447 / 566
第二部
その445 炎龍
しおりを挟む
「ん~~~?」
首どころか身体をくの字にする俺。
何故なら、威嚇してくる魔力が不可解極まりないのだ。
確かに魔力は強大である。しかし、リィたん程強大かと聞かれると…………ん~~~~?
一歩、また一歩と魔力の発生源へと歩を進める。
やがて聞こえてくるのは……、
「グルルルル……」
獣独特の威嚇音。
音の響きからして、確かに龍サイズだろう。
俺は手を振り払い、周囲の煙を吹き飛ばした。
直後、巨大な火球が俺に向かって飛んできた。
「きぃーっく」
その火球を、俺は足の甲で上手く蹴り、見事な弧を描き返した。
ドライブ回転をしながら、火球を放った存在に向かう火球。
「嘘なのだぁ!?」
と共に聞こえてくる声は……何とも間の抜けた声だった。
吹き飛んだ煙の隙間から覗かせる姿は正に炎龍と言えた。
レッドメタリックの体表と、見事な翼。長い首と黄金の瞳。
この世界に来て、最も龍的と言えるフォルムである。
正直とてもカッコイイ。厨二心くすぐられる素晴らしき存在なのだが――、
「ぐ、ぐぎぎぎぎ……!」
今、炎龍ロードディザスターは突如返されてしまった火球と絶賛格闘中である。
ふむ、回転を少し掛け過ぎただろうか?
まるで、あの火球を防げば世界が救われるんじゃないだろうか、と思う程には炎龍はマジな顔をしていた。
「ま、負けないのだぁああ!!」
叫びながら炎龍は火球を防ぎ切った。
腕からは煙があがり、とても炎龍とは思えない残念な存在と言えよう。
もしかしてコイツは炎龍じゃないのでは?
「はぁはぁはぁ……や、やったのだぁ……」
そう思った俺は、ぐったりしながら息切れをする炎龍(仮)の顔を窺うように聞いた。
「すみません、炎龍ロードディザスターさんを探してるんですが、ご在宅ですか?」
すると、炎龍(仮)は俺を鋭く睨んだ。
「わ、私がそうなのだっ!」
コイツが? 馬鹿な?
確かに強いけど、保有している魔力はランクSSクラスの魔法使い程度がせいぜいだ。そんな訳がない。
「ハハハハ」
「あ! 信じておらぬな!?」
「えぇ」
「お、お前何者なのだ!?」
「人にモノを尋ねる時は、まず自分からでは?」
「言ったのだ! さっきちゃんと言ったのだっ!」
「またまたー、冗談でしょう」
「お前一体何なのだ! 纏ってる魔力が異常なのだ!」
「キャラ付けみたいに『のだのだ』言ってないで、さっさと炎龍ロードディザスターさんのお宅を教えてください」
「わ! た! し! なのだ!」
何とも頑なな性格をしているようだ。
俺は【鑑定】の特殊能力を使い、炎龍(仮)を覗き見た。
ロードディザスター:炎龍
◆魔法◆
火魔法:大火球・ヒートアップ・ブレス・ウォールラッシュ
土魔法:ストーンバレット
◆特殊能力◆
炎龍眼
◆固有能力◆
龍の血
「…………はて?」
ついに俺の【鑑定】もバグってしまったようだ。
「む!? その眼は【鑑定】を使っているのだな!? どうだ! 私が炎龍だとわかったのだろう!?」
ドヤっと胸を張られても、こちらは溜め息しか出ない。
「その呆れ果てた眼をやめるのだ! 完全に私を見下しているようなその目を!」
どすどすと大地を踏み、不満を露わにする炎龍ロードディザスター。
いや、今のヤツの場合、【えんりゅうろぉどでぃざすたぁ】さんが似付かわしいだろう。
まったく、まるで子供のようだ。
…………子供?
「今度の目は何なのだ!?」
「君、いくつ?」
「っ! 何て失礼なやつなのだ! 私は炎龍ロードディザスターなのだ! それに、人にモノを尋ねる時は、まず自分からなのだ!」
「四歳です。はい、そちらの番ですよ」
「ふっ、勝ったのだ!」
喜ばれちゃったよ。
「私は五歳なのだ!」
ろぉどでぃざすたぁがそう言った後、俺は額を抱えながらしゃがみ込んだ。
「……マジかぁ~」
太古の時代を生きたであろう炎龍にも寿命があるって事なのか。
いやしかし待てよ? 地龍テルースにも子供がいると聞いた。
という事は、この仔龍にも親がいるのかもしれない。
「お母さんかお父さんはいるかな?」
「母は死んだのだ!」
「まいがっ!」
「それは誇り高い死だったのだ!」
「ん? 誇り高い……死?」
「聞かせてやるのだ!」
炎龍は嬉しそうに、そして誇らしげに俺に語ってくれた。
「あの日、奴はやって来たのだ」
「奴?」
「我が母を高みから見下ろす不遜な輩! だが、奴は母の知り合いだったのだ!」
不穏な空気が……。
「そう、奴の名は雷龍シュガリオン!」
「そういう事かぁ~……」
「んあ!? 何を納得してるのだ! これから! これから母の武勇伝が始まるのだ!」
「雷龍シュガリオンと勇ましく戦って、敗れた」
「何故それを知ってるのだ!?」
まぁ、相手は龍族。
悲しんでいないだけマシか。
それに、俺とリィたんもそうだった。
雷龍シュガリオンに負けた時、死は怖くなかったし悲しみもなかった。
もしかして、これは魔族や龍族の特性なのかもしれない。
「お前! 一体何者なのだ!」
ここに一人残った炎龍ロードディザスターの子は、固有能力【炎龍眼】を使って生き延びた訳か。SS程度の実力では、絶対災害地域では絶対に生きられない。しかし、【炎龍眼】があれば話は別だ。
炎特性を持ったモンスターは、炎龍には逆らえなくなるからな。
俺もリィたんの血から【水龍眼】を得ているからよくわかる。
なるほどな、この能力は龍族が強くなるまで外敵から守る術として使えるのか。だが、俺がここらのモンスターを討伐してしまったせいで、炎龍に身を守る術がなくなってしまった。
炎特性のモンスターは、ある意味炎龍の盾なのだ。
「おい! 聞いてるのか!?」
「……こいつは困ったぞ」
首どころか身体をくの字にする俺。
何故なら、威嚇してくる魔力が不可解極まりないのだ。
確かに魔力は強大である。しかし、リィたん程強大かと聞かれると…………ん~~~~?
一歩、また一歩と魔力の発生源へと歩を進める。
やがて聞こえてくるのは……、
「グルルルル……」
獣独特の威嚇音。
音の響きからして、確かに龍サイズだろう。
俺は手を振り払い、周囲の煙を吹き飛ばした。
直後、巨大な火球が俺に向かって飛んできた。
「きぃーっく」
その火球を、俺は足の甲で上手く蹴り、見事な弧を描き返した。
ドライブ回転をしながら、火球を放った存在に向かう火球。
「嘘なのだぁ!?」
と共に聞こえてくる声は……何とも間の抜けた声だった。
吹き飛んだ煙の隙間から覗かせる姿は正に炎龍と言えた。
レッドメタリックの体表と、見事な翼。長い首と黄金の瞳。
この世界に来て、最も龍的と言えるフォルムである。
正直とてもカッコイイ。厨二心くすぐられる素晴らしき存在なのだが――、
「ぐ、ぐぎぎぎぎ……!」
今、炎龍ロードディザスターは突如返されてしまった火球と絶賛格闘中である。
ふむ、回転を少し掛け過ぎただろうか?
まるで、あの火球を防げば世界が救われるんじゃないだろうか、と思う程には炎龍はマジな顔をしていた。
「ま、負けないのだぁああ!!」
叫びながら炎龍は火球を防ぎ切った。
腕からは煙があがり、とても炎龍とは思えない残念な存在と言えよう。
もしかしてコイツは炎龍じゃないのでは?
「はぁはぁはぁ……や、やったのだぁ……」
そう思った俺は、ぐったりしながら息切れをする炎龍(仮)の顔を窺うように聞いた。
「すみません、炎龍ロードディザスターさんを探してるんですが、ご在宅ですか?」
すると、炎龍(仮)は俺を鋭く睨んだ。
「わ、私がそうなのだっ!」
コイツが? 馬鹿な?
確かに強いけど、保有している魔力はランクSSクラスの魔法使い程度がせいぜいだ。そんな訳がない。
「ハハハハ」
「あ! 信じておらぬな!?」
「えぇ」
「お、お前何者なのだ!?」
「人にモノを尋ねる時は、まず自分からでは?」
「言ったのだ! さっきちゃんと言ったのだっ!」
「またまたー、冗談でしょう」
「お前一体何なのだ! 纏ってる魔力が異常なのだ!」
「キャラ付けみたいに『のだのだ』言ってないで、さっさと炎龍ロードディザスターさんのお宅を教えてください」
「わ! た! し! なのだ!」
何とも頑なな性格をしているようだ。
俺は【鑑定】の特殊能力を使い、炎龍(仮)を覗き見た。
ロードディザスター:炎龍
◆魔法◆
火魔法:大火球・ヒートアップ・ブレス・ウォールラッシュ
土魔法:ストーンバレット
◆特殊能力◆
炎龍眼
◆固有能力◆
龍の血
「…………はて?」
ついに俺の【鑑定】もバグってしまったようだ。
「む!? その眼は【鑑定】を使っているのだな!? どうだ! 私が炎龍だとわかったのだろう!?」
ドヤっと胸を張られても、こちらは溜め息しか出ない。
「その呆れ果てた眼をやめるのだ! 完全に私を見下しているようなその目を!」
どすどすと大地を踏み、不満を露わにする炎龍ロードディザスター。
いや、今のヤツの場合、【えんりゅうろぉどでぃざすたぁ】さんが似付かわしいだろう。
まったく、まるで子供のようだ。
…………子供?
「今度の目は何なのだ!?」
「君、いくつ?」
「っ! 何て失礼なやつなのだ! 私は炎龍ロードディザスターなのだ! それに、人にモノを尋ねる時は、まず自分からなのだ!」
「四歳です。はい、そちらの番ですよ」
「ふっ、勝ったのだ!」
喜ばれちゃったよ。
「私は五歳なのだ!」
ろぉどでぃざすたぁがそう言った後、俺は額を抱えながらしゃがみ込んだ。
「……マジかぁ~」
太古の時代を生きたであろう炎龍にも寿命があるって事なのか。
いやしかし待てよ? 地龍テルースにも子供がいると聞いた。
という事は、この仔龍にも親がいるのかもしれない。
「お母さんかお父さんはいるかな?」
「母は死んだのだ!」
「まいがっ!」
「それは誇り高い死だったのだ!」
「ん? 誇り高い……死?」
「聞かせてやるのだ!」
炎龍は嬉しそうに、そして誇らしげに俺に語ってくれた。
「あの日、奴はやって来たのだ」
「奴?」
「我が母を高みから見下ろす不遜な輩! だが、奴は母の知り合いだったのだ!」
不穏な空気が……。
「そう、奴の名は雷龍シュガリオン!」
「そういう事かぁ~……」
「んあ!? 何を納得してるのだ! これから! これから母の武勇伝が始まるのだ!」
「雷龍シュガリオンと勇ましく戦って、敗れた」
「何故それを知ってるのだ!?」
まぁ、相手は龍族。
悲しんでいないだけマシか。
それに、俺とリィたんもそうだった。
雷龍シュガリオンに負けた時、死は怖くなかったし悲しみもなかった。
もしかして、これは魔族や龍族の特性なのかもしれない。
「お前! 一体何者なのだ!」
ここに一人残った炎龍ロードディザスターの子は、固有能力【炎龍眼】を使って生き延びた訳か。SS程度の実力では、絶対災害地域では絶対に生きられない。しかし、【炎龍眼】があれば話は別だ。
炎特性を持ったモンスターは、炎龍には逆らえなくなるからな。
俺もリィたんの血から【水龍眼】を得ているからよくわかる。
なるほどな、この能力は龍族が強くなるまで外敵から守る術として使えるのか。だが、俺がここらのモンスターを討伐してしまったせいで、炎龍に身を守る術がなくなってしまった。
炎特性のモンスターは、ある意味炎龍の盾なのだ。
「おい! 聞いてるのか!?」
「……こいつは困ったぞ」
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
最弱テイマーの成り上がり~役立たずテイマーは実は神獣を従える【神獣使い】でした。今更戻ってこいと言われてももう遅い~
平山和人
ファンタジー
Sランクパーティーに所属するテイマーのカイトは使えない役立たずだからと追放される。
さらにパーティーの汚点として高難易度ダンジョンに転移され、魔物にカイトを始末させようとする。
魔物に襲われ絶体絶命のピンチをむかえたカイトは、秘められた【神獣使い】の力を覚醒させる。
神に匹敵する力を持つ神獣と契約することでスキルをゲット。さらにフェンリルと契約し、最強となる。
その一方で、パーティーメンバーたちは、カイトを追放したことで没落の道を歩むことになるのであった。
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる