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第二部
◆その487 二年生CDE
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◇◆◇ げっそりとやつれた二年生Cさんの証言 ◆◇◆
「わ、私は……」
――何で人間の姿してるんですかー?
「あんな事を言ったばかりに……」
顔を覆った二年生Cは焦点の定まらない視界で、虚空を見つめていた。
「B君が腰を抜かしガタガタと震えながら放心した後、私たちは気付きました。『あの人がまた何かをしたんだ』と。私たちが笑い、からかいながら言った言葉をあの人は……ミケラルド先生は全て記憶していたんです。だから……だから私は気付いてしまったんです」
――次は私の番だと……!
自身の肩を抱き、縮こまりながら震える二年生C。
「ミケラルド先生が私を呼びました……。私がミケラルド先生を見ると、思わず私は悲鳴を漏らしてしまいました。でも、皆は私が何故悲鳴を出したのか理解出来ない様子でした。ミケラルド先生のお姿が……吸血鬼のソレになっていたんです。……それでも皆は私の恐怖に気付いていませんでした」
――Cさん、大丈夫ですか?
「それは、私を気遣うような優しい声でした。皆にもそう聞こえた事でしょう。言葉に詰まり、呼吸の荒くなった私に、ミケラルド先生は首を傾げて近付いて来ました。一歩……また一歩と……」
――気分が優れないようですね。お顔をよく見せてください。
「いつの間にか……いつの間にかミケラルド先生は、私の眼前に立っていました。血のような深紅の瞳で、死人のような青白い肌で……ニヤリと笑った口元には、何物も貫くかのような鋭い牙。わ、私は聖騎士学校の生徒です。少なからずこの一年生き残って来たという自信があります。けれど、そんな私でさえ思ってしまったのです」
――何故、私は彼を前に震えて座っているのだろう、と。
「おわかりですか? 本来であれば、平伏し、その足に口づけをするべきだと思ってしまったのです。ミケラルド先生が私の肩にポンと手を載せた時、私は全てから解放されました……。あ、そうでした。ミケラルド先生から伝言があります」
――――とても面白いクラスですね、と。
◇◆◇ 昨日よりも頭髪の量が明らかに減った二年生D君の証言 ◆◇◆
――牙見せてくださーい。
「はははは……皆の話を聞いたんでしょう? なら僕が言う事も何となくお気づきなんじゃないですか? Cさんに使ったアレ、後でわかったんですけど、限定型の【歪曲の変化】らしいですね。対象を一人だけに絞って、他の人には知覚させないって意味がわかりませんよ……。え、ミケラルド先生の牙ですか? 勿論、彼は見せてくれようとしたんです。でも、発言者たちに起こった明らかな異常のせいで、僕はもう気が気じゃありませんでした。Cさんが今にも天に召されようという顔になった直後、ミケラルド先生はそのままギュルリと首を曲げ、僕に目を向けました。その時点で僕の負けは確定していました。首が折れるんじゃないかってくらいブンブンと首を横に振り、ミケラルド先生への謝意を見せたんです。すると彼は僕とは対照的でした。うんうんと小さく首を縦に振り、僕に言ったんです」
――その気持ちを忘れないでください、と。
「何も防げる訳がないのに、頭を抱え、縮こまってました。髪? あぁ、その時ごっそりと抜けてしまって……ははは。あ、そうでした、忘れるところでした。ミケラルド先生からの伝言です」
――――次回は是非参加なさってください、だそうです。
◇◆◇ 失意に塗れ項垂れる二年生E君の証言 ◆◇◆
「何故バレたか。それは彼が教えてくれました……」
――私を相手にする場合ならば、最初が肝心。貴方は私に言いました。『せんせ~、どうしたんですかー?』と。私相手によくこれを言えたと、貴方の強い精神力を褒めるべきでしょう。確かに、他の四人の言葉の方が強く聞こえる。しかし、彼らは貴方に、E君に続いたまで。Z区分の私に向かって悪口を言うのです。並大抵の胆力では出来ない事でしょう。であれば、あの中で最初に開口した貴方がクラスの代表という事です。E君が初手を決められたからこそ、他の子たちはE君に続く事が出来た。そういう事です。
「それはもう懇切丁寧に……」
――貴方方は私に口撃するべきではなかった。私を精神的に揺さぶりたければ、無関心、無反応を貫くべきでした。ミケラルド・オード・ミナジリという立場ではなく、講師ミケラルドという立場を揺さぶるべきだったんです。もしよろしければ次の授業で試してみてはいかがでしょう? やり方をレクチャーしますよ? あぁそうそう。初回特別サービスという事で、法王クルス殿に今回の件を報告しない事にします。ですが、次回からは沢山の告げ口がありますからね? ご実家にその声が届くのは貴方方としても不本意でしょう? ですが無関心、無反応であれば授業態度としては〇を付けざるを得ない点がありますからね。有効だと言える場面も多いでしょう。さて、E君。貴方にお願いがあるのですが……。
「【伝言】……そうです。【ミケラルド先生】からのお願いは一つだけでした」
――――【シギュン】先生、今度お茶でもいかがでしょう?
