恋せよ若人

丸井まー(旧:まー)

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16:ご褒美が欲しいっ!!

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 冬本番になった。冬季休暇前の試験まであと一ヶ月である。

 今日は、カジョは月一デートの日だ。カジョの彼女のルシアとは、弁当仲間として、普通に仲良くなった。カジョに彼女ができたと聞いた時は、『カジョを女にとられた!』と思ったが、ルシアは普通にいい人だし、カジョも月一デートの日以外は今まで通りシモンと一緒に剣の稽古に励んだり、ベルタと3人でわちゃわちゃお喋りをして楽しんだりしてくれるので、まぁいいかと思えるようになった。

 今日はベルタと筋トレデートだ。その前に、鬼のベルタと勉強会があるが。シモンは初等学校の頃から勉強は嫌いだ。勉強するくらいなら、走り回ったり、剣の稽古をする方が余程楽しい。が、将来は警邏隊に入隊したいので、高等学校に進学しなくてはいけない。その為には、最低限勉強ができないといけないので、渋々ではあるが、勉強も一応シモンなりに頑張っている。

 朝早くに走ってきたベルタと一緒に、シモンの部屋で、現在ベルタお手製の問題集を解いている。『頭と身体に叩き込もうね!』とにっこり笑ったベルタは、本当に鬼である。学校の宿題よりも多い問題集を、シモンは必死こいてやっている。

 やっと数学の問題集が終わった。脳みそが悲鳴を上げている気がする。ベルタが採点をしてくれている間に、シモンはセベリノが焼いたクッキーをもそもそと食べた。

 カジョがいる時は、単純に狭いから居間で勉強しているが、ベルタと2人の時は、シモンの部屋で勉強するようになった。シモンの部屋には、あまり使っていない勉強机とベッド、ちょっとした本棚しかなかったので、床に分厚いラグを敷き、低いテーブルを置くようにした。ニルダも休みの日に、ずっと居間を占拠しているのもどうかと思ったので、セベリノに相談して、シモンの部屋でもベルタと一緒に勉強できるようにしてもらった。

 ニルダは、年越しの日前後の三ヶ月くらいは、仕事がすごく忙しい。ガランドラの街の年越しは、中央広場にいつも以上に屋台が立ち並び、楽団が夜通し音楽を奏でて、皆で歌ったり、踊ったりしながら、賑やかに新年を迎える。そのせいか、年越し前後は、騒動が起きやすかったり、浮かれた人々を狙った犯罪が激増するらしい。セベリノは、元々はニルダの副官をしていたそうだ。『もうね! 毎年死ぬ気でやらないと仕事が終わらなかったね!』と、以前話していた。

 仕事が忙しい時期のニルダがのんびりできるようにと、シモンの部屋で勉強するようになった。ベルタは真面目で、勉強もできる子なので、シモンはかなりベルタに助けられている。

 採点を終えたベルタが、にこっと笑った。


「正解率八割! まぁ、合格かな?」

「よっしゃ!」

「じゃあ、次は歴史ね」

「おぉう……」

「今日はあと三教科あるから、頑張って!」

「えぇーー!! キッツいよ! ベルタ! 半分にして!」

「シモン。今から本格的にやらないと、冬季休暇前試験に間に合わないからね? いやもうマジで。冬季休暇中の試合に出られるようになったんだから、赤点は絶対に回避しないとなんだから!」

「ごもっとも……えぇー! でも、いい加減しんどいわー! なんか! なんかご褒美が欲しいっ!! じゃないと頑張れない!!」

「頑張ったら試合に出られるじゃない」

「それ以外で! 何でもいいからご褒美欲しいーー!!」

「えー。ご褒美かぁ」


 ベルタが、こてんと首を傾げて、何かを考えるように、宙を見上げた。本当に、何かご褒美がないと頑張れない。そもそも勉強は嫌いだし、覚えなきゃいけないことが多過ぎて、頭がパーンッとなりそうだ。

