22 / 39
22
しおりを挟む
そのまま国王陛下の寝室に向かうと、部屋の前には既にルピナス様とライラック様が到着していました。
私の自意識過剰ではなく、二人とも明らかに着飾った私を物珍しげに見ています。
ルピナス様は目を見開いていましたが、珍しく照れくさそうに私を褒めてくれたので、逆にこちらが恥ずかしくなってしまいました。
ライラックさんは「本当に貴族だったのだな」なんて酷い感想を言ってきたのですが、照れ隠しだと思いたいです。
結婚経験者の余裕がある人、などと心の中で褒めた私を返してください。
「フリージアはなかなかの器量良しでしょう?ルピナスもしっかり頑張らないとね」
マリーゴールド様の押しが強すぎます。そう思ってルピナス様を見ると、彼はライラックさんの方を見ていました。
まさかルピナス様はライラックさんのことが好きなのか、と思うほど私も馬鹿ではありません。マリーゴールド様もそうですが、私とライラックさんの仲を疑っているのかもしれません。
私もなんとなくライラックさんが気になって目で追ってしまうのですが、自分がどう思っているのかよくわかりません。ライラックさんは私に全く興味が無いみたいですし。
外で話し込んでいても仕方ないので、ルピナス様が衛兵に話して中に通してもらいました。
国王陛下は眠っているようです。側では侍従とお医者様が待機しています。
「起きていると随分と痛がるのです。今は薬が効いていて眠っていますけど、ずっとそうしているわけにはいかないから見ているこっちも辛くて」
マリーゴールド様が陛下の容態を話してくれました。
「少し診せてもらってよろしいでしょうか」
ライラックさんがそういうと、ルピナス様がうなずきました。主治医が少し眉をひそめましたが、ライラックさんは気にせず陛下に近寄って様子を見ています。
「なるほど、本当に栄養が足りなくて衰弱しているようだな。栄養を吸収できず患部を痛がるということは内臓の疾患ということか……あまりに出来たタイミングなので毒物の類を疑っていたのだが違うようですね」
ライラックさんは診察してから投薬するという本当に医師の仕事をしていたので、患者を見るとついそうしたくなるのかと思っていたら、全く違う理由でした。
「あまり大きな声では言えないが僕たちもそれは疑ったんだ。医者は信用できる者に持ち回りで任せているからその心配は無いよ」
「余計なことをしました。これでは治癒魔法や治療薬の類では治せないのも無理はないです」
なんだか凄くハードルが上がった気がします。本当に治せるのでしょうか。
さっさと試してみたいのですが、そう言うとルピナス様に止められました。
「ギャラリーは多いほうが良いと思ってね。いろいろな人を呼んでいるんだ。君のご家族も呼んでいるよ」
私はそう聞いて思わず動揺してしまいました。あの人達から身を隠すためにこっそり侵入したのではなかったのでしょうか。
「心配しなくていいよ。彼らは捕えるために呼んだだけだから。君の身を守るためというのもあるけど、万が一、君の姿を見て逃げられたら困るから回りくどい方法を取ったんだ。私の一存で爵位を持つ者を罰せれるほど私に権限は無くて、それができる者を呼んだんだ」
ルピナス様がそう言うと人が入ってきました。
先ほどのラムサス様とキャメリア様です。二人とも私達の姿を見て驚いているようです。
その後ろから見知らぬ老人が入ってきました。
「ルピナス様、たかだか怪我の治療を施されただけで、部外者をここに招き入れるなど非常識にも程がありますぞ」
老人はいきなり文句を言ってきました。言いたいことはわからなくもないですけど。
「あちらは王国宰相アルベルト・ディセントラ公爵だ。わざわざ呼びつけてすまない。ディセントラ公にちょっとお見せしたいことがあってね」
「まさかその村医者が陛下を治療できるとでも言うのではないでしょうな」
「まあ、ちょっと違うけどそのまさかだよ」
ディセントラ公爵様は全く信用していないのか驚きもしません。それどころか鼻で笑って部屋を出ていこうとします。
「ディセントラ公、我々は失われたマトリカリアの聖女の正当な後継者を見つけたのだ」
「なんだと?」
サージェント様が煽るようにそう言うと、ディセントラ公爵様は踵を返してこちらに向かってきました。
「まさか、卿はさっきから隣にいるこの娘がそうだと言いたいのか」
「その通りだ」
「なるほど。つまりルピナス様を治癒したのは村医者ではなくこの娘ということなのだな」
ディセントラ公爵様は私を上から下まで見回しています。
「ディセントラ公爵様、お初にお目にかかります。フリージア・マトリカリアと申します」
「カトレア卿に其方のような娘がいたとは知らなかった。マトリカリアのことは報告を受けたはずなのだが」
横を見るとサージェント様が何だか恐い顔をしています。ディセントラ公爵様はそれに気づいているようです。
「ハイペリカム卿、巷の噂を私は知っているが、マトリカリアの聖女を害するほど私は耄碌しておらぬ。自分を診てくれる医者を殺す馬鹿がどこにいるというのだ」
「……ディセントラ公、失礼した」
「こやつらは、其方の母親が亡くなったのを私のせいだと思っておるのだ。どうも、私も随分と勝手に名を利用されているみたいでな」
私がオロオロしていると、ディセントラ公爵様がそう教えてくれました。なんだか聞き捨てならない話なのですけど。
「事故ではなかったのですか?」
「ふーむ、其方は何にも知らぬのか」
ディセントラ公爵様は私を値踏みするように見ています。
「聞いただけでは俄かに信じられぬ。全ては其方の力を見てからだ。陛下を治療して見せるがよい」
なんだか聞いていたほど悪人には見えない人でした。そう思った時、扉から見慣れた人達が入ってきました。
私の自意識過剰ではなく、二人とも明らかに着飾った私を物珍しげに見ています。
ルピナス様は目を見開いていましたが、珍しく照れくさそうに私を褒めてくれたので、逆にこちらが恥ずかしくなってしまいました。
ライラックさんは「本当に貴族だったのだな」なんて酷い感想を言ってきたのですが、照れ隠しだと思いたいです。
結婚経験者の余裕がある人、などと心の中で褒めた私を返してください。
「フリージアはなかなかの器量良しでしょう?ルピナスもしっかり頑張らないとね」
マリーゴールド様の押しが強すぎます。そう思ってルピナス様を見ると、彼はライラックさんの方を見ていました。
まさかルピナス様はライラックさんのことが好きなのか、と思うほど私も馬鹿ではありません。マリーゴールド様もそうですが、私とライラックさんの仲を疑っているのかもしれません。
私もなんとなくライラックさんが気になって目で追ってしまうのですが、自分がどう思っているのかよくわかりません。ライラックさんは私に全く興味が無いみたいですし。
外で話し込んでいても仕方ないので、ルピナス様が衛兵に話して中に通してもらいました。
国王陛下は眠っているようです。側では侍従とお医者様が待機しています。
「起きていると随分と痛がるのです。今は薬が効いていて眠っていますけど、ずっとそうしているわけにはいかないから見ているこっちも辛くて」
マリーゴールド様が陛下の容態を話してくれました。
「少し診せてもらってよろしいでしょうか」
ライラックさんがそういうと、ルピナス様がうなずきました。主治医が少し眉をひそめましたが、ライラックさんは気にせず陛下に近寄って様子を見ています。
「なるほど、本当に栄養が足りなくて衰弱しているようだな。栄養を吸収できず患部を痛がるということは内臓の疾患ということか……あまりに出来たタイミングなので毒物の類を疑っていたのだが違うようですね」
ライラックさんは診察してから投薬するという本当に医師の仕事をしていたので、患者を見るとついそうしたくなるのかと思っていたら、全く違う理由でした。
「あまり大きな声では言えないが僕たちもそれは疑ったんだ。医者は信用できる者に持ち回りで任せているからその心配は無いよ」
「余計なことをしました。これでは治癒魔法や治療薬の類では治せないのも無理はないです」
なんだか凄くハードルが上がった気がします。本当に治せるのでしょうか。
さっさと試してみたいのですが、そう言うとルピナス様に止められました。
「ギャラリーは多いほうが良いと思ってね。いろいろな人を呼んでいるんだ。君のご家族も呼んでいるよ」
私はそう聞いて思わず動揺してしまいました。あの人達から身を隠すためにこっそり侵入したのではなかったのでしょうか。
「心配しなくていいよ。彼らは捕えるために呼んだだけだから。君の身を守るためというのもあるけど、万が一、君の姿を見て逃げられたら困るから回りくどい方法を取ったんだ。私の一存で爵位を持つ者を罰せれるほど私に権限は無くて、それができる者を呼んだんだ」
ルピナス様がそう言うと人が入ってきました。
先ほどのラムサス様とキャメリア様です。二人とも私達の姿を見て驚いているようです。
その後ろから見知らぬ老人が入ってきました。
「ルピナス様、たかだか怪我の治療を施されただけで、部外者をここに招き入れるなど非常識にも程がありますぞ」
老人はいきなり文句を言ってきました。言いたいことはわからなくもないですけど。
「あちらは王国宰相アルベルト・ディセントラ公爵だ。わざわざ呼びつけてすまない。ディセントラ公にちょっとお見せしたいことがあってね」
「まさかその村医者が陛下を治療できるとでも言うのではないでしょうな」
「まあ、ちょっと違うけどそのまさかだよ」
ディセントラ公爵様は全く信用していないのか驚きもしません。それどころか鼻で笑って部屋を出ていこうとします。
「ディセントラ公、我々は失われたマトリカリアの聖女の正当な後継者を見つけたのだ」
「なんだと?」
サージェント様が煽るようにそう言うと、ディセントラ公爵様は踵を返してこちらに向かってきました。
「まさか、卿はさっきから隣にいるこの娘がそうだと言いたいのか」
「その通りだ」
「なるほど。つまりルピナス様を治癒したのは村医者ではなくこの娘ということなのだな」
ディセントラ公爵様は私を上から下まで見回しています。
「ディセントラ公爵様、お初にお目にかかります。フリージア・マトリカリアと申します」
「カトレア卿に其方のような娘がいたとは知らなかった。マトリカリアのことは報告を受けたはずなのだが」
横を見るとサージェント様が何だか恐い顔をしています。ディセントラ公爵様はそれに気づいているようです。
「ハイペリカム卿、巷の噂を私は知っているが、マトリカリアの聖女を害するほど私は耄碌しておらぬ。自分を診てくれる医者を殺す馬鹿がどこにいるというのだ」
「……ディセントラ公、失礼した」
「こやつらは、其方の母親が亡くなったのを私のせいだと思っておるのだ。どうも、私も随分と勝手に名を利用されているみたいでな」
私がオロオロしていると、ディセントラ公爵様がそう教えてくれました。なんだか聞き捨てならない話なのですけど。
「事故ではなかったのですか?」
「ふーむ、其方は何にも知らぬのか」
ディセントラ公爵様は私を値踏みするように見ています。
「聞いただけでは俄かに信じられぬ。全ては其方の力を見てからだ。陛下を治療して見せるがよい」
なんだか聞いていたほど悪人には見えない人でした。そう思った時、扉から見慣れた人達が入ってきました。
13
お気に入りに追加
3,670
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と呼ばれて追放されましたが、先祖返りの精霊種だったので、神殿で崇められる立場になりました。母国は加護を失いましたが仕方ないですね。
蒼衣翼
恋愛
古くから続く名家の娘、アレリは、古い盟約に従って、王太子の妻となるさだめだった。
しかし、古臭い伝統に反発した王太子によって、ありもしない罪をでっち上げられた挙げ句、国外追放となってしまう。
自分の意思とは関係ないところで、運命を翻弄されたアレリは、憧れだった精霊信仰がさかんな国を目指すことに。
そこで、自然のエネルギーそのものである精霊と語り合うことの出来るアレリは、神殿で聖女と崇められ、優しい青年と巡り合った。
一方、古い盟約を破った故国は、精霊の加護を失い、衰退していくのだった。
※カクヨムさまにも掲載しています。
誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。
木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。
それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。
誰にも信じてもらえず、罵倒される。
そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。
実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。
彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。
故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。
彼はミレイナを快く受け入れてくれた。
こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。
そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。
しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。
むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。
【完結】虐げられてきた侯爵令嬢は、聖女になったら神様にだけは愛されています〜神は気まぐれとご存知ない?それは残念でした〜
葉桜鹿乃
恋愛
アナスタシアは18歳の若さで聖女として顕現した。
聖女・アナスタシアとなる前はアナスタシア・リュークス侯爵令嬢。婚約者は第三王子のヴィル・ド・ノルネイア。
王子と結婚するのだからと厳しい教育と度を超えた躾の中で育ってきた。
アナスタシアはヴィルとの婚約を「聖女になったのだから」という理由で破棄されるが、元々ヴィルはアナスタシアの妹であるヴェロニカと浮気しており、両親もそれを歓迎していた事を知る。
聖女となっても、静謐なはずの神殿で嫌がらせを受ける日々。
どこにいても嫌われる、と思いながら、聖女の責務は重い。逃げ出そうとしても王侯貴族にほとんど監禁される形で、祈りの塔に閉じ込められて神に祈りを捧げ続け……そしたら神が顕現してきた?!
