【完結】喪女は、不幸系推しの笑顔が見たい ~よって、幸せシナリオに改変します! ※ただし、所持金はゼロで身分証なしスタートとする。~

つこさん。

文字の大きさ
上 下
50 / 247
マディア公爵領編

50話 生活基盤、セット完了!

しおりを挟む
「うっっっっっっっま!」

 レテソル最高ですね。あったかくておいしくて人々が若干ウェイで。若干なら愛せます。はい。
 でっかいショッピングモールみたいのがあったんですけど、さすがにそこでのお買い物は後日に、ということになりました。さすがに。来たばっかりで荷解きもしていない状態ですし。必要ないものまで買っちゃいそうですし。疲れてますし!
 食べているのはレテソル料理です。メインは白身魚のオーブン焼きみたいの。レモンソースじゃなくて早摘みのオレンジソースが主流なんだそうです。なんにせよ、んまい。最高。レテソル最高。
 荷解きやこまごまとした手続き(長期滞在の申請をしなければならないそうです)が終わったら、こちらの交通局に行こうと思います。こちらでは冬季でもカチカチ仕事があるとのこと。ちょっとしたリゾートバイトをしようというわけですね。リゾバ。いいですね! 中央からもう話は通してくださっています。「推薦状送っておくよ!」とにっこにこ顔でトゥーサン・セールさんがおっしゃっていました。一安心ですね。

 そうこうしていたら、わたしたちを追いかけてきたかのようにルミエラから手紙が届きました。わたし宛で。差出人は『ユーグ・バルテレミー』とあります。なんと! 最初に住んだ物件の一階雑貨屋さん男性店員のユーグさんでした!
 ルミエラのお家に届けたのが、転送されてきたみたいです。いちおうそういう手続きしてきたので。なんだかうれしいですね。手紙書くって言ってくれたの、本当だったみたいです。
 内容は近況報告と、わたしのことを案じてくださる言葉でした。やさしい。二階の部屋はしばらく前に両方空室となって、とてもさみしいと書かれていました。アベルとはそんなに仲良くなかったと思ってましたけど、そうでもなかったみたいです。
 さっそくお返事を書きました。お手紙ありがとう、わたしは今レテソルに居ます。とても元気です。お手紙くださってうれしい。またお手紙くださるときは、ルミエラのお家宛に出してください(そうしたら転送されて、ルミエラからレテソルまでの送料はこちらに請求されるので)。他にもいろいろ書きました。主にレアさんとアシモフたんのこと。あと、ファピーの冬季リーグたのしみっていうこと。
 文通相手が三人になりました。ユーグさん、ミュラさん、それに、オリヴィエ様。それなりにゆったりと、でもちょっとだけ忙しく生活できそうです。「文通! あたしには無理だわ!」とレアさんが信じられないものを見るような目で両手を上げました。そうですね、レアさん筆まめには見えません。オリヴィエ様とミュラさんにも、よさげな絵葉書を探して『到着しました』ってお知らせしようと思います。なにがいいかな。どんなのあるかな。
 ここに来た真の目的はバカンスではないですけども。たのしむのは悪いことではないと思うので! 心身の健康のためにもいいことなので! こちらではこちらの生活を満喫しようと思います。

 アシモフたんに新しいお友だちもできました。テラスとお庭を挟んでお隣りのお家の、シュナウザーっぽい見た目の中型犬です。ポールくん。群馬いたときによく近所をお散歩していた子にそっくり。あの子は元気かなー。
 それと。お知らせがあります。荷解きをしたんです。はい。あらかた終わったなーと思ってリビングに行ったんです。はい。そしたらですね。
 ――モアイこけしが飾られていたんです。リビングのサイドチェストに。

「――レアさん……持ってきたん、ですか?」

 ヤツを見つめながら尋ねると、「えー? キッチン用品の中に入ってたよー。ソノコが入れたんじゃないの?」とのこと。んなわけありますかいな。とりあえずアシモフたんが箱に紛れ込ませたんだろう、ということで話は落ち着きました。はい。もー、アシモフたんったら、おちゃめー。
 ご近所数件へのご挨拶も済みました。わたしひとりでご挨拶行ったんですけど。なんか月二くらいでお庭でバーベキューとかしてそうな若干ウェイのいい人たちばかりでした。今度ごはん食べにおいでねーって言ってくれましたけど、たぶんレアさんが嫌がるだろうなー。

 そして満を持して交通局へ行ってきます。レアさんには「こっちに来てまで仕事するとか、なんかソノコらしいわね」と笑われました。そうでしょうか。単発の良さげなのがあるといいんですけどね。事務所に入って受付の女性にご挨拶すると、上から下まで見られました。どこ行ってもだいたい初対面の方の反応は同じですね。中に通されてパーテーションで区切られた応接セットの椅子で待っていたら、「はーい、はじめましてソノコ。待ってたよ~」と年中完璧な波を追いかけて海にいそうな男性がやってきて向かい側に座りました。ロランス・デフォルジュさんとおっしゃるそうです。お名刺いただきました。わたしも名刺くれって言われたんですけどバイト身分なのでありませんので。「あれっ、社員なったんじゃないの?」と言われたんですが、なってたらこんな風におおっぴらにバケーションできませんね!
 わたしができそうなお仕事一覧をいただきました! せっかくなのでイベント計測したいですね。バケーションなので! と思ったら、あるじゃないですかファピー関連カチカチ! 来てよかったレテソル!
 冬季リーグはもちろん冬季中ずっとあるので、カチカチも定期的にあるのです。しかも交通局員シートも福利厚生であるそうです。空きがあったらチケット回してくださるとのこと! 最高ですね。来てよかったレテソル! まずは今週末にやるオープン戦のカチカチ予約しました! チケットも二枚くださるそうです! やった!
 お家にお仕事一覧を持って帰って、今後どうするかしっかり考えたいと思います。はい。
 交通局を出たら、なんかかっこいい丸みを帯びた顔でホワイトゴールドの蒸気自動車にクラクションを鳴らされました。レアさんです。買ったんでしょうか車。アシモフたんはいません。

「――さあ、ソノコ! 行くわよ、お買い物!」

 ですよねー、そうなりますよねー。
しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

(完結)王家の血筋の令嬢は路上で孤児のように倒れる

青空一夏
恋愛
父親が亡くなってから実の母と妹に虐げられてきた主人公。冬の雪が舞い落ちる日に、仕事を探してこいと言われて当てもなく歩き回るうちに路上に倒れてしまう。そこから、はじめる意外な展開。 ハッピーエンド。ショートショートなので、あまり入り組んでいない設定です。ご都合主義。 Hotランキング21位(10/28 60,362pt  12:18時点)

月が隠れるとき

いちい千冬
恋愛
ヒュイス王国のお城で、夜会が始まります。 その最中にどうやら王子様が婚約破棄を宣言するようです。悪役に仕立て上げられると分かっているので帰りますね。 という感じで始まる、婚約破棄話とその顛末。全8話。⇒9話になりました。 小説家になろう様で上げていた「月が隠れるとき」シリーズの短編を加筆修正し、連載っぽく仕立て直したものです。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

処理中です...