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第一部
その364 青雷
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「初めまして、リーダーのエイジスです」
爽やかイケメンは滅べばいいのだ。
まぁ、相手が礼儀正しいのだ。こちらからあえて何かをする必要もないけどな。
エイジスの手を取り握手を交わす。
「デューク・スイカ・ウォーカーです」
「ウルトだ」
ウルトは強めに握ってきた。
こちらの力を試そうとしているが、その誘いに乗る訳にはいかない。
俺が優しく握り返すと、ウルトの目が丸くなる。
「ちっ」
「今の舌打ちは聞こえなかった事にします」
ダンジョン内でやられたら査定に響かせるけどな。
「くそ……」
「今の悪態も聞こえなかった事にします」
俺が続けざまにそう言うと、エイジスがウルトを睨む。
「ウルト! やめないか!」
「わ、わかったよ……」
「デューク殿、仲間が申し訳ない事をした」
と言いつつも、エイジス君の目は謝っていない。
本当に査定を受ける気あるのか、こいつら?
「失礼、アッシュだ」
「初めまして」
細剣使いのアッシュか。世渡りは上手そうだな。
「タヒムです。宜しくお願い致します」
「これはこれはご丁寧に」
十年間ランクAを続けランクSに上がった光魔法使いタヒム。
物凄く好感触ではあるが、いかんせんコイツ……闇人である。
最初見た時は「おや?」と思ったのだが、正面から【看破】で見れば納得の悪意。
そうか、青雷は元々四人パーティ。それにアリスが入る事によって五人パーティになるはずだった。しかし、そこに横入りしたのがこのタヒムという訳だ。
なるほど、聖女の成長すら拒んでいる闇ギルドのやりそうな事である。
他に【看破】で悪意を感じ取れないところを見るに、青雷は基準を満たしていると言えよう。勿論、タヒム以外な。
最後に細く綺麗な手が俺の前に出される。
「ホルンです」
「あ、ども」
二回目の挨拶は不意打ちなのでは?
まぁ、彼女も打算があってやってる訳だ、悪い判断ではないだろう。
色を使って査定官を落とす。やれるものならやってみろという感じだ。いや、寧ろ是非やって欲しいものだが、この世界の年齢制限が俺に合わせてくれない。
コロっと落ちるんだけどな、ホント。
◇◆◇ ◆◇◆
「はい、ダブルヘッドセンチピードはこうですねー」
俺がキュッとダブルヘッドセンチピードを倒すと、エイジスが興奮しながら前に出た。
「素晴らしい! 流石は査定官を任されるだけはありますね! これは負けてられません!」
気合いの入ったであろう青雷のリーダーが次の気配に気づくと、一瞬のアイコンタクトの後、壁役のウルトが巨大な盾を前に構えソレを待った。
やがて現れるダブルヘッドセンチピード。
ここで魔法使いのホルンとタヒムは腰を落とすのみだった。
ウルトがダブルヘッドセンチピードの突進を盾で受け止め、衝撃とほぼ同じタイミングで盾を斜めに構えた。
なるほど、衝撃を上手く流してダブルヘッドセンチピードの進む方向を制限したのか。盾の下に潜り込んだウルトと、盾の坂を上るダブルヘッドセンチピード。
盾が射出台のような働きをし、その後ろで構えていたエイジスが無数の突きを放つ。不規則に見える突きだが、その実、狙いはダブルヘッドセンチピードの頭部。まるでミシン目を入れるように放たれた突きは、一瞬でダブルヘッドセンチピードの動きを殺す。
エイジスの突きが止んだ時、その槍を踏み台にし、細剣使いのアッシュが、そのミシン目を細剣でなぞれば……、
「とてもいい連携ですね」
たった三人でダブルヘッドセンチピードを倒してしまった。
ホルンとタヒムは完全に仕留めそこなった際の援護要員。だが、それもこの洗練された動きの前には不必要である。
ダブルヘッドセンチピードを前衛だけで対処出来るという事は、それだけ後衛の二人が魔力を温存出来るという事。
総じて素晴らしいの一言だ。ランクSパーティと言うだけはある。
「気は抜けないですね。冷静に行きましょう」
「因みに最終到達階層は?」
「いつも五階層で引き上げるようにしています。六階層は難度が高く、大きなリスクがありますから」
「へぇ、それは素晴らしい」
◇◆◇ ◆◇◆
三階層。
「ホルン、後方に【フレイムピラー】!」
「任せて!」
「タヒム、ウルトに【プロテクション】だ!」
「【プロテクション!】」
「ウルト! 今だ!」
「おうらぁ!」
マスターゴブリンの群れを前に、的確に対処を続ける青雷。
ホルンが後方に【フレイムピラー】を置く事で、通路後方からのマスターゴブリンの侵入を防ぐ。
タヒムの魔法によって防御能力を向上させたウルトが、敵の注目を集めマスターゴブリンを抱える。そこからあぶれたマスターゴブリンを、エイジスとアッシュが捌き、
「「【ライトシュート】!」」
ウルトに群がっていたマスターゴブリンを、ホルン、タヒム二人の魔法使いが間引き、
「うらぁ!」
盾を強引に壁に押し込み、間にいたマスターゴブリンを圧死に追い込む。
パーティプレイの教科書とも言える第三階層の対処は、俺も見習うべき点があるのだろう。
ウルトのドヤ顔は、おそらく先程の仕返しなのだろうが、俺にとってはどうでもいい事である。
死を回避し、着実で堅実な冒険。ここまで成長し、生き抜いただけはある。
なるほど、確かにこのパーティならば五階層まで行けるな。
さて、次は四階層だな。
爽やかイケメンは滅べばいいのだ。
まぁ、相手が礼儀正しいのだ。こちらからあえて何かをする必要もないけどな。
エイジスの手を取り握手を交わす。
「デューク・スイカ・ウォーカーです」
「ウルトだ」
ウルトは強めに握ってきた。
こちらの力を試そうとしているが、その誘いに乗る訳にはいかない。
俺が優しく握り返すと、ウルトの目が丸くなる。
「ちっ」
「今の舌打ちは聞こえなかった事にします」
ダンジョン内でやられたら査定に響かせるけどな。
「くそ……」
「今の悪態も聞こえなかった事にします」
俺が続けざまにそう言うと、エイジスがウルトを睨む。
「ウルト! やめないか!」
「わ、わかったよ……」
「デューク殿、仲間が申し訳ない事をした」
と言いつつも、エイジス君の目は謝っていない。
本当に査定を受ける気あるのか、こいつら?
