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第二部
その528 魔人
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「……我が存在を知るとは。捨て置けぬ存在だな……」
やはり。
【魔人】――闇ギルドの上位十二人で構成される【刻の番人】。その中で最強を誇る存在。同じ【刻の番人】であるサブロウの話では、「リプトゥア国とミナジリ共和国との戦争時、もし魔人が現れていたらミナジリ共和国は確実に負けていた」という。
実際に戦ってみるとわかる。コイツは今の俺と同等に近い実力を持っている。
つまり、あの戦争にこいつがいれば負けていたという事だ。
世の中は広いというが、これ以上広がらなくていいと思うのは自由だと思うし、そうあるべきだ。
「何で魔族四天王より強いのに奴らに付き従う?」
「それが契約だからな」
「契約? 闇ギルドの?」
「なるほど、私が闇ギルドに所属している事も知っているという事か」
今のは失敗。これは言うべきではなかったな。
魔人にこれ以上の質問をするのは危険。ならば、血を吸ってしまえばいいのだ。どんな強者だろうが、【血の呪縛】からは逃れられない。
となると……血、か。
この後も戦争が続く事を考えると早期決着が望ましい。
ならば、ここで全力を出すべきか。
「むんっ!」
「【解放】……それにそれは【剣神化】か。何とも器用な男だ」
「一気に行くからな、覚悟しろ」
「ならば一瞬で潰すとしよう」
「やってみろ」
直後、俺は魔人の背後にいた。超スピードから繰り出す【獣脚】、【極獣脚】は、奴の知覚を掻い潜る。
「魔人剣、光闇の舞」
はずだった。
「うっそっ!?」
瞬時に右、左と斬撃が入る。しかもこの剣――光魔法と闇魔法の混合剣か!
何とか受けるも、その余波は凄まじかった。
「くっ! ま、まだまだ!」
「魔人剣、雷炎の槌」
今度は雷魔法と火魔法の混合剣!
「っ!? くっそ重ぇ!」
「まだ――何だって?」
「うるせぇ! 一瞬で潰すんじゃなかったのか!?」
「一気に来るんじゃなかったのか?」
「まだその途中だよ!」
身体能力向上の特殊、固有能力を全て発動しているにも関わらずこの実力。
だとすると、もしかしたら俺は戦場に戻れないかもしれない。
「魔人剣、聖魔の頂」
上段からの強烈な一撃。
くそ、出し惜しみしてられないな。
「竜爪、叉拏の掌底!」
「っ!」
以前ジェイルが剣神イヅナに対し放ったこの無手版の竜剣というべきこの【竜爪】。この一年でようやくモノにする事が出来た。
何とか防げたが、反撃には至っていない。
「吸血鬼の分際で竜とは、大言壮語だな」
「師匠が竜種だからいいんだよ……! ところで、随分と色んな魔法が使えるじゃないか」
「お前に情報を渡してやる程、私は愚かではない」
「魔人が慎重って情報は得られたよ」
「咬王が狡猾だという事はわかった」
「恥ずかしいからその二つ名はやめてくれ」
「ならばこの世を呪え」
「ったく、やりにくい相手だ――っ!」
「魔人剣、闇讐の滝」
「竜爪、六徳の嵐!」
魔人の攻撃は上段と思わせてからの変化。しかし、その実態は強力な突き攻撃である。
「ふん! 刹那に繰り出される突きを上回る無数の乱打。恐ろしい実力だな」
「六徳でもダメか……」
「……もう一段階上がありそうだ」
「やれやれ、情報収集が得意な魔人だこと」
しかしまずいな。ドゥムガの魔力、それにアリスの魔力が弱まってきている。おそらく主軸のラジーン、エメリー、フレッゾ。この三人の援護に徹しているからだろう。
俺が動けなくなってから中央こそ抜かれていないが、それは不死王リッチが攻撃を両翼へ流したからだ。だとしたら両翼の戦力が持たない。
このままだとジリ貧だ。
出来れば魔人に新作の闇魔法【フルデバフ】を掛けたいが、相手を捉え切れない以上、当てる事は困難。
血が吸えない魔人との拮抗……ならば別の手を使うしかない。
遠いから魔力配分が難しいが――大丈夫、今の俺なら出来る。
「何か企んでいるな?」
「そりゃそうだろう。俺の持てる全てを出してこの戦争を勝つまでだ」
「この戦闘を終わらせられないのにか?」
「言っただろう、この戦争をだ」
「……その目、何とも気に食わんな」
「のわりには感情が見えないな」
「戦闘中にそんな無駄なものを見せると思うか?」
「悔しいけど、それには同意するよ」
「のわりには悔しがっていないじゃないか」
「いや、そうでもないぞ?」
言いながら俺は、腰を落とし大地に拳を向けた。
「っ、何を?」
「はっ!」
拳を大地に突き立て、割る。大地に大きな亀裂が入り、戦場が一瞬ぐらつく。
よし、後は待つだけだ。だが、それを魔人に悟られてはならない。
「これをこうして――」
「――なるほど、【土塊操作】で大地の密林を作ったか。だが、これで私に勝てると思うな」
そう、これが狙いだったと魔人に思わせればいいのだ。
真の狙いは、既に戦場の彼方で起きているのだから。
その後俺は、土塊操作によってせり上がった大地の樹木に隠れつつ、利用しつつ魔人との戦闘を繰り広げた。攻防は正に互角。
魔人の狙い、契約が何なのかはわからないが、今の俺にはこれしか出来ない。
ならば、今この場での最善手を出す他ない。
「魔人剣、流炎!」
「竜爪、四裂弾指!」
今、この場で出来る最善を。
やはり。
【魔人】――闇ギルドの上位十二人で構成される【刻の番人】。その中で最強を誇る存在。同じ【刻の番人】であるサブロウの話では、「リプトゥア国とミナジリ共和国との戦争時、もし魔人が現れていたらミナジリ共和国は確実に負けていた」という。
実際に戦ってみるとわかる。コイツは今の俺と同等に近い実力を持っている。
つまり、あの戦争にこいつがいれば負けていたという事だ。
世の中は広いというが、これ以上広がらなくていいと思うのは自由だと思うし、そうあるべきだ。
「何で魔族四天王より強いのに奴らに付き従う?」
「それが契約だからな」
「契約? 闇ギルドの?」
「なるほど、私が闇ギルドに所属している事も知っているという事か」
今のは失敗。これは言うべきではなかったな。
魔人にこれ以上の質問をするのは危険。ならば、血を吸ってしまえばいいのだ。どんな強者だろうが、【血の呪縛】からは逃れられない。
となると……血、か。
この後も戦争が続く事を考えると早期決着が望ましい。
ならば、ここで全力を出すべきか。
「むんっ!」
「【解放】……それにそれは【剣神化】か。何とも器用な男だ」
「一気に行くからな、覚悟しろ」
「ならば一瞬で潰すとしよう」
「やってみろ」
直後、俺は魔人の背後にいた。超スピードから繰り出す【獣脚】、【極獣脚】は、奴の知覚を掻い潜る。
「魔人剣、光闇の舞」
はずだった。
「うっそっ!?」
瞬時に右、左と斬撃が入る。しかもこの剣――光魔法と闇魔法の混合剣か!
何とか受けるも、その余波は凄まじかった。
「くっ! ま、まだまだ!」
「魔人剣、雷炎の槌」
今度は雷魔法と火魔法の混合剣!
「っ!? くっそ重ぇ!」
「まだ――何だって?」
「うるせぇ! 一瞬で潰すんじゃなかったのか!?」
「一気に来るんじゃなかったのか?」
「まだその途中だよ!」
身体能力向上の特殊、固有能力を全て発動しているにも関わらずこの実力。
だとすると、もしかしたら俺は戦場に戻れないかもしれない。
「魔人剣、聖魔の頂」
上段からの強烈な一撃。
くそ、出し惜しみしてられないな。
「竜爪、叉拏の掌底!」
「っ!」
以前ジェイルが剣神イヅナに対し放ったこの無手版の竜剣というべきこの【竜爪】。この一年でようやくモノにする事が出来た。
何とか防げたが、反撃には至っていない。
「吸血鬼の分際で竜とは、大言壮語だな」
「師匠が竜種だからいいんだよ……! ところで、随分と色んな魔法が使えるじゃないか」
「お前に情報を渡してやる程、私は愚かではない」
「魔人が慎重って情報は得られたよ」
「咬王が狡猾だという事はわかった」
「恥ずかしいからその二つ名はやめてくれ」
「ならばこの世を呪え」
「ったく、やりにくい相手だ――っ!」
「魔人剣、闇讐の滝」
「竜爪、六徳の嵐!」
魔人の攻撃は上段と思わせてからの変化。しかし、その実態は強力な突き攻撃である。
「ふん! 刹那に繰り出される突きを上回る無数の乱打。恐ろしい実力だな」
「六徳でもダメか……」
「……もう一段階上がありそうだ」
「やれやれ、情報収集が得意な魔人だこと」
しかしまずいな。ドゥムガの魔力、それにアリスの魔力が弱まってきている。おそらく主軸のラジーン、エメリー、フレッゾ。この三人の援護に徹しているからだろう。
俺が動けなくなってから中央こそ抜かれていないが、それは不死王リッチが攻撃を両翼へ流したからだ。だとしたら両翼の戦力が持たない。
このままだとジリ貧だ。
出来れば魔人に新作の闇魔法【フルデバフ】を掛けたいが、相手を捉え切れない以上、当てる事は困難。
血が吸えない魔人との拮抗……ならば別の手を使うしかない。
遠いから魔力配分が難しいが――大丈夫、今の俺なら出来る。
「何か企んでいるな?」
「そりゃそうだろう。俺の持てる全てを出してこの戦争を勝つまでだ」
「この戦闘を終わらせられないのにか?」
「言っただろう、この戦争をだ」
「……その目、何とも気に食わんな」
「のわりには感情が見えないな」
「戦闘中にそんな無駄なものを見せると思うか?」
「悔しいけど、それには同意するよ」
「のわりには悔しがっていないじゃないか」
「いや、そうでもないぞ?」
言いながら俺は、腰を落とし大地に拳を向けた。
「っ、何を?」
「はっ!」
拳を大地に突き立て、割る。大地に大きな亀裂が入り、戦場が一瞬ぐらつく。
よし、後は待つだけだ。だが、それを魔人に悟られてはならない。
「これをこうして――」
「――なるほど、【土塊操作】で大地の密林を作ったか。だが、これで私に勝てると思うな」
そう、これが狙いだったと魔人に思わせればいいのだ。
真の狙いは、既に戦場の彼方で起きているのだから。
その後俺は、土塊操作によってせり上がった大地の樹木に隠れつつ、利用しつつ魔人との戦闘を繰り広げた。攻防は正に互角。
魔人の狙い、契約が何なのかはわからないが、今の俺にはこれしか出来ない。
ならば、今この場での最善手を出す他ない。
「魔人剣、流炎!」
「竜爪、四裂弾指!」
今、この場で出来る最善を。
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