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マディア公爵領編
53話 やってやろうじゃないですか
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ファピーのスクラップブックに、縦に真ん中で半分に折ったノート用紙を足しました。その左側に冬季リーグ西地区コメッツブルーエーローズの選手たちの情報をひとりずつ書いて行きます。そして、右側には日本語で、グレⅡクロヴィスサイドシナリオを時系列で。
これで、誰にも読めないけれど見られても怪しまれないかも知れないメモの完成です! シナリオ書き出すだけでもけっこう時間がかかりました。選手足りなくなるかと思った。途中でレアさんが「ソノコー、なにしてるのお?」と覗きに来ましたが、じっと見た後「……あなたの勤勉さには頭が下がるわ」と言って去って行かれました。……バレてない、セーフ‼ その後アシモフたんが遊んでーと来たので、手を止めました。お庭に出てボール遊びをしながら、まとめたことを頭の中でおさらいしました。
まず、大きなイベントを考えます。分岐はたくさんあるので、すべてその通りになるとは限らないですが、クロヴィス側のメインシナリオの場合です。
1.前マディア公爵が死に、クロヴィスが公爵になる。
2.『王杯』に兆しが現れ、アウスリゼ全国から王位継承権上位者が集められる。リシャールとクロヴィスが聖別され、二人が敵対関係に。
……このふたつはもう、わたしが来る前になされていた。
3.クロヴィスの最愛の婚約者である伯爵令嬢メラニー・デュリュフレが、心臓の病気であり、余命宣告をされる。
……たぶん、これももう済んでいると思う。この一件によって、クロヴィスは『王杯』を継承することにより得られるとされる『聖力』を求めることになる。現国王のそれはすでに涸れ、そのゆえに次代の選定がなされる事態だから。
わたしが来たとき、一般の人でもわかるくらいにリシャールとクロヴィスが対立していた状況であることを考えると、もしかしたらメラニーはもう寝付いてしまっているかもしれない。来てからもう四カ月以上も経っていることを踏まえてそう想定できるけれど、いかんせん、メラニーの病状は一切公開されていない情報のため、わたしが確認することはまず無理だ。ちなみにシナリオの進め方が遅いとメラニーが死んでしまい、クロヴィスは闇落ち状態。ただ権力を求める悪鬼のようになってしまう。その状態ではバッドエンドまっしぐら。
また、メラニーの病状が安定している段階でも、レアさんのハニトラが待っているというしかけだ。そちらに引っかかると、メラニーが心労で倒れてやっぱり死んでしまい、バッドエンド。
4.軍備の増強。
……リシャールとの全面対決に向けて、マディア公爵家の騎士団の増員がひそやかに目論まれる。もちろん、リシャール側にすっぱ抜かれたら国賊扱いになる。タイミングによってはそのまま内乱へ。勝ったほうが次代の王様。
アウスリゼが軍事国家たる姿を望まないリシャールに反発し、国軍を抜けてクロヴィス側に着く者が出るのもこの時期。いかに多く引き抜けるかがクロヴィスサイドのプレイヤーの腕の見せ所。ここで、オリヴィエ様のお兄さんであるブリアック・ボーヴォワールが、クロヴィスの元へ走る。
ここでもレアさんが暗躍する。というか、クロヴィスシナリオではずっといて、初めてプレイしたときはリシャールの手下だとかぜんぜん気づかなかった。立場としてはメラニーの専門的な世話のために雇われた侍女兼看護師みたいな感じ。メラニー自身になにかするということはないんだけど(むしろ献身的な介護をしていたので、絶大の信頼を得ていた)、美人で博識で社会的立場もしっかりとある彼女の言葉には説得力があって、クロヴィスも惑わされる……かどうかはプレイヤー次第。
……ね、わかるでしょ? なんでレアさん、わたしのところにいると思う?
