上 下
483 / 566
第二部

その481 手紙

しおりを挟む
「あぁ~~~~~~……疲れた」

 ソファにどっと腰を落とした俺は、近くに控えるロレッソに溜め息を吐かれてしまった。

「少しはご自分を労わる事も大切ですよ、我があるじ。この二日は何をなさったのです?」
「えーっと、【剣神イヅナ】の授業を受けた後、【魔帝グラムス】と共に【ディノ大森林】に向かって、【破壊魔はかいまパーシバル】をとっ捕まえて生餌にして、闇から表に引きずり出して、【ヘルワーム】の痕跡を発見。【ヘルワーム】が【木龍グランドホルツ】と戦ってたからその仲裁を勝手にやったら両者に因縁付けられてぶっ飛ばした」

 ロレッソに今日あった事を掻い摘んで説明。

「……そ、それはそれは大変な二日間でしたね……」

 アホ毛が見えるくらい驚きを見せたロレッソ君。
 天井裏からもガタンと大きな音が聞こえた。ラジーン君の警護能力に不安が残るような大きな音である。

「まぁそれは昨日の話だよ。今日は【魔皇まこうヒルダ】の授業を受けた後、【魔皇ヒルダ】にミケラルドとして会って、【魔皇ヒルダ】と【白き魔女リルハ】の師である【双黒そうこくの賢者プリシラ】の情報を聞いて、この手紙をもらった。その後、闇ギルドの中枢に行ってそのトップにいる【エレノア】に会ってこの手紙をもらった」
「は?」
『はぁ?』

 ロレッソ君はともかく、天井裏のラジーン君からも疑問の声が聞こえる世の中になったそうです。

「……と、とても二日の行動とは思えない内容ですね」
「だろ? これからこの手紙を開くんだけど、相手はちょっと警戒心の強い相手だから悪いんだけど二人とも部屋から離れておいて」
「他者に見られると消滅するような魔法でも掛けてあれば面倒……という事ですか。かしこまりました。ラジーン」
『はっ』

 ロレッソが天井に向かって言うと、ラジーンの気配が遠のいた。
 いいね。先程の驚きは仕方ないにしても、今の動きは中々のものだ。ラジーンのヤツ、ジェイルにしごかれてまた実力を上げたみたいだ。
 一礼の後、ロレッソが部屋の外に出ると、俺はまず【双黒の賢者プリシラ】からの手紙を開封した。
 直後、手紙は淡い発光を見せた。やはり魔法が掛けてあったか。
 解析アナライズで視ると、どうやらこれは座標確認魔法のようだ。光魔法と土魔法の複合魔法のようだな。人払いの必要はなかったが、ミナジリ共和国以外で開封したら、おそらく手紙自体が消滅していただろう。

「なるほど、信頼ね……」

 魔皇ヒルダが双黒の賢者プリシラから言付かった言葉すら守れぬようであれば、ここでプリシラとの縁は潰えていた。そうなれば探す事は困難。いや、場合によっては二度と会えなかったという事だな。
 そんな事を考えながらプリシラの手紙を開く。
 するとそこにはこんな事が書かれていた。

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 やぁ、ミケラルド・オード・ミナジリ。
 私はプリシラ。
 まぁ名前など私には必要のないものだ。何とでも呼んでくれたまえ。
 しかし君も面白い存在だね、私に会いたいなどとは。
 とはいえ、この手紙を読めているという事はそれなりに信用出来る人物と言えるだろう。魔族には珍しく、ね。けれど、それだけで私に会えると思ってもらっては困る。
 ヒルダに私の性格は聞いただろう? 私に会いたくば信頼を勝ち取る事だ。
 近いうちに『不信感P』という者から荷物が届く。同封する手紙の指示に従って動きたまえ。国家の元首をあごで使うようで申し訳ないが、私には敵が多いものでね。易々と命を奪われてやる訳にもいかないのだよ。
 それでは、君と会えるのを楽しみにしている。

 追伸:リルハとヒルダは私の大事な弟子たちだ。危害を加えるような事をしたら許さないからね。

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「……文章をほしで囲むあたり、ヒルダの言う『可愛らしい』なのか?」

 追伸に書かれている部分は、俺の性格を逆手にとっているのかもしれない。
 おそらくプリシラは俺が【呪縛】を使える事を知っている。だから彼女たちに対する吸血行動を封じた……のだろう。

「しっかし『不信感P』ねぇ。ペンネームか何かだろうか?」

 そう感じざるを得ない名前であるが、これはロレッソに伝えなくちゃいけないな。国家の元首宛にそんな名義で荷物が届けば、ロレッソ要する俺の警護たちは危険物としてそれを処理してしまうだろうからな。

「さて、次はこっちか」

 封蝋はされてるが、これを開かなくては【ときの番人】、【カンザス】と合流する事は出来ない。
 俺がそれを開こうと思った時、先程のプリシラの【座標確認魔法】を思い出した。

「……あれを見た後だと、ここで開けるのが怖くなるな」

 俺は屋敷の外に出ると、闇人やみうどや間者が潜みそうな森の木陰へと移動した。
 姿をデュークへと変えエレノアの手紙を開封する。

「……北西の山で暗号、か」

【カンザス】は地龍テルースを使役する重要人物。
 ここでしくじる訳にはいかないからな、慎重にいこう。
 そう思い、俺は北西の山へと向かったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜

北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。 この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。 ※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※    カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!! *毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。* ※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※ 表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...