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3:久しぶりの風呂
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魔の森の近くの砦に来て、そろそろ一か月になる。ヤニクは、少しずつだが、着実に剣の腕を上げていた。鎧を着て全力疾走することにも慣れてきたし、重い大剣に振り回されずに、ちゃんと自分の意思通りに動かせるようになってきた。
ヴィーターとは、砦に来た時以来、まともに顔を合わせていない。第一印象が悪かったし、今のところ犯されずに済んでいるので、ヤニク的にはいい感じだ。砦の騎士達とも、基本的には話さない。剣の稽古の時に助言をくれることはあるが、一応、騎士団長の伴侶という立場なので、必要以外で話すことを禁じられているらしい。ヤニクは、元々集落でも殆ど話すことがなかったので、逆に気楽でちょうどいいくらいだ。
貴族の伴侶となったが、噂に聞く社交界とやらにも出なくていいようだし、ヤニクは毎日楽しく剣の稽古に励んでいる。
季節は初夏に差し掛かっている。汗だくの身体を爽やかな風が撫でるのが心地いい。ヤニクは小休憩中に水を飲みながら、涼やかな風に目を細めた。
デリークと剣の打ち合いをして、その後は、騎士達に混ざって基礎訓練をした。昼食後も、騎士達に混ざって剣の稽古をして、夕食後はデリークと剣の打ち合いをする。
デリークは元々騎士だったらしく、老体とは思えない程俊敏に動く上に、力も強い。ヤニクはデリークに遊ばれながら、就寝時間まで、ひたすら剣を振るい続けた。
今日もへとへとに疲れて自室に戻り、デリークが運んできたお湯で身体を拭いた。風呂なし生活にも慣れてきたが、こうも毎日へとへとに疲れていると、ゆっくり温かいお湯に浸かりたくなる。
ヤニクは身体を拭きながら、ダメ元でデリークに話しかけてみた。
「デリーク。風呂に入りたい。少しお湯に浸かるだけでいい」
「……そうですな。そろそろ身体の疲れもかなり溜まっている筈です。今の時間帯でしたら、他の者達も風呂にいないでしょうから、少しだけ入浴をいたしましょう。ただし、風呂で寝ないように。私は見張りとして脱衣所の前に立っておきます」
「本当か!? よっしゃ! 言ってみるもんだな!」
「着替えをお持ちいたしますので、少々お待ちください」
「あ? いらねぇけど」
「下着一枚で砦内を歩くおつもりですか。寝間着をご用意いたしますので、お待ちください」
「お、おう」
デリークにちょっときつめの口調で言われて、ヤニクは大人しくデリークが寝間着を持って戻ってくるのを部屋で待った。
戻ってきたデリークの案内で、風呂場に向かう。砦の風呂場は、魔石を使っていて、いつでも温かいお湯が出るようになっているらしい。脱衣所に着替えを置いたデリークに、風呂の使い方を教えてもらう。
広い洗い場と広い浴槽があり、ヤニクは久しぶりの風呂に気分がぎゅんと上がった。
早速、脱衣所で服を脱ぎ、洗い場の小さな椅子に座って、石鹸を使って身体を洗い始める。毎日汗だくになるのに、お湯で身体を拭くことしかできなかったので、結構垢が溜まっていた。少し伸びた髪も洗髪剤で洗うと、すごくスッキリした。全身を丸洗いして、身体の泡を流したら、ヤニクはいそいそと広い浴槽に向かった。
広い浴槽のお湯は、ちょっと熱めだったが、肩までしっかりお湯に浸かると、一気に疲れが溜まった身体がほぐれていく気がする。『ほあー』と気の抜けた声を出しながら、ヤニクは久しぶりの入浴を楽しんだ。
身体がほこほこに温まると、ヤニクは浴槽から出て、ぺたぺたと歩いて脱衣所に向かった。脱衣所で身体を拭いていると、脱衣所に誰かが入ってきた気配がした。そちらに顔を向ければ、入ってきたのはヴィーターだった。内心『うげっ』と思ったヤニクは、急いで身体を拭き、寝間着を着た。髪が濡れたままの状態で脱衣所を出ようとすると、服を脱いでいるヴィーターに声をかけられた。
「おい。髪は乾かしてから出ろ。はしたない」
「俺の髪が濡れてても誰も気にしない」
「お前の髪は目立つ。お前が卵を産める者だということは砦の者全員が知っている。無駄に誘惑をするな」
「誘惑なんざするか。きもちわりぃ」
「だったら、髪を拭いてから部屋に戻れ」
「……ちっ」
ヤニクは舌打ちをして、いつの間にか脱衣所に入ってきていたデリークから差し出されたタオルでガシガシと髪を拭いた。ざっと髪が乾いたので、今度こそ脱衣所を出た。デリークと共に、自室に戻る。
自室に戻ると、ヤニクはベッドに腰かけて、デリークに話しかけた。
「なぁ。毎日じゃなくてもいいからよぉ。今の時間帯くらいに風呂に入りてぇ。石鹸で身体を洗ったり、お湯に浸かりてぇ」
「ヴィーター様にご許可をいただいておきましょう」
「よっしゃ! ありがとう! デリーク!」
「……いえ。よくもまぁ、一か月も我慢されましたな」
「あ? だって、風呂は使えねぇって言われてたし」
「それはそうですが。これから、益々剣の稽古が厳しくなってまいります。入浴による疲労回復は必要不可欠でしょう。ヴィーター様はあまりよい顔をなされないでしょうが、ご許可をもぎとってみせましょう」
「頼りになるなぁ。本当にありがてぇ」
「いえ。それでは、おやすみなさいませ」
「おう。おやすみ。デリーク」
ヤニクは、着ていた寝間着を脱いで下着一枚の姿になると、ベッドに横になり、夏物の薄い毛布に包まった。疲れた身体がいい感じにほぐれており、すぐに眠気がやってくる。ヤニクは、いつもの時間に叩き起こされるまで、ぐっすりと眠った。
翌朝は、随分と久しぶりに身体が軽かった。いつも疲れが残っていて身体が重かったり、筋肉痛であちこちが痛むのに、それが殆どない。入浴効果すごい。身体が軽いと、気持ちもなんだか軽くなる。
ヤニクはご機嫌に服を着て、大剣を片手に、デリークとの朝稽古をしに部屋を出た。
質素な朝食を食べながら、デリークが話しかけてきた。ちなみに、ヤニクはいつもデリークと2人で食事をしている。騎士達は食堂で食事をしていて、ヴィーターはいつも自室か執務室で食事をしているらしい。ヤニクは、ヤニクの部屋の隣の小部屋で、いつもデリークと一緒に食事をしている。
「今日の動きは中々のものでした。やはり、昨夜の入浴がよかったのでしょう。今日中に、ヴィーター様から入浴のご許可をいただいてきます」
「よっしゃ! 頑張ってくれ! 風呂に入れるってすごくいいな! 今日は起きた時から身体が軽い」
「それだけ疲労が溜まっていらっしゃるのでしょう。風呂の湯には、疲労回復に効く入浴剤を入れてありますから、それも効いたのかと」
「へぇ。尚更、毎日入りてぇな。身体が軽いと、いつもより動ける気がする」
「はい。今日の動きは格別よいものでした。朝食後も頑張ってください」
「うん。早くデリークに一勝してぇ」
「それはまだまだ先ですな」
「今に見てろ。すぐに追いついてやる」
「私は幼い頃より剣を握って生きておりますれば。早々追い越されては、立つ瀬がありませぬな」
「ははっ。この砦の暮らしは本当に楽しい」
「……楽しいのですか? 鍛錬三昧の日々が?」
「卵を産むしか能がないと言われて飼い殺しにされる毎日より、よっぽど『生きてる』って感じがする」
「……左様ですか。……では、今日から少々稽古の難易度を上げてまいりましょう。簡単に音を上げないでいただきたく存じます」
「ははっ! どんどこーい。食らいついてやるよ」
「ふふっ。その意気でございます」
珍しくデリークが小さく笑った。デリークは基本的にいつも厳しい顔をしている。笑うと、元々厳つい顔が更に厳つく見える。笑った顔の方が厳つくて怖いなんて不思議である。小さな子供が見たら泣きそうな笑顔だが、ヤニクは悪い気はしなかった。むしろ、デリークが笑ってくれて、ちょっと嬉しい。
人間は老若男女嫌いだし、基本的には1人でいたい派だが、デリークは剣の師匠なので、ちょっとだけ特別である。
ヤニクは、夜の入浴を楽しみに、1日ひたすら鍛錬に励んだ。
ヴィーターとは、砦に来た時以来、まともに顔を合わせていない。第一印象が悪かったし、今のところ犯されずに済んでいるので、ヤニク的にはいい感じだ。砦の騎士達とも、基本的には話さない。剣の稽古の時に助言をくれることはあるが、一応、騎士団長の伴侶という立場なので、必要以外で話すことを禁じられているらしい。ヤニクは、元々集落でも殆ど話すことがなかったので、逆に気楽でちょうどいいくらいだ。
貴族の伴侶となったが、噂に聞く社交界とやらにも出なくていいようだし、ヤニクは毎日楽しく剣の稽古に励んでいる。
季節は初夏に差し掛かっている。汗だくの身体を爽やかな風が撫でるのが心地いい。ヤニクは小休憩中に水を飲みながら、涼やかな風に目を細めた。
デリークと剣の打ち合いをして、その後は、騎士達に混ざって基礎訓練をした。昼食後も、騎士達に混ざって剣の稽古をして、夕食後はデリークと剣の打ち合いをする。
デリークは元々騎士だったらしく、老体とは思えない程俊敏に動く上に、力も強い。ヤニクはデリークに遊ばれながら、就寝時間まで、ひたすら剣を振るい続けた。
今日もへとへとに疲れて自室に戻り、デリークが運んできたお湯で身体を拭いた。風呂なし生活にも慣れてきたが、こうも毎日へとへとに疲れていると、ゆっくり温かいお湯に浸かりたくなる。
ヤニクは身体を拭きながら、ダメ元でデリークに話しかけてみた。
「デリーク。風呂に入りたい。少しお湯に浸かるだけでいい」
「……そうですな。そろそろ身体の疲れもかなり溜まっている筈です。今の時間帯でしたら、他の者達も風呂にいないでしょうから、少しだけ入浴をいたしましょう。ただし、風呂で寝ないように。私は見張りとして脱衣所の前に立っておきます」
「本当か!? よっしゃ! 言ってみるもんだな!」
「着替えをお持ちいたしますので、少々お待ちください」
「あ? いらねぇけど」
「下着一枚で砦内を歩くおつもりですか。寝間着をご用意いたしますので、お待ちください」
「お、おう」
デリークにちょっときつめの口調で言われて、ヤニクは大人しくデリークが寝間着を持って戻ってくるのを部屋で待った。
戻ってきたデリークの案内で、風呂場に向かう。砦の風呂場は、魔石を使っていて、いつでも温かいお湯が出るようになっているらしい。脱衣所に着替えを置いたデリークに、風呂の使い方を教えてもらう。
広い洗い場と広い浴槽があり、ヤニクは久しぶりの風呂に気分がぎゅんと上がった。
早速、脱衣所で服を脱ぎ、洗い場の小さな椅子に座って、石鹸を使って身体を洗い始める。毎日汗だくになるのに、お湯で身体を拭くことしかできなかったので、結構垢が溜まっていた。少し伸びた髪も洗髪剤で洗うと、すごくスッキリした。全身を丸洗いして、身体の泡を流したら、ヤニクはいそいそと広い浴槽に向かった。
広い浴槽のお湯は、ちょっと熱めだったが、肩までしっかりお湯に浸かると、一気に疲れが溜まった身体がほぐれていく気がする。『ほあー』と気の抜けた声を出しながら、ヤニクは久しぶりの入浴を楽しんだ。
身体がほこほこに温まると、ヤニクは浴槽から出て、ぺたぺたと歩いて脱衣所に向かった。脱衣所で身体を拭いていると、脱衣所に誰かが入ってきた気配がした。そちらに顔を向ければ、入ってきたのはヴィーターだった。内心『うげっ』と思ったヤニクは、急いで身体を拭き、寝間着を着た。髪が濡れたままの状態で脱衣所を出ようとすると、服を脱いでいるヴィーターに声をかけられた。
「おい。髪は乾かしてから出ろ。はしたない」
「俺の髪が濡れてても誰も気にしない」
「お前の髪は目立つ。お前が卵を産める者だということは砦の者全員が知っている。無駄に誘惑をするな」
「誘惑なんざするか。きもちわりぃ」
