伯爵令嬢は身の危険を感じるので家を出ます 〜伯爵家は乗っ取られそうですが、本当に私がいなくて大丈夫ですか?〜

超高校級の小説家

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村に戻るとノーラは下馬した彼等を待たせて村長さんを呼びに行きました。村長さんは煩わしそうに出て来ましたが、こちらを見ると慌てて飛んで来ました。

村長さんは先程の髭を生やした恐そうなおじさんと青ざめた表情で何か話していました。
話が終わると村人を集めて机や椅子を集めるように指示して全員に座ってもらうと、馬を引かせて牛舎に繋ぎました。

まさに至れり尽くせりの歓待ですが、やはり料理だけは出せません。彼等のうち数名が村人の案内で屠殺場に向かっていました。村長さんはその間にぬかり無く火をおこしています。

「なんかすごく身分の高い貴族様らしいよ。特にさっきのカッコイイ男の人が天井人?だとか。詳しくは聞けなかったんだけどさ」

ノーラがこっそりという感じで教えてくれましたが、殿下などと呼ばれていたので王族の可能性が高く、村長さんが青ざめるのも無理はありません。下手をしたら村が一つ地図から消えますから。

そうこうしているうちに肉が焼けて、真っ昼間から宴会が始まりました。お酒はありませんけど。

先程の青年が私とノーラに手招きしています。肉が乗ったお皿を二つ用意しているのて、律儀にもご馳走するという先程の約束を果たそうとしているようです。

ノーラは「美味しいね」と言いながら肉にかぶりついています。
私はオロオロしていると「フリージアもこうやってかぶりつくんだよ!」と肉を頬張りながら言うので、少しだけ齧ってみました。

「美味しい……」

「あはは、君達のおかげで良い休憩になったよ。また昼から狩りに行くから、次は何匹か置いて帰るよ」

「誠に恐れ入ります」

私がそう応えると彼は目を細めました。突然表情が変わったので私はビクッとしてしまいました。

「君はこの村に住んでいるにしては線が細すぎるし、色々と繊細で礼儀作法も身についているように見える」

王族かもしれないと言葉使いに気をつけ過ぎたのが失言だったかもしれません。
もし私が貴族だと知れたら、あの人達に私の居場所がバレてしまうのではと心配になってきました。

「ごめんごめん、立場上つい色々と詮索してしまうんだよ。もう聞かないからそんな顔をしないでくれ」

私はどんな顔をしていたのでしょうか。そう言ってくれたので少しほっとしました。

「なに?フリージアに興味があるの?最近16歳になったばかりで生きが良くてオススメだよ!」

「ちょっとノーラ!不敬になるよ!」

ノーラが絡んできてくれて助かりました。長く居ても良いことはないしそろそろこの場から離れたいです。

「君がフリージアで、君がノーラだね。私はルピナスというんだ。いつか名前を聞くことになるだろうから覚えておいてくれ」

意味深なこと彼は言いました。ノーラは「覚えておくね!」などと元気に言っていました。

食事が終わると彼等は再び狩りに出かけて行きました。

そしてその日の夕方、大怪我をしたルピナス様がライラックさんの診療所に運び込まれてきたのです。
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