7 / 27
7
しおりを挟む
王都に戻った私は一路、自宅であるオニキス侯爵家の屋敷に向かいました。
いつも聖女の修行から帰る時のように勝手口から入ると、今回のことを報告するためにお父様を探ましたがどうやら居ないようです。
仕方ないので今度はお母様を探していると、家令のケイレブを見つけたので声をかけました。
「アビゲイルお嬢様、お帰りなさ……なんですとお!?奥様!奥様!」
普段から冷静で忠実なケイレブが私を見るや否や、目に見えて狼狽しながらお母様を探しに行ってしまいました。
「奥様!こちらでございます!」
ケイレブはすぐに慌ただしく戻ってきましたが、お母様はやつれた様子で俯きながらケイレブを追ってきました。
「ケイレブ、何を言っているのです。アビゲイルはもう……。誰か遺品でも届けにきて……えええ!?」
お母様は私を見ると目を見開いていました。私が帰宅を告げると、お母様は小走りになって寄ってくると私を強く抱きしめました。
「アビゲイル、生きていたのですか!私達がどれ程心配したことか!」
お母様は声を出して泣き崩れています。実際にそうなのですが、私は死んだことになっていて既にそれが知れ渡っているようです。
私が大穴に飲まれてから何日が経過しているのでしょうか。王都に来るまでの道すがら、私と試練の洞窟に同行した兵士を探しましたが見つかりませんでしたし。
「5日も連絡をせずに何をしていたのですか。貴女は試練の最中に亡くなったことになっているのですよ」
5日と聞いて流石に驚きました。死んでしまった私の身体を見てもそこまで腐敗していなかったはずですが、もしかしたらこの身体だから感じなかっただけであの場所は気温が低かったりするのかもしれません。
「それで兵士が皆いなくなっていたのですね。私が何をしていたのか、とても信じていただける話ではありませんがお話しします」
私は刺客に襲われた事、刺客が祭壇を破壊した事、その地崩れに巻き込まれて大穴に落ちた事を説明しました。ただ、私の正体を明かすわけにはいかないので、気が付いたら崩れた祭壇の側で横たわっていたとだけ伝えました。
これでお母様の反応を見てみたいと思います。
「大穴に落ちたって……貴女は真面目だし嘘を吐くような子ではないから、私は信じるわ」
そうは言いますが、お母様は半信半疑といった風でした。お母様でこれですから、これから方々に説明する時には微妙でしょうね。
「お母様、お父様はどうされたのですか?」
「それが……」
お母様は困ったような顔をしました。それから、お父様は私が聖女の最終試練に失敗したとして、つい今しがた王宮に呼び出されて出掛けたということでした。
「私、行ってきます」
私はそう言って、お母様が引き止める声を後ろに聞きながら王宮に向かいました。
いつも聖女の修行から帰る時のように勝手口から入ると、今回のことを報告するためにお父様を探ましたがどうやら居ないようです。
仕方ないので今度はお母様を探していると、家令のケイレブを見つけたので声をかけました。
「アビゲイルお嬢様、お帰りなさ……なんですとお!?奥様!奥様!」
普段から冷静で忠実なケイレブが私を見るや否や、目に見えて狼狽しながらお母様を探しに行ってしまいました。
「奥様!こちらでございます!」
ケイレブはすぐに慌ただしく戻ってきましたが、お母様はやつれた様子で俯きながらケイレブを追ってきました。
「ケイレブ、何を言っているのです。アビゲイルはもう……。誰か遺品でも届けにきて……えええ!?」
お母様は私を見ると目を見開いていました。私が帰宅を告げると、お母様は小走りになって寄ってくると私を強く抱きしめました。
「アビゲイル、生きていたのですか!私達がどれ程心配したことか!」
お母様は声を出して泣き崩れています。実際にそうなのですが、私は死んだことになっていて既にそれが知れ渡っているようです。
私が大穴に飲まれてから何日が経過しているのでしょうか。王都に来るまでの道すがら、私と試練の洞窟に同行した兵士を探しましたが見つかりませんでしたし。
「5日も連絡をせずに何をしていたのですか。貴女は試練の最中に亡くなったことになっているのですよ」
5日と聞いて流石に驚きました。死んでしまった私の身体を見てもそこまで腐敗していなかったはずですが、もしかしたらこの身体だから感じなかっただけであの場所は気温が低かったりするのかもしれません。
「それで兵士が皆いなくなっていたのですね。私が何をしていたのか、とても信じていただける話ではありませんがお話しします」
私は刺客に襲われた事、刺客が祭壇を破壊した事、その地崩れに巻き込まれて大穴に落ちた事を説明しました。ただ、私の正体を明かすわけにはいかないので、気が付いたら崩れた祭壇の側で横たわっていたとだけ伝えました。
これでお母様の反応を見てみたいと思います。
「大穴に落ちたって……貴女は真面目だし嘘を吐くような子ではないから、私は信じるわ」
そうは言いますが、お母様は半信半疑といった風でした。お母様でこれですから、これから方々に説明する時には微妙でしょうね。
「お母様、お父様はどうされたのですか?」
「それが……」
お母様は困ったような顔をしました。それから、お父様は私が聖女の最終試練に失敗したとして、つい今しがた王宮に呼び出されて出掛けたということでした。
「私、行ってきます」
私はそう言って、お母様が引き止める声を後ろに聞きながら王宮に向かいました。
0
お気に入りに追加
1,581
あなたにおすすめの小説
転生令嬢だと打ち明けたら、婚約破棄されました。なので復讐しようと思います。
柚木ゆず
恋愛
前世の記憶と膨大な魔力を持つサーシャ・ミラノは、ある日婚約者である王太子ハルク・ニースに、全てを打ち明ける。
だが――。サーシャを待っていたのは、婚約破棄を始めとした手酷い裏切り。サーシャが持つ力を恐れたハルクは、サーシャから全てを奪って投獄してしまう。
信用していたのに……。
酷い……。
許せない……!。
サーシャの復讐が、今幕を開ける――。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~
汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。
――というのは表向きの話。
婚約破棄大成功! 追放万歳!!
辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19)
第四王子の元許嫁で転生者。
悪女のうわさを流されて、王都から去る
×
アル(24)
街でリリィを助けてくれたなぞの剣士
三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
「さすが稀代の悪女様だな」
「手玉に取ってもらおうか」
「お手並み拝見だな」
「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」
**********
※他サイトからの転載。
※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
【完結】両親が亡くなったら、婚約破棄されて追放されました。他国に亡命します。
西東友一
恋愛
両親が亡くなった途端、私の家の資産を奪った挙句、婚約破棄をしたエドワード王子。
路頭に迷う中、以前から懇意にしていた隣国のリチャード王子に拾われた私。
実はリチャード王子は私のことが好きだったらしく―――
※※
皆様に助けられ、応援され、読んでいただき、令和3年7月17日に完結することができました。
本当にありがとうございました。
さあ、お嬢様。断罪の時間です ~ある婚約破棄事件のその後~
オレンジ方解石
ファンタジー
サングィス王国の王太子エルドレッドは、ソールズベリー公爵令嬢ベアトリスとの婚約を破棄。タリス男爵令嬢を王妃に迎えようとして、愚行をサングィス国王に断罪される。
ベアトリスは新しい王太子ウィルフレッドの妃となり、世間からは「物語のような婚約破棄事件」と称賛された。
しかし現実は物語のようには終わらず、三年後…………。
※グロなどはありませんが、一応、死体や死亡展開があるので、R15 設定にしています。
※ファンタジー要素は薄めですが、婚約破棄や悪役令嬢要素があるので、カテゴリを『ファンタジー』にしています。
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる