【完結】喪女は、不幸系推しの笑顔が見たい ~よって、幸せシナリオに改変します! ※ただし、所持金はゼロで身分証なしスタートとする。~

つこさん。

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王都ルミエラ編

28話 28禁はまだ聞けないですね、はい

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 お仕事終わって椅子を預けるとき、雑貨店兼アクセサリーショップのそのお店をちょっと拝見しました。
 小さくてもしっかりした石を使っていて買えないお値段のアクセばっかりでしたけど。ほら、ウィンドウショッピングのだいごみって「ほしー」ってただ言うところなので。すっごく癒やされた。こういうなんでもない時間って本当に必要ですよね。キレイなものとかかわいいものとか眺める時間。
 それでですね。さすが女性向け雑貨店。衣料品の扱いもありましてね。
 ショーツ買いました、ショーツ! がしがし洗えるレースじゃない普通のショーツ! よかった! 月の物のときとか不安でしかたがなかったんですよ、レースのだと。なんかすーすーするし。あとガードルというか、ペチパンっぽいのも四枚。あーよかった。これで安定感が。
 店員さんがお名刺くださいました。ポーラ・シャブリエさんです。耳の下あたりで薄い色の金髪を切りそろえていらっしゃる、すらっとしたすてきな女性です。いいなあ。膝から下に5センチくらい身長くれないかなあ。膝から下に。

 アベルは店の前でポッケに手を突っ込んで立ってました。なんか絵になってたので「絵になるねえ」と言いました。「なんだよそれ」と言って頭をがしがしされたのですが、照れてるのか? 照れてるのか?
 
 ちょっと今日は八百屋さんをみつけられなくて、近くにあったパン屋さんで白パンを買いました。黒パンより高いけど。しかたがない。お隣にお肉屋さん! バスの時間ぎりぎりですけど、揚げたなにかのお肉を見切り品でゲットしました! あとはダッシュ!

 間に合いました、よかった。わたしはぜーぜー言っているのに、アベルはひょうひょうとしています。納得いきません。
 ちょっと遠いバス停で降りたので、帰ったらもう雑貨屋さんは閉まっていて、ユーグさんがちょうど帰ろうとされているところでした。白パン差し上げようと思ったら、いつも申し訳ないからって断られました。それよりまたお店に来てって。はいもちろん参りますとも。

 部屋に入ったら当然のようにアベルが入ってきて、丸テーブルの椅子にだらりと座ります。「手! 手を洗う!」と声をかけたら、立ち上がってわたしの後に洗いました。何度言ってもこんな感じです。
 買ってきた食べ物をテーブルの上に置いて、わたしはいただいたオリヴィエ様のポスターを逆向きに巻き直しました。ごはんを食べ終わったころにはいい感じに壁へ貼れるに違いありません。本当は使いたくないのですが、画鋲はお休みの日にゲット済みです。もうすでに交通局で貼られていて、穴が空いていますのでね。同じところに画鋲を刺します。

「いただきます!」

 ぱんっと手を合わせてからごはんをいただきます。そろそろちゃんと自炊しなきゃと思うんですけども、今日も買ってきたありあわせ。白パンを割って、なんかよくわからない揚げ物肉を挟んで食べます。おいしい。アベルもわたしと同じようにしました。飲み物は、朝に沸かしたお茶の湯冷まし。それで十分。
 食べ終わってから片付けて、壁にポスターを貼ります。入り口からすぐに見える真正面の壁。今はファンサうちわが飾ってありますけど、それをちょっと左に移して真ん中に。ずっと鼻歌うたってやってたら、アベルはなにも言いませんでした。
 
「できたー‼」

 両手を挙げて喜んだら、アベルが真後ろに立ちました。なに、と思ってそのまま見上げたら、額の上になにか乗せられました。なに。

「……次はあのネックレス買ってやるよ」

 子犬でした。お昼に画廊カフェで見かけたお昼寝子犬の置小物! やだなにそれうれしい!

「え、うれしい、ありがとう! え、プレゼントってこと? すごくうれしい、ありがとう!」

 うれしい! お礼を言うと、アベルはそっぽを向いて「たった800ラリだ」と言いました。そんなの関係ねえ!

「え、うれしい。これがほしかったの。値段とかじゃなくて。ありがとうアベル。ありがとう!」

 ここに飾る! と宣言して文机の頭に乗せました。かわいい、ちょうかわいい! もう一度お礼を言うと、アベルは面食らったような顔をしていました。

「800ラリだ」

 なぜか値段を強調するので、「それ関係なくない? わたしはこれが、このわんちゃんがほしかったの」と言いました。

 やっと、このアパートがわたしのお家になった気がする。わたしが選んだ、わたしの好きなものがある部屋。群馬に置いてきたあの部屋みたいに。

 アベルはなにかを言いかけて、でも口を閉ざしてわたしの頭をぐしゃっとして帰って行きました。この人、照れたら他人のヘアスタイルに干渉するくせがあるみたいです。

 おはようございます! コブタ通り二日目です。お風呂経由じゃないので出勤にちょっと余裕があります。めずらしくアベルが出勤時のバスもいっしょに乗ってきました。そういえば昨日、シャリエさんとなに話してたのか聞こうと思ったら、なあなあにはぐらかされました。「おまえにはまだ早い」と。なんだそれ。R28話か、そうなのか。てゆーかおまえはいくつだ。

 ちょっとだけ雨が降りそうな予感です。ざんざか降りの場合は撤収です。一応いつも晴雨兼用の傘は持ち歩いています。斜めにするとギリでトートバッグに入るので。コンパクトなやつを選んだんです。
 撤収でもちゃんとその日の日当は出ます。撤収判断は自分でしていーよー、とのことだったんですが、以前は撤収したことを交通局まで報せに行かなくてはならなかったらしいです。雨降ってないのに撤収して日当もらう人がいたらしくて。でもわたしは直帰していいって先日言われました。信用していただけてありがたい話です。

 業務に着いたら、やっぱりパラパラ降って来ました。傘を差してカチカチ。雨足が強くなるにつれて人の足も早くなります。必死。必死カチカチ。

「あー、やっぱりまだやってたかあ」

 シャリエさんの声が降ってきました。見上げるとやっぱりシャリエさん。ちょっと苦笑しています。

「こういうときは撤収していいの。念のため見に来てよかった」
「まだ行けると思ったんですよ。わたしの可能性を信じたんです」
「うん? 違う方向に信じよう? さあ撤収撤収」

 椅子をポーラさんのお店に預けたら、雨が本降りになりました。ざんざか。シャリエさんが「お昼いっしょにどうだい?」と言ってくれたので、どこかよさげなところ入ろうってなりました。ちょっと雰囲気があるカフェ、というか純喫茶みたいなところに入りました。なんかかっけえ。お高そう。「僕が払うからね」と念を押されて席に着きます。ありがとうございます。

 なんかこういうお店ではクラブサンドを頼まなければならないというわたしの中の不文律がありまして、はい。それっぽいのを頼みました。さすがに550ラリとは行かなそうです。ドリンクと合わせたら900ラリ超えるかなあ……申し訳ない。

「彼氏さん……じゃないんだっけか。から、話は聞いたかい?」

 ちょっと小声で、神妙な顔でシャリエさんが言います。
 えっ、R28話ですか????
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