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数日後、サージェント様から国王陛下との謁見が決まったと連絡がありました。

思ったより陛下の回復に時間がかかったのかと思っていたら、衛生兵団でお父様が所属する補給・輸送部門から何やら聞き捨てならない内部告発があったため、お父様の取り調べに時間がかかっていたようです。

サージェント様は内容については口を濁していて、委細についてはルピナス様から聞いてほしいと言われました。

少し話が戻りますが、カラードさんの依頼に必要な材料を書き出してロータスさんに渡すと、翌日には全ての材料が調合室の横にある倉庫まで運びこまれました。
この数日間は、ライラックさんに教わりながら少しずつ依頼品を調合していました。

ライラックさんが頑なに自分の家で寝泊まりしようとしないので、私たちは毎日ハイペリカム侯爵家の屋敷とライラックさんの家を往復しています。

サージェント様がそれでいいと言っていたから良いのですけど、ライラックさんのダメ出しが増えると帰りが夜遅くになるのでちょっと辛かったりします。

ライラックさんは私だけ泊ればいいなんて言うのですが、ロータスさん夫婦は家を管理しているだけでたまにしか来ないし、夜は必ず自分達の家に帰ってしまいます。
一人きりにされるのは恐いのでライラックさんにそう伝えたら、なら通うしかないと言われてしまいました。

謁見は明日ということでしたので、今日はカラードさんの依頼を半分まで終わらせて早めに帰ることになりました。
作業は順調で、謁見で一日消費しても予定通り10日間で仕上げることが出来そうです。結構な数をこなしているのでポーション程度の薬品を数種類ほど何も見ずに作れるようになりました。

謁見はライラックさんと一緒です。私を保護していたことと、私が王宮に入るための協力を惜しまなかったことで陛下が礼をしたいと言っているようです。

当日は、ハイペリカムの屋敷にあったマリーゴールド様の若い時のドレスを借りて、化粧をしてもらいました。今回は大人しめの格好です。

王宮に着くと、貴族や兵士がずらりと並んで人だかりになっていました。真ん中には道ができていて謁見の間まで続いています。あまりの歓待に驚いていると、向こうの方からルピナス様が歩いて来ました。

「ようこそフリージア。お礼なんてこちらから出向くべきなんだろうけど、王だとか国だとかいう体裁上こればかりはどうしようもなくてね」

ルピナス様は申し訳なさそうにそう言っていますが、そんなことよりこの騒ぎの方が気になって仕方ありません。ご招待いただいたお礼だけ言っておきました。

「陛下を救ったマトリカリアの聖女を一目見ようと貴族達が詰めかけて来てね。まあ君はあまり好まないかもしれないので申し訳ない」

私が目を白黒させていることに気づいたのか、ルピナス様がそう説明してくれました。

「聖女のお披露目か。君が医師になったら客には困らないだろうな」

「もう、他人事だと思って」

ライラックさんは面白そうに言いますが、あまり衆目に晒されることに慣れていないので、緊張してクラクラしてきます。

「ライラック卿も付き合って貰ってすまないね。よくよく調べるとカラードだけじゃなくて君を評価している人間は随分多かったよ。王都に残る気は無いのかい?」

「そのつもりはありません。フリージアに調合を教え終えたら村に帰ります」

ライラックさんはひたすらに頑固です。ルピナス様は頷くと、私達を先導して謁見の間に歩き始めました。

「まずは勲章の授与だとか、式典めいた形での謁見になる。そのあと、報告したいことがあるから場所を変えて話をしよう」

報告とはお父様のことでしょう。追加の取り調べに時間がかかったという話ですが、彼はいったいあれ以上に何をしでかしていたのでしょうか。

謁見の間に入ると既に陛下は玉座にいて、国の重鎮が段下に揃っていました。他にも身なりの良い貴族達が大勢集まっています。
私達は前に進むと臣下の礼を取りました。

「マトリカリア伯爵令嬢フリージア、並びにライラック卿よ。頭を上げてくれ」

陛下に言われて頭を上げます。陛下は血色が良くなっていて、まだ少しやつれ気味ではありましたが健康そうでした。
こうして近くで見ると、ルピナス様の凛々しい部分は陛下に似ているようですが、どちらかというと髪が黒いこともあって弟のラムサス殿下の方が良く似ていました。

「改めて、私と王太子の命を救ってくれた其方らに最大級の謝意を送る」

陛下のその言葉から始まった謁見ではとにかく感謝を伝えられ、勲章やたくさんの金品をいただきました。
私のことはカトレア・マトリカリアの娘だと周知され、本当に聖女として逃げ場が無くなりそうです。

また、マトリカリアは侯爵位に爵位が昇格し、ライラックさんは男爵位を与えられました。

ライラックさんは後から、給料が上がるだけで何か変わるわけでも無いと言っていました。ライラックさんはなんとなく貴族社会を疎んでいる気がしてきました。何かあったのでしょうか。

「本当にありがとう。君達が困ったら言ってくれ。何でも力になろう」

最後に陛下が段下に降りて私とライラックさんの手を取りながらそう言いました。
これは後から聞くと前列を見ないことだそうです。

そして拍手に包まれる中、謁見は無事に終わりました。
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