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私は元の姿に戻りました。巨大なエンシェントドラゴンの姿に。
翼を広げて天を覆い尽くすと、自分の存在を示すように咆哮をあげました。
「エピドートの方々、貴方達のせいで私は想いを遂げる事なく命を奪われる事になりました。楽に死ねると思わないでくださいね」
ひいいい!と叫びながらイザベラの父親が逃げ出しましたが、私はそれを尾で叩き潰しました。
「お父様!?」
それを見てイザベラが悲鳴をあげます。尾を叩きつけた場所には血溜まりができていました。
「ドラゴンだと?こんな巨大なものは見たことがないが」
「それはそうでしょう。本来エンシェントドラゴンが姿を現す時は文明が滅びる時ですからね」
「エンシェント……ドラゴン?最終試練の大穴に眠ると言う伝説の?」
多少は聖女の勉強をしたのか、イザベラも少しは知っているようです。
「今までドラゴンなど腐る程相手にしてきたわ!極大魔法で消し炭にしてくれる!」
エピドート公爵の放った魔法が顔に飛んで来たので、手で払いました。
「いたっ」
「私の極大魔法が掻き消されただと!?ぐおおお!」
少し手が痛かったので、お返しに炎のブレスで消し炭にしてあげました。残るはイザベラだけです。
「お父様……お爺様……」
肉親を失ったイザベラは茫然自失しています。
服もさっきのままで血みどろですし、まるでこっちが悪者ではありませんか。
彼女の記憶を覗いた時に、少し同情してしまったのですが、生かしておく程の理由にはなりません。苦しめるつもりでしたが、一思いに逝かせてあげる程度にしておきましょうか。
「結局、私は命まで貴女に奪われるのね。普通に暮らしたかっただけなのに」
「貴女から色々なものを奪ったのは先程の老人です。殺された私が加害者のように言わないでください」
私はイザベラを握り潰そうと手を伸ばしました。彼女はもう観念しているのでしょう。目を瞑って打ち震えるだけです。
「ごめんなさい……ごめんなさい……もし生まれ変わったら、次は聖女とは関係の無い世界に」
イザベラに手が届く直前で止まってしまいました。
別に私が悪いわけではないのですが。
「アビゲイル、待ってくれ」
後ろからクリストファー様が声をかけてきました。
「クリストファー様、それは私を殺したこの女を生かせと、そういう意味ですか?私達の仲を引き裂いたこの女を生かせと」
優しいクリストファー様は私が殺す事を躊躇ってしまったのを見ていたのでしょう。でも、イザベラを庇ったようにも思えて、私は思わずクリストファー様に威圧をしてしまいました。
「違うんだ。聞いてくれベアトリス」
クリストファー様もこの姿が恐ろしいのでしょう。震えながら威圧に耐えて、私に呼びかけています。
「僕は君にこれ以上人を殺して欲しくないだけなんだ。僕が不甲斐ないばかりに。さっきの兄上も君の仕業なんだよね?」
「私だって殺された恨みを晴らしたい気持ちがあるので、別にクリストファー様のせいではありませんよ」
「君は躊躇っているじゃないか。イザベラは僕が責任を持って、罪に相応しい罰を与えるから、元の優しいアビゲイルに戻ってくれないか」
もう元には戻れないのにそんな事を言われ、私は悲しくて咆哮してしまいました。そこまで言うなら私の怒りの根源を見てもらいましょう。
「クリストファー様、手に乗ってください。もう私がアビゲイルではない事をお見せします」
私が手を差し出すと、クリストファー様は手に乗ってくれました。
「ちゃんと掴まっててくださいね」
「どこにいくんだ?うわああああ!」
私はそのまま翼を広げて、大穴に向かって飛び立ちました。
翼を広げて天を覆い尽くすと、自分の存在を示すように咆哮をあげました。
「エピドートの方々、貴方達のせいで私は想いを遂げる事なく命を奪われる事になりました。楽に死ねると思わないでくださいね」
ひいいい!と叫びながらイザベラの父親が逃げ出しましたが、私はそれを尾で叩き潰しました。
「お父様!?」
それを見てイザベラが悲鳴をあげます。尾を叩きつけた場所には血溜まりができていました。
「ドラゴンだと?こんな巨大なものは見たことがないが」
「それはそうでしょう。本来エンシェントドラゴンが姿を現す時は文明が滅びる時ですからね」
「エンシェント……ドラゴン?最終試練の大穴に眠ると言う伝説の?」
多少は聖女の勉強をしたのか、イザベラも少しは知っているようです。
「今までドラゴンなど腐る程相手にしてきたわ!極大魔法で消し炭にしてくれる!」
エピドート公爵の放った魔法が顔に飛んで来たので、手で払いました。
「いたっ」
「私の極大魔法が掻き消されただと!?ぐおおお!」
少し手が痛かったので、お返しに炎のブレスで消し炭にしてあげました。残るはイザベラだけです。
「お父様……お爺様……」
肉親を失ったイザベラは茫然自失しています。
服もさっきのままで血みどろですし、まるでこっちが悪者ではありませんか。
彼女の記憶を覗いた時に、少し同情してしまったのですが、生かしておく程の理由にはなりません。苦しめるつもりでしたが、一思いに逝かせてあげる程度にしておきましょうか。
「結局、私は命まで貴女に奪われるのね。普通に暮らしたかっただけなのに」
「貴女から色々なものを奪ったのは先程の老人です。殺された私が加害者のように言わないでください」
私はイザベラを握り潰そうと手を伸ばしました。彼女はもう観念しているのでしょう。目を瞑って打ち震えるだけです。
「ごめんなさい……ごめんなさい……もし生まれ変わったら、次は聖女とは関係の無い世界に」
イザベラに手が届く直前で止まってしまいました。
別に私が悪いわけではないのですが。
「アビゲイル、待ってくれ」
後ろからクリストファー様が声をかけてきました。
「クリストファー様、それは私を殺したこの女を生かせと、そういう意味ですか?私達の仲を引き裂いたこの女を生かせと」
優しいクリストファー様は私が殺す事を躊躇ってしまったのを見ていたのでしょう。でも、イザベラを庇ったようにも思えて、私は思わずクリストファー様に威圧をしてしまいました。
「違うんだ。聞いてくれベアトリス」
クリストファー様もこの姿が恐ろしいのでしょう。震えながら威圧に耐えて、私に呼びかけています。
「僕は君にこれ以上人を殺して欲しくないだけなんだ。僕が不甲斐ないばかりに。さっきの兄上も君の仕業なんだよね?」
「私だって殺された恨みを晴らしたい気持ちがあるので、別にクリストファー様のせいではありませんよ」
「君は躊躇っているじゃないか。イザベラは僕が責任を持って、罪に相応しい罰を与えるから、元の優しいアビゲイルに戻ってくれないか」
もう元には戻れないのにそんな事を言われ、私は悲しくて咆哮してしまいました。そこまで言うなら私の怒りの根源を見てもらいましょう。
「クリストファー様、手に乗ってください。もう私がアビゲイルではない事をお見せします」
私が手を差し出すと、クリストファー様は手に乗ってくれました。
「ちゃんと掴まっててくださいね」
「どこにいくんだ?うわああああ!」
私はそのまま翼を広げて、大穴に向かって飛び立ちました。
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