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第二部
その481 手紙
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「あぁ~~~~~~……疲れた」
ソファにどっと腰を落とした俺は、近くに控えるロレッソに溜め息を吐かれてしまった。
「少しはご自分を労わる事も大切ですよ、我が主。この二日は何をなさったのです?」
「えーっと、【剣神イヅナ】の授業を受けた後、【魔帝グラムス】と共に【ディノ大森林】に向かって、【破壊魔パーシバル】をとっ捕まえて生餌にして、闇から表に引きずり出して、【ヘルワーム】の痕跡を発見。【ヘルワーム】が【木龍グランドホルツ】と戦ってたからその仲裁を勝手にやったら両者に因縁付けられてぶっ飛ばした」
ロレッソに今日あった事を掻い摘んで説明。
「……そ、それはそれは大変な二日間でしたね……」
アホ毛が見えるくらい驚きを見せたロレッソ君。
天井裏からもガタンと大きな音が聞こえた。ラジーン君の警護能力に不安が残るような大きな音である。
「まぁそれは昨日の話だよ。今日は【魔皇ヒルダ】の授業を受けた後、【魔皇ヒルダ】にミケラルドとして会って、【魔皇ヒルダ】と【白き魔女リルハ】の師である【双黒の賢者プリシラ】の情報を聞いて、この手紙をもらった。その後、闇ギルドの中枢に行ってそのトップにいる【エレノア】に会ってこの手紙をもらった」
「は?」
『はぁ?』
ロレッソ君はともかく、天井裏のラジーン君からも疑問の声が聞こえる世の中になったそうです。
「……と、とても二日の行動とは思えない内容ですね」
「だろ? これからこの手紙を開くんだけど、相手はちょっと警戒心の強い相手だから悪いんだけど二人とも部屋から離れておいて」
「他者に見られると消滅するような魔法でも掛けてあれば面倒……という事ですか。かしこまりました。ラジーン」
『はっ』
ロレッソが天井に向かって言うと、ラジーンの気配が遠のいた。
いいね。先程の驚きは仕方ないにしても、今の動きは中々のものだ。ラジーンのヤツ、ジェイルにしごかれてまた実力を上げたみたいだ。
一礼の後、ロレッソが部屋の外に出ると、俺はまず【双黒の賢者プリシラ】からの手紙を開封した。
直後、手紙は淡い発光を見せた。やはり魔法が掛けてあったか。
解析で視ると、どうやらこれは座標確認魔法のようだ。光魔法と土魔法の複合魔法のようだな。人払いの必要はなかったが、ミナジリ共和国以外で開封したら、おそらく手紙自体が消滅していただろう。
「なるほど、信頼ね……」
魔皇ヒルダが双黒の賢者プリシラから言付かった言葉すら守れぬようであれば、ここでプリシラとの縁は潰えていた。そうなれば探す事は困難。いや、場合によっては二度と会えなかったという事だな。
そんな事を考えながらプリシラの手紙を開く。
するとそこにはこんな事が書かれていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
やぁ、ミケラルド・オード・ミナジリ。
私はプリシラ。
まぁ名前など私には必要のないものだ。何とでも呼んでくれたまえ。
しかし君も面白い存在だね、私に会いたいなどとは。
とはいえ、この手紙を読めているという事はそれなりに信用出来る人物と言えるだろう。魔族には珍しく、ね。けれど、それだけで私に会えると思ってもらっては困る。
ヒルダに私の性格は聞いただろう? 私に会いたくば信頼を勝ち取る事だ。
近いうちに『不信感P』という者から荷物が届く。同封する手紙の指示に従って動きたまえ。国家の元首を顎で使うようで申し訳ないが、私には敵が多いものでね。易々と命を奪われてやる訳にもいかないのだよ。
それでは、君と会えるのを楽しみにしている。
追伸:リルハとヒルダは私の大事な弟子たちだ。危害を加えるような事をしたら許さないからね。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「……文章を☆で囲むあたり、ヒルダの言う『可愛らしい』なのか?」
追伸に書かれている部分は、俺の性格を逆手にとっているのかもしれない。
おそらくプリシラは俺が【呪縛】を使える事を知っている。だから彼女たちに対する吸血行動を封じた……のだろう。
「しっかし『不信感P』ねぇ。ペンネームか何かだろうか?」
そう感じざるを得ない名前であるが、これはロレッソに伝えなくちゃいけないな。国家の元首宛にそんな名義で荷物が届けば、ロレッソ要する俺の警護たちは危険物としてそれを処理してしまうだろうからな。
「さて、次はこっちか」
封蝋はされてるが、これを開かなくては【刻の番人】、【カンザス】と合流する事は出来ない。
俺がそれを開こうと思った時、先程のプリシラの【座標確認魔法】を思い出した。
「……あれを見た後だと、ここで開けるのが怖くなるな」
俺は屋敷の外に出ると、闇人や間者が潜みそうな森の木陰へと移動した。
姿をデュークへと変えエレノアの手紙を開封する。
「……北西の山で暗号、か」
【カンザス】は地龍テルースを使役する重要人物。