虐げられた聖女の、神様の溺愛とえこひいきによる、国をも傾かせるざまぁからの溺愛物語。
※HOT1位ありがとうございます!(12/4)
※恋愛1位ありがとうございます!(12/5)
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも別名義にて連載開始しました。改稿版として内容に加筆修正しています。
【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる
みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。
「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。
「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」
「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」
追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。
聖女の取り巻きな婚約者を放置していたら結婚後に溺愛されました。
しぎ
恋愛
※題名変更しました
旧『おっとり令嬢と浮気令息』
3/2 番外(聖女目線)更新予定
ミア・シュヴェストカは貧乏な子爵家の一人娘である。領地のために金持ちの商人の後妻に入ることになっていたが、突然湧いた婚約話により、侯爵家の嫡男の婚約者になることに。戸惑ったミアだったがすぐに事情を知ることになる。彼は聖女を愛する取り巻きの一人だったのだ。仲睦まじい夫婦になることを諦め白い結婚を目指して学園生活を満喫したミア。学園卒業後、結婚した途端何故か婚約者がミアを溺愛し始めて…!
聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
【完結】次期聖女として育てられてきましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!
林 真帆
恋愛
マリアは聖女の血を受け継ぐ家系に生まれ、次期聖女として大切に育てられてきた。
マリア自身も、自分が聖女になり、全てを国と民に捧げるものと信じて疑わなかった。
そんなマリアの前に、異父妹のカタリナが突然現れる。
そして、カタリナが現れたことで、マリアの生活は一変する。
どうやら現聖女である母親のエリザベートが、マリアを追い出し、カタリナを次期聖女にしようと企んでいるようで……。
2022.6.22 第一章完結しました。
2022.7.5 第二章完結しました。
第一章は、主人公が理不尽な目に遭い、追放されるまでのお話です。
第二章は、主人公が国を追放された後の生活。まだまだ不幸は続きます。
第三章から徐々に主人公が報われる展開となる予定です。
【完結】大聖女は無能と蔑まれて追放される〜殿下、1%まで力を封じよと命令したことをお忘れですか?隣国の王子と婚約しましたので、もう戻りません
冬月光輝
恋愛
「稀代の大聖女が聞いて呆れる。フィアナ・イースフィル、君はこの国の聖女に相応しくない。職務怠慢の罪は重い。無能者には国を出ていってもらう。当然、君との婚約は破棄する」
アウゼルム王国の第二王子ユリアンは聖女フィアナに婚約破棄と国家追放の刑を言い渡す。
フィアナは侯爵家の令嬢だったが、両親を亡くしてからは教会に預けられて類稀なる魔法の才能を開花させて、その力は大聖女級だと教皇からお墨付きを貰うほどだった。
そんな彼女は無能者だと追放されるのは不満だった。
なぜなら――
「君が力を振るうと他国に狙われるし、それから守るための予算を割くのも勿体ない。明日からは能力を1%に抑えて出来るだけ働くな」
何を隠そう。フィアナに力を封印しろと命じたのはユリアンだったのだ。
彼はジェーンという国一番の美貌を持つ魔女に夢中になり、婚約者であるフィアナが邪魔になった。そして、自らが命じたことも忘れて彼女を糾弾したのである。
国家追放されてもフィアナは全く不自由しなかった。
「君の父親は命の恩人なんだ。私と婚約してその力を我が国の繁栄のために存分に振るってほしい」
隣国の王子、ローレンスは追放されたフィアナをすぐさま迎え入れ、彼女と婚約する。
一方、大聖女級の力を持つといわれる彼女を手放したことがバレてユリアンは国王陛下から大叱責を食らうことになっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる