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33:シモン家の変化
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シモンが朝食をもりもり食べていると、セベリノがぼそっと呟いた。
「そろそろ働くのもありかなー。ニー。どう思います?」
「好きにしろ」
「あ、はい。そう言うと思った」
「父さん、どこで働くの?」
「んー。雇ってもらえたらの話だけど、また警邏隊かなぁ。とはいえ、ブランクがあるしなぁ」
「お前なら問題ない」
「本当にそう思います?」
「あぁ」
「んーー。よし! ダメ元で警邏隊の事務室行って、中途採用の求人がないか、聞いてみます! シモンも大きくなったしね。専業主夫もいいけど、やっぱニーと働きたいなぁって、ずっと思ってたんで」
「ん。お前なら今でもすぐに副官が勤まる」
「ですかねー。シモンはどう思う? ニーと一緒に警邏隊で働くことになると、今までみたいに、家で出迎えとかできなくなるけど」
「いいと思うよー。俺もちっちゃい子じゃないし。自分のことは自分でできるし。料理も簡単なやつなら作れるし。父さんが警邏隊でまた働きたいなら、応援するだけかなぁ。母さん。父さんって、すっごい優秀な副官だったんでしょ?」
「ん。今の副官も頑張っているが、セベリノ程仕事はできない」
「だって。父さん、母さんの副官になったら?」
「んーー。それは人事が決めることだから、すぐにニーの副官になれるかは分からないんだけど。……やれるだけやってみようかな」
セベリノは、シモンがまだ幼い頃に、警邏隊を辞めて専業主夫になった。シモンが幼い頃は、身体が弱くて、すぐに熱を出したりしていたかららしい。シモンももうすぐ14歳だ。自分のことは自分でできるし、身体も丈夫になった。セベリノが『今の御時世、男も家事ができなきゃね!』と積極的に家事を教えてくるので、一応、洗濯と掃除はできるし、料理も簡単なものなら作れる。2人とも仕事が忙しい時期でも、多分なんとかなる気がする。シモンがやりたいことをやっているのだから、セベリノだって、やりたい仕事をやってもいい筈だ。シモンは、セベリノを応援する気満々である。
早速、今日のうちに警邏隊に話に行くというセベリノに見送られて、シモンはニルダと一緒に家を出た。いつも、途中までは一緒に歩いている。シモンはニルダを見上げて、話しかけた。
「母さん。父さんが働き始めたら、俺が家のことするよ」
「分担してやる。セーべが炊事、俺が洗濯、シモンは掃除」
「あ、その方がいっか。仕事が忙しい時は、料理も俺がするよ。父さん程上手くはできないけど」
「ん。助かる。……セーべを応援してやりたい」
「うん。俺もー。父さん、警邏隊でまた働けるといいね」
「間違いなく雇われる。セーべはかなり優秀な副官だった」
「へぇー。母さんも父さんもすごいなぁ。俺も頑張らなきゃ」
「ん。無理はするな」
「うん。じゃあ、いってきます!」
「ん。気をつけろ」
「はぁーい」
シモンはニルダと別れて、学校に向かって走り出した。帰ったら、いつも笑顔で出迎えてくれるセベリノが家にいなくなるのは少し寂しい気もするが、セベリノだって、自分がやりたいことをやってもいい。シモンだって、将来は警邏隊で働く予定だ。成人して高等学校を卒業するまで、あと4年。長いような、短いような、微妙な年数だ。案外、子供でいられる年月って短いのかもしれない。
ニルダとセベリノと一緒に働くのも楽しそうだ。なんだか、今からちょっとワクワクする。シモンは、走りながら、小さく口角を上げた。
学校が終わり、ベルタとカジョと一緒に家に帰ると、セベリノがいつもの飄々としたゆるい笑みで出迎えてくれた。
「シモーン。採用されちゃった」
「マジで!? 今日行ったばっかじゃん!!」
「いやー。ビックリだよねぇ。事務室で中途採用してないか聞いてたらさぁ、昔馴染みの人事課の課長が来て、即面接というか、即採用? みたいな? ブランクがあるから、一ヶ月研修受けて、その後はニーの副官だってさ」
「父さん! すごい! やった!」
「ははっ。忙しくなりそう」
シモンは笑いながら、セベリノに抱きついた。セベリノが嬉しそうに笑いながら、わしゃわしゃとシモンの頭を撫で回した。
きょとんとしているベルタとカジョに、朝の会話から説明すると、2人とも顔を輝かせた。
「セーべおじさん、すげーー!!」
「僕、ちょー応援します!!」
「ははっ。ありがとう。2人とも。おやつとか中々作れなくなるから、ちょっと申し訳ないんだけどねー」
「セーべおじさんのおやつ好きだけど、ニーおばさんから、めちゃくちゃ仕事ができる副官だったって聞いてっし、応援一択!!」
「僕もです!」
「俺もー。父さんは父さんがやりたいことをいっぱいやったらいいよ」
「ありがとー。3人とも。さて。じゃあ、とりあえず宿題しておいで。ニーが今日は早めに帰ってくるらしいから」
「「えぇーーーー!!」」
「ベルター。ごめんなんだけど、この2人の面倒お願いしていい?」
「はい! まっかせてください! 2人に宿題させつつ、試験前は勉強を叩き込みます! ビシバシと!」
「よろしく! 頼りにしてるよ。ベルタ」
「はいっ!!」
「カジョさん。ベルタが鬼を超えて鬼畜になりそうな気がするよ」
「やる気満々だなぁ。ベルタ。鬼畜にならないでくれることを祈ろうぜ。シモン」
「あはは。なんか言った?」
「「なんも言ってません」」
シモンはうきうきと居間に向かい、ベルタに監督されながら、宿題を終わらせた。セベリノがまた警邏隊で働いてくれるのが、なんだかすごく嬉しい。セベリノはすごいんだぞ! と学校中に自慢したいくらいだ。
初等学校の頃は、『幸福の導き手』である母親が働いて、父親が働かないのは変だと、何回も言われていた。別にうちの勝手だろうと無視していたが、それでも、ちょっぴり気にしていた。シモンが身体が弱かったから、セベリノは警邏隊を辞めた。その事もちょっと気にしていたので、セベリノがまた警邏隊で働けるのが、本当に嬉しい。
宿題が終わった頃に、ニルダが帰ってきた。セベリノが嬉しそうにニルダに報告すると、ニルダが嬉しそうな笑みを浮かべて、セベリノにキスをした。セベリノが、『もー! 子供達の前でー!』と照れて、ニルダをぽかぽか叩いていたが、顔は本当に嬉しそうにだらしなくゆるんでいた。シモンの両親は、今日も仲良しである。
剣の稽古をする為に庭に出る途中で、ベルタが目をキラキラさせて話しかけてきた。
「シモンのお父さんとお母さんって、本当に素敵だよね!!」
「そうかな?」
「うん!! 僕のお父さん達も仲いいけど、2人で家でも職場でも一緒に頑張れるって、すっごい素敵だと思うよ!」
「うん。ありがと。ベルタ」
シモンは、ベルタの言葉が嬉しくて、だらしなく笑った。今日はすっごくいい日だ。庭に出てきたニルダ指導の元、剣の素振りをしながら、シモンは頑張りたいことが増えたな、と思った。
自分の剣の稽古は勿論、働く両親のサポートがしたい。警邏隊に入隊したら、多分、独立して独り暮らしになるだろうし、家事は身につけておいて損はない。特に料理は頑張らねば。いつもセベリノが作ってくれる料理は美味しい。セベリノみたいに、家事もできて、優しくて、仕事もできる立派な男になりたい。
警邏隊でバリバリ働いているニルダは勿論、セベリノも、シモンにとっては、すごく格好いいのである。ずっと、シモンのことを優先して応援してくれていたので、今度はシモンがセベリノを応援する番だ。
