魔王に転生したからハーレムを作ろうとしたのに肉食系女子(物理)に邪魔されて作れないっ!(泣)

丸井まー(旧:まー)

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お仕置き祭り編

7:やり過ぎました! ごめんなさいっ!

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 魔王は、わんわん泣きまくっているシンシアをどうしたものかと眺めていた。とりあえず落ち着かせたいのだが、その方法が分からない。いっそ誰かに助けを求めるかとも思ったのだが、この状況を見られたら、シンシアが更に泣き喚きそうな気がしないでもない。


「ひどいぃぃぃぃっ! わ、わたくしっ、いやって言ったぁぁぁぁ!!」

「あ、はい。そうだね?」

「あんまりですわっ! あんまりですわぁぁぁぁ! うわぁぁぁぁぁぁん!!」

「あー、シンシア? とりあえず落ち着こう? あ、お酒飲む? 飲んで忘れよう! そうだよ! なかったことにしよう!」

「なかったことにできるとお思いですの!? うぇっ、うぇっ、うぇぇぇぇぇぇん!!」

「えーと、えーと……や、やり過ぎましたっ! ごめんなさいっ!!」


 魔王は打つ手もなく、シンシアに向かって、がばっとジャパニーズ土下座をした。魔国に土下座というものはないのだが、チラッとシンシアを見れば、シンシアがえぐえぐ泣きながら、ぽかんと間抜けな顔をしていた。


「何をしてらっしゃるの?」

「えーと……土下座といいまして……最上級の謝罪的な?」

「ぐずっ。本当に謝っておりますの?」

「あ、はい。ごめんね。やり過ぎました」

「…………では! 責任を取ってくださりませ!」

「というと?」

「結婚以外ありえませんわ! あんな、あんなところ……みら、見られて……うっ、うっ、うぇぇぇぇぇぇん!」

「わー! もう泣かないで! 頼むからっ! やり過ぎたって! 本当にごめんっ!!」

「あまりにも酷過ぎますわぁぁぁぁ!! 責任取りなさいぃぃぃぃ!!」

「は、はいっ!! 責任取るから! 責任取るから泣きやんで!!」

「絶対ですわよ!? 絶対に責任取りなさいっ!! わたくしの、あんなところを見たのですからっ!! も、も、わたくし、恥ずかしくてっ! う、う、うぇっ、うぇっ……うぇぇぇぇぇぇ……」

「よ、よーしよしよしよし。とりあえず落ち着こう? ほぉら。泣きやんでー。責任取るから泣きやもう?」


 魔王はシンシアの波打つ赤毛が美しい頭を撫で撫でしながら、できるだけ優しい声を出した。
 何故かシンシアの泣き声がちょっと大きくなる。
 魔王はシンシアが泣きやむまで、シンシアの頭をやんわりと撫で回した。

 シンシアが泣きやんだのは、体感で二時間くらい経った後だ。魔王は衣装箪笥の中からタオルを取り出し、汗と涙と鼻水と涎で化粧がぐちゃぐちゃになっているシンシアの顔を優しく拭いてやった。

 シンシアが泣きすぎて赤くなっている鼻を啜り、腫れぼったくなった目で魔王を見て口を開いた。


「責任をお取りなさい。結婚式は来月ですわ。花嫁衣装はもう出来ております」

「来月!? そんな急には無理だよ!?」

「責任、取るって言いましたわよね?」

「あ、はい……せ、せめて再来月にしてくれない? 来賓の準備とか諸々の調整があるからさ」

「むぅ。では、再来月でいいですわ。魔王陛下」

「あ、はい」

「わたくしのお尻には、に・ど・と! 触らないように!!」

「……はぁい」


 シンシアが鬼のような顔で言った。美人のガチギレ顔は中々に恐ろしい。シンシアは勝ち気な感じの美女だから、尚更怖い。
 魔王はシンシアの泣き落としとガチギレ顔に圧されて、シンシアと結婚することを承諾してしまった。さようなら。うはうはエロエロハーレム生活。シンシアが妻になったら、間違いなくハーレムなんか作れない。

 魔王は、やり過ぎちゃったことをちょっぴり反省しつつ、シンシアとの夫婦生活を想像して、思わず遠い目をした。
 魔王の好みの対極にいるようなシンシア相手に、魔王の魔王は使い物になるのだろうか。こんだけエロいことをしても、ゆるーーく勃起した程度である。朝勃ちの方がまだ元気いっぱいだ。男は意外と繊細なのである。初夜で勃起しない自信しかない。

 魔王はシンシアに気づかれないように溜め息を吐くと、とりあえずシンシアを寝室にもある小さめの風呂場に連れて行った。赤いボンテージは本当に魔王の趣味ではないので、魔王の寝間着を貸してやり、汗や体液で汚れた身体をシャワーでキレイにさせる。

 魔王が後片付けをしていると、風呂場からシンシアが出てきた。すっぴんが恥ずかしいのか、自分の頬を両手で押さえている。魔王の方が頭一つ分は背が高いので、シンシアは魔王の寝間着のシャツだけを着ていた。豊満なおっぱいで胸元は押し上げられているが、だぼついた感じとか、萌え袖状態なのは、ちょっとぐっとくるものがある。あと、すっぴんだと、普段の勝ち気な感じがちょっと薄れる。問答無用で美人なのは変わらないのだが、少しだけ幼い感じがして、シンシアなのにちょっと可愛い。なんか悔しいけど、本当にちょっと可愛い。シンシアなのに。

 魔王が謎の悔しさでギリギリ歯ぎしりしていると、シンシアがおずおずと近寄ってきて、魔法でキレイにした椅子を持っている魔王の寝間着の裾をちょこんと握った。お前そういうことするキャラじゃないだろーーーーっ! と内心思いながらも、ぶっちゃけちょっと可愛いと思ってしまう。すっぴんか。すっぴん効果なのか。

 すっぴんのシンシアが、上目遣いで恥ずかしそうに口を開いた。


「わ、わたくしの全部を見たんですからっ、逃しませんわよっ!」

「あ、うん。流石に反省してるので、逃げないよ」

「そ、それならいいのですわ」


 シンシアがふにゃっと嬉しそうな笑みを浮かべた。だから、お前そういう笑顔浮かべるキャラじゃないだろーーーーっ! と内心思いながらも、ちょっとシンシアが可愛いと思ってしまう魔王であった。
 だって! 普段の勝ち気過ぎる感じとのギャップが!!
 魔王は、前世ではギャップ萌え過激派だった。ツンデレ大好き民でしたけど何か?

 魔王がなんとも悔しくてギリギリ歯ぎしりしていると、シンシアがこてんと首を傾げた。だからお前以下略。


「今日はもう寝ましょう? 流石に疲れましたわ」

「あ、うん。ん? 一緒に寝るの?」

「当然ですわ。夫婦になるんですもの。……今日はもう何もいたしませんけど」

「あ、はい」


 魔王は使った性具に清浄魔法をかけて箱に片付けた。箱を見たシンシアが、突然掌にぼわっと炎を出した。


「シンシアさん?」

「燃やしますわ。その忌まわしい箱」

「それはダメッ! これからも使うかもしれないし!」

「尚更燃やしますわ」

「シンシア。この箱には君と安全に愛し合うためのものも入っているんだ」

「そっ、そうですの? ……それならば、今日は燃やさないでいてさしあげますわ! 魔王陛下と愛し合うためですもの!」

「あ、うん。じゃあ、寝ようか。明日は間違いなく城中大騒ぎになるし」

「えぇ! い、一緒に寝ますわ!」


 シンシアが白い頬を淡く赤く染めて、嬉しそうに笑った。本当に悔しいことに、すっぴんのシンシアはちょっと可愛い。
 魔王はシンシアに手を引かれて、ベッドに上がり、シンシアと並んで布団の中に潜り込んだ。シンシアが魔王の腕に両腕を絡めて、嬉しそうに、ふにゃっと笑った。だからお前以下略。

 すぐにシンシアの規則正しい寝息が聞こえてきた。あれだけ連続絶頂しまくって、ギャン泣きすれば、それはもう疲れるだろう。何気なくシンシアの寝顔を見れば、いつもよりも幼い感じがして、全くを以て不本意だが、正直ちょっと可愛い。

 魔王は小さく溜め息を吐くと、静かに目を閉じた。うはうはエロエロハーレム生活の夢は、完全に諦めた方がよさそうだ。シンシアに熱烈に愛されている自覚はうっすらあるので、これからはシンシアを愛する努力をするべきだろう。どうせ夫婦になるのなら、仲がいいに越したことはない。多分、子供もできるだろうし、前世では結局つくれなかった自分だけの家族ができることになる。

 魔王は、益々賑やかな生活になりそうな予感に、ほんの微かに口角を上げた。

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