメラニアンの彰を抱き上げて、居間に戻った。ポメラニアンの彰のもふもふの背中をやんわりと撫でながら、裕二はちょっと彰を窘めた。
「坂上君さぁ。頑張り過ぎだよ。君。もっと手を抜きなよ」
「くぅーん」
「よしよしよしよし。わしゃわしゃわしゃわしゃ」
「わんっ!」
裕二がわしゃわしゃわしゃわしゃと彰を撫で回すと、彰が嬉しそうにぶんぶん尻尾を振り、次の瞬間、ぽんっと人間の姿に戻った。肋が浮きそうなくらいほっそりとした身体をしている。反射的に彰の股間を見れば、皮被りの体格の割に小ぶりなペニスとちょっと大きめな陰嚢がぶら下がっていた。
彰が慌てた様子で、あわあわと自分の股間を手で隠した。
「す、すいません! お手間をおかけして……き、着替えてきます!」
「あ、うん」
前の恋人と別れて5年、最後のワンナイトは2年前。裕二は不覚にも、彰の裸にちょっぴりムラッとしてしまった。裕二の好みは、髭が似合う年上のぽっちゃりさんだ。甘やかすより甘やかされたい派である。彰は裕二の好みと真逆なのに、ちょっぴりムラッとしてしまったのが、若干悔しい。ペニスは大きい方が好きだが、意外と無垢な色合いをしていた彰の小ぶりな皮被りペニスをちょっと可愛いと思ってしまった。もしかして、胃袋を掴まれかけているからだろうか。
裕二は彰から『ご飯できました』と声をかけられるまで、居間のソファーに座って、悶々と己の煩悩と闘っていた。
ーーーーーー
彰と同居し始めて、もうすぐ一ヶ月になる。仕事の打ち合わせから家に帰ると、彰の姿が無かった。今日は土曜日で、バイトも休みだから家にいる筈である。買い物にでも行っているのかと思って、特に気にせず自室に入れば、自分の服が何故かベッドの枕の辺りにこんもりと積まれていた。訝しく思った裕二が服の山の中を覗けば、ポメラニアンの姿の彰が静かな寝息を立てて眠っていた。どうやら、裕二が不在の間に、またポメラニアンになってしまったらしい。最近、バイトのシフトが多かったようだし、複数のレポート提出が間近だと言っていた。それなのに、家事は一切手を抜かない。間違いなく疲れがピークに達したのだろう。ポメガについて、軽くインターネットで調べている。ポメガはマスターの服等の匂いでも落ち着くらしい。
すよすよと穏やかに寝ているポメラニアンの彰を見下ろし、裕二は小さく溜め息を吐いた。この頑張り過ぎる子を放っておけない気がしてきた。食事はいつも美味しいし、何かと気を使ってくれているのは分かっている。彰はまだ21歳だ。まだまだ遊びたい年頃だろうに、友達と遊ぶこともせず、いつも家の事をしたり、勉強したりしている。チラッと聞いたのだが、どうやら彰は同じゼミの人達と距離を置いているようだ。ポメガだと知られたくないらしい。あまり深く突っ込まなかったが、子供の頃に、ポメガだということで周囲の子供達から酷く揶揄われたり、苛められていたようである。裕二は眠るポメラニアン姿の彰のふわふわした毛並みの背中をやんわりと撫でながら、そろそろ腹を括ろうかと思った。
ーーーーーー
彰がふと目覚めると、裕二のいい匂いに包まれていた。身体は人間に戻っているようだが、それでも裕二の匂いはいい匂いだと思う。ふわふわと心地よく微睡んでいると、裕二の声が彰の名前を呼んだ。目を開ければ、裕二がすぐ目の前にいた。彰が驚いて目を見開くと、裕二がくしゃっと彰の髪を掻き混ぜるように頭を撫でた。嬉しくて嬉しくて、思わずだらしなく笑ってしまう。人間の姿の時でも、裕二に撫でてもらえると素直に嬉しい。裕二はいつもすごく美味しそうに彰が作った料理を食べてくれるし、ポメラニアンになった時は、『頑張り過ぎ』と言いながら、優しく撫でてくれる。マスターだからなのかは知らないが、彰はすぐに裕二のことが大好きになった。