5.宰相オリヴィエ・ボーヴォワールとの対峙。
……レアさんの工作が効かず、リシャールを推す王国軍との決戦が現実的な問題になってきたとき。マディア領と隣接した王国直轄領の境界において、アウスリゼ国軍の下士官二人が惨殺されているのが見つかる。犯人は不明。どちらも自軍のなしたことではないと主張するも、これが決定打になってしまい、どちらの宣戦布告もないままにマディア領北東部事変へと突入。
これに最初から第三者の関与を疑ったのがオリヴィエ様だった(というのはリシャールサイドシナリオをやればわかる。が、クロヴィス側はそのことを知らないし、リシャールが自分を悪者へ仕立て上げるために起こした事件だと思っている)。停戦交渉のために自ら立ち上がったオリヴィエ様は、リシャールの反対を振り切って単身境界へと乗り込む。クロヴィスもいたずらに兵を浪費する気持ちはないので、オリヴィエ様との会談を是として歓迎する(リシャールはこれをクロヴィスの罠と考えている)。会談は和やかに進められ、平和的解決へ向けて互いに歩み寄るという両陣営の意志が確認され、握手で終わる(クロヴィスサイドシナリオでのみ描写。クロヴィスはメラニーの状況も打ち明け、リシャールが聖力を得た場合の助力も嘆願)。が、その後オリヴィエ様はルミエラへと戻る列車から、投げ出された遺体として見つかる。調印された停戦議定書は、闇へと消えた。
6.リシャール側からの宣戦布告。
……クロヴィスはオリヴィエ様の死に関与していないことを訴えるも、リシャールも、民衆も信じなかった。
自らの半身とすら感じていたオリヴィエ様を亡くし、リシャールは悲しみと憎しみゆえに人が変わったようになる。そこからは淡々と駒を動かす軍師として行動する。
この後はひたすら戦略戦争ゲーム。それまで両陣営が培ってきたものがもろに影響する。結果はもちろん、プレイヤー次第。
クロヴィスが勝てば、彼が王権を取り、その隣には回復したメラニーが。リシャールが勝てば、オリヴィエ様の墓前に王杯が。どちらの結果でも、敗けた方のその後は描かれない。
……ざっと、こんな感じですね。オリヴィエ様は生きている。マディア領北東部事変もまだ起きていない。なので、今は3~4の間くらいでしょうか。オリヴィエ様のお兄さんがどちらかにいるかにもよるんですけど。さすがに「お兄様お元気ですか?」とは聞けないですしね。未確認です。
で、わたしがなんでレテソル来たかっていうと。マディア領北東部事変を未然阻止できないかなって。たぶん、いけます。たぶん。知識チート最高。わたし犯人の存在を知っていますので。公式ファンブック三冊持ってましたので。裏設定網羅してますので。名前は明かされていなかったですけど、あたりがつきました。たぶん。ええ、たぶん。
ただ、一般人のわたしがどうやって阻止するか。それが問題なんですけどね!
これで、誰にも読めないけれど見られても怪しまれないかも知れないメモの完成です! シナリオ書き出すだけでもけっこう時間がかかりました。選手足りなくなるかと思った。途中でレアさんが「ソノコー、なにしてるのお?」と覗きに来ましたが、じっと見た後「……あなたの勤勉さには頭が下がるわ」と言って去って行かれました。……バレてない、セーフ‼ その後アシモフたんが遊んでーと来たので、手を止めました。お庭に出てボール遊びをしながら、まとめたことを頭の中でおさらいしました。
まず、大きなイベントを考えます。分岐はたくさんあるので、すべてその通りになるとは限らないですが、クロヴィス側のメインシナリオの場合です。
1.前マディア公爵が死に、クロヴィスが公爵になる。
2.『王杯』に兆しが現れ、アウスリゼ全国から王位継承権上位者が集められる。リシャールとクロヴィスが聖別され、二人が敵対関係に。
……このふたつはもう、わたしが来る前になされていた。
3.クロヴィスの最愛の婚約者である伯爵令嬢メラニー・デュリュフレが、心臓の病気であり、余命宣告をされる。
……たぶん、これももう済んでいると思う。この一件によって、クロヴィスは『王杯』を継承することにより得られるとされる『聖力』を求めることになる。現国王のそれはすでに涸れ、そのゆえに次代の選定がなされる事態だから。
わたしが来たとき、一般の人でもわかるくらいにリシャールとクロヴィスが対立していた状況であることを考えると、もしかしたらメラニーはもう寝付いてしまっているかもしれない。来てからもう四カ月以上も経っていることを踏まえてそう想定できるけれど、いかんせん、メラニーの病状は一切公開されていない情報のため、わたしが確認することはまず無理だ。ちなみにシナリオの進め方が遅いとメラニーが死んでしまい、クロヴィスは闇落ち状態。ただ権力を求める悪鬼のようになってしまう。その状態ではバッドエンドまっしぐら。
また、メラニーの病状が安定している段階でも、レアさんのハニトラが待っているというしかけだ。そちらに引っかかると、メラニーが心労で倒れてやっぱり死んでしまい、バッドエンド。
4.軍備の増強。
……リシャールとの全面対決に向けて、マディア公爵家の騎士団の増員がひそやかに目論まれる。もちろん、リシャール側にすっぱ抜かれたら国賊扱いになる。タイミングによってはそのまま内乱へ。勝ったほうが次代の王様。
アウスリゼが軍事国家たる姿を望まないリシャールに反発し、国軍を抜けてクロヴィス側に着く者が出るのもこの時期。いかに多く引き抜けるかがクロヴィスサイドのプレイヤーの腕の見せ所。ここで、オリヴィエ様のお兄さんであるブリアック・ボーヴォワールが、クロヴィスの元へ走る。
ここでもレアさんが暗躍する。というか、クロヴィスシナリオではずっといて、初めてプレイしたときはリシャールの手下だとかぜんぜん気づかなかった。立場としてはメラニーの専門的な世話のために雇われた侍女兼看護師みたいな感じ。メラニー自身になにかするということはないんだけど(むしろ献身的な介護をしていたので、絶大の信頼を得ていた)、美人で博識で社会的立場もしっかりとある彼女の言葉には説得力があって、クロヴィスも惑わされる……かどうかはプレイヤー次第。
……ね、わかるでしょ? なんでレアさん、わたしのところにいると思う?
5.宰相オリヴィエ・ボーヴォワールとの対峙。
……レアさんの工作が効かず、リシャールを推す王国軍との決戦が現実的な問題になってきたとき。マディア領と隣接した王国直轄領の境界において、アウスリゼ国軍の下士官二人が惨殺されているのが見つかる。犯人は不明。どちらも自軍のなしたことではないと主張するも、これが決定打になってしまい、どちらの宣戦布告もないままにマディア領北東部事変へと突入。
これに最初から第三者の関与を疑ったのがオリヴィエ様だった(というのはリシャールサイドシナリオをやればわかる。が、クロヴィス側はそのことを知らないし、リシャールが自分を悪者へ仕立て上げるために起こした事件だと思っている)。停戦交渉のために自ら立ち上がったオリヴィエ様は、リシャールの反対を振り切って単身境界へと乗り込む。クロヴィスもいたずらに兵を浪費する気持ちはないので、オリヴィエ様との会談を是として歓迎する(リシャールはこれをクロヴィスの罠と考えている)。会談は和やかに進められ、平和的解決へ向けて互いに歩み寄るという両陣営の意志が確認され、握手で終わる(クロヴィスサイドシナリオでのみ描写。クロヴィスはメラニーの状況も打ち明け、リシャールが聖力を得た場合の助力も嘆願)。が、その後オリヴィエ様はルミエラへと戻る列車から、投げ出された遺体として見つかる。調印された停戦議定書は、闇へと消えた。
6.リシャール側からの宣戦布告。
……クロヴィスはオリヴィエ様の死に関与していないことを訴えるも、リシャールも、民衆も信じなかった。
自らの半身とすら感じていたオリヴィエ様を亡くし、リシャールは悲しみと憎しみゆえに人が変わったようになる。そこからは淡々と駒を動かす軍師として行動する。
この後はひたすら戦略戦争ゲーム。それまで両陣営が培ってきたものがもろに影響する。結果はもちろん、プレイヤー次第。
クロヴィスが勝てば、彼が王権を取り、その隣には回復したメラニーが。リシャールが勝てば、オリヴィエ様の墓前に王杯が。どちらの結果でも、敗けた方のその後は描かれない。
……ざっと、こんな感じですね。オリヴィエ様は生きている。マディア領北東部事変もまだ起きていない。なので、今は3~4の間くらいでしょうか。オリヴィエ様のお兄さんがどちらかにいるかにもよるんですけど。さすがに「お兄様お元気ですか?」とは聞けないですしね。未確認です。
で、わたしがなんでレテソル来たかっていうと。マディア領北東部事変を未然阻止できないかなって。たぶん、いけます。たぶん。知識チート最高。わたし犯人の存在を知っていますので。公式ファンブック三冊持ってましたので。裏設定網羅してますので。名前は明かされていなかったですけど、あたりがつきました。たぶん。ええ、たぶん。
ただ、一般人のわたしがどうやって阻止するか。それが問題なんですけどね!
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