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5:嵐襲来
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今朝もいつものように卵を産むと、リーンデルトは大きく息を吐いてから、のろのろと起き上がった。今日の卵は七つである。昨夜はセックスをしなかったので、少しだけ多い。毎朝、毎朝、卵を産むのは地味にしんどい。うんこ程するーっと出てきてくれない上に、無駄に硬いので、いつか切れ痔になるんじゃないかと戦々恐々としている。
朝から疲れたリーンデルトは、産みたてほやほやの卵に浄化魔術をかけると、ポイポイと籠に卵を放り込んだ。これがカインの糧になるのだから、無駄にならないだけマシかと思う。
リーンデルトが卵が入った籠を持って、1階の台所へ移動すると、カインが朝食を作っていた。トマトスープのいい香りがする。カインがいつも通りのしかめっ面でリーンデルトを見て、口を開いた。
「おはよう」
「おはよう。今朝は七つよ。力み過ぎてケツいてぇわ」
「お疲れ。今日はマリアンナが来るんだろう」
「げっ。そうだった。うーわー。姉貴がくると疲れるんだよなぁ」
「まぁ否定はしないが、いいお姉さんだろ」
「まぁ、そうかねー」
「朝飯ができた」
「おー。早く食って洗濯物やっちまうかね」
リーンデルトはカインを手伝い、居間のテーブルに朝食を運んだ。酸味のあるトマトスープが素直に美味しい。ハムと野菜たっぷりのオープンサンドイッチも、黄身が半熟とろとろのゆで卵も美味しい。
すっかり夏本番になり、毎日朝から暑い。食欲が落ち気味なので、あっさりさっぱりとしたメニューの朝食が嬉しい。
食後の珈琲を楽しみ、洗濯物を干し終えた頃に、玄関の呼び鈴が鳴った。リーンデルトは渋い顔をして、玄関に向かい、玄関のドアを開けた。そこには、リーンデルトに目元がよく似た赤毛の中年の女が立っていた。リーンデルトの姉、マリアンナである。マリアンナがリーンデルトの顔を見るなり、眉間に皺を寄せた。
「おはよう。リーン。アンタ、相変わらず年がら年中つなぎばっかり着てるのね。少しはお洒落しなさいよ」
「……おはよう。姉貴。いいだろ。別に。楽なんだよ」
「これだから男は。ダサいとカインに捨てられるわよ!」
「捨てられねぇし」
「どうだか。母さんから色々預ってきてるの。重いから、さっさと受け取りな」
「へーい」
「暑いから、珈琲は冷たいのがいいわ」
「カインに言ってくれ」
この暑いのに朝から無駄に元気なマリアンナにげんなりする。リーンデルトはマリアンナから荷物を受け取り、家の中に入れると、居間に向かった。
マリアンナは、旦那と一緒に、リーンデルトの両親と暮らしている。リーンデルトの実家は同じ街の中にあるが、リーンデルト達が暮らす街は大きな街で、リーンデルトの家は街外れにあるので、そこそこ距離があり、自分の家族と会う機会は少ない。
マリアンナを居間のソファーに座らせたタイミングで、カインがお盆を持ってやって来た。氷が入ったグラスに注がれた珈琲は、冷たくて美味しそうだ。
マリアンナが嬉しそうにカインを見て口を開いた。
「おはよう。カイン。珈琲ありがとう。ちょうど冷たいものが飲みたかったの」
「おはようございます。マリアンナ。お元気そうで何よりです」
「貴方もね。母さんが桃のジャムを作ったから、他のものと一緒に持ってきたわ。是非食べてちょうだい」
「いつもありがとうございます」
「愚弟がいつもお世話になってるんだもの。今日来たのはね、うちの長男が今度結婚することになったのよ」
「へぇー。あのおねしょ坊主がついに結婚かよ」
「何年前の話してんのよ。相手は大通りの八百屋さんの娘さんでね。すっごく可愛い子なんだから!おっとりしてて、おおらかな子よ。結婚式は再来月だけど、来週身内でお祝いパーティーするから、2人で来てちょうだい。カイン。愚弟をまともな格好させて連行してきてね!」
「分かりました」
「親父とお袋は?」
「元気よ。父さんは少し前に3回目のギックリ腰やったけど。もうよくなってるわ」
「ふーん」
「『うちの馬鹿息子は全然帰ってこない!』って、母さんがプリプリしてたから、会った時に小言食らうわね」
「うげぇ」
マリアンナが冷たい珈琲を飲み、ほぅと満足気な溜め息を吐いた。
「カインが淹れてくれる珈琲は、相変わらず美味しいわね。お祝いパーティーでも淹れてくれないかしら。うちの父さん、お酒飲めないし、貴方の珈琲が好きだから」
「はい。道具と豆を持参していきます」
「悪いわねぇ。ありがと。2人とも最近はどう?特に愚弟はちゃんと仕事してんの?」
「してるっつーの」
マリアンナからの怒涛の質問攻めと小言に、リーンデルトは気づかれないように小さな溜め息を吐いた。
マリアンナは昼食にカインが作ったトマトの冷製パスタをがっつり食べてから帰っていった。
マリアンナを見送ると、リーンデルトは疲れた溜め息を吐いた。マリアンナは割といい姉だと思うのだが、相手をするのは結構疲れる。
マリアンナが持ってきてくれた母からの荷物を2人で確認すると、母手製の大量のクッキーも入っていた。間違いなくカイン用である。リーンデルトの母はカインを気に入っており、何かと手製の甘いものを差し入れてくれる。
いつものしかめっ面が少し弛んでいるカインを見て、リーンデルトは小さく笑った。
「明日は礼服を買いに行くぞ」
「うげぇ。結婚式は再来月だろ。まだ先でいいだろ」
「次の休みはお祝いパーティーだろう。まさか、いつものつなぎで行くつもりか」
「そうですけど」
「阿呆。礼儀はちゃんとしろ」
「へーい」
「……顔がいいんだから、たまには着飾れ」
「めんどい」
呆れた顔をするカインに、リーンデルトは子供のように、べーっと舌を出した。
朝から疲れたリーンデルトは、産みたてほやほやの卵に浄化魔術をかけると、ポイポイと籠に卵を放り込んだ。これがカインの糧になるのだから、無駄にならないだけマシかと思う。
リーンデルトが卵が入った籠を持って、1階の台所へ移動すると、カインが朝食を作っていた。トマトスープのいい香りがする。カインがいつも通りのしかめっ面でリーンデルトを見て、口を開いた。
「おはよう」
「おはよう。今朝は七つよ。力み過ぎてケツいてぇわ」
「お疲れ。今日はマリアンナが来るんだろう」
「げっ。そうだった。うーわー。姉貴がくると疲れるんだよなぁ」
「まぁ否定はしないが、いいお姉さんだろ」
「まぁ、そうかねー」
「朝飯ができた」
「おー。早く食って洗濯物やっちまうかね」
リーンデルトはカインを手伝い、居間のテーブルに朝食を運んだ。酸味のあるトマトスープが素直に美味しい。ハムと野菜たっぷりのオープンサンドイッチも、黄身が半熟とろとろのゆで卵も美味しい。
すっかり夏本番になり、毎日朝から暑い。食欲が落ち気味なので、あっさりさっぱりとしたメニューの朝食が嬉しい。
食後の珈琲を楽しみ、洗濯物を干し終えた頃に、玄関の呼び鈴が鳴った。リーンデルトは渋い顔をして、玄関に向かい、玄関のドアを開けた。そこには、リーンデルトに目元がよく似た赤毛の中年の女が立っていた。リーンデルトの姉、マリアンナである。マリアンナがリーンデルトの顔を見るなり、眉間に皺を寄せた。
「おはよう。リーン。アンタ、相変わらず年がら年中つなぎばっかり着てるのね。少しはお洒落しなさいよ」
「……おはよう。姉貴。いいだろ。別に。楽なんだよ」
「これだから男は。ダサいとカインに捨てられるわよ!」
「捨てられねぇし」
「どうだか。母さんから色々預ってきてるの。重いから、さっさと受け取りな」
「へーい」
「暑いから、珈琲は冷たいのがいいわ」
「カインに言ってくれ」
この暑いのに朝から無駄に元気なマリアンナにげんなりする。リーンデルトはマリアンナから荷物を受け取り、家の中に入れると、居間に向かった。
マリアンナは、旦那と一緒に、リーンデルトの両親と暮らしている。リーンデルトの実家は同じ街の中にあるが、リーンデルト達が暮らす街は大きな街で、リーンデルトの家は街外れにあるので、そこそこ距離があり、自分の家族と会う機会は少ない。
マリアンナを居間のソファーに座らせたタイミングで、カインがお盆を持ってやって来た。氷が入ったグラスに注がれた珈琲は、冷たくて美味しそうだ。
マリアンナが嬉しそうにカインを見て口を開いた。
「おはよう。カイン。珈琲ありがとう。ちょうど冷たいものが飲みたかったの」
「おはようございます。マリアンナ。お元気そうで何よりです」
「貴方もね。母さんが桃のジャムを作ったから、他のものと一緒に持ってきたわ。是非食べてちょうだい」
「いつもありがとうございます」
「愚弟がいつもお世話になってるんだもの。今日来たのはね、うちの長男が今度結婚することになったのよ」
「へぇー。あのおねしょ坊主がついに結婚かよ」
「何年前の話してんのよ。相手は大通りの八百屋さんの娘さんでね。すっごく可愛い子なんだから!おっとりしてて、おおらかな子よ。結婚式は再来月だけど、来週身内でお祝いパーティーするから、2人で来てちょうだい。カイン。愚弟をまともな格好させて連行してきてね!」
「分かりました」
「親父とお袋は?」
「元気よ。父さんは少し前に3回目のギックリ腰やったけど。もうよくなってるわ」
「ふーん」
「『うちの馬鹿息子は全然帰ってこない!』って、母さんがプリプリしてたから、会った時に小言食らうわね」
「うげぇ」
マリアンナが冷たい珈琲を飲み、ほぅと満足気な溜め息を吐いた。
「カインが淹れてくれる珈琲は、相変わらず美味しいわね。お祝いパーティーでも淹れてくれないかしら。うちの父さん、お酒飲めないし、貴方の珈琲が好きだから」
「はい。道具と豆を持参していきます」
「悪いわねぇ。ありがと。2人とも最近はどう?特に愚弟はちゃんと仕事してんの?」
「してるっつーの」
マリアンナからの怒涛の質問攻めと小言に、リーンデルトは気づかれないように小さな溜め息を吐いた。
マリアンナは昼食にカインが作ったトマトの冷製パスタをがっつり食べてから帰っていった。
マリアンナを見送ると、リーンデルトは疲れた溜め息を吐いた。マリアンナは割といい姉だと思うのだが、相手をするのは結構疲れる。
マリアンナが持ってきてくれた母からの荷物を2人で確認すると、母手製の大量のクッキーも入っていた。間違いなくカイン用である。リーンデルトの母はカインを気に入っており、何かと手製の甘いものを差し入れてくれる。
いつものしかめっ面が少し弛んでいるカインを見て、リーンデルトは小さく笑った。
「明日は礼服を買いに行くぞ」
「うげぇ。結婚式は再来月だろ。まだ先でいいだろ」
「次の休みはお祝いパーティーだろう。まさか、いつものつなぎで行くつもりか」
「そうですけど」
「阿呆。礼儀はちゃんとしろ」
「へーい」
「……顔がいいんだから、たまには着飾れ」
「めんどい」
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