指先にありったけの愛を込めて……みたら喧嘩になったのでめちゃくちゃ仲直りセックスしてやらぁ!!

丸井まー(旧:まー)

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指先にありったけの愛を込めて……みたら喧嘩になったのでめちゃくちゃ仲直りセックスしてやらぁ!!

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 ボニファーツは研いだ剣を色んな角度から眺めて、納得がいく出来に、微かに口角を上げた。依頼された剣の修理は完璧に出来た。今日の仕事はこれで終いである。ボニファーツは工房の後片付けをしてから、隣接する自宅へと帰った。

 ボニファーツは鍛冶師をしている。昨年亡くなった父親から継いだ小さな鍛冶屋は、食うに困らない程度には繁盛している。ボニファーツはそろそろ38歳になる。知人の鍛冶師から、弟子をとらないかと打診されており、近いうちに弟子をとる予定である。ボニファーツは、結婚はしていない。ボニファーツは、女は愛せない。その代わり、同棲して6年になる男の恋人がいる。ボニファーツは髭を生やした厳つい顔立ちの巨漢で、不愛想で口数も少ない方だが、世の中にはそんなボニファーツに愛を囁く物好きもいるのである。恋人のディーデリヒは、警邏隊に勤めている。歳は一つ下で、特別美形ではないが、親しみやすい程度に容姿が整っており、明るくて陽気な男だ。なんでボニファーツみたいな武骨で真面目なだけが取り柄の男と付き合ってくれているのか、未だに不思議に思う時がある。ボニファーツのどこを気に入ったのかは知らないが、ディーデリヒの方からボニファーツを口説いてきた。ボニファーツは、最初のうちは、ディーデリヒが揶揄っているか、罰ゲームでもしているのだろうと相手にしなかった。それでも、1年も口説かれ続けたら、流石にディーデリヒが本気なのだと分かった。それから、ボニファーツはディーデリヒと恋人になり、ボニファーツの家で一緒に暮らし始めた。
 ディーデリヒは毎日のように、ボニファーツに愛を囁く。ボニファーツは、それが嬉しくて堪らないが、ディーデリヒと同じように愛を囁くのは、到底無理である。ディーデリヒから、何度も何度も『愛してる』と言って欲しいとねだられているが、こっ恥ずかしくて、ボニファーツにはそんなこと言えない。ディーデリヒのことは確かに愛している。しかし、それを口に出すのは、どうにも気恥ずかしくて、いつも言えないでいる。いつかは言おうと思っているが、その『いつか』がいつになるのかは自分でも分からない。自分がもっと素直で、口下手じゃなかったらよかったのにと、何度思ったことか。
 ボニファーツは毎日愛を囁いてくれるディーデリヒに感謝しながらも、いつまで経っても『愛してる』の一言も言えない自分にディーデリヒが愛想を尽かすんじゃないかと、心の隅っこで怯える日々を過ごしている。

 ボニファーツが洗濯物を取り込んで畳み、台所で夕食を作っていると、ディーデリヒが帰ってきた。真っすぐに台所にやって来たディーデリヒが、フライパンで肉と野菜を炒めているボニファーツの背中にくっついて、ボニファーツのうなじにキスをした。


「ただいま。ボニ。めちゃくちゃいい匂いがする~」

「おかえり。先にシャワー浴びてこい。汗臭ぇ」

「今日は一日巡回だったからね。めちゃくちゃ腹減ったー」

「出来上がるのに、もう少しかかる」

「んー。じゃあ、シャワー浴びてくる」

「ん」


 ディーデリヒがボニファーツの頬に軽くキスをしてから、台所から出ていった。途端に、ぶわっと顔が熱くなる。ディーデリヒはスキンシップが大好きだ。ボニファーツは未だにディーデリヒのあけすけな愛情表現に慣れない。いつだって嬉しくて、いつだって気恥ずかしい。ボニファーツは間違っても可愛いなんて言われる容姿じゃない。地味な黒髪黒目で、太めの眉に三白眼なものだから、かなり強面の部類に入る顔立ちだ。身体つきも職業柄鍛えられていて、筋肉質で大柄な体格をしている。そんなボニファーツのことを、ディーデリヒは『可愛い』と言う。ディーデリヒの美的センスが独特過ぎるのだと思っている。ボニファーツは自分で言うのもなんだが、見た目も性格も可愛くない。ボニファーツはいつだってディーデリヒの愛情表現が嬉しくて、同時に可愛げのない自分から、ディーデリヒの心が離れてしまわないかと怯えている。
 ボニファーツは熱くなった頬をごしごし片手で擦ると、ディーデリヒの好物である肉多めの肉野菜炒めを皿に盛った。

 ボニファーツが食卓にしている居間のテーブルに夕食の皿を並べていると、半裸のディーデリヒが風呂場の方から歩いてきた。ディーデリヒは明るい茶髪に柔らかい緑色の瞳をしており、身体つきはボニファーツよりも細いが、しっかりと鍛えられている。美しい野生の獣を思わせる靭やかな身体つきをしている。上半身裸のディーデリヒが、テーブルの上を見て、ぱぁっと明るい笑みを浮かべた。


「うまそー! 酒も出そうぜ!」

「明日も仕事だろうが」

「ちょっとだけ。ちょっとだけ。美味い飯には美味い酒がいるだろー」


 ディーデリヒが機嫌よく笑って、台所に酒を取りに行った。ディーデリヒにあんなに喜んでもらえると、作った甲斐があるというものだ。ボニファーツは嬉しくてそわそわしながら、ディーデリヒが酒とグラスを持ってくるのを大人しく待った。
 ディーデリヒが楽しそうに喋りながら、もりもりとボニファーツが作った夕食を食べるのを眺めつつ、ボニファーツもがっつりと夕食を腹におさめた。ボニファーツは無愛想な相槌しか打てないのに、ディーデリヒはいつも楽しそうに喋る。ボニファーツが作った料理も、いつも本当に美味しそうに食べてくれる。そんなディーデリヒのことが大好きなのだが、それを口に出したことはない。
 主にディーデリヒが喋っていた賑やかな夕食を終え、ディーデリヒが後片付けをしてくれている間に、風呂に入る。セックスをするのは、2人とも翌日が休みの日だけだと決めている。お互いに40が近く、あまりはしゃげない歳になっているからだ。はしゃぎ過ぎると、確実に翌日に響く。ボニファーツも明日は依頼を受けた剣を打たねばならないし、ディーデリヒも普通に仕事である。温かい湯船に浸かりながら、正直、ちょっとでもいいからディーデリヒに触れて欲しいと思ったが、絶対にちょっとでは済まないので我慢をすることにした。予定通りなら、4日後は2人とも休みだ。その前日まで、セックスはおあずけである。
 ボニファーツはざばぁっとお湯から出ると、身体を拭いて、パンツだけを穿いて脱衣所を出た。ボニファーツは寝る時はパン一派である。

 ディーデリヒと少しだけ寝酒を楽しむと、寝室に移動して、一緒に特注の大きなベッドに上がった。ディーデリヒと同棲する時に、知り合いの職人に頼んで作ってもらった特別頑丈なものである。ボニファーツはガタイがいいし、ディーデリヒも警邏隊員として恥じない鍛えられた身体つきをしている。そんな2人が一緒に寝たり、セックスをするには、普通のベッドでは、とてもじゃないが無理である。実際、同棲する前、初めてディーデリヒの家でセックスをしたら、ベッドがものの見事に壊れた。その事もあって、ベッドは頑丈さに特化した大きなものを作ってもらった。

 一緒に布団に潜り込むと、ディーデリヒがボニファーツの唇に触れるだけのキスをした。


「おやすみ。ボニ。愛してる」

「ん。おやすみ」

「なぁなぁ。そろそろボニも俺のこと『愛してる』って言ってくれよー」

「断る」

「ちぇ。まぁいいや。ボニ。明日の朝飯は何がいい?」

「目玉焼きのっけたパン」

「了解。しこたま愛を込めて作るぜ!」

「明日は早出だろ。寝ろ」

「うぃーっす。おやすみ。ボニ。また明日」

「ん」


 ディーデリヒが大きな欠伸をして、寝る体勢になった。ディーデリヒは右向きに寝ることが多い。今日も最初は仰向けで寝ていたが、そのうち寝返りをうって、ボニファーツに背を向けた。ボニファーツはディーデリヒがしっかり寝息を立てて寝ていることを確認すると、静かに寝返りをうち、ディーデリヒの背中の方を向いた。
 ディーデリヒの背中に、ありったけの愛を込めて、普段は絶対に口にできないことを指で書く。『愛してる』。その一言を書いただけで、ぶわっと顔が熱くなった。口に出すよりかはマシだと思うが、こうして気づかれないように背中に指で書くだけでも気恥ずかしい。それでも、少しでもボニファーツの想いが伝わっていれば嬉しい。ボニファーツが熱くなった頬をごしごし擦っていると、寝ていた筈のディーデリヒの背中が微かに震えていることに気づいた。ボニファーツはひくっと口元を引き攣らせ、ディーデリヒに声をかけた。


「おい」

「……ぷふっ。駄目だ! 我慢できない! あっはは! ボニったら可愛すぎる!!」

「てめぇ! 寝たふりしてやがったのか!!」

「あはははは! ボニってたまにだけど、背中に書いてくれるよね」

「……っ!? い、いつから気づいていやがった……」

「え? 6年前くらい?」

「……最初の頃からじゃねぇか!!」

「もー。ほんと、ボニったら可愛すぎ~。ちょー愛してるー」

「くたばれ」


 寝たふりをしていたディーデリヒが寝返りをうって、こちらを見ながらニマニマ笑うのが癪に触り、ボニファーツは全力でディーデリヒの腹に拳を叩き込んだ。『ぐぼはっ』とディーデリヒが咳き込み、ボニファーツが殴った腹を片手で押さえて、若干涙目でボニファーツを見てきた。


「おまっ、本気で殴っただろー!」

「当たり前だ馬鹿野郎」

「こんのっ、恥ずかしがり屋さんめっ」

「ぐっ!?」


 ディーデリヒの重い拳がボニファーツの腹に決まった。ボニファーツは低く呻きながら、キッとディーデリヒを睨みつけた。


「おう。表出やがれ」

「上等。いい機会だから口でも『愛してる』って言わせてやる」

「誰が言うかボケカス」

「ほぉん? 俺の背中に『愛してる』って書いたのは誰かにゃー?」

「……ぶっ飛ばす」

「やれるもんならやってみろー。現役警邏隊員を舐めるなよー!」


 ボニファーツはベッドから飛び下り、同じくベッドから下りたディーデリヒと、拳を構えて向き合った。先手必勝ということで、ボニファーツが全力でディーデリヒの頬に拳を叩き込めば、ディーデリヒがすかさずボニファーツの顎を狙って拳を振るってくる。ギリギリ避けれたと思った次の瞬間、重い蹴りがボニファーツの太腿を襲った。クッソ痛いが、この程度で負けたくない。ボニファーツは全力でディーデリヒと殴り合った。

 最終的に、ディーデリヒに関節技を決められて、ボニファーツは敗北を認めた。かなり悔しいが、やはり現役の警邏隊員には勝てない。ディーデリヒが関節技をといた後、ボニファーツは床に胡坐をかいて座り、ぶすっとした顔で、へらっと笑っているディーデリヒを見上げた。


「ふぃー。俺の勝ち~。前々から思ってたんだけど、ボニさぁ、なんでそんなに喧嘩慣れしてる訳?」

「ガキの頃から喧嘩を吹っ掛けられることが多かった」

「あ、なるほど。さてと。殴り合ってお互いスッキリしたところで、そろそろ仲直りしない?」

「……別に構わんが」

「じゃあ、今度はベッドでイチャイチャしよっか」


 ディーデリヒがニッと楽しそうに笑ったので、ボニファーツはなんだか気が抜けて、ほんの微かに口角を上げて、ディーデリヒと一緒にベッドに上がった。ディーデリヒは寝る時はパンツとズボンしか穿かない。ボニファーツは、抱きついてキスをしてきたディーデリヒに応えながら、ディーデリヒの寝間着のズボンとパンツを一気に引き下ろし、自分もパンツを脱ぎ捨てた。

 お互い膝立ちのまま、抱きしめあって、夢中で舌を絡め合う。ディーデリヒの剣胼胝のある硬い大きな手が、ボニファーツの腰を撫で回し、ぐっと自分の方にボニファーツの身体を引き寄せた。下腹部に2本の熱くて硬いものが当たっている。お互いもうそんなに若くないのに、早くもペニスがガチガチに勃起している。ボニファーツは腰をくねらせてディーデリヒのペニスに自分のペニスを擦りつけながら、ディーデリヒの逞しい背中に腕を回し、小さく指先で、『愛してる』と書いた。間近にあるディーデリヒの柔らかい緑色の瞳が嬉しそうに輝き、貪るような勢いで、口内を舐め回される。ディーデリヒの熱い舌が上顎をねっとりと這うと、気持ちよくて腰のあたりがぞわぞわする。ボニファーツが熱い息を吐くと、ディーデリヒに尻を掴まれた。筋肉質な分厚い尻肉を揉みしだかれると、それだけで興奮が高まる。

 ボニファーツはディーデリヒの身体を全力で押し倒して、自分の腰に手を当てて直腸に浄化魔術をかけ、水魔術でぬるぬるの液体を掌に生成し、自分の期待でひくつくアナルにたっぷりとぬるぬるの水を塗った。押し倒したディーデリヒの胸毛が生えた逞しい胸板の下の方にある濃い茶褐色の乳首を舐め回しながら、自分のアナルに指を突っ込み、アナルを解していく。ディーデリヒに開発されまくったせいで、ボニファーツのアナルはすっかり縦割れになっており、ボニファーツの太い指でも、2本くらいなら簡単に入るようになった。それでも、ディーデリヒのペニスはデカいから、指が3本は入るようにならないとキツイ。ボニファーツは楽しそうな笑みを浮かべているディーデリヒをじっと見つめながら、ディーデリヒの両方の乳首を舐めて吸って、性急に自分のアナルを解した。

 ボニファーツは自分の指が3本、アナルに入るようになると、舐めていた雄臭いディーデリヒのペニスから口を離した。本当はもう少し解した方がいいのだが、もう我慢できない。ボニファーツは、ディーデリヒの身体に跨り、ディーデリヒのズル剥けの赤黒いペニスを片手で支えて、期待ではしたなくひくつく自分のアナルにディーデリヒのペニスの先っぽを押しつけた。ゆっくりと腰を下ろしていけば、メリメリと狭いボニファーツのアナルを抉じ開けるようにして、ディーデリヒの太くて長いペニスが、アナルの入り口を押し拡げ、直腸内すら押し拡げながら入ってくる。敏感な腸壁が太い竿で擦られ、大きな亀頭が前立腺をごりっと強く刺激して、鈍く痛むところを通り過ぎ、腹の奥深くまで入ってくる。頭の中が真っ白になるような強烈な快感に、ボニファーツは獣のように唸った。
 ディーデリヒを見下ろせば、ディーデリヒが目をギラギラと輝かせながら、両手を伸ばし、胸毛に埋もれたボニファーツの両方の乳首を摘まんで、くいっくいっと引っ張った。途端に、すっかり慣らされた快感が襲ってきて、反射的にきゅっとディーデリヒのペニスをアナルで締めつけてしまう。ディーデリヒのペニスの形が分かるような気がする程、アナルでディーデリヒのペニスを締めつけながら、ボニファーツはディーデリヒの身体の両側に手をついて、身体ごと上下に動かすようにして、ディーデリヒのペニスをアナルで扱き始めた。ゆっくりと腰を上げ、先っぽギリギリまで引き抜き、ゆっくりと深くディーデリヒのペニスをアナルで飲み込んで、自分の腹の奥深くにぐりぐりとディーデリヒのペニスの先っぽを擦りつける。気持ちよくて、気持ちよくて、本当に堪らない。腰を回したり、腰をくねらせたりして、ディーデリヒを気持ちよくさせようと動いていたが、そのうちボニファーツは自分がイクことしか考えられなくなった。だって、気持ちよくて本当に堪らない。

 ボニファーツが小刻みに尻を振って、脳天を突き抜けるような快感に喘いでいると、ディーデリヒが楽しそうに笑って、ボニファーツの肉厚の尻肉を両手で掴んだ。ボニファーツが腰を下ろすのに合わせて、ディーデリヒが腰を突き上げてくる。ズンッと腹の奥深くを強く刺激されて、思わず悲鳴じみた声が出た。ディーデリヒがニコニコ笑いながら、容赦なくズコズコとボニファーツの腹の奥深くを激しく突き上げてくる。


