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婚約式は契約儀式らしくて、結婚式のようなお祭り騒ぎではないようです。謁見の間で陛下に結婚の許可をいただき、王侯貴族が見守る中で私とルピナス様は指輪を交換しました。
ルピナス様にはご両親や親族がたくさんいますが、こうしてみると私は天涯孤独の身の上なのだと思わずにはいられません。
「フリージア、どうしたんだい?」
ルピナス様が私の顔を心配そうに覗き込んできました。いつものように顔に出ていたのかもしれません。
「しみじみと私には家族がいないんだと思ってしまって」
こんな場所ですし、あまりルピナス様に変な心配をかけたくないので正直に言ってみました。ルピナス様は何だそんな事かという顔をしています。
「私達が君の家族になるんじゃないか。それに結婚したら家族を増やしていこう」
機嫌が良いのかルピナス様はニコニコしながらそんな事を言うので、私は恥ずかしくて顔が熱くなってしまいました。
「今日は無理だったけど結婚式にはライラック卿と、彼のエスコート相手としてあの村の元気な女の子を呼ぶといいよ。彼らが君と僕を引き合わせてくれたようなものだからね」
「ノーラまで一緒で良いのですか?」
「結婚式は基本は男女ペアで招待するからね。当然ドレスコード必須だから準備はしてもらうけど」
「ありがとうございます!」
ノーラは式の頃には10歳になりますから、マトリカリア領の屋敷にあった、お母様がまだ生きていた頃に買ってもらったドレスを着て貰えばいいと思います。本人は大喜びでしょう。
ライラックさんにもちゃんと言っておかないと。
平民の村娘を王族の結婚式に呼ぶなんて型破りな提案をしてくれるのも、私を元気付けるためなのでしょう。私はルピナス様の気遣いに感謝しました。
「式典の最中に二人で何を話しておるのだ」
「まあ、仲の良ろしいこと。私達の時を思い出しますわ」
陛下とマリーゴールド様は微笑んでいましたが、私達は二人で赤面する羽目になりました。
式が終わるとディセントラ公爵様に呼び止められました。
「フリージア、私の申し出について報告に来ないとは何事だ」
私はしまったと思いました。公爵様への回答を未だにしていませんでした。公爵様は怒っている様子ではありませんでしたが、大変失礼な事だったので平謝りしました。
「謝罪は良いが、其方がルピナス様と結婚するために私が出した条件は聞いておるだろうな」
「私の娘をマトリカリアの当主にって話ですよね?」
生まれてもいない娘の事を勝手に決めるのはその子には悪いですけど、そんなに変な条件ではないので従うつもりです。ルピナス様も自分で言っていたので大丈夫ですよね?
「私はな、本当は私の孫を其方と婚姻させたかったのだ。マトリカリアの婿としてな」
初耳でした。後見してくださると言う事でしたけど、無償でというのは確かに虫の良すぎる話です。私を娶っていただくことを対価などと偉そうには言えませんけど。
「できれば、今度はひ孫を其方の娘の婿にしたいと考えておる。散々妥協したのだ、少しは言う事を聞いてくれても良いだろう?」
公爵様は口元は笑っていますけど、目は微妙に笑っていないように見えます。ルピナス様やサージェント様が一目置かざるを得ない、政治の頂点にいる彼の片鱗を見た気がしました。
「ぜ、善処いたします」
私はこの重圧に耐えることができません。
ごめんなさい!まだ見ぬ私の可愛い赤ちゃん!
ここまで私を評価してくれることを喜ぶべきなのでしょうけど。
「ふふふ、言うたのう?私の病気は其方に診てもらうからな。長生きするだろうから反故にはさせぬぞ」
そう言いながら公爵様は去っていきました。残された私はその後ろ姿を見ながら茫然としていました。
ルピナス様にはご両親や親族がたくさんいますが、こうしてみると私は天涯孤独の身の上なのだと思わずにはいられません。
「フリージア、どうしたんだい?」
ルピナス様が私の顔を心配そうに覗き込んできました。いつものように顔に出ていたのかもしれません。
「しみじみと私には家族がいないんだと思ってしまって」
こんな場所ですし、あまりルピナス様に変な心配をかけたくないので正直に言ってみました。ルピナス様は何だそんな事かという顔をしています。
「私達が君の家族になるんじゃないか。それに結婚したら家族を増やしていこう」
機嫌が良いのかルピナス様はニコニコしながらそんな事を言うので、私は恥ずかしくて顔が熱くなってしまいました。
「今日は無理だったけど結婚式にはライラック卿と、彼のエスコート相手としてあの村の元気な女の子を呼ぶといいよ。彼らが君と僕を引き合わせてくれたようなものだからね」
「ノーラまで一緒で良いのですか?」
「結婚式は基本は男女ペアで招待するからね。当然ドレスコード必須だから準備はしてもらうけど」
「ありがとうございます!」
ノーラは式の頃には10歳になりますから、マトリカリア領の屋敷にあった、お母様がまだ生きていた頃に買ってもらったドレスを着て貰えばいいと思います。本人は大喜びでしょう。
ライラックさんにもちゃんと言っておかないと。
平民の村娘を王族の結婚式に呼ぶなんて型破りな提案をしてくれるのも、私を元気付けるためなのでしょう。私はルピナス様の気遣いに感謝しました。
「式典の最中に二人で何を話しておるのだ」
「まあ、仲の良ろしいこと。私達の時を思い出しますわ」
陛下とマリーゴールド様は微笑んでいましたが、私達は二人で赤面する羽目になりました。
式が終わるとディセントラ公爵様に呼び止められました。
「フリージア、私の申し出について報告に来ないとは何事だ」
私はしまったと思いました。公爵様への回答を未だにしていませんでした。公爵様は怒っている様子ではありませんでしたが、大変失礼な事だったので平謝りしました。
「謝罪は良いが、其方がルピナス様と結婚するために私が出した条件は聞いておるだろうな」
「私の娘をマトリカリアの当主にって話ですよね?」
生まれてもいない娘の事を勝手に決めるのはその子には悪いですけど、そんなに変な条件ではないので従うつもりです。ルピナス様も自分で言っていたので大丈夫ですよね?
「私はな、本当は私の孫を其方と婚姻させたかったのだ。マトリカリアの婿としてな」
初耳でした。後見してくださると言う事でしたけど、無償でというのは確かに虫の良すぎる話です。私を娶っていただくことを対価などと偉そうには言えませんけど。
「できれば、今度はひ孫を其方の娘の婿にしたいと考えておる。散々妥協したのだ、少しは言う事を聞いてくれても良いだろう?」
公爵様は口元は笑っていますけど、目は微妙に笑っていないように見えます。ルピナス様やサージェント様が一目置かざるを得ない、政治の頂点にいる彼の片鱗を見た気がしました。
「ぜ、善処いたします」
私はこの重圧に耐えることができません。
ごめんなさい!まだ見ぬ私の可愛い赤ちゃん!
ここまで私を評価してくれることを喜ぶべきなのでしょうけど。
「ふふふ、言うたのう?私の病気は其方に診てもらうからな。長生きするだろうから反故にはさせぬぞ」
そう言いながら公爵様は去っていきました。残された私はその後ろ姿を見ながら茫然としていました。
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