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イチャイチャハッスル編

13:好みは人それぞれ

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 満腹になった後、魔王は全裸のままだったシンシアに自分の寝間着のシャツを着せた。いい感じにだぼついていて、シンシアだけど可愛くて、割とぐっとくるものがある。
 ベッドの上で横座りしているシンシアの白い太腿がチラリんなのも、萌え袖状態なのも、中々にいい。彼シャツを考えた奴は天才だと思う。

 シンシアが不思議そうな顔をして、ぐっと拳を握っている魔王に声をかけてきた。


「魔王陛下はこういうのがお好みですの? 色気も何もないと思うのですが」

「どこが!? 色気の塊だよ!?」

「これのどこがですの?」

「僕は露骨に色っぽい格好よりもこういうのが好きなんだよ。可愛い」

「かっ! 可愛いっ!? そ、そうなんですのね……」



 照れたのか、シンシアがうっすら頬を赤く染め、もじもじと寝間着のシャツの裾を弄った。お前そういうこと以下略。シンシアでも、彼シャツで照れくさそうにもじもじされると可愛い。ちょっと悔しいけど。


「殿方は色っぽい格好がお好みかと思っておりましたわ」

「いやー。好みは人それぞれだから。僕は普段の君の格好よりも今の格好の方がぐっとくるかなぁ」

「そっ、そうですの……」


 本当は化粧もなしが好みなのだが、前世で姉から『化粧もネイルも自分のためにやってんのよ!』と何度も聞かされていたので、化粧については触れないことにした。『化粧は女の戦装束』なんて言葉も耳にしたことがあるし、女の世界のことに男があまり口を出すのはよろしくないと思う。

 魔王は食後のガンゴ茶を飲んでまったりしながら、隣でガンゴ茶を飲んでいるシンシアをチラッと見た。シンシアは、珈琲みたいなガンゴ茶をがぶがぶストレートで飲みそうな感じのくせに、砂糖みたいな甘味料とミルクをたっぷり入れて甘いカフェオレみたいにしないと飲めないらしい。そんなところでギャップ萌えを発揮するな。ちょっと可愛いと思っちゃっただろうが。ちなみに、魔王はガンゴ茶はストレート派だ。前世でも、紅茶ですら砂糖の類を入れない方だった。

 なんとなーく二人でベッドの上でまったりしていると、マグカップを両手で持った萌え袖状態のシンシアがちょっと上目遣いで見てきた。誰がそんなあざといことを教えやがった。かなり悔しいけど、ぶっちゃけ可愛い。
 魔王はなんだか悔しくて奥歯をギリギリした。


「魔王陛下。今日は何をいたしますの? もう夕方が近いですけれど」

「セックスかセックスかセックスだね」

「セッ! んんっ。ま、まぁ? 子作りのための休暇だとお聞きしておりますし? こ、子作りしても吝かではございませんわ!」

「じゃあ、これを飲み終わったらヤるかー」

「え、えぇ」

「シンシアはさー、好きなものとかあるの?」

「唐突になんですの?」

「いや、一応夫婦になったんだし、色んなことを沢山喋って、お互いを知ってた方がいいかなって」

「そっ、そうですわね……大型の強い魔獣を狩るのが好きですわ。肉が食いごたえがあって、魔力も豊富でお味がよいのです」

「ドラゴンの姿の時は生で食うの?」

「いえ。火を吹いて、表面を軽く炙ります。汚れまで口に入ったら嫌ですもの」

「なるほど?」

「まっ、魔王陛下は! 何がお好きですの?」

「んーー。料理長が作ってくれる焼き菓子かなぁ。執務中は頭を使うことがメインだから、甘いものが欲しくなるんだよねぇ」

「そうですの……わたくしっ! ちょっと今から厨房に行ってまいりますわ!」

「なんで!? まさか厨房を破壊する気か!?」

「なんでそうなりますの! てっ、手作りの甘いものを作りに行くだけですわっ!」

「あ、結構です」

「何故ですの!?」

「シンシア。お菓子作りとかしたことある?」

「ございませんができますわ」

「何その自信!? どっからくるの!? ……厨房が破壊されて料理長が泣く未来しかみえないから、やめておきなー」

「むぅ。しかしですね、魔王陛下。殿方の心を掴むにはまずは胃袋からと側使えの者が申しておりました。それを聞いて、魔王陛下の胃袋を掴んで引きずり出そうと思ったのですが、側使えの者にとめられましてよ」

「側使えの子! グッジョブ! あっぶねー。胃袋掴んで引きずり出されるとこだった……あのね、シンシア。それは比喩だから。実際に胃袋を鷲掴みするわけじゃないから」

「そう言われましたわ。胃袋を引きずり出して魔王陛下のお心がわたくしのものになるのでしたら、簡単でしたのに」

「考え方が完全にバーサーカー。話を変えよう。血生臭い話はおしまーい。シンシアは他に何が好き? 嫌いなものでもいいよ」

「好きなもの……どんな形であれ『自分は強いから害されない』と思い込んでいる愚か者を捻じ伏せて、絶望を味あわせてから首を捩じ切るのが好きですわ」

「わー。血生臭ーい。花とか!? キレイなお花は好きかな!?」

「花は食べても美味しくないので好きではありませんわ」

「うん。花は食べるものじゃなくて、眺めて愛でるものかな」

「魔王陛下は何がお好きですの?」

「えー。のんびり昼寝かなぁ。中々時間をつくれないけど、惰眠を貪るって最高の贅沢だよねぇ」

「お昼寝はわたくしも好きですわ! 屋敷では、お昼寝している間に側使えが鱗を磨いてくれるのです。わたくしの側使えは中々に優秀で、わたくし好みの力加減で鱗を美しくしてくれましてよ」

「おや。じゃあ、明日は庭でお昼寝する? 中庭は広いから、君がドラゴンの姿でも寝れると思うよ」

「まぁ! よろしくってよ! 魔王陛下はどちらで寝ますの?」

「君の上かな。ドラゴンの上で昼寝って贅沢で楽しそう」

「他の者ならば一瞬で消し炭にいたしますが、魔王陛下でしたら、わたくしの上でお昼寝なさってもよろしくってよ!」

「ありがとー。じゃあ、明日はのんびりお昼寝しよう」

「えぇ! ほ、他に好きなものは? 具体的に言うと、わたくしにして欲しい格好など!!」

「え? んー。彼シャツが今のところ一番好きかなぁ。あ、今の格好のことね。服は清楚系が好きだけど、シンシアは自分好みの服を着る方が好きでしょ。無理に僕の好みに合わせなくてもいいから」

「清楚系……そのような服は持っておりませんわね。魔王陛下」

「ん?」

「わたくし、魔王陛下と結婚いたましたから、王妃となりました」

「そうだね?」

「や、やはり……ここは魔王陛下の仰る清楚系なドレスも持っていた方がよろしいと思いますの。ほらっ、あのっ、謁見の時とか? いつもの格好は如何なものかと……」

「あ、それは確かに。じゃあ、ドレスを何着か作ろうか」

「え、えぇ。……ドレスを選ぶ際、ま、魔王陛下もご同席いただけると、その、嬉しいですわ!」

「えー。俺の好みが反映されちゃうじゃん。シンシアが好きなのを着なよ。その方がシンシアらしいんじゃない?」

「魔王陛下のお好みが反映されてもよろしいのですの! 普段はわたくし好みの格好をいたしますが、必要な時は魔王陛下お好みの清楚で品のある格好をいたしますわ!」

「そう? まぁ、色っぽ過ぎるボンテージで謁見とかはちょっとマズいし、この連休の間にドレス選びもしようか」

「えぇ! わたくし、どんなドレスでも着こなしてみせましてよ!」

「美人だもんなぁ。なんでも似合いそう」

「びっ!? ……魔王陛下は、わたくしのことを美しいと思っていらっしゃったのですか?」

「え? うん。普通に」

「では何故すぐに恋をしなかったのです!?」

「単なる好みの問題?」

「むぅ。わたくしは、そんなに魔王陛下のお好みから外れておりまして?」

「まぁ。でも大丈夫。結婚したからには、ちゃんとシンシアを愛せるように頑張るから。……ハーレムつくろうとしたら血の海ができそうだし、ハーレムは諦めた」

「まぁ! わたくしだけですのね! 側室を迎えようとしたら、その側室を食い殺しますので悪しからず」

「うん。そう言うと思った!」

「他には、何が好きですの?」

「そうだなぁ……料理長のご飯? くっそ忙しい毎日の楽しみ兼癒やしなんだよねぇ」

「……確かに、先程いただいたと食事は美味しかったですわ。しかし! やはり、わたくし今から厨房に……!」

「行かなくていいから。手料理はおいおいで……」

「むぅ。今は諦めますわ。魔王陛下のお心と共に胃袋までも掴んでみせましてよ!」

「あ、はい。がんばれ?」


 魔王は、満腹だったお腹が完全に落ち着くまで、シンシアと初めてと言ってもいい程、色んな話をした。

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