「俺たちからは以上です。ミケラルド先生は、たった一回の授業で私たちに心を開き、丁寧に教えてくださりました。これからの事について……あの、差出がましいかもしれませんが、それもご考慮頂ければ幸いです……」
「わ、私は……」
――何で人間の姿してるんですかー?
「あんな事を言ったばかりに……」
顔を覆った二年生Cは焦点の定まらない視界で、虚空を見つめていた。
「B君が腰を抜かしガタガタと震えながら放心した後、私たちは気付きました。『あの人がまた何かをしたんだ』と。私たちが笑い、からかいながら言った言葉をあの人は……ミケラルド先生は全て記憶していたんです。だから……だから私は気付いてしまったんです」
――次は私の番だと……!
自身の肩を抱き、縮こまりながら震える二年生C。
「ミケラルド先生が私を呼びました……。私がミケラルド先生を見ると、思わず私は悲鳴を漏らしてしまいました。でも、皆は私が何故悲鳴を出したのか理解出来ない様子でした。ミケラルド先生のお姿が……吸血鬼のソレになっていたんです。……それでも皆は私の恐怖に気付いていませんでした」
――Cさん、大丈夫ですか?
「それは、私を気遣うような優しい声でした。皆にもそう聞こえた事でしょう。言葉に詰まり、呼吸の荒くなった私に、ミケラルド先生は首を傾げて近付いて来ました。一歩……また一歩と……」
――気分が優れないようですね。お顔をよく見せてください。
「いつの間にか……いつの間にかミケラルド先生は、私の眼前に立っていました。血のような深紅の瞳で、死人のような青白い肌で……ニヤリと笑った口元には、何物も貫くかのような鋭い牙。わ、私は聖騎士学校の生徒です。少なからずこの一年生き残って来たという自信があります。けれど、そんな私でさえ思ってしまったのです」
――何故、私は彼を前に震えて座っているのだろう、と。
「おわかりですか? 本来であれば、平伏し、その足に口づけをするべきだと思ってしまったのです。ミケラルド先生が私の肩にポンと手を載せた時、私は全てから解放されました……。あ、そうでした。ミケラルド先生から伝言があります」
――――とても面白いクラスですね、と。
◇◆◇ 昨日よりも頭髪の量が明らかに減った二年生D君の証言 ◆◇◆
――牙見せてくださーい。
「はははは……皆の話を聞いたんでしょう? なら僕が言う事も何となくお気づきなんじゃないですか? Cさんに使ったアレ、後でわかったんですけど、限定型の【歪曲の変化】らしいですね。対象を一人だけに絞って、他の人には知覚させないって意味がわかりませんよ……。え、ミケラルド先生の牙ですか? 勿論、彼は見せてくれようとしたんです。でも、発言者たちに起こった明らかな異常のせいで、僕はもう気が気じゃありませんでした。Cさんが今にも天に召されようという顔になった直後、ミケラルド先生はそのままギュルリと首を曲げ、僕に目を向けました。その時点で僕の負けは確定していました。首が折れるんじゃないかってくらいブンブンと首を横に振り、ミケラルド先生への謝意を見せたんです。すると彼は僕とは対照的でした。うんうんと小さく首を縦に振り、僕に言ったんです」
――その気持ちを忘れないでください、と。
「何も防げる訳がないのに、頭を抱え、縮こまってました。髪? あぁ、その時ごっそりと抜けてしまって……ははは。あ、そうでした、忘れるところでした。ミケラルド先生からの伝言です」
――――次回は是非参加なさってください、だそうです。
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「何故バレたか。それは彼が教えてくれました……」
――私を相手にする場合ならば、最初が肝心。貴方は私に言いました。『せんせ~、どうしたんですかー?』と。私相手によくこれを言えたと、貴方の強い精神力を褒めるべきでしょう。確かに、他の四人の言葉の方が強く聞こえる。しかし、彼らは貴方に、E君に続いたまで。Z区分の私に向かって悪口を言うのです。並大抵の胆力では出来ない事でしょう。であれば、あの中で最初に開口した貴方がクラスの代表という事です。E君が初手を決められたからこそ、他の子たちはE君に続く事が出来た。そういう事です。
「それはもう懇切丁寧に……」
――貴方方は私に口撃するべきではなかった。私を精神的に揺さぶりたければ、無関心、無反応を貫くべきでした。ミケラルド・オード・ミナジリという立場ではなく、講師ミケラルドという立場を揺さぶるべきだったんです。もしよろしければ次の授業で試してみてはいかがでしょう? やり方をレクチャーしますよ? あぁそうそう。初回特別サービスという事で、法王クルス殿に今回の件を報告しない事にします。ですが、次回からは沢山の告げ口がありますからね? ご実家にその声が届くのは貴方方としても不本意でしょう? ですが無関心、無反応であれば授業態度としては〇を付けざるを得ない点がありますからね。有効だと言える場面も多いでしょう。さて、E君。貴方にお願いがあるのですが……。
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――――【シギュン】先生、今度お茶でもいかがでしょう?
「俺たちからは以上です。ミケラルド先生は、たった一回の授業で私たちに心を開き、丁寧に教えてくださりました。これからの事について……あの、差出がましいかもしれませんが、それもご考慮頂ければ幸いです……」
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