裕二の体温や匂いを感じる距離に、彰が嬉しくてへらっと笑うと、裕二がゆるく笑って、口を開いた。
「坂上君。いっそ僕の恋人になる?」
「なります!」
「わぁ。すごい食い気味。君はさぁ、なんか放っておけないんだよね。ちょっとでも目を離すと頑張り過ぎるし」
「えっと、すいません……」
「謝らなくていいよ。頑張り屋なのは美徳でもあるから。でも、君の場合は欠点でもあるかな。腹を括って、この先ずっと君と一緒にいるよ。これも何かの縁だしね」
「……本当にいいんですか?」
「いいよ。君がいいならね。恋人になるのは、君とセックスがしたいから。君がいるのに他の男とどうこうなるのも気が引けてねぇ」
「あ、あの! む、無理しなくていいです。恋人ができたら、俺、邪魔にならないようにしますし」
「ほら。そういうところ。君は気を使い過ぎだよ。だから、放っておけないんだよなぁ」
「……えっと……」
「もう胃袋も掴まれちゃってるしね。君は君で責任をとるということで。今日から君は僕の恋人だ。嫌かな?」
「嫌じゃないです!!」
「あ、よかった。……って、おいおい。泣かないでくれよ」
「だ、だって……うれしい……」
「しょうがない子だなぁ」
嬉しくて、嬉しくて、勝手に涙が溢れてくる。裕二が優しく笑って、彰の身体をぎゅっと抱きしめてくれた。裕二の体温と匂いに包まれて、もっと嬉しくなって、涙がどんどん溢れ出てくる。彰は泣き疲れるまで、裕二に優しく抱きしめられていた。
泣き疲れた彰が再びポメラニアンになると、裕二が優しく撫で回してくれた。すぐに、ぽんっと人間の姿に戻れた。彰は自分の短小包茎なペニスを裕二に見られるのが恥ずかしくて、慌てて股間を手で隠した。
全裸であわあわしている彰を眺めて、裕二がにっこりと笑った。
「すっぽんぽんだし、セックスしとく?」
「へぁ!?」
「ていうか、したい。ちょっと準備してくるから、そのまま待っててよ」
「え? 準備? なんの?」
「深く突っ込むなよ。男には色々あるんだよ。大人しく此処で待ってなさい。覗きに来たらお尻ペンペンの刑だから」
「あ、はい」
裕二がどっこらしょっと起き上がり、一緒に寝転がっていたベッドから下りて、部屋から出ていった。彰は童貞である。それなりに告白されることもあるが、ポメガだと家族以外には知られたくなくて、いつも断っていた。小学生の頃、ポメガだということを理由に苛められていた。だから、中学は地元の中学校ではなく、私立の中高一貫校に通って、親しい友達もつくらず、ずっと1人でいた。いきなりの展開に、頭がついてこない。裕二のことは大好きだ。マスターだからなのか、裕二だからなのか。多分、両方だと思う。裕二は本当に優しい。ポメガの彰を馬鹿にせず、いつも気遣って優しくしてくれる。
彰は裕二が戻ってくるまで、嬉しくて、またちょっとだけ泣いた。
小一時間程で、裕二が部屋に戻ってきた。トランクス一枚の姿の裕二の身体は、全体的にぽちゃっとしていて、丸っこい。なんだか柔らかそうな身体をしている。彰は急速に顔が熱くなるのを感じた。本当にセックスをするのだろうか。セックスなんて、彰にとっては未知の世界である。ゲイビデオなるものがあることくらいは知っているが、観たことはない。男同士だとアナルを使うのは流石に知っているが、具体的にどうやってセックスをするのだろうか。
