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第二部
その472 ディノ大森林の謎
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「あそこが?」
大森林の中にある丘陵から遠目にとある一帯を見下ろす三人。
「あぁ。あの辺り一帯は何の魔力反応もないポッカリ穴の空いた状態だ。だから今日はもう一人の刻の番人と一緒にここを調べるつもりだった――けど」
「それがまさかあのミケラルド様だったなんて! って?」
「僕がお前を敬ってると思ってるのか?」
「別に敬ってもらおうとは思ってない。ただ約束さえ守ってくれれば、俺はお前を受け入れるってだけだ」
「……ふん」
額に手を当て、遠くを眺めるグラムスが言う。
「ほーう、確かに魔力を感じないのう。あそこには人間はおろかモンスターもいないと見える」
「……で、どうするんだよ。正直、僕はあそこに行きたくないぞ」
パーシバルの言う事は尤もである。
あんなあからさまな場所、何故モンスターがいないのかを考えれば簡単だ。それ以上の強大な存在が頭を過ぎるからだ。
だが、そんな強大な存在がいるかもしれないのに、その魔力も感じられない。
考え得る可能性としては……更なる強者から身を隠している?
「ほら、パーシバル君。【エレノア】さんからの命令もあるだろう? 一緒に行こうじゃないか」
「ほんっと、最悪な性格してるよな、お前」
「お互い様だろ?」
ぎこちない笑顔を浮かべるパーシバルは【エアリアルフェザー】を使い空を飛び、俺はグラムスと共に地面を持ち上げ空を飛んだ。
宙から大森林の中枢へ下りると、そこの異様さは嫌でも目に入った。
隆起する地面と、割れている木々。
上からじゃわからなかった光景を目に入れると、多角的な視点の重要性がよくわかる。
「【地泳】じゃないよね。師匠、なんでしょうこれ?」
「巨大な何かが移動しているのう」
「何かって……木龍グランドホルツ?」
「木龍の姿を見た事はないが、緑表に木の一本角を生やした四足歩行の龍だという伝承がある。大地を荒らすような動きはしないはずじゃが?」
木龍が身を隠し、大地を荒らしながら移動する強者?
心当たりがあるようで、そうでもないような?
「どうやら更に南に向かっているようじゃな」
「行きましょう」
俺がそう言い、皆で南へと向かった。
動物や虫の鳴き声、すらも聞こえない無音にも等しき空間。
濃い土と空気の匂い。この中で異質なものは俺たちという存在。
大自然を感じながらその生態の謎に迫るのは、どうも自分の性に合ってないような気がする。
「おい、アレ……」
パーシバルが見つけたのは、隆起した地面の終着点だった。
その奥には、横になぎ倒されている大木の数々。
「ふむ、ここから地上に出とるのう?」
そこから先は何かが這ったように進んだ痕跡。
木々を倒し獣道になっている。その道のいたるところに……粘液?
「何だよこれ……キモイ……」
「まだ乾ききってないのう。こりゃまだ近くにいるかもしれんな」
グラムスが目を鋭くすると、パーシバルがビクつく。
「ちょ、やめてくださいよ師匠……」
キョロキョロと周囲に視線をやるパーシバル。
こう見ると年相応って感じはするな。自分が強すぎて、恐怖を余り知らないのがネックなだけなんだよな、こいつ。
嗅覚系の能力、感覚系の能力にも反応がないとなると、範囲外?
もしくはまた地中に潜ったかだ。
しかし、そこから暫く歩くと、反応を見せたのだ。
「ん?」
「何っ? 何何何っ?!」
「静かにせんかい」
グラムスがパーシバルの口を塞ぐ。
獣道の先から聞こえてくるのは……何かの衝突音?
「……走ります」
「よっしゃ! 行くぞパーシバル!」
「くそ、調査の域を超えてるだろうっ!」
文句を垂れながらも、パーシバルが付いて来る。
駆け、跳び、くぐり、徐々に近くなる衝突音。更には異臭まで。これは酸の臭いだろうか?
「っ! 魔力がっ!?」
いつしか、俺たちは魔力が感じ取れる領域に踏み込んでいた。
やがて、俺たちはそこへ辿り着いた。
大森林の一画を強引に平地にしたかのような荒れた広場。
その広場で繰り広げられる光景を目の当たりにした俺たちは、いつの間にかぽかーんと口を開けていた。
「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
「ギィイイァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
まるで、大怪獣たちの縄張り争い。
片やグラムスの言った通りの姿をした【木龍グランドホルツ】。
片や巨大な……何アレ、キモイ。
まるでパーシバルのような感想になってしまったが、奴は俺がそう言ってしまうだけのフォルムをしていたのだ。
「何と! 【ヘルワーム】じゃっ!!」
グラムスはそれを見た瞬間、それが【ヘルワーム】だと言い切った。
確かに、そう言われればグロテスクな巨大ワームである。脚はなく、うようよしたミミズのような身体。どこに発声器官があるのか。どこかを共鳴させて音を発しているのかわからないが、とにかく、太くて大きいグロテスクなアレだ。
そんなアレが……俺たちを見た。
「……師匠、こっち見てません?」
「見ておらん、熱源を感知しとるんじゃろ」
「つまり見てるって事だよな?」
パーシバルが俺に聞く。
だから俺はそれを否定してやった。
「違う」
「は?」
「あれは睨んでるって言うんだ」
大森林の中にある丘陵から遠目にとある一帯を見下ろす三人。
「あぁ。あの辺り一帯は何の魔力反応もないポッカリ穴の空いた状態だ。だから今日はもう一人の刻の番人と一緒にここを調べるつもりだった――けど」
「それがまさかあのミケラルド様だったなんて! って?」
「僕がお前を敬ってると思ってるのか?」
「別に敬ってもらおうとは思ってない。ただ約束さえ守ってくれれば、俺はお前を受け入れるってだけだ」
「……ふん」
額に手を当て、遠くを眺めるグラムスが言う。
「ほーう、確かに魔力を感じないのう。あそこには人間はおろかモンスターもいないと見える」
「……で、どうするんだよ。正直、僕はあそこに行きたくないぞ」
パーシバルの言う事は尤もである。
あんなあからさまな場所、何故モンスターがいないのかを考えれば簡単だ。それ以上の強大な存在が頭を過ぎるからだ。
だが、そんな強大な存在がいるかもしれないのに、その魔力も感じられない。
考え得る可能性としては……更なる強者から身を隠している?