 シモンが期待を込めてベルタを見つめていると、ベルタが『あっ』と手を叩いた。


「カジョに、またお兄さんからエロ本借りてきてもらうとか?」

「あーー。それはそれでありかも? エロ本なんて、まだ俺達には売ってもらえないし。興味津々、ちんこビンビンなお年頃なのに、ズリネタがちょー少ない」

「だよねー」

「『だよねー』って、もしかして、ベルタも一人遊びしてんの?」

「え? うん。普通に。精通きたし」

「へぇー。ちなみに、シコるだけ?」

「んーん。どっちもしてる」

「ふーん。ベルタさんや」

「なんだい。シモンさん」

「ぶっちゃけさ、まんこって気持ちいいの?」

「気持ちいいよー。ちんちん弄るのとは、ちょっと違う感じで」

「マジかー。なんか気持ちいいところが多いのって、ちょっと羨ましい」

「まだ初潮はきてないけど、初潮がきたら、割と面倒くさいらしいよ」

「マジかー」

「……あ。なんなら、見る?」

「何を?」

「ご褒美に、まんこ。僕のでよければ」

「はいっ!? いやいやいや。ベルタ。待って待って。そんなに軽々しく見せちゃ駄目なところだから」

「まぁ、そうだけど。シモンだし、別にいっかなーって。セックスするわけじゃないし」

「えぇーー。俺でも見せちゃ駄目でしょ」

「そうかな? 一応、恋人やってるし、別にいいんじゃない? 興味ない? 生まんこ」

「……興味がないと言えば嘘になります。はい」

「ですよね。興味津々なお年頃ですもんね。じゃあ、ご褒美は僕のまんこを見るってことで。それじゃあ、張り切って歴史の問題集をやろー!」

「うぇーい」


 確かにご褒美は欲しいし、スケベなことに興味津々なお年頃な訳だが、ベルタのまんこを見せてもらうって、本当にいいのだろうか。見たいか、見たくないかの二択なら、ぶっちゃけめちゃくちゃ見たいのだが、友達のまんこを見ても本当にいいのか。

 普段は、夏にカジョに読ませてもらったエロ本の中身を思い出しながらシコるのが多い。未成年はエロ本を買えないので、ズリネタに飢えているのも事実だ。まんこに興味津々なのも否定できない。

 シモンは問題集を解きながら、暫しぐるぐると考えて、開き直ることにした。ベルタのまんこを見てみたい。ベルタは友達だが、多分、今後のズリネタになると思う。別にセックスをする訳ではないし、見るだけなら問題ない筈だ。多分。

 シモンは、やる気がぎゅーんっと湧いてきて、必死こいて、ベルタお手製の問題集を解きまくった。ベルタから合格をもらえる頃には、脳みそを使い過ぎて、ぐったりしちゃうくらいだった。
 採点を終えたベルタが、ニコニコ笑って、テーブルに懐いているシモンの頭をやんわりと撫でた。


「冬季休暇前の試験で、全教科七割とれたら、ご褒美あげるね」

「ご褒美のハードル高くないっ!?」

「どうせなら、しっかり点数とっとかないと。普段の授業態度が悪いんだから」

「うぅ……返す言葉がない……助けてー。カジョー」

「カジョも今頃ルシア先輩から勉強叩き込まれてるよ。『心を鬼にしてビシバシお願いします!』って言っといたし」

「わーぉ。頑張れ。カジョ」

「二年生になったら、教科も増えるし、今より内容も難しくなるからね。高等学校に進学したいなら、一年生で習う範囲は、一年生のうちにしっかり頭に叩き込んでおかないと」

「ごもっとも」

「ご褒美の為に頑張ろうね!」

「はぁーい」


 にこやかな笑顔のベルタに、わしゃわしゃと頭を撫で回された。
 今日の勉強が一応終わったので、昼食を食べたら、走り込みと筋トレをやる。ベルタと一緒に喋りながら走って、筋トレをするのも楽しいので、月一筋トレデートも割とありだ。

 ベルタと付き合い始めた頃は、色々面倒くさいのに絡まれていたが、今はすっかり落ち着いている。カジョとルシアが付き合っていることも噂で広まっているからか、4人で弁当を一緒に食べても、変に絡まれたりはしない。
 未だに告白してくる猛者は、たまーにいるが、概ね平和な日々を過ごしている。鬼のベルタとの勉強時間以外は、剣の稽古に集中できるし、ベルタと付き合って正解だったみたいだ。

 シモンは、勉強に使ったものを片付けると、昼食を食べに、ベルタと一緒に階下の居間へと向かった。
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