「だったら、髪を拭いてから部屋に戻れ」
「……ちっ」
ヤニクは舌打ちをして、いつの間にか脱衣所に入ってきていたデリークから差し出されたタオルでガシガシと髪を拭いた。ざっと髪が乾いたので、今度こそ脱衣所を出た。デリークと共に、自室に戻る。
自室に戻ると、ヤニクはベッドに腰かけて、デリークに話しかけた。
「なぁ。毎日じゃなくてもいいからよぉ。今の時間帯くらいに風呂に入りてぇ。石鹸で身体を洗ったり、お湯に浸かりてぇ」
「ヴィーター様にご許可をいただいておきましょう」
「よっしゃ! ありがとう! デリーク!」
「……いえ。よくもまぁ、一か月も我慢されましたな」
「あ? だって、風呂は使えねぇって言われてたし」
「それはそうですが。これから、益々剣の稽古が厳しくなってまいります。入浴による疲労回復は必要不可欠でしょう。ヴィーター様はあまりよい顔をなされないでしょうが、ご許可をもぎとってみせましょう」
「頼りになるなぁ。本当にありがてぇ」
「いえ。それでは、おやすみなさいませ」
「おう。おやすみ。デリーク」
ヤニクは、着ていた寝間着を脱いで下着一枚の姿になると、ベッドに横になり、夏物の薄い毛布に包まった。疲れた身体がいい感じにほぐれており、すぐに眠気がやってくる。ヤニクは、いつもの時間に叩き起こされるまで、ぐっすりと眠った。
翌朝は、随分と久しぶりに身体が軽かった。いつも疲れが残っていて身体が重かったり、筋肉痛であちこちが痛むのに、それが殆どない。入浴効果すごい。身体が軽いと、気持ちもなんだか軽くなる。
ヤニクはご機嫌に服を着て、大剣を片手に、デリークとの朝稽古をしに部屋を出た。
質素な朝食を食べながら、デリークが話しかけてきた。ちなみに、ヤニクはいつもデリークと2人で食事をしている。騎士達は食堂で食事をしていて、ヴィーターはいつも自室か執務室で食事をしているらしい。ヤニクは、ヤニクの部屋の隣の小部屋で、いつもデリークと一緒に食事をしている。
「今日の動きは中々のものでした。やはり、昨夜の入浴がよかったのでしょう。今日中に、ヴィーター様から入浴のご許可をいただいてきます」
「よっしゃ! 頑張ってくれ! 風呂に入れるってすごくいいな! 今日は起きた時から身体が軽い」
「それだけ疲労が溜まっていらっしゃるのでしょう。風呂の湯には、疲労回復に効く入浴剤を入れてありますから、それも効いたのかと」
「へぇ。尚更、毎日入りてぇな。身体が軽いと、いつもより動ける気がする」
「はい。今日の動きは格別よいものでした。朝食後も頑張ってください」
「うん。早くデリークに一勝してぇ」
「それはまだまだ先ですな」
「今に見てろ。すぐに追いついてやる」
「私は幼い頃より剣を握って生きておりますれば。早々追い越されては、立つ瀬がありませぬな」
「ははっ。この砦の暮らしは本当に楽しい」
「……楽しいのですか? 鍛錬三昧の日々が?」
「卵を産むしか能がないと言われて飼い殺しにされる毎日より、よっぽど『生きてる』って感じがする」
「……左様ですか。……では、今日から少々稽古の難易度を上げてまいりましょう。簡単に音を上げないでいただきたく存じます」
「ははっ! どんどこーい。食らいついてやるよ」
「ふふっ。その意気でございます」
珍しくデリークが小さく笑った。デリークは基本的にいつも厳しい顔をしている。笑うと、元々厳つい顔が更に厳つく見える。笑った顔の方が厳つくて怖いなんて不思議である。小さな子供が見たら泣きそうな笑顔だが、ヤニクは悪い気はしなかった。むしろ、デリークが笑ってくれて、ちょっと嬉しい。
人間は老若男女嫌いだし、基本的には1人でいたい派だが、デリークは剣の師匠なので、ちょっとだけ特別である。
ヤニクは、夜の入浴を楽しみに、1日ひたすら鍛錬に励んだ。
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