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37:やらかした感

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カールは無言で洗面台の側に立っていた。セガールが無言で手を洗っている。2人ともフリちんのままだ。
なんかよく分かんないけど、めちゃくちゃ興奮して、セガールとキスをしてしまった。嫌悪感は無かった。ただ、気持ちがいいだけだった。今も、気持ち悪いとは思わない。だが、気まずい。やっちまった感が半端ない。

手を洗ったセガールが、自分の股間を見下ろして、カールの方を見ずに口を開いた。


「シャワー浴びるか」

「そうですね」


2人とも、ペニスが2人分の精液塗れである。セガールがパジャマの上を脱ぎ始めたので、カールもパジャマを脱ぎ、一緒に風呂場に入った。

熱いシャワーで順番に無言でペニスを洗う。沈黙が実に気まずい。
ペニスを洗い終えたセガールが、ボソッと呟いた。


「ノリでうっかりってことで」

「はい。ノリでうっかりで」

「無かったことにしよう」

「そうしましょう」


カールはセガールと目が合わせられなくて、お互いに視線を合わせないまま、同時に頷いた。うっかりノリでやっちゃっただけだ。無かったことにするのが一番いい。
カールもペニスを洗い終えると、2人で脱衣場に出た。下半身を拭きながら、セガールがこちらを見ずに口を開いた。


「明日からまた一緒に風呂に入るか?甘やかした責任を取ろう」

「あーー。お願いします。ちょっと1人だと落ち着かなくて、ゆっくりお湯に浸かれなくなってます。もう完全に駄目人間になってます。俺」

「ははっ。俺も駄目人間だな。お前の世話が無いと落ち着かない」

「セガールさんって、元々世話を焼きたいタイプですか?」

「あぁ。甘やかされるより甘やかしたいタイプだな」

「だからかー。じゃあ、引き続き甘やかしてください」

「あぁ。その方が俺も落ち着く。シェリーはもう世話とかさせてくれなくなったからなぁ」

「父性が溢れまくってるんですかね」

「そうかもな」


お互いに目を合わせないままパジャマを着て、脱衣場を出た。
それぞれの部屋に入り、布団に潜り込むと、カールは無言で身悶えた。
やっちまった感が半端ない。無かったことにすることになったが、何故だか、セガールとの濃厚なキスが忘れられそうにない。セガールとのキスは、興奮して、気持ちよくて、妙に落ち着いた。本当に不思議である。甘やかされまくった弊害の一つなのだろうか。
なんにせよ、明日からは、また一緒に風呂に入る。これで漸く落ち着いて風呂に入れる。頭と身体を洗ってもらえたら嬉しいと思っちゃうあたりが、もう完全に駄目人間だ。
カールはふと思い立った。カールを洗ってもらうなら、カールもセガールを洗ったらいいのである。洗いっこなら、まだ完全なる駄目人間にはならない気がする。
カールの思考は迷走していたが、本人に自覚は無かった。
カールは明日からセガールと洗いっこすると勝手に決めた。




------
翌朝。
カールはいつもの時間に目が覚めた。昨夜はうっかりノリでセガールとキスしちゃったせいで、なんか悶々としてしまい、眠りが浅かった。
それでも今日は仕事があるし、日課の筋トレもやらねば。

カールはパジャマから動きやすい格好に着替えると、日課の筋トレをしに、庭へと出た。
完治したばかりの右腕に負荷がかかり過ぎないように、セーブして腕立て伏せをしていると、似たような格好をしたセガールがやって来た。
カールは一瞬ドキッとしたが、全力で平静を装って、腕立て伏せをしながら挨拶をした。


「おはようございまーす」

「お、おはよう」


セガールが目を泳がせながら、若干挙動不審な感じで、カールの隣で筋トレを始めた。
無かったことにすると決めたが、セガールもどうやら気にしてるらしい。
お互いに無言で筋トレメニューをこなしていく。沈黙が若干気まずい。

