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第二部
その559 新たな依頼
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ミナジリ共和国に依頼するより、俺個人に依頼を掛ける。
そうした方が安上がりであり、効率的だ。俺だってそうする。
しかし、それは些か法王クルス・ライズ・バーリントンという長年世界のトップを走ってきた男を甘く見ていると言わざるを得ない。
「はははは……流石世界の親玉」
俺が乾いた笑いを零すのも無理はない。
この場にいる皆が驚き、呆れ、心から法王クルスを称賛しているだろう。
「ミケラルド含むオリハルコンズに依頼か。究極のいいとこどりだな」
リィたんは依頼書に目を通しながらすんと鼻息を吐いていた。
「うぅわ? ナニコレ?」
「こんな依頼初めてみたぜ……」
キッカ、ハンは小難しい顔をしながら依頼書を見る。
「こんな依頼方法が可能なんですか?」
ラッツがアーダインに聞く。
すると、アーダインはこくりと頷いた。
「無論可能だ」
「聖騎士オルグの身辺調査。魔族ファーラの魔力が及ぼした世界への影響調査とその対処。闇ギルド員の調査とその対処。闇ギルドの消滅。地龍とその仔龍の救助。本当に細かい……」
クレアが読み上げながらそれらを確認していく。
「各依頼に対し報酬が発生し、都度支払う事が可能。これってつまり、パーティのギルド貢献も各依頼毎にあるって事ですよね?」
「そうだ」
メアリィの言葉をアーダインが肯定する。
「「ミケラルドさん……これって?」」
アリス、エメリーが法王クルスの真意を俺に聞く。
「これまで闇ギルドの対処は国家規模で動いている事がほとんどでした。私が動いたところで、その報酬が支払われる事もありませんし、貢献は世界として認知される事もない。ですが、クルス殿はここで大きく動いた。聖騎士学校に通いながら冒険者としての資質も高める。そんな事が可能なのはオリハルコンズをおいて他ならない。勇者エメリー、聖女アリス、水龍リバイアタンを擁するこのオリハルコンズを、クルス殿は対魔王討伐パーティとして選んだ。これはその先行投資なんでしょうね」
言いながら目を向けると、アーダインは言った。
「クルスの狙いはパーティ依頼で向上する冒険者ランクにあるだろう。ラッツたちやクレア、アリスはランクA、エメリーやレミリア、リィたんはランクS、ナタリー、メアリィはランクC、そしてミックはSS。今回の依頼はランクフリーの特別調査案件。しかし、オルグの身辺調査なんか見るからにSSSの依頼だ。これを何とかしちまうのがヤツのずる賢さだよ。現にそれが出来る人材がオリハルコンズにはいる。しかし、個人がそれをクリアしたところで、その人材がクリアした事にはならず、パーティとしてクリアした事になる。これにより何が起こるか……」
「そっか、私たちでもランクが上がる……」
ナタリーが納得に追い込まれ、改めて依頼書に目を通す。
「ランクAからランクSに上がるためには武闘大会での好成績が必要だ。だが、魔法使いがこれを駆けあがる事は困難。今年法王国で開かれる武闘大会では戦士部門と魔法使い部門を分ける事が決定している」
「そうなのですか?」
レミリアが聞くと、アーダインが俺に目をやった。
「どこかの元首の入れ知恵だがな」
レミリアの視線が俺にやってくる。俺は手を振る事でそれに応えた。
「やった!」
と、強く拳を握ったのはキッカだった。
魔法使いがこれまでの武闘大会を勝ち抜くのは非常に難しい。
中には魔帝、魔皇、破壊魔なんてイレギュラーもいるが、魔法使いだけが適切な判断で実力を測れないのは魔王復活に際し魔族に遅れをとってしまう。
キッカ、アリス、ナタリー、メアリィは魔法を主体に戦うので、パーティの中では後方で戦う事になるだろう。その後方適正さえランクSならばなんら問題ないのだ。
勿論、それには厳しい試練が待ち受けているだろう。こうやってアーダインが二部門でランクS審査の事を話し、キッカが喜びを見せた。
しかし、世界中でどれだけの魔法使いが喜ぶか。どれだけの魔法使いが参加するか想像が出来ない。きっと戦士部門以上に厳しい戦いになるだろう。
「ふ~ん、よく考えたもんだな」
テーブルに肘を突き、呆れた表情を見せる家主オベイル。
「それだけに、オリハルコンズに掛かる重責は計り知れんな」
茶を啜りながらイヅナが言う。
回し読みされていた依頼書が一周し、俺のところに戻ってくる。
ナタリーはじっと俺を見つめ、依頼書を渡す。
「どうするの、ミック?」
そして、意外な事にナタリーは俺にそれを聞いてきたのだ。
「え? 私は創設者なだけで、魔王討伐のためのオリハルコンズのリーダーはエメリーさんでしょ?」
「どうするんですか、ミケラルドさんっ!」
大変だ、そのエメリーが俺に聞いてきた。
口をへの字に結んだアリスが一歩前に出る。
そして、不服そうに不満そうに、何かに妥協したように、諦めたように俺を見たのだ。
「り、臨時のリーダーという事で、何か一言ください!」
どうやら復帰早々オリハルコンズの臨時リーダーを任されたようだ。
復帰するなんて言ってないんだけどな。
俺は深い溜め息を吐き、依頼書を懐へ入れた。
「はぁ~……勿論引き受けますよ」
こうして、闇ギルドの集会を前に、俺たちは大きく動き始めたのだった。
そうした方が安上がりであり、効率的だ。俺だってそうする。
しかし、それは些か法王クルス・ライズ・バーリントンという長年世界のトップを走ってきた男を甘く見ていると言わざるを得ない。
「はははは……流石世界の親玉」
俺が乾いた笑いを零すのも無理はない。
この場にいる皆が驚き、呆れ、心から法王クルスを称賛しているだろう。
「ミケラルド含むオリハルコンズに依頼か。究極のいいとこどりだな」
リィたんは依頼書に目を通しながらすんと鼻息を吐いていた。
「うぅわ? ナニコレ?」
「こんな依頼初めてみたぜ……」
キッカ、ハンは小難しい顔をしながら依頼書を見る。
「こんな依頼方法が可能なんですか?」
ラッツがアーダインに聞く。
すると、アーダインはこくりと頷いた。
「無論可能だ」
「聖騎士オルグの身辺調査。魔族ファーラの魔力が及ぼした世界への影響調査とその対処。闇ギルド員の調査とその対処。闇ギルドの消滅。地龍とその仔龍の救助。本当に細かい……」
クレアが読み上げながらそれらを確認していく。
「各依頼に対し報酬が発生し、都度支払う事が可能。これってつまり、パーティのギルド貢献も各依頼毎にあるって事ですよね?」
「そうだ」
メアリィの言葉をアーダインが肯定する。
「「ミケラルドさん……これって?」」
アリス、エメリーが法王クルスの真意を俺に聞く。
「これまで闇ギルドの対処は国家規模で動いている事がほとんどでした。私が動いたところで、その報酬が支払われる事もありませんし、貢献は世界として認知される事もない。ですが、クルス殿はここで大きく動いた。聖騎士学校に通いながら冒険者としての資質も高める。そんな事が可能なのはオリハルコンズをおいて他ならない。勇者エメリー、聖女アリス、水龍リバイアタンを擁するこのオリハルコンズを、クルス殿は対魔王討伐パーティとして選んだ。これはその先行投資なんでしょうね」
言いながら目を向けると、アーダインは言った。
「クルスの狙いはパーティ依頼で向上する冒険者ランクにあるだろう。ラッツたちやクレア、アリスはランクA、エメリーやレミリア、リィたんはランクS、ナタリー、メアリィはランクC、そしてミックはSS。今回の依頼はランクフリーの特別調査案件。しかし、オルグの身辺調査なんか見るからにSSSの依頼だ。これを何とかしちまうのがヤツのずる賢さだよ。現にそれが出来る人材がオリハルコンズにはいる。しかし、個人がそれをクリアしたところで、その人材がクリアした事にはならず、パーティとしてクリアした事になる。これにより何が起こるか……」
「そっか、私たちでもランクが上がる……」
ナタリーが納得に追い込まれ、改めて依頼書に目を通す。
「ランクAからランクSに上がるためには武闘大会での好成績が必要だ。だが、魔法使いがこれを駆けあがる事は困難。今年法王国で開かれる武闘大会では戦士部門と魔法使い部門を分ける事が決定している」
「そうなのですか?」
レミリアが聞くと、アーダインが俺に目をやった。
「どこかの元首の入れ知恵だがな」
レミリアの視線が俺にやってくる。俺は手を振る事でそれに応えた。
「やった!」
と、強く拳を握ったのはキッカだった。
魔法使いがこれまでの武闘大会を勝ち抜くのは非常に難しい。
中には魔帝、魔皇、破壊魔なんてイレギュラーもいるが、魔法使いだけが適切な判断で実力を測れないのは魔王復活に際し魔族に遅れをとってしまう。
キッカ、アリス、ナタリー、メアリィは魔法を主体に戦うので、パーティの中では後方で戦う事になるだろう。その後方適正さえランクSならばなんら問題ないのだ。
勿論、それには厳しい試練が待ち受けているだろう。こうやってアーダインが二部門でランクS審査の事を話し、キッカが喜びを見せた。
しかし、世界中でどれだけの魔法使いが喜ぶか。どれだけの魔法使いが参加するか想像が出来ない。きっと戦士部門以上に厳しい戦いになるだろう。
「ふ~ん、よく考えたもんだな」
テーブルに肘を突き、呆れた表情を見せる家主オベイル。
「それだけに、オリハルコンズに掛かる重責は計り知れんな」
茶を啜りながらイヅナが言う。
回し読みされていた依頼書が一周し、俺のところに戻ってくる。
ナタリーはじっと俺を見つめ、依頼書を渡す。
「どうするの、ミック?」
そして、意外な事にナタリーは俺にそれを聞いてきたのだ。
「え? 私は創設者なだけで、魔王討伐のためのオリハルコンズのリーダーはエメリーさんでしょ?」
「どうするんですか、ミケラルドさんっ!」
大変だ、そのエメリーが俺に聞いてきた。
口をへの字に結んだアリスが一歩前に出る。
そして、不服そうに不満そうに、何かに妥協したように、諦めたように俺を見たのだ。
「り、臨時のリーダーという事で、何か一言ください!」
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復帰するなんて言ってないんだけどな。
俺は深い溜め息を吐き、依頼書を懐へ入れた。
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