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第一部
その370 闇人狩りという名の強制リクルート
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「クソッ! 何で、何でこんな事にっ!」
逃げる闇人を回り込み、ニコリと一言。
「献血のご協力お願いします」
「ぎゃぁあああっ!?」
叫ぶ程深く刺してはいない。いつも通りひっかき傷程度だ。
だが、それ以上の恐怖心が彼にそうさせたのだろう。
「ふぅ、これで最後だね」
「うむ、他愛もなかったな」
「ミ……デューク一人で十分だったな」
容姿こそ変えているが、リィたんとジェイルの実力はやはり法王国においても抜きんでている。
「他愛のある相手だと困るから二人を呼んだんだけど、他愛もなかったね」
まぁ、彼等以上の存在がポンポン出て来られては困るのだ。
剣神イヅナをして冒険者最強と称されているのだから、人間の限界はそこら辺なのかもしれない。龍族や魔族が出てこない限り、この強制リクルート作戦は上手くいきそうだ。
「それじゃあ、二人はリルハさんに報告してから帰ってくれ。俺はこいつらと一緒に報告してくる」
「深入りはするなよ」
「勿論ですよ、師匠」
自分の命以上に俺の責任は重いからな。
安全マージンをとりつつ動くのにこした事はない。
俺が皆を立たせ先に行かせた後、リィたんが俺に声を掛けた。
「デューク」
「ん、どうしたの?」
「リルハとやらに聞いたが、オリハルコンズが協力の打診をしに来たら断るよう注文したそうだな? 何故だ? 彼等の成長を促すために闇に迫らせたのではないのか?」
「明確な壁を作ったんですよ。その線引きが彼等の向上心へと繋がる。リルハさんはアーダインさんと同じく贔屓目や過保護に判断したりはしない人です。そんな人から明確に戦力不足と言われれば、何が何でも強くなろうって思うでしょう? そう、オベイルさんとグラムスのシゴキに耐えられる程に」
「己の分を知らせ、知ったが故に向上心を煽る……か。少しでも戦力が欲しいと思ってたリルハには聞かせられないな」
肩を竦めるリィたんに俺は苦笑を返す事しか出来なかった。
そう、俺はオリハルコンズを商人ギルド本部から追い返す指示を、リルハにさせたのだ。
リプトゥア国との戦争の後、俺はお忍びで各国へ転移んだ。当然、その中には法王国もあったのだ。
何故なら、その時期がミナジリ共和国の価値が一番高くなると踏んでいたからだ。戦争後、既にこれまでの入国者数を超える勢いでミナジリ共和国に来ている人間は多い。
そんな中、ミナジリ貨幣の存在をこちらで広めてもらうため、俺はリルハとの交渉をした。価値がうなぎ上りの貨幣である。リルハも受けざるを得ない。
そして俺はリルハに商人ギルドが狙われる可能性を示唆した。
驚くリルハだったが、闇ギルドの動きと金の流れを説明すれば、彼女はすぐに事態を察した。
そんな情報と引き換えに、俺はオリハルコンズ来訪の可能性も提示し、警護志願を断るようにリルハに頼んだ。不可解を示したリルハだったが、代わりの戦力を用意する旨を伝えたところ、押し黙ってくれた。
願い打ち砕かれ、現れるオベイルとグラムス。
とまぁ、ここまでは俺が描いたシナリオ通りなのだが、これ以上の事は彼等の頑張りに賭ける他ない。
ラッツ、ハン、キッカ、そして聖女アリスで俺の前に現れるまでほんの数日、オベイルとグラムスはどこまでオリハルコンズを鍛えられるか、見物である。そして、願わくばアリスの能力が開花するように。
◇◆◇ ◆◇◆
それからしばらくは、闇ギルドの序列四百として動き回り、
「嫌です」
「あぁ?」
呼び出される度に依頼を断った。
「血ぃください」
「は?」
最早慣れ過ぎて、断るのを忘れる程に。
因みに、血を吸い、俺の【呪縛】効果が付いた闇人たちは、皆闇ギルドを続けてもらっている。
何故なら彼等は構成員であると共に、新たな新入社員を紹介してくれるのだ。
俺が知らない依頼を受けたら、俺に連絡を入れ、集合時間を教えてくれる。
商人ギルド襲撃の際、ハンドレッドの人間の血も接種出来たのは大きかった。
数だけで言えばそう、百人程だろうか。
闇ギルドの戦力が十分の一近く俺のモノになった頃、俺の前にとんでもないパーティが現れた。
「パーティ名……『ガーディアンズ』って正気? 完全にノーマークだったわ」
「ふふふ、いつも奸計を講じるのはミックだけとは限らないんだ」
豊満な胸をこれでもかと張るのは、先日商人ギルドの護衛を依頼したリィたん。確かにランクSだけどさ。
「個人で入れる打診はアーダインさんから頂いてたんですけど、それじゃダメだってレミリアさんと話したんです!」
世界の希望は大変だな、勇者エメリー。
「この身の剣がどこまで届くのか、試したいのです」
まぁ、戦争から間もないけど、無茶して身体を鍛えてるみたいだな、剣聖レミリア。
「それで……? あなた方は?」
「ナタリーです! この前冒険者ランクDに上がりました!」
知ってる。この前ランクアップ記念でパーティーしたもんな。
「メアリィです! ナタリーちゃんからは少し遅れてますけどランクEです!」
シェルフの大使が黙って法王国に来るなよ。
いや、俺が言えた事でもないけどな。
「クレアです。ランクはAに上がりました。メアリィ様の護衛です」
最早メアリィとセットだな、この人。
リィたん、エメリー、レミリアがランクSで、クレアがA。
ナタリーがランクDでメアリィがEで、強引にランクAパーティが成り立ってる。アーダインめ……俺に黙ってたな?
確かに、リィたんの護衛があればこの面子でもランクSダンジョンに潜れる。
というか余裕だろう。
そして、ナタリーとメアリィは安全に強敵を観察する事が出来る悪くない環境。
予想だにしなかったが、これはこれでこの子たちの作戦勝ちなのか。
まぁ、パーティメンバーが六人っていうのは例外だが、ここにいられるという事はアーダインが許可したという事だ。
「はぁ~、それじゃあ行きますか」
こんなに不安要素のないパーティは、審査官をやってて初めてなミケラルド君だった。
逃げる闇人を回り込み、ニコリと一言。
「献血のご協力お願いします」
「ぎゃぁあああっ!?」
叫ぶ程深く刺してはいない。いつも通りひっかき傷程度だ。
だが、それ以上の恐怖心が彼にそうさせたのだろう。
「ふぅ、これで最後だね」
「うむ、他愛もなかったな」
「ミ……デューク一人で十分だったな」
容姿こそ変えているが、リィたんとジェイルの実力はやはり法王国においても抜きんでている。
「他愛のある相手だと困るから二人を呼んだんだけど、他愛もなかったね」
まぁ、彼等以上の存在がポンポン出て来られては困るのだ。
剣神イヅナをして冒険者最強と称されているのだから、人間の限界はそこら辺なのかもしれない。龍族や魔族が出てこない限り、この強制リクルート作戦は上手くいきそうだ。
「それじゃあ、二人はリルハさんに報告してから帰ってくれ。俺はこいつらと一緒に報告してくる」
「深入りはするなよ」
「勿論ですよ、師匠」
自分の命以上に俺の責任は重いからな。
安全マージンをとりつつ動くのにこした事はない。
俺が皆を立たせ先に行かせた後、リィたんが俺に声を掛けた。
「デューク」
「ん、どうしたの?」
「リルハとやらに聞いたが、オリハルコンズが協力の打診をしに来たら断るよう注文したそうだな? 何故だ? 彼等の成長を促すために闇に迫らせたのではないのか?」
「明確な壁を作ったんですよ。その線引きが彼等の向上心へと繋がる。リルハさんはアーダインさんと同じく贔屓目や過保護に判断したりはしない人です。そんな人から明確に戦力不足と言われれば、何が何でも強くなろうって思うでしょう? そう、オベイルさんとグラムスのシゴキに耐えられる程に」
「己の分を知らせ、知ったが故に向上心を煽る……か。少しでも戦力が欲しいと思ってたリルハには聞かせられないな」
肩を竦めるリィたんに俺は苦笑を返す事しか出来なかった。
そう、俺はオリハルコンズを商人ギルド本部から追い返す指示を、リルハにさせたのだ。
リプトゥア国との戦争の後、俺はお忍びで各国へ転移んだ。当然、その中には法王国もあったのだ。
何故なら、その時期がミナジリ共和国の価値が一番高くなると踏んでいたからだ。戦争後、既にこれまでの入国者数を超える勢いでミナジリ共和国に来ている人間は多い。
そんな中、ミナジリ貨幣の存在をこちらで広めてもらうため、俺はリルハとの交渉をした。価値がうなぎ上りの貨幣である。リルハも受けざるを得ない。
そして俺はリルハに商人ギルドが狙われる可能性を示唆した。
驚くリルハだったが、闇ギルドの動きと金の流れを説明すれば、彼女はすぐに事態を察した。
そんな情報と引き換えに、俺はオリハルコンズ来訪の可能性も提示し、警護志願を断るようにリルハに頼んだ。不可解を示したリルハだったが、代わりの戦力を用意する旨を伝えたところ、押し黙ってくれた。
願い打ち砕かれ、現れるオベイルとグラムス。
とまぁ、ここまでは俺が描いたシナリオ通りなのだが、これ以上の事は彼等の頑張りに賭ける他ない。
ラッツ、ハン、キッカ、そして聖女アリスで俺の前に現れるまでほんの数日、オベイルとグラムスはどこまでオリハルコンズを鍛えられるか、見物である。そして、願わくばアリスの能力が開花するように。
◇◆◇ ◆◇◆
それからしばらくは、闇ギルドの序列四百として動き回り、
「嫌です」
「あぁ?」
呼び出される度に依頼を断った。
「血ぃください」
「は?」
最早慣れ過ぎて、断るのを忘れる程に。
因みに、血を吸い、俺の【呪縛】効果が付いた闇人たちは、皆闇ギルドを続けてもらっている。
何故なら彼等は構成員であると共に、新たな新入社員を紹介してくれるのだ。
俺が知らない依頼を受けたら、俺に連絡を入れ、集合時間を教えてくれる。
商人ギルド襲撃の際、ハンドレッドの人間の血も接種出来たのは大きかった。
数だけで言えばそう、百人程だろうか。
闇ギルドの戦力が十分の一近く俺のモノになった頃、俺の前にとんでもないパーティが現れた。
「パーティ名……『ガーディアンズ』って正気? 完全にノーマークだったわ」
「ふふふ、いつも奸計を講じるのはミックだけとは限らないんだ」
豊満な胸をこれでもかと張るのは、先日商人ギルドの護衛を依頼したリィたん。確かにランクSだけどさ。
「個人で入れる打診はアーダインさんから頂いてたんですけど、それじゃダメだってレミリアさんと話したんです!」
世界の希望は大変だな、勇者エメリー。
「この身の剣がどこまで届くのか、試したいのです」
まぁ、戦争から間もないけど、無茶して身体を鍛えてるみたいだな、剣聖レミリア。
「それで……? あなた方は?」
「ナタリーです! この前冒険者ランクDに上がりました!」
知ってる。この前ランクアップ記念でパーティーしたもんな。
「メアリィです! ナタリーちゃんからは少し遅れてますけどランクEです!」
シェルフの大使が黙って法王国に来るなよ。
いや、俺が言えた事でもないけどな。
「クレアです。ランクはAに上がりました。メアリィ様の護衛です」
最早メアリィとセットだな、この人。
リィたん、エメリー、レミリアがランクSで、クレアがA。
ナタリーがランクDでメアリィがEで、強引にランクAパーティが成り立ってる。アーダインめ……俺に黙ってたな?
確かに、リィたんの護衛があればこの面子でもランクSダンジョンに潜れる。
というか余裕だろう。
そして、ナタリーとメアリィは安全に強敵を観察する事が出来る悪くない環境。
予想だにしなかったが、これはこれでこの子たちの作戦勝ちなのか。
まぁ、パーティメンバーが六人っていうのは例外だが、ここにいられるという事はアーダインが許可したという事だ。
「はぁ~、それじゃあ行きますか」
こんなに不安要素のないパーティは、審査官をやってて初めてなミケラルド君だった。
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