ベルタとカジョが帰った後、一緒に夕食の支度をしながら、シモンはやる気に燃えまくった。
「そろそろ働くのもありかなー。ニー。どう思います?」
「好きにしろ」
「あ、はい。そう言うと思った」
「父さん、どこで働くの?」
「んー。雇ってもらえたらの話だけど、また警邏隊かなぁ。とはいえ、ブランクがあるしなぁ」
「お前なら問題ない」
「本当にそう思います?」
「あぁ」
「んーー。よし! ダメ元で警邏隊の事務室行って、中途採用の求人がないか、聞いてみます! シモンも大きくなったしね。専業主夫もいいけど、やっぱニーと働きたいなぁって、ずっと思ってたんで」
「ん。お前なら今でもすぐに副官が勤まる」
「ですかねー。シモンはどう思う? ニーと一緒に警邏隊で働くことになると、今までみたいに、家で出迎えとかできなくなるけど」
「いいと思うよー。俺もちっちゃい子じゃないし。自分のことは自分でできるし。料理も簡単なやつなら作れるし。父さんが警邏隊でまた働きたいなら、応援するだけかなぁ。母さん。父さんって、すっごい優秀な副官だったんでしょ?」
「ん。今の副官も頑張っているが、セベリノ程仕事はできない」
「だって。父さん、母さんの副官になったら?」
「んーー。それは人事が決めることだから、すぐにニーの副官になれるかは分からないんだけど。……やれるだけやってみようかな」
セベリノは、シモンがまだ幼い頃に、警邏隊を辞めて専業主夫になった。シモンが幼い頃は、身体が弱くて、すぐに熱を出したりしていたかららしい。シモンももうすぐ14歳だ。自分のことは自分でできるし、身体も丈夫になった。セベリノが『今の御時世、男も家事ができなきゃね!』と積極的に家事を教えてくるので、一応、洗濯と掃除はできるし、料理も簡単なものなら作れる。2人とも仕事が忙しい時期でも、多分なんとかなる気がする。シモンがやりたいことをやっているのだから、セベリノだって、やりたい仕事をやってもいい筈だ。シモンは、セベリノを応援する気満々である。
早速、今日のうちに警邏隊に話に行くというセベリノに見送られて、シモンはニルダと一緒に家を出た。いつも、途中までは一緒に歩いている。シモンはニルダを見上げて、話しかけた。
「母さん。父さんが働き始めたら、俺が家のことするよ」
「分担してやる。セーべが炊事、俺が洗濯、シモンは掃除」
「あ、その方がいっか。仕事が忙しい時は、料理も俺がするよ。父さん程上手くはできないけど」
「ん。助かる。……セーべを応援してやりたい」
「うん。俺もー。父さん、警邏隊でまた働けるといいね」
「間違いなく雇われる。セーべはかなり優秀な副官だった」
「へぇー。母さんも父さんもすごいなぁ。俺も頑張らなきゃ」
「ん。無理はするな」
「うん。じゃあ、いってきます!」
「ん。気をつけろ」
「はぁーい」
シモンはニルダと別れて、学校に向かって走り出した。帰ったら、いつも笑顔で出迎えてくれるセベリノが家にいなくなるのは少し寂しい気もするが、セベリノだって、自分がやりたいことをやってもいい。シモンだって、将来は警邏隊で働く予定だ。成人して高等学校を卒業するまで、あと4年。長いような、短いような、微妙な年数だ。案外、子供でいられる年月って短いのかもしれない。
ニルダとセベリノと一緒に働くのも楽しそうだ。なんだか、今からちょっとワクワクする。シモンは、走りながら、小さく口角を上げた。
学校が終わり、ベルタとカジョと一緒に家に帰ると、セベリノがいつもの飄々としたゆるい笑みで出迎えてくれた。
「シモーン。採用されちゃった」
「マジで!? 今日行ったばっかじゃん!!」
「いやー。ビックリだよねぇ。事務室で中途採用してないか聞いてたらさぁ、昔馴染みの人事課の課長が来て、即面接というか、即採用? みたいな? ブランクがあるから、一ヶ月研修受けて、その後はニーの副官だってさ」
「父さん! すごい! やった!」
「ははっ。忙しくなりそう」
シモンは笑いながら、セベリノに抱きついた。セベリノが嬉しそうに笑いながら、わしゃわしゃとシモンの頭を撫で回した。
きょとんとしているベルタとカジョに、朝の会話から説明すると、2人とも顔を輝かせた。
「セーべおじさん、すげーー!!」
「僕、ちょー応援します!!」
「ははっ。ありがとう。2人とも。おやつとか中々作れなくなるから、ちょっと申し訳ないんだけどねー」
「セーべおじさんのおやつ好きだけど、ニーおばさんから、めちゃくちゃ仕事ができる副官だったって聞いてっし、応援一択!!」
「僕もです!」
「俺もー。父さんは父さんがやりたいことをいっぱいやったらいいよ」
「ありがとー。3人とも。さて。じゃあ、とりあえず宿題しておいで。ニーが今日は早めに帰ってくるらしいから」
「「えぇーーーー!!」」
「ベルター。ごめんなんだけど、この2人の面倒お願いしていい?」
「はい! まっかせてください! 2人に宿題させつつ、試験前は勉強を叩き込みます! ビシバシと!」
「よろしく! 頼りにしてるよ。ベルタ」
「はいっ!!」
「カジョさん。ベルタが鬼を超えて鬼畜になりそうな気がするよ」
「やる気満々だなぁ。ベルタ。鬼畜にならないでくれることを祈ろうぜ。シモン」
「あはは。なんか言った?」
「「なんも言ってません」」
シモンはうきうきと居間に向かい、ベルタに監督されながら、宿題を終わらせた。セベリノがまた警邏隊で働いてくれるのが、なんだかすごく嬉しい。セベリノはすごいんだぞ! と学校中に自慢したいくらいだ。
初等学校の頃は、『幸福の導き手』である母親が働いて、父親が働かないのは変だと、何回も言われていた。別にうちの勝手だろうと無視していたが、それでも、ちょっぴり気にしていた。シモンが身体が弱かったから、セベリノは警邏隊を辞めた。その事もちょっと気にしていたので、セベリノがまた警邏隊で働けるのが、本当に嬉しい。
宿題が終わった頃に、ニルダが帰ってきた。セベリノが嬉しそうにニルダに報告すると、ニルダが嬉しそうな笑みを浮かべて、セベリノにキスをした。セベリノが、『もー! 子供達の前でー!』と照れて、ニルダをぽかぽか叩いていたが、顔は本当に嬉しそうにだらしなくゆるんでいた。シモンの両親は、今日も仲良しである。
剣の稽古をする為に庭に出る途中で、ベルタが目をキラキラさせて話しかけてきた。
「シモンのお父さんとお母さんって、本当に素敵だよね!!」
「そうかな?」
「うん!! 僕のお父さん達も仲いいけど、2人で家でも職場でも一緒に頑張れるって、すっごい素敵だと思うよ!」
「うん。ありがと。ベルタ」
シモンは、ベルタの言葉が嬉しくて、だらしなく笑った。今日はすっごくいい日だ。庭に出てきたニルダ指導の元、剣の素振りをしながら、シモンは頑張りたいことが増えたな、と思った。
自分の剣の稽古は勿論、働く両親のサポートがしたい。警邏隊に入隊したら、多分、独立して独り暮らしになるだろうし、家事は身につけておいて損はない。特に料理は頑張らねば。いつもセベリノが作ってくれる料理は美味しい。セベリノみたいに、家事もできて、優しくて、仕事もできる立派な男になりたい。
警邏隊でバリバリ働いているニルダは勿論、セベリノも、シモンにとっては、すごく格好いいのである。ずっと、シモンのことを優先して応援してくれていたので、今度はシモンがセベリノを応援する番だ。
ベルタとカジョが帰った後、一緒に夕食の支度をしながら、シモンはやる気に燃えまくった。
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