ここでしくじる訳にはいかないからな、慎重にいこう。
そう思い、俺は北西の山へと向かったのだった。
ソファにどっと腰を落とした俺は、近くに控えるロレッソに溜め息を吐かれてしまった。
「少しはご自分を労わる事も大切ですよ、我が主。この二日は何をなさったのです?」
「えーっと、【剣神イヅナ】の授業を受けた後、【魔帝グラムス】と共に【ディノ大森林】に向かって、【破壊魔パーシバル】をとっ捕まえて生餌にして、闇から表に引きずり出して、【ヘルワーム】の痕跡を発見。【ヘルワーム】が【木龍グランドホルツ】と戦ってたからその仲裁を勝手にやったら両者に因縁付けられてぶっ飛ばした」
ロレッソに今日あった事を掻い摘んで説明。
「……そ、それはそれは大変な二日間でしたね……」
アホ毛が見えるくらい驚きを見せたロレッソ君。
天井裏からもガタンと大きな音が聞こえた。ラジーン君の警護能力に不安が残るような大きな音である。
「まぁそれは昨日の話だよ。今日は【魔皇ヒルダ】の授業を受けた後、【魔皇ヒルダ】にミケラルドとして会って、【魔皇ヒルダ】と【白き魔女リルハ】の師である【双黒の賢者プリシラ】の情報を聞いて、この手紙をもらった。その後、闇ギルドの中枢に行ってそのトップにいる【エレノア】に会ってこの手紙をもらった」
「は?」
『はぁ?』
ロレッソ君はともかく、天井裏のラジーン君からも疑問の声が聞こえる世の中になったそうです。
「……と、とても二日の行動とは思えない内容ですね」
「だろ? これからこの手紙を開くんだけど、相手はちょっと警戒心の強い相手だから悪いんだけど二人とも部屋から離れておいて」
「他者に見られると消滅するような魔法でも掛けてあれば面倒……という事ですか。かしこまりました。ラジーン」
『はっ』
ロレッソが天井に向かって言うと、ラジーンの気配が遠のいた。
いいね。先程の驚きは仕方ないにしても、今の動きは中々のものだ。ラジーンのヤツ、ジェイルにしごかれてまた実力を上げたみたいだ。
一礼の後、ロレッソが部屋の外に出ると、俺はまず【双黒の賢者プリシラ】からの手紙を開封した。
直後、手紙は淡い発光を見せた。やはり魔法が掛けてあったか。
解析で視ると、どうやらこれは座標確認魔法のようだ。光魔法と土魔法の複合魔法のようだな。人払いの必要はなかったが、ミナジリ共和国以外で開封したら、おそらく手紙自体が消滅していただろう。
「なるほど、信頼ね……」
魔皇ヒルダが双黒の賢者プリシラから言付かった言葉すら守れぬようであれば、ここでプリシラとの縁は潰えていた。そうなれば探す事は困難。いや、場合によっては二度と会えなかったという事だな。
そんな事を考えながらプリシラの手紙を開く。
するとそこにはこんな事が書かれていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
やぁ、ミケラルド・オード・ミナジリ。
私はプリシラ。
まぁ名前など私には必要のないものだ。何とでも呼んでくれたまえ。
しかし君も面白い存在だね、私に会いたいなどとは。
とはいえ、この手紙を読めているという事はそれなりに信用出来る人物と言えるだろう。魔族には珍しく、ね。けれど、それだけで私に会えると思ってもらっては困る。
ヒルダに私の性格は聞いただろう? 私に会いたくば信頼を勝ち取る事だ。
近いうちに『不信感P』という者から荷物が届く。同封する手紙の指示に従って動きたまえ。国家の元首を顎で使うようで申し訳ないが、私には敵が多いものでね。易々と命を奪われてやる訳にもいかないのだよ。
それでは、君と会えるのを楽しみにしている。
追伸:リルハとヒルダは私の大事な弟子たちだ。危害を加えるような事をしたら許さないからね。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「……文章を☆で囲むあたり、ヒルダの言う『可愛らしい』なのか?」
追伸に書かれている部分は、俺の性格を逆手にとっているのかもしれない。
おそらくプリシラは俺が【呪縛】を使える事を知っている。だから彼女たちに対する吸血行動を封じた……のだろう。
「しっかし『不信感P』ねぇ。ペンネームか何かだろうか?」
そう感じざるを得ない名前であるが、これはロレッソに伝えなくちゃいけないな。国家の元首宛にそんな名義で荷物が届けば、ロレッソ要する俺の警護たちは危険物としてそれを処理してしまうだろうからな。
「さて、次はこっちか」
封蝋はされてるが、これを開かなくては【刻の番人】、【カンザス】と合流する事は出来ない。
俺がそれを開こうと思った時、先程のプリシラの【座標確認魔法】を思い出した。
「……あれを見た後だと、ここで開けるのが怖くなるな」
俺は屋敷の外に出ると、闇人や間者が潜みそうな森の木陰へと移動した。
姿をデュークへと変えエレノアの手紙を開封する。
「……北西の山で暗号、か」
【カンザス】は地龍テルースを使役する重要人物。
ここでしくじる訳にはいかないからな、慎重にいこう。
そう思い、俺は北西の山へと向かったのだった。
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