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第二部
その543 ひゃっほい
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美女と二人きり。
何て甘美な響きだろうか。
しかも相手は闇ギルドに所属する【刻の番人シギュン】。生粋の悪人である。悪人は法に縛られない。法に縛られないという事は、何でも自由に行動してしまうのだ。
そう、俺はこれから何をされるかわからない。
一体ナニをされてしまうのだろうか。不安だ、不安でしょうがない。
だが、俺は世界最強を目指し、未来溢れるミナジリ共和国、ひいては世界を守らなければならない。辛い、なんて辛い試練なんだ。
立ち向かわなくちゃ、立ち向かわなくちゃ……!
「「さいって~」」
と、俺が世界平和を誓い心奮わせていたというのに、ナタリーとアリスの俺への当たりが強いし酷い。まるで汚物を見るかのような目である。
しかし、俺は今ルークとしてここにいる。ミケラルドとしてここにいる訳じゃないのだ。彼女たちの茶番に付き合っている暇はないのだ。
世界が懸かっている。彼女たちには是非とも真面目にやって頂きたいものだ。
ほら、リィたんなんて心配そうな目で俺に近付いて来る。
そうそう、やっぱり悪に立ち向かう正義には心配の目を向けて頂きたいのである。
リィたんは屈み、俺の目をじっと見る。
「大丈夫かルーク……? 酷い目をしているぞ。まるで汚物のようだ」
どうも汚物です。
「え……そんな酷い目しています?」
「あぁ、盗賊のように下卑た目をしている。質の悪い闇魔法でも受けたか?」
どうしよう。真面目に心配してくれるリィたんに失礼な程、俺の目と心は不真面目だった。えっと……世界平和が何だっけ?
「「さいって~」」
なるほど、ナタリーとアリスは真実を捉える目を持っているようだ。
「奴がこのタイミングで呼び出すには何かある。くれぐれも用心しろ」
そしてリィたんには俺を闇から救い出す特殊技能を持っているようだ。
これからも素晴らしい仲間たちを大事にしていきたいものだ。
◇◆◇ ◆◇◆
「シギュン様、ルークです」
ノックの後、俺は特別講師室の前でそう言った。
『入りなさい』
おかしい、以前は『入ってください』だったはずだ。
明らかに苛立っている。闇ギルドの状況はそんなに悪くなっているのか?
いや、もしかして法王クルスに依頼した調査が進んだのだろうか。
「失礼します」
中へ入り扉を閉める。机に腰を預けるシギュンに近付き止まる。
「本日はどのようなご用件でしょうか」
「誰が勝手に喋っていいと言ったの?」
遂に開口が許可制になった。
シギュンは目を瞑り、何かを考えているようだ。
開口を許されない俺は、口をへの字に結び、シギュンの反応を待つ。というか待つ事しか出来ない。下手に刺激して攻撃でもされたら俺の実力がバレかねない。
しばらくすると、シギュンは小さく控えめな溜め息を吐いた。
そして、俺にこう言ったのだ。
「以前、【ファーラ】という魔族が潜り込んでいるという話をしたでしょう?」
への字ミケラルドは健在である。
「………………喋っていいわ」
「えぇ、可能な限り様子を探っていますが、特段珍しい動きは見せていません」
「まずはそれ。もう監視をしなくて結構です」
「は? き、急ですね。理由はお聞かせ頂けないのですか?」
「貴方はそれを聞ける立場にありません」
「害がないと?」
「聞こえなかったかしら? それを聞ける立場にないと言ったのだけれど?」
これ以上の刺激は危ないか? いや、この点に関しては突っ込めるはずだ。
「申し訳ありませんが、私はリーガル国の王女殿下、公爵令嬢の護衛としてここへ来ています。魔族の脅威を前に監視するなというには理由が必要。それがわからない以上、承服出来る事ではありません」
直後、シギュンからこれまでにない程の鋭い視線が飛んできた。
今にも剣を抜いて首を落としてきそうである。
しかし、俺はその視線を受け流す事はせず、ただじっと受け続けた。
やがて、シギュンは俺が引かない事を理解したのか、深く溜め息を吐いた。
多少なりとも苛立ちが霧散したように見える。これは、彼女の中で俺の利用価値と情報提供を天秤にかけ、利用価値にそれが傾いただけの事。
「……わかりました。これは極秘情報ですが、彼女はリーガル国出身ではありますが、ミナジリ共和国が手配した魔族だという事がわかりました」
まぁ、その情報提供が大嘘ってだけの事だ。
俺がファーラに問い詰めたとしてそれが真実だとはわからない。ならば、俺を信用させるために嘘を吐くのが正解。相変わらず抜け目のない女だ。
「法王陛下とミケラルド・オード・ミナジリ様の仲、法王国とミナジリ共和国の仲を考えれば当然の処置だと?」
「そういう事です」
「かしこまりました、ファーラの監視を解除致します」
ガン上げで監視します。
シギュンの言葉から察するに、魔族――おそらくスパニッシュからファーラの情報が闇ギルドに流れたのだろう。
そして、ファーラが敵でないという事が判明した。だからこそシギュンは監視解除を俺に言い渡した。
つまり、あの子は……ファーラは俺たちの敵だという事だ。
何て甘美な響きだろうか。
しかも相手は闇ギルドに所属する【刻の番人シギュン】。生粋の悪人である。悪人は法に縛られない。法に縛られないという事は、何でも自由に行動してしまうのだ。
そう、俺はこれから何をされるかわからない。
一体ナニをされてしまうのだろうか。不安だ、不安でしょうがない。
だが、俺は世界最強を目指し、未来溢れるミナジリ共和国、ひいては世界を守らなければならない。辛い、なんて辛い試練なんだ。
立ち向かわなくちゃ、立ち向かわなくちゃ……!
「「さいって~」」
と、俺が世界平和を誓い心奮わせていたというのに、ナタリーとアリスの俺への当たりが強いし酷い。まるで汚物を見るかのような目である。
しかし、俺は今ルークとしてここにいる。ミケラルドとしてここにいる訳じゃないのだ。彼女たちの茶番に付き合っている暇はないのだ。
世界が懸かっている。彼女たちには是非とも真面目にやって頂きたいものだ。
ほら、リィたんなんて心配そうな目で俺に近付いて来る。
そうそう、やっぱり悪に立ち向かう正義には心配の目を向けて頂きたいのである。
リィたんは屈み、俺の目をじっと見る。
「大丈夫かルーク……? 酷い目をしているぞ。まるで汚物のようだ」
どうも汚物です。
「え……そんな酷い目しています?」
「あぁ、盗賊のように下卑た目をしている。質の悪い闇魔法でも受けたか?」
どうしよう。真面目に心配してくれるリィたんに失礼な程、俺の目と心は不真面目だった。えっと……世界平和が何だっけ?
「「さいって~」」
なるほど、ナタリーとアリスは真実を捉える目を持っているようだ。
「奴がこのタイミングで呼び出すには何かある。くれぐれも用心しろ」
そしてリィたんには俺を闇から救い出す特殊技能を持っているようだ。
これからも素晴らしい仲間たちを大事にしていきたいものだ。
◇◆◇ ◆◇◆
「シギュン様、ルークです」
ノックの後、俺は特別講師室の前でそう言った。
『入りなさい』
おかしい、以前は『入ってください』だったはずだ。
明らかに苛立っている。闇ギルドの状況はそんなに悪くなっているのか?
いや、もしかして法王クルスに依頼した調査が進んだのだろうか。
「失礼します」
中へ入り扉を閉める。机に腰を預けるシギュンに近付き止まる。
「本日はどのようなご用件でしょうか」
「誰が勝手に喋っていいと言ったの?」
遂に開口が許可制になった。
シギュンは目を瞑り、何かを考えているようだ。
開口を許されない俺は、口をへの字に結び、シギュンの反応を待つ。というか待つ事しか出来ない。下手に刺激して攻撃でもされたら俺の実力がバレかねない。
しばらくすると、シギュンは小さく控えめな溜め息を吐いた。
そして、俺にこう言ったのだ。
「以前、【ファーラ】という魔族が潜り込んでいるという話をしたでしょう?」
への字ミケラルドは健在である。
「………………喋っていいわ」
「えぇ、可能な限り様子を探っていますが、特段珍しい動きは見せていません」
「まずはそれ。もう監視をしなくて結構です」
「は? き、急ですね。理由はお聞かせ頂けないのですか?」
「貴方はそれを聞ける立場にありません」
「害がないと?」
「聞こえなかったかしら? それを聞ける立場にないと言ったのだけれど?」
これ以上の刺激は危ないか? いや、この点に関しては突っ込めるはずだ。
「申し訳ありませんが、私はリーガル国の王女殿下、公爵令嬢の護衛としてここへ来ています。魔族の脅威を前に監視するなというには理由が必要。それがわからない以上、承服出来る事ではありません」
直後、シギュンからこれまでにない程の鋭い視線が飛んできた。
今にも剣を抜いて首を落としてきそうである。
しかし、俺はその視線を受け流す事はせず、ただじっと受け続けた。
やがて、シギュンは俺が引かない事を理解したのか、深く溜め息を吐いた。
多少なりとも苛立ちが霧散したように見える。これは、彼女の中で俺の利用価値と情報提供を天秤にかけ、利用価値にそれが傾いただけの事。
「……わかりました。これは極秘情報ですが、彼女はリーガル国出身ではありますが、ミナジリ共和国が手配した魔族だという事がわかりました」
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「法王陛下とミケラルド・オード・ミナジリ様の仲、法王国とミナジリ共和国の仲を考えれば当然の処置だと?」
「そういう事です」
「かしこまりました、ファーラの監視を解除致します」
ガン上げで監視します。
シギュンの言葉から察するに、魔族――おそらくスパニッシュからファーラの情報が闇ギルドに流れたのだろう。
そして、ファーラが敵でないという事が判明した。だからこそシギュンは監視解除を俺に言い渡した。
つまり、あの子は……ファーラは俺たちの敵だという事だ。
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