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第二部
その495 現地の仲間
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◇◆◇ ドノバンの場合 ◆◇◆
「一体何だ、この面子は……」
呆れる私を呆れ眼で見るのは、ミナジリ共和国の外交官【コバック】だった。
「ふん、それはこちらの台詞だ……」
コバックはリプトゥア国の元闇奴隷商人。
そして私も、リプトゥア国の暗部に所属していた。面識こそあるが仲良くはない。共に同じ主を持つという共通点がなければよかったのに。同じ場所にいるだけで吐き気がする……!
それに警護を務めるあの二人も。
「【イチロウ】、こちらは問題ない」
「【ジロウ】、風が気持ちいいぞ」
「……確かに」
元闇ギルドの闇人なだけあって、私とコバックより戦闘能力はあるものの、緊張感が足らん顔をしている。
「ミナジリ共和国とリプトゥア国の関係を取り持つため、外交官のコバックが派遣されたはずなのに、何故我々はこんな僻地にいるのか……!」
すると、私の愚痴を拾ったコバックが言う。
「ミケラルド様が言ってただろう。北東から不死王リッチが進軍しているから、その警戒と詳細な地図作成任務だ」
「外交官という肩書はどこへ行った、どこへ……」
「リプトゥア国に詳しい我々に適した任だ。他国の情勢や地理を調べるのも私の仕事と言える。それにこれは、リーガル国からの依頼でもあるしな」
「くっ、だからこんな奴の護衛など嫌だったんだ。ミケラルド様もミケラルド様だ。我々の関係を知って尚、笑いながら押し付けおって……!」
「我々の過去の愚行の『おしおき』だと言ってたぞ。そう考えれば何とお優しい事か」
「……確かにそうだな」
と、私が言うも、イチロウとジロウは何故か闇のオーラを纏って私に殺意を向けていた。え、何だこれは?
「貴様、ミケラルド様に対して何という言葉か?」
「その首、塩漬けにしてやろうか?」
そういえばこの二人は、ラジーンによってミケラルド様への忠誠を叩き込まれていた。皆ミケラルド様に血を吸われたが、仲間同士で迂闊な事が言えぬとはどういう事か。
「は、はははは。言葉の綾というやつだ! 私のミケラルド様への忠誠は決して折れず曲がらず! オリハルコンの如き硬きモノよ!」
「……ふん、ミケラルド様にコバック殿の警護リーダーを任されたのだ。リーダー然とした態度でいてもらわねば困る。そうだろう、イチロウ」
「ジロウ、風が気持ちいいぞ」
「……確かに」
一生風と戯れておれ。
「……ふむ、完成だな」
「おぉ、出来たかコバック!」
コバックの手によって広げられた地図を覗き込む私。
「うーむ、素晴らしい出来だ」
「素晴らしい出来だぞ、イチロウ」
「見ろジロウ! 蟻だ!」
「蟻だなイチロウ!」
イチロウは、何故こんなにも抜けているのか。
ラジーンのしごきで精神を病んでしまったのかもしれん。
だが、イチロウの武力は侮れない。今や、かつてのラジーンを彷彿させる実力を有している。
この中で言えば、一番の実力者と言える。
実際、我々の構成は悪くない。魔法攻撃は私とコバック。ジロウが前衛をし、イチロウが遊撃を担当。ミケラルド様により託されたオリハルコンの武具により、更に戦力向上し、パーティランクがSSに近いと言えるだろう。
だからこそ、この任務にはミケラルド様も注視している。
「むっ!」
コバックが何かに反応した。
瞬時にコバックは地図を丸め、その場に膝を突いた。
この反応は……! もしやっ!