なんとなく彰がベッドのシーツの上で正座をしていると、裕二がぽすんとベッドに腰掛け、トランクスを脱ぎ捨てた。
彰がドキドキしながら正座をしていると、全裸になった裕二がころんと仰向けに寝転がった。裕二が楽しそうに笑いながら、彰を手招きした。
「おいで」
「はいっ!」
彰はいそいそと寝転がり、裕二と向き合った。裕二のベッドはセミダブルで、男2人だと少し狭い。裕二の温かいぽにゃっとした肌が、直に彰の肌に当たっている。彰はぶわっと顔が熱くなった。耳まで熱い気がする。顔が間近にある裕二が、クックッと楽しそうに笑った。
「初めて?」
「は、はい」
「じゃあ、今日は僕がリードしよう。キスをしようか」
「ふぁ、ふぁい!」
「そんなに緊張しないで。よしよし。あ、キスをする時は鼻で息するのは知ってる?」
「あ、そうなんですね」
「うん。じゃあ、キスするね」
裕二の顔が更に近づいてきて、鼻先をすりすりと彰の鼻先に擦りつけた後、唇にむにっと柔らかい感触がして、ちゅくっと優しく下唇を吸われた。ドキドキして溜まらない。男相手なのに、彰のペニスは早くも勃起してしまった。恥ずかしくて、裕二にバレないように腰を引くと、裕二のぷにっと柔らかい手が彰の腰に触れ、ぐいっと引き寄せられた。裕二の下腹部辺りに自分の勃起したペニスが当たってしまう。彰がキスをされながら、あわあわしていると、唇を触れ合わせたまま、裕二が楽しそうに笑った。
「もう勃ってる。若いねぇ」
「すっ、すいません」
「謝らなくていいよ。僕も勃ってる。ほら」
「わ、わ、わ……」
裕二が腰をくねらせて、彰のペニスに自分のペニスを擦りつけた。ペニスに硬くて熱いものが触れた瞬間、彰はじわっとした微かな快感と興奮で、ぴゅっと少量の精液を吐き出した。裕二がキョトンとした後、優し気な笑みを浮かべた。
「ちょっと出ちゃった?」
「すっ、すいません!!」
「大丈夫。大丈夫。一緒に気持ちよくなろう。そんなに緊張しなくていいからさ。僕の乳首を舐めてくれる?」
「は、はいっ!」
裕二がころんと寝返りをうって仰向けになったので、彰はドキドキしながら、起き上がって裕二の身体を跨いだ。
裕二が柔らかそうな少し弛んだ胸肉を、むにぃっと両手で寄せた。アダルトビデオで観た貧乳の女の子よりもおっぱいがある気がする。裕二の乳首は茶褐色で、ぷるんっと女の乳首みたいに肥大していた。彰はごくっと生唾を飲み込んでから、おずおずと裕二の胸の谷間に顔を擦りつけ、すぅっと匂いを嗅いだ。石鹸の匂いに混じって、ほんのり裕二の体臭がする。落ち着く匂いと柔らかな肌の感触と温もりが心地よい。胸の谷間にすりすりと顔を擦りつけてから、彰はベロッと裕二の乳首を舐めてみた。ぷるんっとした意外と硬い乳首の感触が舌に楽しい。ペロペロと乳首全体を舐めていると、裕二が自分の胸肉から手を離し、彰の頭をやんわりと撫でた。
「乳首の先っぽだけチロチロ舐めて。……あぁっ、そう、上手。はぁ……っ、吸って、んっ! いいよ。上手いね」
「んっ!」
裕二に言われるがままに乳頭をチロチロ舌先で舐め、ぷっくりした乳首を咥えてちゅくちゅく吸うと、裕二が褒めるように彰の頭を撫でてくれた。彰は嬉しくなって、反対側の乳首も同じように舐めて吸った。なんだか楽しいし、興奮する。ちゅぽっと咥えていた乳首から口を離し、少し顔を上げると、彰の唾液で濡れて微かにてらてら光っている裕二の乳首が見えた。なんだかエロい。
彰がおずおずと裕二の柔らかい少し弛んだ胸肉をふにふに揉みながら、裕二の下唇にやんわりと吸いつくと、間近にある裕二の丸っこい目が楽しそうに細まり、彰の上唇を優しく吸ってくれた。指でクリクリと乳首を弄りながら、またキスをする。何度もお互いの唇を吸い合っていると、ぬるりと裕二の舌が彰の口内に入ってきた。裕二の舌が歯列をなぞり、歯の裏側を擽って、上顎をねっとりと舐めてくる。上顎を舐められると、腰の辺りがぞわぞわして、なんだか気持ちがいい。彰は裕二の真似をして、裕二の口内に舌を入れて、おずおずと裕二の口内を舐め回した。裕二がぬるりと舌を絡めてきて、そのまま舌同士を擦り合わせるように、ゆるゆると舌を絡め合う。これも気持ちがいい。彰がうっとりしていると、キスをしながら裕二が彰の頭を撫でてくれた。嬉しくて、幸福感が胸に溢れてきて、本当に堪らない。
唇を離した裕二が、彰の肉付きが薄い尻をやんわりと撫でた。
「流石に最初からちんこを舐めるのはハードルが高いだろうから、今回は無しでいこうかね。仰向けに寝転がってごらん」
「はい」
彰が言われた通りに覆い被さっていた裕二から身体を離し、コロンと裕二のすぐ隣に仰向けに寝転がると、裕二が身体を起こした。彰が裕二に言われてベッドの真ん中に移動すると、裕二がベッドから下りて、パソコン等が置いてある机の引き出しから、何かのボトルと小さめの箱を取り出した。裕二が箱のパッケージを彰に見せて、にっこり笑った。
「コンドーム。着けてあげる」
「え、あ、は、はいっ!」
コンドームの着け方なんて、ふわっとしか知らない。彰は寝転がったまま肘をついて少しだけ上体を上げると、裕二が箱からコンドームを取り出すところをガン見した。裕二がピッとコンドームの袋を破り、中からアダルトビデオでしか見たことがないコンドームを取り出して、何故かふっとコンドームに息を吹きかけた。彰の短小包茎ペニスに、裕二がコンドームを被せ、そのまま顔を彰の股間に伏せて、唇でコンドームを下げ始めた。ペニスにほんのり擦れるぬるついたコンドームの感触と熱い裕二の口内の感触が酷く気持ちよくて、彰はくぅんと堪らず声をもらした。
ペニスの根元まで、すっぽり裕二の口内におさまったかと思えば、裕二がゆっくりと彰のペニスを唇で扱くようにしながら頭を上げて、コンドームを着けた裕二のペニスから口を離した。裕二が今度は何かのボトルを見せてきた。
「これはローションね。男同士の必需品。一応中に仕込んできたけど、念の為足しておくよ」
「は、はい」
裕二が楽しそうに笑って、ボトルの口を開けて、ローションを自分の掌に垂らした。コンドームを着けた彰のペニスにローションを馴染ませるように、ペニスをぬるぬるの手で撫で回される。それだけでもう射精しちゃいそうになるが、彰は下腹部に力を入れて、ぐっと堪えた。
彰の股間に跨った裕二が、にまにま笑いながら、勃起している自分のペニスを見せつけるように手で擦った。裕二のペニスは彰のものよりも大きくて、皮もしっかり剥けていた。なんだか不思議とエロい。
「今すぐ挿れたいから、前戯を楽しむのは次回ね。次はもっと色々教えてあげるよ。ふはっ。それじゃあ、入りまーす」
「うっ、あぁっ……!!」
ペニスの先っぽが熱くぬるついたものに触れたかと思えば、裕二が腰を下ろし始めた。キツい締めつけのところを通り過ぎれば、熱くて柔らかいものにペニスが包まれていく。いっそ射精しちゃいそうなくらい気持ちがいい。
彰のペニスをアナルで飲み込んだ裕二が、にまにまと楽しそうに笑った。
「はっ……っあぁっ……あ――、かったい。ふふっ。いいねいいね。ちょうど当たってる」
「あ、当たる?」
「僕の前立腺に君のちんこがいい感じに当たってるんだよ」
「ぜんりつせん」
「詳しい事は終わった後で。動くよ」
「うぁっ……わ、わ、わ、あぁっ……」
裕二が後ろ手に両手をつき、膝を立てて、両足を大きく開いた。そのまま、小刻みに上下に動き始めた。ペニスが熱くて柔らかいものに擦れて、アナルのキツい締めつけのところがキツく彰のペニスを扱いてくる。気持ちよくて、気持ちよくて、本当に堪らない。裕二を見れば、裕二が動く度に、ぶらんぶらんと裕二の大きなペニスが上下に揺れている。なんだかいやらしい。
裕二が腰をくねらせると、ペニスに触れている熱い腸壁にペニスが揉みこまれるような感じがして、気持ちよ過ぎて堪らず喘いでしまう。
裕二も気持ちよさそうな顔で低く喘ぎながら、片手で自分のぷっくりとした乳首を引っ張った。途端に、キュッと更にアナルが締まる。もう込み上げてくる射精感に抗えそうにない。彰は裏返った声で裕二の名前を呼びながら、コンドームの中に精液をぶち撒けた。
はっ、はっ、と荒い息を吐いて、快感の余韻に浸っていると、裕二がゆっくりと腰を上げて、半分萎えてる彰のペニスをアナルから引き抜いた。裕二がゆっくりと彰のペニスからコンドームを引き抜いた。コンドームの先っぽの方に、白い精液が溜まっている。裕二が上を向いて、精液入りのコンドームを口の上で逆さにして、垂れ落ちていく彰の精液を赤い舌で受け止めながら飲み始めた。あまりのいやらしさに頭がクラクラする。彰のペニスは再び熱く硬くなった。
コンドームを適当にシーツの上に放り投げた裕二が、再び完全に勃起している彰のペニスを見て、嬉しそうに笑った。
「若いね。今度はバックで挿れてみる?」
「い、挿れたいです」
「いいよ。コンドームを着けてあげる」
さっきと同じようにコンドームを着けてもらったら、彰は身体を起こして、四つん這いになった裕二のすぐ後ろに膝立ちになった。少し弛んでいる肉付きがいい尻肉に触れると、ふにっと柔らかくて、いつまでも揉んでいたい気分になる。裕二の尻肉を両手で掴んで、アナル周りを広げると、ローションで濡れたアナルが丸見えになった。裕二のアナルはぷっくりとしていて、アナルの皺が細かくなったり、広がったりしながら、ひくひくと物欲しげに収縮している。アナルの周りにはちょろっと縮れた短い毛が生えていた。ローションで肌に貼りついているケツ毛すら、酷くいやらしいものに見える。
彰はごくっと生唾を飲み込むと、自分のペニスを片手で掴み、片手で裕二のアナル周りの尻肉を広げ、ひくひくしている赤黒い裕二のアナルにペニスの先っぽを押しつけた。ゆっくりと腰を動かしていけば、どんどん裕二のアナルの中にペニスが飲み込まれていく。両手で尻肉を掴み、裕二のアナルがよく見えるようにしながら、ゆっくりと腰を引いてペニスを引き抜けば、裕二のアナルの縁が微かに赤く捲れ、腰を突き出していけば、アナルの中にペニスが飲み込まれていく。気持ちがよくて、興奮して、頭の中が沸騰してしまいそうだ。彰はすぐに我慢できなくなって、唯本能が赴くままに、激しく小刻みに腰を振り始めた。下腹部を裕二のむっちりとした尻に打ちつける度に、ぶるんぶるんと裕二の尻肉が揺れる。彰はぷにっとした裕二の腰を両手で掴んで、無我夢中で腰を振りまくった。
「あっあっあっ! すげぇ! いいっ! 上手っ! もっと! もっと突いてっ! あぁぁぁぁっ! 堪んねえ!!」