シェリーが外に出てきたので、3人で家の周りを走り始めた。
シェリーが走りながら、カールとセガールを見て、首を傾げた。


「2人ともなんかあったの?」

「いや?」

「なんもないよー」

「ふーん。気のせいかしら」


シェリーの勘が鋭いのか、カール達が分かりやすいのか、あるいはその両方か。
今日はまだセガールと目を合わせていない。薄緑色の瞳を見たら、昨夜のことを思い出しそうで、怖くて見れない。
ここまで引き摺るとは、本当にやらかした感が半端ない。だって、気持ちよくて興奮しちゃったからっと、自分で自分に言い訳をしつつ、カールはシェリー達と一緒に走った。

カールは半日の仕事を終え、午後からリハビリに行き、夕暮れに染まる道を歩いて、丘の上の家へと帰った。
シェリーが洗濯物を取り込み始めていたので、急いで軍服から私服に着替えて、シェリーと一緒に洗濯物を取り込み、居間で畳む。
何気なくセガールの白いトランクスタイプのパンツを畳みながら、カールは昨夜のことを思い出して、ぶわっと顔が熱くなった。
目を泳がせながら手早くセガールのパンツを畳んだカールを見て、シェリーがキョトンとした顔をした。


「どうしたの?カール。朝からちょこっと変よ」

「そ、そう?」

「うん。何があったか、さっさと吐きなさい」

「いや、それはちょっと……」

「いいから吐く」

「あ、はい」


カールはシェリーの笑顔の圧に負けた。


「あー……その、セガールさんとちゅーをしちゃいましてですね……」

「なんだ。そんなことか。2人は恋人同士なんだから、ちゅーくらいするでしょ。もしかして、初めてだったの?」

「……まぁ」

「ふーん。だからパパもなんか挙動不審だったのね」

「……俺達、そんなに分かりやすい?」

「うん」

「マジか」


地味にショックである。シェリーがカールのシャツを畳みながら、嬉しそうに小さく笑った。


「なんか全然恋人っぽくないなーって思ってたけど、ちゃんと進展してるのね。よかったー」

「あー。はははっ。えーと、まぁ……」

「恋人同士のスキンシップにも早く慣れてよ」

「マジかー。あ、今日からまたセガールさんと一緒に風呂に入ることになりました」

「あら。いいじゃない。それも恋人としての時間なのね」

「そうなるのかな?」

「今度は邪魔しないわ。あーんはしたくなったらするけど」

「するのか」

「するわよ。楽しいもの」


シェリーが楽しそうに笑った。シェリーは出会った頃よりも、ずっといい顔で笑うようになった。母親のことが吹っ切れて、セガールとの関係も良くなったからだろう。カールと友達になり、それからマルクをはじめとする交友関係も広がったからかもしれない。

洗濯物を畳み終える頃に、セガールが帰ってきた。
軍服姿のままのセガールが、カールに紙袋を渡してきた。中を見れば、お高いけど美味しいと有名なチーズが入っていた。


「今夜の酒の肴だ」

「やった!ありがとうございます!これ、まだ食ったことがないんですよ。俺」

「そうか。明日は休みだから飲むぞ。これに合う蒸留酒がある」

「よっしゃ!」

「酒好きおっさん共め。朝まで飲まないでよ。酔っ払い面倒くさいから」

「ちゃんと適度な量でセーブしとく」

「盛り上がって朝までコースになったらごめんな?」

「朝まで飲んでたら、正座でお説教だから」

「「マジか」」


カールはセガールと、なんとなく顔を見合わせて、同時に軽く吹き出して笑った。
漸く目を合わせられた。若干気まずい気もするが、セガールと一緒に酒を飲むのは大好きだ。酒を片手に他愛のないお喋りをすると、楽しいし、すごく落ち着く。

カールは3人お揃いのカモメのエプロンを着けて、シェリーと一緒に夕食を作るお手伝いを始めた。


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