「お゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あ゛――――っ!!」

「ははっ! ボニ。きもちいいね」

「ぎも゛ぢい゛い゛っ!! いぐっ! いぐぅぅぅぅ!!」

「ほらほら。イっちゃえー」

「あ゛、あ゛ぁ! あ゛――――っ!!」

「あっは! すっげぇ締まるっ! 最っ高!!」

「ひぎぃ!? い、いって、いってるっ! いってるぅぅ! あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


 ぶらんぶらん勝手に揺れるペニスから精液を吐き出しているボニファーツの腹の奥深くを、更に激しくディーデリヒが突き上げてくる。あまりの快感に、脳みそが蕩けて、そのまま耳から溢れ出してしまいそうだ。ボニファーツは強烈過ぎる快感に啜り泣きながら、ディーデリヒの身体に抱きつき、そのまましょろしょろとおしっこを漏らした。

 ご機嫌なディーデリヒが汚れたシーツを替えているのを横に、ボニファーツはベッドのすぐ側の床で、お山座りをして小さくなっていた。また、おしっこを漏らしてしまった。ディーデリヒのペニスで、入っちゃまずいんじゃないかってくらい腹の奥深くを突かれまくると、あまりの快感に、いつもおしっこを漏らしてしまう。恥ずかしくて堪らない。最中は、強烈な快感とディーデリヒの熱に夢中になっていて気にならないが、セックスが終わって冷静になると、途端に羞恥心がこみ上げてくる。
 ボニファーツが大きな身体を小さくしていると、ディーデリヒがボニファーツの背中に貼りついてきた。ちゅっと肩にキスをされて、おずおずと顔だけでディーデリヒの方を向けば、ディーデリヒが嬉しそうにニコニコ笑っていた。


「ボニ。ちょー愛してる」

「……知ってる」

「もー! ボニったら、ほんと可愛いんだからー!」

「……可愛くない」

「めちゃくちゃ可愛いよー! マジで!」

「可愛くない」

「ふふん。俺にとっては世界で一番可愛いのよ。ほら。そろそろ寝よ。まぁ、あと一刻も寝れないけど、寝ないよりマシでしょ」

「……明日の朝飯、パンだけでいい」

「はいはい。目玉焼きものっけるし、おまけに分厚いベーコンも焼いちゃうよ」

「……ん」


 ボニファーツは正面に回ってきたディーデリヒに手を引かれて、のそりと立ち上がり、一緒にベッドに上がって、布団に包まった。心地よい疲れと、慣れたディーデリヒの体温と匂いに気持ちが落ち着いて、すぐさま眠気が訪れる。うとうとし始めたボニファーツの鼻先にキスをして、ディーデリヒが優しく微笑んだ。


「おやすみ。俺のボニ」

「……ん」


 ボニファーツは唇にディーデリヒの柔らかい唇の感触を感じながら、穏やかな眠りに落ちた。

 それからも、ボニファーツは口ではディーデリヒに愛を伝えられない日々を送った。時折、眠るディーデリヒの広い背中に『愛してる』と書いて、こっそり愛を伝えるのが精一杯だった。それでも、ディーデリヒはそのことにいつも気づいていた。ディーデリヒが警邏隊を定年退職して専業主夫になっても、ボニファーツが鍛冶師を引退する歳になっても、ずっとボニファーツは口では愛を伝えられなかった。
 お互いに歳をとって、腰が痛い、膝が痛いと言いながら過ごすようになっても、ボニファーツは変わらずありったけの愛を指先に込めて、ディーデリヒの背中に『愛してる』と書き続けた。そんな不器用なボニファーツを、ディーデリヒはずっと全力で愛してくれた。
 最後の瞬間、声にならない声で、初めてディーデリヒに愛を囁いた。ディーデリヒが驚いた顔をした後、皺だらけの顔で、くしゃっと今にも泣きそうな不細工な笑みを浮かべた。ボニファーツは満足して、静かに目を閉じた。




(おしまい)


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