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第二部

その449 保護者募集中

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「とりゃああああ!」
「甘い、それでは簡単に受けられてしまうぞ!」
「ならばこうなのだ!」
「鋭いだけだ! 緩急をつけろ!」

 と、【炎龍ロードディザスター】と【フェンリル】が火球キャッチボールをやっている中、俺は各方面に手を回していた。

『どうですかね、アーダインさん? このままじゃ死んじゃうんですよ』
『無理なものは無理だ。俺の立場を考えろ。因みにクルスにゃ言うんじゃないぞ』
『え、何でです?』
『クルスの立場が危うくなる』
『……確かに』
『まぁ責任とってミナジリ共和国に置くんだな』
『はぁ……』

 ぬぅ、冒険者ギルドマスターはダメだったか。
 しかし、他に頼めそうな相手がいないぞ?
 SSSトリプルに近い実力者っていえば……やっぱり剣神イヅナだろうか。

『どうもイヅナさん、お久しぶりです』
『ぬ? ボンか、ちょうどいい。鬼っ子がボンを探しているぞ』
『え、オベイルさんが? もしかしてご一緒なんですか?』
『聖騎士学校の特別講師があるからな。我らは二日連続で入ってるはずだ』
『あぁ、そういえば。じゃあ繋げちゃいますね』
『うむ』

 イヅナの許可を得たところで、俺は剣鬼オベイルにも【テレパシー】を発動した。

『どうもオベイルさん』
『お、ミックじゃねぇか! ハッハッハ、【テレパシー】とはな。いよいよお前も隠す気がなくなったみてぇだな!』

 そういわれてみれば、この二人に【テレパシー】を使うのは初めてか。
 俺が焦っているのを込みにしても、二人には開示してもいいと俺が無意識に判断したんだろうな。

『鬼っ子、ボンに話があったのだろう』
『お、そうだった! あれから更に力を付けたんだ! お前今どこにいるんだ? いっちょ勝負しようぜ!』
『ほっほっほ、いつも通りだったな』
『ですねぇ。ならお二人は今お暇なんですか?』
『これといって用事なないの』
『お、珍しく乗り気じゃねぇか!』
『エメラ商会からこっちに転移出来るようにしておくんで、時間みつけてどうぞ』
『こっちってどこだよ?』
『はははは、来ればわかりますよ』

 ◇◆◇ 三十分後 ◆◇◆

「おい、ミック……」
「ほっほっほっほ! 流石はボン、やる事が違うな!」

 呆れているのはオベイルで、少年のように目を輝かせているのがイヅナである。
 転移先は当然ココ、絶対災害地域ディザスターエリアである。
 人間の二人には居心地の悪い環境……というより生息出来ない場所である。
 しかし、ここに簡易的な家を建て、【冷蔵庫】用のマジックスクロールを貼り付ければ、外気とあわさってとても過ごしやすい環境となる。
 オベイルが首を傾げる二種のZ区分ゼットくぶんを見て言う。

「炎龍ロードディザスターとフェンリルだと?」
「なるほど、ここはディザスターエリアか」
「何だと!?」

 オベイルがドアを開ける。

「アッツッ!? 熱いわボケッ!」

 ドアをバタンと閉めるオベイル。
 以上、オベイルさんのオベイルさんによる一人コントでした。

「外は暑いですよ」
「先に言えよな! つーか、よく来られたな、お前」
「まぁ、吸血鬼なもんで」
「……吸血鬼が理由にならない事だからな、それ。ったく、それで、俺たちに何の用だよ?」
「おや、用があったのはオベイルさんじゃ?」
「何でお前は気易く殴れる実力じゃないんだ?」
「もしかして突っ込もうとしてくれました?」
「あぁ、グーでな」

 わなわな震えるオベイルをたしなめた後、俺はイヅナとオベイルの事の経緯を説明した。
 すると、二人は難しい顔をしながら互いに見合ったのだ。

「つまり、炎龍ロードディザスターの保護者を探してると」
「オベイルさん、十ポイント」
「もうポイントはいらねぇんだよ」
「オベイルさん、マイナス十ポイント……」
「はぁ……じじい、どうする?」
「どうするも何も、手に余ると思うがな」

 なるほど、イヅナにも厳しいか。

「確かに、今は俺たちより弱くても、その内俺たちより強くなっちまう。困ったもんだな。何でミナジリ共和国には置けないんだ?」
「勿論、連れて来る事は可能ですが、人間にも魔族にも常識外の存在なので、その常識を覚えるまでは厳しいかなーと」
「なるほどな、つまりは力のコントロールと人間の常識を覚えるまでは難しいって事か」
「かと言って放置すると力が悪用されたり、死んでしまいますからね」
「フェンリルはいいのにか?」
「大人と子供の差は大きいので」
「なるほど、責任能力ってやつか」

 オベイルが納得し、イヅナが補足する。

「訳がわからぬまま連れて行かれるのと、そうでないものの差。覚悟と認識の差異を尊重していると。なるほど、ボンらしい」
「ミックにしちゃ無計画だったがな」
「言い訳もないですね」

 せめて炎龍母が死んでいる事を知っていたら。
 いや、寧ろこの炎龍が心配で逆に来ていたかもしれないな。

「まずは野で慣らすところからだな。餌は何がいいんだ? 人間とか言わねぇだろうな?」
「……意外に乗り気ですね?」
「あん? ガキが困っていいのかもわからないようなつらしてんだ、それを何とかするのが大人の仕事だろうが」

 俺は目を見開いてイヅナを見る。見れば、イヅナも同じ目をしていた。
 そして二人してオベイルに視線を戻したのだ。

「そんで、強くなったら相手してもらう! 完璧じゃねぇか!」

 いつものオベイルに優しさを見つけた瞬間、優しさの中にいつものオベイルを見つけた瞬間でした。
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