『はみ出し者』の愛の卵

丸井まー(旧:まー)

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10:怖いけど怖くない

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 ヤニクの唇を舐めていたヴィーターが少し顔を離し、口を開いた。


「口を開けて舌を出せ。目は閉じるな。私を見ていろ」

「ん」


 ヤニクが言われた通りに口を開けて舌を出すと、ぬるりとヴィーターの熱くぬるついた舌がヤニクの舌に触れた。ぬるぬると舌同士を擦りつけ合うように絡ませられると、なんだか背筋がぞわぞわする。下腹部がじんわりと熱くなっていく。初めての感覚に戸惑うが、じっと間近にあるヴィーターの淡い水色の瞳を見つめていると、そんなに怖くない。

 ヤニクの舌を舐めながら、ヴィーターの舌がヤニクの口内に入ってきた。ヴィーターの舌が、ヤニクの歯列をなぞり、歯の裏側をつーっとなぞって、上顎をねっとりと舐めてきた。背筋のぞわぞわがちょっと強くなって、下腹部がもっと熱くなってくる。ヤニクの舌をぬるぬると舐め回していたヴィーターがヤニクの口から舌を出し、ヤニクの噛み傷がうっすらある下唇をやんわりと吸った。
 唇を触れ合わせたまま、ヴィーターが囁いた。


「気持ちいいか」

「よく分かんねぇけど、下っ腹が熱い」

「勃起しているからだろうな。当たっている」

「え?」

「見るか?」

「……あんま見たくない」

「そうか。なら、私の顔だけ見ていろ」

「うん」


 ヴィーターがべろっとヤニクの唇を舐めてから、ヤニクの盛り上がった胸筋に顔を伏せた。力が入っていない胸筋に顔を埋めたヴィーターが、目だけでヤニクを見ながら、ヤニクの乳首に舌を這わせた。ヤニクは、きょとんとヴィーターを見ながら、首を傾げた。


「なんで、そんなとこ舐めるんだ?」

「慣らせばここも気持ちよくなる」

「ふぅん」


 ヴィーターが片手でふにふにとヤニクの胸筋を揉みながら、ヤニクの乳首をちろちろと舐め、口に咥えて、ちゅうっと吸った。気持ちいいというより、なんか擽ったい。ヤニクが小さく笑うと、ヴィーターがちょっと目を細めた。
 反対側の乳首も舐められて吸われたが、ちょっと擽ったいだけだった。

 ヴィーターがヤニクの胸筋から顔を離し、ヤニクの唇をまた舐めた。ヤニクがなんとなく舌を伸ばせば、ぬるぅっと舌を絡めてくる。背筋がぞわぞわして、下腹部が熱くて堪らななくなってくる。もしかしたら、これって『気持ちいい』ってことなんだと思う。ヴィーターに舐められるのは、怖くないし、『気持ちいい』。

 ヤニクは、触れていた唇を離して伏せていた上体を起こしたヴィーターを見上げた。ヴィーターが何かを手に取った。ヴィーターの顔だけを見ているので、何を手に取ったのかは分からない。でも、ヴィーターだから、酷いことはしない筈だ。
 ヴィーターに対して、自分でもよく分からない信頼感がある。不思議である。

 ヴィーターが再び上体を伏せ、ヤニクの唇を優しく吸った。唇を触れ合わせたまま、ヴィーターが囁いた。


「今から浄化球を入れる」

「なんだそれ」

「尻の中に入れると、中をキレイにしてくれる代物だ」

「ふぅん」

「触るぞ。怖くなったら、私にしがみつけ。私の顔だけ見ていろ」

「うん」


 ヤニクは、まだそんなに怖くもなかったが、なんとなく、ヴィーターのしっかりした首に両腕を絡めた。アナルにちょっとひんやりするものが触れ、ぐっと球体のものをアナルの中に押し込められた。ヤニクは思わずビクッと身体を震わせたが、じっとヴィーターの淡い水色の瞳を見つめて、大きく息を吐いた。まだ、大丈夫だ。性行為は怖いけど、ヴィーターは怖くない。

 浄化球を入れて暫くそのままでいると、ヴィーターがべろーっとヤニクの頬を舐めた。


「指を入れる。痛かったら、ちゃんと言え」

「お、おう……わ、わ、わ……」

「大丈夫だ。お前を抱いているのは私だ。私だけ見ていろ」

「う、うん……」


 ぬるついた硬いヴィーターの指がアナルに触れた。瞬間、ぞわっと鳥肌が立つのを感じた。じわじわ怖いが、いつも通り無表情なヴィーターの顔を見ていると、泣き喚きたくなるような恐怖心は湧き上がってこない。ゆっくりとヴィーターの指がアナルの中に入ってきた。異物感が少し気持ち悪い。内臓を直接触れられるのが怖いが、ヴィーターの顔を見ていれば、取り乱す程ではない。

 ヴィーターがヤニクの腹の中を指で探るようにしながら、ヤニクの唇に何度も優しく吸いつき、べろーっとヤニクの下唇を舐めた。


「お前の気持ちいいところを探す」

「……そんなもん、あんのかよ」

「ある。今は痛いか」

「痛くねぇ……けど、ちょっと気持ち悪い」

「吐きそうか」

「そこまでじゃねぇ」

「少しだけ堪えろ」

「う、うん」


 ヴィーターの指が腹の中でゆっくりとした感じで動き回っている。なんだか、じわじわと腰のあたりがぞわぞわしてき始めた。それをヴィーターに言うと、ヴィーターが褒めるようにべろっとヤニクの頬を舐めた。

 ヴィーターの指がある一点に触れた瞬間、ヤニクは驚いてビクッと身体を震わせ、大きな声を上げた。今まで経験したことがない強烈な刺激が脳天へと突き抜けて、ペニスから何か漏れそうな感じがした。ヤニクはヴィーターの首に絡めている腕に力を入れて、ヴィーターの顔をじっと見た。


「ここだな」

「ひっ、あっ! そこっ! なんかやだぁ! こわいっ! なんか出そうっ!」

「大丈夫だ。気持ちよくなるだけだ」

「うあぁぁっ! ひんっ! うっ! あぅっ! あぁっ!!」

 そこを指ですりすりされると、強烈な刺激で頭の中が真っ白になる。勝手に変な声が出てしまう。じわぁっと涙が滲み始める。怖くはない。怖くないのに、何故か涙が出そうになる。ヴィーターが指を動かして、そこをすりすり擦りながら、ヤニクの目元を舐めた。
 なんとなくほっとしたのも束の間、とんとんっとそこを優しく叩かれる。


「あぁ!?」

「ヤニク。覚えろ。これは『気持ちいい』」

「え、あ? あぅっ! ひぅっ!」

「言ってみろ。『気持ちいい』」

「き、きもちいいっ! んあーーっ! も、やだ、なんかっ、へんっ!」

「大丈夫だ。気持ちよくなっているだけだ。……指を増やすぞ」

「んぅ……ふっ、あぅ……あぁっ!」


 ヴィーターの指がアナルから抜け出たかと思えば、すぐにまたアナルの中に入ってきた。ちょっとアナルが引き攣れるような感覚がするが、痛いという程ではない。それよりも、『気持ちいい』ところを指で挟まれ、くにくに弄られる刺激が強すぎて、ヤニクは訳が分からなくなり、えぐえぐと泣き出した。『気持ちいい』が身体の中で暴れ回っているような感じがする。下腹部が熱くて、ペニスから今すぐにでも何か漏れてしまいそうだ。出したいのに、出ない。


「ヴィ、ヴィーター! だしたいっ! なんかでるっ! でないっ!」

「出すのはもう少し我慢しろ。私のものが入ったら出させる」

「うぁぁっ! き、きもちいいっ、きもちいいっ、こわいっ、ヴィーターッ!」

「大丈夫だ。もう少し我慢したら、楽になれる」


 ヤニクはヴィーターの言うことを信じて、身体の中を暴れ回る『気持ちいい』にひたすら耐えた。

 体感的には、すごく長い時間が経った気がする。ヤニクのアナルの中には、ヴィーターの硬い指が三本入るようになった。『気持ちいい』ところばかりを刺激され続けて、頭の中がぼんやりする。ずるぅっとヴィーターの指がアナルの中から抜け出ていった。


「ヤニク。私の腰に足を絡めろ」

「ん」

 ヤニクは、言われた通りにヴィーターの腰に足を絡めた。
 ヤニクが涙で滲む目でじっとヴィーターの顔を見つめていると、なんだかひくひくする感じがするアナルに、熱くて硬いものが触れた。ゆっくりとヤニクのアナルを抉じ開けるようにして、硬いものがアナルの中に入ってくる。ちょっとだけ痛いが、背筋がぞわぞわして、出したい感覚が強くなる。ヴィーターの顔をじっと見ていると、ヴィーターが微かに眉間に皺を寄せた。ヤニクはずずっと鼻を啜って、ヴィーターに問いかけた。


「ヴィーターも気持ちいいのか」

「かなりな。お前の中は気持ちいい」


 ヴィーターの熱い息が唇にかかったかと思えば、優しく唇を吸われた。ゆっくりと硬いものがヤニクの中の奥の方に入ってくる。ぐりっと『気持ちいい』ところを硬いもので擦られた。反射的に、ビクッと身体が震えて、きゅっとアナルに力を入れてしまう。
 はぁっと、ヴィーターが大きく熱い息を吐いた。ヴィーターの淡い水色の瞳が、常とは違う色を浮かべている。ちょっと怖いけど、ヴィーターだから怖くない。

 ヤニクは、腹の中が満たされていく感覚に、ぶるっと身体を震わせ、熱い息を吐いた。
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