「はっ、はっ、はっ、マスター! マスター! 気持ちいいよぉ!」
「ははっ! 僕もっ! あぁぁぁぁっ! いいっ! いいっ! いくいくいくいくぅ!!」
「あぁっ!! そんなっ、締めないでっ! 出ちゃうっ! 出ちゃうっ!」
「あ、あ、あぁぁぁぁっ!!」
「んあぁぁっ!」
一際強くペニスをアナルで締めつけられて、彰は我慢の限界がきて、またコンドームの中に射精した。
はっ、はっ、はっ、と荒い息を吐きながら、汗でしっとりしている裕二の柔らかい尻肉を揉んでいると、裕二が顔だけで振り返った。
「まだできるだろ?」
「したいです」
「いい子。ちょっと抜いて」
「はい」
彰はゆっくりと腰を引いて、裕二のアナルからペニスを引き抜いた。裕二が身体ごと振り返り、彰のペニスからコンドームを外して、再びコンドームに溜まっている彰の精液を飲んだ。最高にいやらしくて、本当に堪らない。
膝立ちの彰の股間に裕二が顔を寄せ、ゆるく勃起したままの彰のペニスの裏筋をべろぉっと舐めた。射精したばかりで敏感になっているペニスには、少々刺激が強過ぎる。彰が堪らず喘ぐと、裕二が彰の陰嚢まで舐め始めた。丁寧に丁寧に陰嚢もペニスも舐められて、彰は我慢しきれずに、裕二の顔に精液を吐き出してしまった。裕二の優しそうな顔が白い精液で彩られ、一気に卑猥になってしまう。彰はあわあわしながらも、興奮し過ぎて、いっそ鼻血が出そうな感じだった。
裕二が鼻筋や唇に垂れている彰の精液を指で掬い取って、彰の精液付きの自分の指を口に含んだ。裕二の唾液で濡れた指で、唇をなぞられ、反射的に裕二の指を咥えると、裕二が楽しそうに笑った。裕二の指は、なんだかエグミのある形容しがたい味がした。多分、彰の精液の味なんだと思う。
裕二が彰の口内の上顎を指の腹で優しくすりすりしてから、彰の口から指を引き抜いた。裕二も膝立ちになり、抱きしめられながら、何度も互いの唇を吸い合って、舌を絡め合う。興奮がおさまる気配がまるでない。彰は唇を触れ合わせたまま、裕二にねだった。
「あの、もう一回」
「ふはっ! いいよ。おいで」
裕二が楽しそうに笑って、顔を離し、わしゃわしゃと彰の頭を撫で回した。裕二がまた彰のペニスにコンドームを着けた後、ころんと仰向けに寝転がり、自分の膝裏を持って、両足を広げ、少しだけ腰を浮かせた。彰は裕二の足の間を陣取り、コンドームを着けたペニスを片手で掴んで、再び裕二のアナルの中にペニスを押し込んだ。入り口辺りのキツい締めつけも、柔らかく絡みつく熱い腸壁の感触も、気持ちがよくて、本当に堪らない。
彰は上体を伏せて、柔らかい裕二の胸肉に顔を埋めながら、短いストロークで腰をガンガン激しく動かし始めた。多分、腹側の方を突くと、裕二の『前立腺』とやらにペニスが当たっていた気がする。そこを突くと、裕二のアナルがきゅっと更にキツく締まる。彰は裕二のぷっくりとした乳首を咥えて、ちゅくちゅく乳首を吸いながら、腹側を擦るように意識をして、がむしゃらに腰を振りまくった。
裕二が大きく喘ぎながら、彰の頭を両手で抱きしめて、彰の腰に両足を絡めた。胸の奥がキュンキュンと高鳴って、汗で濡れた肌が触れ合って、ペニスをアナルで締めつけられて、彰は『あぁ。今、マスターと一つになってる』と感動しながら、めちゃくちゃに激しく腰を振りまくり、大きく気持ちよさそうに喘ぐ裕二に頭を優しく撫でられながら、またコンドームの中に精液をぶち撒けた。
ーーーーーー
彰は玄関のドアから家の中に入るなり、ほっと気が抜けて、ぽんっとポメラニアンの姿になった。無事に大学を卒業して、小さな不動産会社で働き始めて3年が経つ。仕事には慣れてきたが、どうしても疲れるし、ストレスも溜まる。ここ最近は特に、仕事を任されることが増えて、家に帰るなり気が抜けてポメラニアンになってしまう。
彰はもぞもぞと脱げたスーツの中から抜け出して、トトトッと裕二の部屋へと向かった。
裕二の部屋のドアは、いつでも開けっ放しにしてくれている。ポメラニアンの姿では、ドアを開けることができないので、裕二がいつもドアを開けてくれるようになった。裕二の部屋に入り、パソコンを使っている裕二の足元に行くと、裕二がキーボードを打っていた手を止め、彰を見下ろした。
「おかえり。またポメガったかぁ」
「わふっ(はい)」
「君の事だから、また頑張り過ぎたんでしょ。ほら。おいで」
「わんっ! (はい!)」
裕二が手を伸ばして、足元にいる彰を抱き上げて、膝の上に乗せてくれた。裕二が優しい笑みを浮かべながら、わしゃわしゃと優しくポメラニアンの姿の彰を撫で回してくれる。裕二の優しい手の感触と胸に広がる多幸感にうっとりしていると、ぽんっと人間の姿に戻った。彰は慌てて裕二の膝の上からどいた。
「すいません。マスター。重かったですよね」
「いいよいいよ。君、ほっそいし。そんなに重くないよ。ほら。ただいまのちゅーは?」
「はいっ!」
裕二がおっとりと笑って、彰に向かって両手を広げた。彰は嬉しくてだらしなく頬をゆるめながら、裕二に抱きつき、ちゅくっと裕二の唇に吸いついた。満足するまで何度もお互いの唇を吸い合って、『ただいまのちゅー』は完了である。幸せ過ぎて、いっそ怖い。
彰が裕二の柔らかい頬にすりすりと頬擦りしていると、裕二が彰の頭を優しく撫でてくれた。
「今夜の晩ご飯は何かな」
「イカと里芋の煮物がメインです。あとは胡瓜の酢の物と牛蒡サラダと……茸の味噌汁にします」
「いいねぇ。楽しみだ」
「気合を入れて作りますっ!」
「うん。お願いします。あ、智が明後日、ご飯食べに来るって」
「あ、山下さんから俺の方にも連絡きてました。お酒に合いそうなものを作りますね!」
「よろしく。智もすっかり君に胃袋掴まれてるからねぇ」
「へへっ。嬉しいです」
彰は照れ臭くて笑った。山下とも交流があり、裕二と恋人になった後から、たまに一緒に飲み会をするようになった。山下も美味しそうにもりもりと沢山彰の手料理を食べてくれるので、とても作り甲斐がある。
山下が来る時に何を作るか考える前に、まずは今夜の晩ご飯の支度である。彰は名残惜しく裕二から身体を離すと、裕二の頬にキスをしてから、まずは脱げたスーツを回収して服を着るべく、裕二の部屋を出た。
台所で手早く料理をしながら、今夜も美味しそうに食べてくれる裕二の笑顔を頭に思い浮かべて、彰はゆるく口角を上げた。
彰のマスターは、とっても優しくて、とっても格好いいのである。セックスの時は未だにリードされているが、裕二に頭をよしよし撫でられたりするのが大好きなので、これでいいかなぁと思っている。
彰は気合を入れて作った料理が完成すると、裕二を呼びに行った。二人で向かい合って座り、『いただきます』をしたら、楽しい夕食の始まりである。
彰は、美味しそうにもりもり食べてくれる裕二を眺めながら、幸せだなぁと微笑んだ。
(おしまい)
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