「ほら、パーシバル君。【エレノア】さんからの命令もあるだろう? 一緒に行こうじゃないか」
「ほんっと、最悪な性格してるよな、お前」
「お互い様だろ?」
ぎこちない笑顔を浮かべるパーシバルは【エアリアルフェザー】を使い空を飛び、俺はグラムスと共に地面を持ち上げ空を飛んだ。
宙から大森林の中枢へ下りると、そこの異様さは嫌でも目に入った。
隆起する地面と、割れている木々。
上からじゃわからなかった光景を目に入れると、多角的な視点の重要性がよくわかる。
「【地泳】じゃないよね。師匠、なんでしょうこれ?」
「巨大な何かが移動しているのう」
「何かって……木龍グランドホルツ?」
「木龍の姿を見た事はないが、緑表に木の一本角を生やした四足歩行の龍だという伝承がある。大地を荒らすような動きはしないはずじゃが?」
木龍が身を隠し、大地を荒らしながら移動する強者?
心当たりがあるようで、そうでもないような?
「どうやら更に南に向かっているようじゃな」
「行きましょう」
俺がそう言い、皆で南へと向かった。
動物や虫の鳴き声、すらも聞こえない無音にも等しき空間。
濃い土と空気の匂い。この中で異質なものは俺たちという存在。
大自然を感じながらその生態の謎に迫るのは、どうも自分の性に合ってないような気がする。
「おい、アレ……」
パーシバルが見つけたのは、隆起した地面の終着点だった。
その奥には、横になぎ倒されている大木の数々。
「ふむ、ここから地上に出とるのう?」
そこから先は何かが這ったように進んだ痕跡。
木々を倒し獣道になっている。その道のいたるところに……粘液?
「何だよこれ……キモイ……」
「まだ乾ききってないのう。こりゃまだ近くにいるかもしれんな」
グラムスが目を鋭くすると、パーシバルがビクつく。
「ちょ、やめてくださいよ師匠……」
キョロキョロと周囲に視線をやるパーシバル。
こう見ると年相応って感じはするな。自分が強すぎて、恐怖を余り知らないのがネックなだけなんだよな、こいつ。
嗅覚系の能力、感覚系の能力にも反応がないとなると、範囲外?
もしくはまた地中に潜ったかだ。
しかし、そこから暫く歩くと、反応を見せたのだ。
「ん?」
「何っ? 何何何っ?!」
「静かにせんかい」
グラムスがパーシバルの口を塞ぐ。
獣道の先から聞こえてくるのは……何かの衝突音?
「……走ります」
「よっしゃ! 行くぞパーシバル!」
「くそ、調査の域を超えてるだろうっ!」
文句を垂れながらも、パーシバルが付いて来る。
駆け、跳び、くぐり、徐々に近くなる衝突音。更には異臭まで。これは酸の臭いだろうか?
「っ! 魔力がっ!?」
いつしか、俺たちは魔力が感じ取れる領域に踏み込んでいた。
やがて、俺たちはそこへ辿り着いた。
大森林の一画を強引に平地にしたかのような荒れた広場。
その広場で繰り広げられる光景を目の当たりにした俺たちは、いつの間にかぽかーんと口を開けていた。
「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
「ギィイイァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
まるで、大怪獣たちの縄張り争い。
片やグラムスの言った通りの姿をした【木龍グランドホルツ】。
片や巨大な……何アレ、キモイ。
まるでパーシバルのような感想になってしまったが、奴は俺がそう言ってしまうだけのフォルムをしていたのだ。
「何と! 【ヘルワーム】じゃっ!!」
グラムスはそれを見た瞬間、それが【ヘルワーム】だと言い切った。
確かに、そう言われればグロテスクな巨大ワームである。脚はなく、うようよしたミミズのような身体。どこに発声器官があるのか。どこかを共鳴させて音を発しているのかわからないが、とにかく、太くて大きいグロテスクなアレだ。
そんなアレが……俺たちを見た。
「……師匠、こっち見てません?」
「見ておらん、熱源を感知しとるんじゃろ」
「つまり見てるって事だよな?」
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だから俺はそれを否定してやった。
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