「「ははぁっ!」」
誰よりも早く跪いたのはイチロウとジロウだった。
「ひ、ひぃ!」
私は情けない声を挙げている事さえ忘れて、両の膝を突き大地に伏せた。
コバックは荷物の中からイソイソとアレを取り出している。
そして、深紅の敷物の上に、アレを置いたのだ。
アレとは即ち、我々が旅立つ前に、ミケラルド様に無理を言ってまでして頂いた――神とのホットライン。
そう、我々は願ったのだ。ミケラルド様に――【御神体】を。
ミケラルド様は呆れながら言った。「え、俺を象った人形? それに【テレフォン】を?」と。
我々を気味悪がりながらも、ミケラルド様は悪乗りした様子でアレを造ってくださった。その名も『ディフォルメ版ミケラルド人形MK-1』。『でぃふぉるめ』なる言葉がどういう意味なのかはわからなかったが、二頭身にまで縮められた【御神体】を見た時、イチロウとジロウは恍惚とした表情をした後、それにひれ伏していた。
その御神体が今、発光している。
つまりこれは……神からの交信!
「「ははぁっ!!」」
全員の声が揃ったところで、【御神体】が起動する。
『ちぇっくちぇっくわんつー。わんつー、つー、つー。本日は晴天なり。つー、つー』
これだ、ミケラルド様はいつもこのような不可解な言葉を仰られる。
「ミケラルド様のお声が聞こえるな、イチロウ」
「聞こえるぞ、ジロウ」
風と蟻はどうしたイチロウ!
小声で喜び合う二人をよそに、コバックが言う。
「ミケラルド様、コバックにございます」
『あ、届いてた。いい加減【テレフォン】が起動したらそっちから喋ってくれない? 喋ってくれないと通じてるかわからないんだけど?』
「いいえ、そのような事、出来るはずもありますまい!」
『そうですかそうですかー、わかりました。あぁそうそう、早速だけど進捗はどう?』
「は! 今しがた地図が完成したところにございます」
『おぉ、さっすが優秀だね』
「「おぉ!」」
『コバックは一度転移で帰国し、地図の複写を。ドノバンたちはそのままそこで警戒続行ね』
「「ははぁ!」」
ミケラルド様の新たな指示を頂いた我々。
ふふふふ、これでコバックの顔をしばらく見ないで済――――待て?
「ミケラルド様だったな、イチロウ!」
「あぁ、ミケラルド様だったな、ジロウ!」
私は、この二人と一緒に数日過ごすのか……!?
「一体何だ、この面子は……」
呆れる私を呆れ眼で見るのは、ミナジリ共和国の外交官【コバック】だった。
「ふん、それはこちらの台詞だ……」
コバックはリプトゥア国の元闇奴隷商人。
そして私も、リプトゥア国の暗部に所属していた。面識こそあるが仲良くはない。共に同じ主を持つという共通点がなければよかったのに。同じ場所にいるだけで吐き気がする……!
それに警護を務めるあの二人も。
「【イチロウ】、こちらは問題ない」
「【ジロウ】、風が気持ちいいぞ」
「……確かに」
元闇ギルドの闇人なだけあって、私とコバックより戦闘能力はあるものの、緊張感が足らん顔をしている。
「ミナジリ共和国とリプトゥア国の関係を取り持つため、外交官のコバックが派遣されたはずなのに、何故我々はこんな僻地にいるのか……!」
すると、私の愚痴を拾ったコバックが言う。
「ミケラルド様が言ってただろう。北東から不死王リッチが進軍しているから、その警戒と詳細な地図作成任務だ」
「外交官という肩書はどこへ行った、どこへ……」
「リプトゥア国に詳しい我々に適した任だ。他国の情勢や地理を調べるのも私の仕事と言える。それにこれは、リーガル国からの依頼でもあるしな」
「くっ、だからこんな奴の護衛など嫌だったんだ。ミケラルド様もミケラルド様だ。我々の関係を知って尚、笑いながら押し付けおって……!」
「我々の過去の愚行の『おしおき』だと言ってたぞ。そう考えれば何とお優しい事か」
「……確かにそうだな」
と、私が言うも、イチロウとジロウは何故か闇のオーラを纏って私に殺意を向けていた。え、何だこれは?
「貴様、ミケラルド様に対して何という言葉か?」
「その首、塩漬けにしてやろうか?」
そういえばこの二人は、ラジーンによってミケラルド様への忠誠を叩き込まれていた。皆ミケラルド様に血を吸われたが、仲間同士で迂闊な事が言えぬとはどういう事か。
「は、はははは。言葉の綾というやつだ! 私のミケラルド様への忠誠は決して折れず曲がらず! オリハルコンの如き硬きモノよ!」
「……ふん、ミケラルド様にコバック殿の警護リーダーを任されたのだ。リーダー然とした態度でいてもらわねば困る。そうだろう、イチロウ」
「ジロウ、風が気持ちいいぞ」
「……確かに」
一生風と戯れておれ。
「……ふむ、完成だな」
「おぉ、出来たかコバック!」
コバックの手によって広げられた地図を覗き込む私。
「うーむ、素晴らしい出来だ」
「素晴らしい出来だぞ、イチロウ」
「見ろジロウ! 蟻だ!」
「蟻だなイチロウ!」
イチロウは、何故こんなにも抜けているのか。
ラジーンのしごきで精神を病んでしまったのかもしれん。
だが、イチロウの武力は侮れない。今や、かつてのラジーンを彷彿させる実力を有している。
この中で言えば、一番の実力者と言える。
実際、我々の構成は悪くない。魔法攻撃は私とコバック。ジロウが前衛をし、イチロウが遊撃を担当。ミケラルド様により託されたオリハルコンの武具により、更に戦力向上し、パーティランクがSSに近いと言えるだろう。
だからこそ、この任務にはミケラルド様も注視している。
「むっ!」
コバックが何かに反応した。
瞬時にコバックは地図を丸め、その場に膝を突いた。
この反応は……! もしやっ!
「「ははぁっ!」」
誰よりも早く跪いたのはイチロウとジロウだった。
「ひ、ひぃ!」
私は情けない声を挙げている事さえ忘れて、両の膝を突き大地に伏せた。
コバックは荷物の中からイソイソとアレを取り出している。
そして、深紅の敷物の上に、アレを置いたのだ。
アレとは即ち、我々が旅立つ前に、ミケラルド様に無理を言ってまでして頂いた――神とのホットライン。
そう、我々は願ったのだ。ミケラルド様に――【御神体】を。
ミケラルド様は呆れながら言った。「え、俺を象った人形? それに【テレフォン】を?」と。
我々を気味悪がりながらも、ミケラルド様は悪乗りした様子でアレを造ってくださった。その名も『ディフォルメ版ミケラルド人形MK-1』。『でぃふぉるめ』なる言葉がどういう意味なのかはわからなかったが、二頭身にまで縮められた【御神体】を見た時、イチロウとジロウは恍惚とした表情をした後、それにひれ伏していた。
その御神体が今、発光している。
つまりこれは……神からの交信!
「「ははぁっ!!」」
全員の声が揃ったところで、【御神体】が起動する。
『ちぇっくちぇっくわんつー。わんつー、つー、つー。本日は晴天なり。つー、つー』
これだ、ミケラルド様はいつもこのような不可解な言葉を仰られる。
「ミケラルド様のお声が聞こえるな、イチロウ」
「聞こえるぞ、ジロウ」
風と蟻はどうしたイチロウ!
小声で喜び合う二人をよそに、コバックが言う。
「ミケラルド様、コバックにございます」
『あ、届いてた。いい加減【テレフォン】が起動したらそっちから喋ってくれない? 喋ってくれないと通じてるかわからないんだけど?』
「いいえ、そのような事、出来るはずもありますまい!」
『そうですかそうですかー、わかりました。あぁそうそう、早速だけど進捗はどう?』
「は! 今しがた地図が完成したところにございます」
『おぉ、さっすが優秀だね』
「「おぉ!」」
『コバックは一度転移で帰国し、地図の複写を。ドノバンたちはそのままそこで警戒続行ね』
「「ははぁ!」」
ミケラルド様の新たな指示を頂いた我々。
ふふふふ、これでコバックの顔をしばらく見ないで済――――待て?
「ミケラルド様だったな、イチロウ!」
「あぁ、ミケラルド様だったな、ジロウ!」
私は、この二人と一緒に数日過ごすのか……!?
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