10 / 39
10
しおりを挟む
村に戻るとノーラは下馬した彼等を待たせて村長さんを呼びに行きました。村長さんは煩わしそうに出て来ましたが、こちらを見ると慌てて飛んで来ました。
村長さんは先程の髭を生やした恐そうなおじさんと青ざめた表情で何か話していました。
話が終わると村人を集めて机や椅子を集めるように指示して全員に座ってもらうと、馬を引かせて牛舎に繋ぎました。
まさに至れり尽くせりの歓待ですが、やはり料理だけは出せません。彼等のうち数名が村人の案内で屠殺場に向かっていました。村長さんはその間にぬかり無く火をおこしています。
「なんかすごく身分の高い貴族様らしいよ。特にさっきのカッコイイ男の人が天井人?だとか。詳しくは聞けなかったんだけどさ」
ノーラがこっそりという感じで教えてくれましたが、殿下などと呼ばれていたので王族の可能性が高く、村長さんが青ざめるのも無理はありません。下手をしたら村が一つ地図から消えますから。
そうこうしているうちに肉が焼けて、真っ昼間から宴会が始まりました。お酒はありませんけど。
先程の青年が私とノーラに手招きしています。肉が乗ったお皿を二つ用意しているのて、律儀にもご馳走するという先程の約束を果たそうとしているようです。
ノーラは「美味しいね」と言いながら肉にかぶりついています。
私はオロオロしていると「フリージアもこうやってかぶりつくんだよ!」と肉を頬張りながら言うので、少しだけ齧ってみました。
「美味しい……」
「あはは、君達のおかげで良い休憩になったよ。また昼から狩りに行くから、次は何匹か置いて帰るよ」
「誠に恐れ入ります」
私がそう応えると彼は目を細めました。突然表情が変わったので私はビクッとしてしまいました。
「君はこの村に住んでいるにしては線が細すぎるし、色々と繊細で礼儀作法も身についているように見える」
王族かもしれないと言葉使いに気をつけ過ぎたのが失言だったかもしれません。
もし私が貴族だと知れたら、あの人達に私の居場所がバレてしまうのではと心配になってきました。
「ごめんごめん、立場上つい色々と詮索してしまうんだよ。もう聞かないからそんな顔をしないでくれ」
私はどんな顔をしていたのでしょうか。そう言ってくれたので少しほっとしました。
「なに?フリージアに興味があるの?最近16歳になったばかりで生きが良くてオススメだよ!」
「ちょっとノーラ!不敬になるよ!」
ノーラが絡んできてくれて助かりました。長く居ても良いことはないしそろそろこの場から離れたいです。
「君がフリージアで、君がノーラだね。私はルピナスというんだ。いつか名前を聞くことになるだろうから覚えておいてくれ」
意味深なこと彼は言いました。ノーラは「覚えておくね!」などと元気に言っていました。
食事が終わると彼等は再び狩りに出かけて行きました。
そしてその日の夕方、大怪我をしたルピナス様がライラックさんの診療所に運び込まれてきたのです。
村長さんは先程の髭を生やした恐そうなおじさんと青ざめた表情で何か話していました。
話が終わると村人を集めて机や椅子を集めるように指示して全員に座ってもらうと、馬を引かせて牛舎に繋ぎました。
まさに至れり尽くせりの歓待ですが、やはり料理だけは出せません。彼等のうち数名が村人の案内で屠殺場に向かっていました。村長さんはその間にぬかり無く火をおこしています。
「なんかすごく身分の高い貴族様らしいよ。特にさっきのカッコイイ男の人が天井人?だとか。詳しくは聞けなかったんだけどさ」
ノーラがこっそりという感じで教えてくれましたが、殿下などと呼ばれていたので王族の可能性が高く、村長さんが青ざめるのも無理はありません。下手をしたら村が一つ地図から消えますから。
そうこうしているうちに肉が焼けて、真っ昼間から宴会が始まりました。お酒はありませんけど。
先程の青年が私とノーラに手招きしています。肉が乗ったお皿を二つ用意しているのて、律儀にもご馳走するという先程の約束を果たそうとしているようです。
ノーラは「美味しいね」と言いながら肉にかぶりついています。
私はオロオロしていると「フリージアもこうやってかぶりつくんだよ!」と肉を頬張りながら言うので、少しだけ齧ってみました。
「美味しい……」
「あはは、君達のおかげで良い休憩になったよ。また昼から狩りに行くから、次は何匹か置いて帰るよ」
「誠に恐れ入ります」
私がそう応えると彼は目を細めました。突然表情が変わったので私はビクッとしてしまいました。
「君はこの村に住んでいるにしては線が細すぎるし、色々と繊細で礼儀作法も身についているように見える」
王族かもしれないと言葉使いに気をつけ過ぎたのが失言だったかもしれません。
もし私が貴族だと知れたら、あの人達に私の居場所がバレてしまうのではと心配になってきました。
「ごめんごめん、立場上つい色々と詮索してしまうんだよ。もう聞かないからそんな顔をしないでくれ」
私はどんな顔をしていたのでしょうか。そう言ってくれたので少しほっとしました。
「なに?フリージアに興味があるの?最近16歳になったばかりで生きが良くてオススメだよ!」
「ちょっとノーラ!不敬になるよ!」
ノーラが絡んできてくれて助かりました。長く居ても良いことはないしそろそろこの場から離れたいです。
「君がフリージアで、君がノーラだね。私はルピナスというんだ。いつか名前を聞くことになるだろうから覚えておいてくれ」
意味深なこと彼は言いました。ノーラは「覚えておくね!」などと元気に言っていました。
食事が終わると彼等は再び狩りに出かけて行きました。
そしてその日の夕方、大怪我をしたルピナス様がライラックさんの診療所に運び込まれてきたのです。
15
お気に入りに追加
3,667
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました
As-me.com
恋愛
完結しました。
とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。
なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

【完結】わたしの欲しい言葉
彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。
双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。
はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。
わたしは・・・。
数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。
*ドロッとしています。
念のためティッシュをご用意ください。
【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」
まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。
【本日付けで神を辞めることにした】
フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。
国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。
人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
アルファポリスに先行投稿しています。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中

悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる