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第二部
その408 ミケラルド先生の初授業
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「はい、初めましての方もお久ぶりの方もおはようございます♪」
本日は俺の初講師の日である。
ルナ王女とレティシア嬢の隣には、俺のルークという名の分裂体が座っている。どうやら分裂体は本体の魔力量に依存して動けるようで、今の俺であれば、分裂体をかなり高度に操作する事も可能なのだ。
当初は欠席祭りを考えていたのだが、出来るのであれば使わない手はない。
講師代をケチっているのか、特別講師に限って言えば、冒険者組と正規組は同じコマで受けるのだ。
という訳で、俺の視界にはリィたん、ナタリー、エメリーやメアリィ、何故か顔をヒクつかせている聖女アリスたん等、多くの見知った顔が見受けられる。
俺が登壇してからも喧噪が収まる事はない。
聖騎士学校の講師陣に魔族がいるのだ、驚かない方がおかしいだろう。
「念のため自己紹介を。私の名前は【ミケラルド・オード・ミナジリ】。北にあるミナジリ共和国の元首をやっています。しかし、SSの冒険者という側面もある事から、聖騎士学校の講師を任されました。特別講師の一番手が私という事で困惑している方もいらっしゃるでしょうが、我がミナジリ共和国からは、後日ジェイルという剣士が講師として来ると思います。リザードマンです。人間の姿ではなくリザードマンの姿でいらっしゃいます。殺意を向けるのは結構ですが、私の師でもあるので、めちゃくちゃ強いです。返り討ちにあわせてもいいという契約を結んでいますので、受講する際はお気をつけください。あ、そうそう。これらを認めてくださったのは法王クルス殿だという事もお忘れなく。反抗的な態度はちゃんと上に伝わりますからね♪」
さて、牽制はこのあたりでいいだろう。
アリスの顔面痙攣も限界を迎えそうだからな。
「えーっと……うわぁ、既に十名の方が退学されてるんですね。就寝前の筋力トレーニングや、思わぬ任務が意思を挫きにきている結果と言えるでしょう。さて、現在百名の学生がここにいるかと思います。その中で聖騎士を目指す方も多いでしょう。そこで、今日は聖騎士の強さがどの程度なのか、という事に焦点を当てていきたいと思います」
「はいはいはーい!」
勢いよく手を挙げたのは、オリハルコンズのメンバー、キッカだった。
「はい、キッカさん。とても元気がいいですね。発言は起立してからどうぞ」
「えっと、聖騎士様って冒険者の間ではランクS以上って話があるんですけど、それって本当なんですか?」
「えぇ、先程実際に見学させて頂きましたが、皆さんとても強い印象です。冒険者の方にわかりやすく言うのであれば、武闘大会で活躍したレミリアさんが沢山いる感じでしょうか?」
「わ、私ですか?」
レミリアが自分を指差し言う。
「ですが、レミリアさんは既にその時のレベルではありませんし、聖騎士学校に通う唯一のSSです。今は聖騎士団の隊長クラスの力を持っていると言えるでしょう」
「あ、ありがとうございます」
恥ずかしがるレミリア。これにくすりと笑った後、キッカが座る。
「けれど今のは冒険者の話。聖騎士学校に身を置いて間もない方々にはわからない事も多いでしょう。なので、今回は、皆さんの実力がどの位置にいるのか、それを確認し、自覚を持って聖騎士を目指して頂こうと思います。では、外へ向かいましょう」
◇◆◇ 聖騎士学校広場 ◆◇◆
「先日皆さんが行った薬草採取は冒険者ギルドで言うところのランクGの依頼です。当然、上のランクになる程、より難しい依頼があります。そして、この聖騎士学校に入学した冒険者の多くはランクAとランクSに該当する冒険者です。では……そうですね、ラッツさん」
「はい!」
「これは、聖騎士が使うロングソードを模して作った木剣です。そして……!」
土魔法【土塊操作】によって、正面に人間大の土塊人形を作る。
「はい、思い切ってどうぞ」
一礼したラッツが木剣を構える。
「はぁっ!」
魔力を伴う研ぎ澄まされた一撃。
ラッツも成長したなー。
斬り倒された土塊人形を前に、正規組の多くが感嘆の息を漏らす。
「お見事です。これは、私が独自に考案した【ランクA+】の硬さを持つ土塊人形です。どうです、ラッツさん? ランクSの硬さに挑戦してみますか?」
「是非!」
と、ラッツ君が意気込むも、
「ぐっ……!」
ランクSの土塊人形に対し、木剣は小さな亀裂を与えただけだった。
「とまぁ、皆さんが行なっている腕立て伏せの先には、こういった結果が伴います。はい!」
ポンと手を鳴らし、無数の土塊人形を出現させる。
人形の頭部には、ランクGからSSまでの文字が描かれている。
「木剣はそちらから。ランクGから始め、斬れなくなったところで待機です」
ランクGの硬さはほぼないに等しい。
しかし、レティシア含め【G+】の硬さで止まる者が多く見受けられた。
なるほど、か弱い貴族の姫……ともなれば、こんなものだよな。
と、そんな事を考えていると、高ランク者側から感嘆の声があがった。
俺がちらりとそこに視線を向けると、
「……へぇ」
SSの土塊人形を斬り倒すのは、順当に考えてリィたん、剣聖レミリア、そしてランクSとはいえど高いポテンシャルを持つ勇者エメリーだけだと思っていた。
しかし、女三人の中に一人――ゲオルグ王の子息、ゲラルドがいたのだ。
学生名簿を見る限り、彼は十八になったばかりのようだ。
なるほど、潜在能力はゲオルグ王を上回るか。いや、既に上回っているのかもしれない。
無口故、何を考えているのかわからないが、これからが楽しみな逸材と言えるだろう。
――――そして、入学当初より気になっていた魔力の一つ。それが早くも動いたというべきか。正規組の一人の女が、不自然に魔力を行使し、ランクCの土塊人形を斬り倒したのだ。
現時点の正規組から考えれば、明らかな異常。
しかし、その微細な魔力の変化を見逃す程、俺とリィたんの目は甘くないのだ。
『におうね、リィたん』
『あぁ、何とも懐かしき……魔の臭いだ』
どうやらゲラルドに続き、聖騎士学校には魔族も来ているようだ。
本日は俺の初講師の日である。
ルナ王女とレティシア嬢の隣には、俺のルークという名の分裂体が座っている。どうやら分裂体は本体の魔力量に依存して動けるようで、今の俺であれば、分裂体をかなり高度に操作する事も可能なのだ。
当初は欠席祭りを考えていたのだが、出来るのであれば使わない手はない。
講師代をケチっているのか、特別講師に限って言えば、冒険者組と正規組は同じコマで受けるのだ。
という訳で、俺の視界にはリィたん、ナタリー、エメリーやメアリィ、何故か顔をヒクつかせている聖女アリスたん等、多くの見知った顔が見受けられる。
俺が登壇してからも喧噪が収まる事はない。
聖騎士学校の講師陣に魔族がいるのだ、驚かない方がおかしいだろう。
「念のため自己紹介を。私の名前は【ミケラルド・オード・ミナジリ】。北にあるミナジリ共和国の元首をやっています。しかし、SSの冒険者という側面もある事から、聖騎士学校の講師を任されました。特別講師の一番手が私という事で困惑している方もいらっしゃるでしょうが、我がミナジリ共和国からは、後日ジェイルという剣士が講師として来ると思います。リザードマンです。人間の姿ではなくリザードマンの姿でいらっしゃいます。殺意を向けるのは結構ですが、私の師でもあるので、めちゃくちゃ強いです。返り討ちにあわせてもいいという契約を結んでいますので、受講する際はお気をつけください。あ、そうそう。これらを認めてくださったのは法王クルス殿だという事もお忘れなく。反抗的な態度はちゃんと上に伝わりますからね♪」
さて、牽制はこのあたりでいいだろう。
アリスの顔面痙攣も限界を迎えそうだからな。
「えーっと……うわぁ、既に十名の方が退学されてるんですね。就寝前の筋力トレーニングや、思わぬ任務が意思を挫きにきている結果と言えるでしょう。さて、現在百名の学生がここにいるかと思います。その中で聖騎士を目指す方も多いでしょう。そこで、今日は聖騎士の強さがどの程度なのか、という事に焦点を当てていきたいと思います」
「はいはいはーい!」
勢いよく手を挙げたのは、オリハルコンズのメンバー、キッカだった。
「はい、キッカさん。とても元気がいいですね。発言は起立してからどうぞ」
「えっと、聖騎士様って冒険者の間ではランクS以上って話があるんですけど、それって本当なんですか?」
「えぇ、先程実際に見学させて頂きましたが、皆さんとても強い印象です。冒険者の方にわかりやすく言うのであれば、武闘大会で活躍したレミリアさんが沢山いる感じでしょうか?」
「わ、私ですか?」
レミリアが自分を指差し言う。
「ですが、レミリアさんは既にその時のレベルではありませんし、聖騎士学校に通う唯一のSSです。今は聖騎士団の隊長クラスの力を持っていると言えるでしょう」
「あ、ありがとうございます」
恥ずかしがるレミリア。これにくすりと笑った後、キッカが座る。
「けれど今のは冒険者の話。聖騎士学校に身を置いて間もない方々にはわからない事も多いでしょう。なので、今回は、皆さんの実力がどの位置にいるのか、それを確認し、自覚を持って聖騎士を目指して頂こうと思います。では、外へ向かいましょう」
◇◆◇ 聖騎士学校広場 ◆◇◆
「先日皆さんが行った薬草採取は冒険者ギルドで言うところのランクGの依頼です。当然、上のランクになる程、より難しい依頼があります。そして、この聖騎士学校に入学した冒険者の多くはランクAとランクSに該当する冒険者です。では……そうですね、ラッツさん」
「はい!」
「これは、聖騎士が使うロングソードを模して作った木剣です。そして……!」
土魔法【土塊操作】によって、正面に人間大の土塊人形を作る。
「はい、思い切ってどうぞ」
一礼したラッツが木剣を構える。
「はぁっ!」
魔力を伴う研ぎ澄まされた一撃。
ラッツも成長したなー。
斬り倒された土塊人形を前に、正規組の多くが感嘆の息を漏らす。
「お見事です。これは、私が独自に考案した【ランクA+】の硬さを持つ土塊人形です。どうです、ラッツさん? ランクSの硬さに挑戦してみますか?」
「是非!」
と、ラッツ君が意気込むも、
「ぐっ……!」
ランクSの土塊人形に対し、木剣は小さな亀裂を与えただけだった。
「とまぁ、皆さんが行なっている腕立て伏せの先には、こういった結果が伴います。はい!」
ポンと手を鳴らし、無数の土塊人形を出現させる。
人形の頭部には、ランクGからSSまでの文字が描かれている。
「木剣はそちらから。ランクGから始め、斬れなくなったところで待機です」
ランクGの硬さはほぼないに等しい。
しかし、レティシア含め【G+】の硬さで止まる者が多く見受けられた。
なるほど、か弱い貴族の姫……ともなれば、こんなものだよな。
と、そんな事を考えていると、高ランク者側から感嘆の声があがった。
俺がちらりとそこに視線を向けると、
「……へぇ」
SSの土塊人形を斬り倒すのは、順当に考えてリィたん、剣聖レミリア、そしてランクSとはいえど高いポテンシャルを持つ勇者エメリーだけだと思っていた。
しかし、女三人の中に一人――ゲオルグ王の子息、ゲラルドがいたのだ。
学生名簿を見る限り、彼は十八になったばかりのようだ。
なるほど、潜在能力はゲオルグ王を上回るか。いや、既に上回っているのかもしれない。
無口故、何を考えているのかわからないが、これからが楽しみな逸材と言えるだろう。
――――そして、入学当初より気になっていた魔力の一つ。それが早くも動いたというべきか。正規組の一人の女が、不自然に魔力を行使し、ランクCの土塊人形を斬り倒したのだ。
現時点の正規組から考えれば、明らかな異常。
しかし、その微細な魔力の変化を見逃す程、俺とリィたんの目は甘くないのだ。
『におうね、リィたん』
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