「失礼、アッシュだ」
「初めまして」
細剣使いのアッシュか。世渡りは上手そうだな。
「タヒムです。宜しくお願い致します」
「これはこれはご丁寧に」
十年間ランクAを続けランクSに上がった光魔法使いタヒム。
物凄く好感触ではあるが、いかんせんコイツ……闇人である。
最初見た時は「おや?」と思ったのだが、正面から【看破】で見れば納得の悪意。
そうか、青雷は元々四人パーティ。それにアリスが入る事によって五人パーティになるはずだった。しかし、そこに横入りしたのがこのタヒムという訳だ。
なるほど、聖女の成長すら拒んでいる闇ギルドのやりそうな事である。
他に【看破】で悪意を感じ取れないところを見るに、青雷は基準を満たしていると言えよう。勿論、タヒム以外な。
最後に細く綺麗な手が俺の前に出される。
「ホルンです」
「あ、ども」
二回目の挨拶は不意打ちなのでは?
まぁ、彼女も打算があってやってる訳だ、悪い判断ではないだろう。
色を使って査定官を落とす。やれるものならやってみろという感じだ。いや、寧ろ是非やって欲しいものだが、この世界の年齢制限が俺に合わせてくれない。
コロっと落ちるんだけどな、ホント。
◇◆◇ ◆◇◆
「はい、ダブルヘッドセンチピードはこうですねー」
俺がキュッとダブルヘッドセンチピードを倒すと、エイジスが興奮しながら前に出た。
「素晴らしい! 流石は査定官を任されるだけはありますね! これは負けてられません!」
気合いの入ったであろう青雷のリーダーが次の気配に気づくと、一瞬のアイコンタクトの後、壁役のウルトが巨大な盾を前に構えソレを待った。
やがて現れるダブルヘッドセンチピード。
ここで魔法使いのホルンとタヒムは腰を落とすのみだった。
ウルトがダブルヘッドセンチピードの突進を盾で受け止め、衝撃とほぼ同じタイミングで盾を斜めに構えた。
なるほど、衝撃を上手く流してダブルヘッドセンチピードの進む方向を制限したのか。盾の下に潜り込んだウルトと、盾の坂を上るダブルヘッドセンチピード。
盾が射出台のような働きをし、その後ろで構えていたエイジスが無数の突きを放つ。不規則に見える突きだが、その実、狙いはダブルヘッドセンチピードの頭部。まるでミシン目を入れるように放たれた突きは、一瞬でダブルヘッドセンチピードの動きを殺す。
エイジスの突きが止んだ時、その槍を踏み台にし、細剣使いのアッシュが、そのミシン目を細剣でなぞれば……、
「とてもいい連携ですね」
たった三人でダブルヘッドセンチピードを倒してしまった。
ホルンとタヒムは完全に仕留めそこなった際の援護要員。だが、それもこの洗練された動きの前には不必要である。
ダブルヘッドセンチピードを前衛だけで対処出来るという事は、それだけ後衛の二人が魔力を温存出来るという事。
総じて素晴らしいの一言だ。ランクSパーティと言うだけはある。
「気は抜けないですね。冷静に行きましょう」
「因みに最終到達階層は?」
「いつも五階層で引き上げるようにしています。六階層は難度が高く、大きなリスクがありますから」
「へぇ、それは素晴らしい」
◇◆◇ ◆◇◆
三階層。
「ホルン、後方に【フレイムピラー】!」
「任せて!」
「タヒム、ウルトに【プロテクション】だ!」
「【プロテクション!】」
「ウルト! 今だ!」
「おうらぁ!」
マスターゴブリンの群れを前に、的確に対処を続ける青雷。
ホルンが後方に【フレイムピラー】を置く事で、通路後方からのマスターゴブリンの侵入を防ぐ。
タヒムの魔法によって防御能力を向上させたウルトが、敵の注目を集めマスターゴブリンを抱える。そこからあぶれたマスターゴブリンを、エイジスとアッシュが捌き、
「「【ライトシュート】!」」
ウルトに群がっていたマスターゴブリンを、ホルン、タヒム二人の魔法使いが間引き、
「うらぁ!」
盾を強引に壁に押し込み、間にいたマスターゴブリンを圧死に追い込む。
パーティプレイの教科書とも言える第三階層の対処は、俺も見習うべき点があるのだろう。
ウルトのドヤ顔は、おそらく先程の仕返しなのだろうが、俺にとってはどうでもいい事である。
死を回避し、着実で堅実な冒険。ここまで成長し、生き抜いただけはある。
なるほど、確かにこのパーティならば五階層まで行けるな。
さて、次は四階層だな。
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