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第一部
◆その352 新生オリハルコンズ
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ここは法王国。
法王国とリプトゥア国の国境付近。
地面から這い出て来る異形のモンスターが土煙を上げる。
「出たなモグラ野郎……!」
象の如く巨大なランクAモンスター【ジャイアントモール】を前に双剣を構える男、ハン。
ハンに突進するジャイアントモール。しかし、その脇腹を狙い真横から剛剣が振り下ろされる。
「ぬんっ!」
ラッツの大剣による強力な一撃により、ジャイアントモールの勢いが落ちる。
ニヤリと笑ったハンがその真上へ跳び上がる。
「キッカ!」
「任せて! 【パワーアップ】!」
後衛で杖を掲げたキッカがハンの力を底上げする。
ジャイアントモールの首に双剣を突き立てたハン。
「ギィイイイイイッ!?」」
苦しむジャイアントモールが痛みに仰け反る。これに更なる追撃が起こる。
胴体に降り落ちる光弾、光魔法の【ライトシュート】。
「ナイスだ、アリス」
仰け反った事による頭部下の空間。ここに潜り込んでいたラッツが、ジャイアントモールの顎下から叫ぶ。
「猛剣、獣斬!」
止めの一撃により、ジャイアントモールが断末魔すら発さずこと切れる。
「よっと」
跳び下りて来たハンとラッツがハイタッチすると、キッカが微笑む。
「なーにカッコつけてんだか」
そしてアリスに向く。
「アリス、どうしたの?」
キッカの問いにアリスが小声で言う。
「いえ、また視線が……」
「あー、また闇ギルドでしょ? いいのいいの。あんな奴らはただ監視してるだけなんだし」
「それでも、私が原因である事には変わりないです」
しゅんとするアリスの肩に、ラッツの手がポンと置かれる。
「心配する事はない。我々の実力は既にランクSパーティとも言える。あちらもそう簡単には手を出せないだろう」
「ラッツの言うとおりだぜ、アリスちゃん。大丈夫、何かあったら逃がしてやっから」
ラッツ、そしてハンの言葉に、アリスが小さく頭を下げる。
「すみません……だけど、ハンさんの厚意に甘える訳にはいきません。いざとなった時は、私も一緒に戦いますから」
自身の杖をギュッと握って気合いを見せたアリスに、キッカがくすりと笑う。
「だよね~、ハンの言い方だと何か重いよねー? うんうん、皆で一緒に戦おうじゃない。このオリハルコンズでさ!」
ミケラルドとアリスが作ったパーティ【オリハルコンズ】。そのパーティに加入したのがラッツ、ハン、キッカの【緋焔】だった。
「しっかし、一時的とはいえよくギルドが許可したよな」
ジャイアントモールの討伐後の帰り道、ハンが言った。
「アーダイン殿の配慮だろう。原則、パーティから脱退しなければ別のパーティには臨時で入る事しか出来ない。世界的に見て重要度の高い聖女のいるパーティ【オリハルコンズ】だ。ギルドとしてもその名は残したいところだろう。そして俺たちとしても愛着のある【緋焔】もな。どちらも欠けさせずに依頼に臨むのであれば、特殊事例も仕方のない事だ」
「臨時パーティでもよかったんだけどな」
「だから言ったろう、アーダイン殿の配慮だと。実績の積んだパーティを消すのは惜しいという判断だ」
「なるほどねぇ~」
緋焔というパーティを残しつつ、緋焔のメンバーをオリハルコンズに加入させる。超法規的な対応ではあるが、それには今後予定されている聖騎士学校入学への選別が理由にあった。ミケラルドはパーティを脱退した訳ではないが、現状戦線を離脱している。オリハルコンズに残ったメンバーは聖女アリスのみ。
この状態では、聖女アリスも緋焔のメンバーも選別に参加する事が出来ないのだ。かつて、冒険者ギルド総括ギルドマスターであるアーダインは、ミケラルドに言った。
――――パーティメンバーは四~五人。それとミケラルドだ。
選別を受けるためにはパーティメンバーは最低でも四人必要なのだ。それも、ランクSダンジョンに潜れる程の実力を持ったパーティでなくてはならない。つまり、それにはより練達したチームワークが必要となる。
オリハルコンズにはアリス一人、そして緋焔にはラッツ、ハン、キッカの三人のみ。これでは最初から選別から漏れてしまう。
だからこそミケラルドは緋焔を法王国へと向かわせた。そしてアリスと接触させたのだ。
法王国の首都に戻った皆は、ギルドへの報告後、打ち上げの後、部屋へと戻る。当然、アリスとキッカの部屋とラッツとハンの部屋は別だが、四人が集ったのはラッツとハンの部屋だった。
「アリス、宿の生活は慣れたか?」
「えぇ。アイビス様も言ってました! 『何事も経験じゃ』って!」
ラッツの質問に元気に返答したアリス。
部屋のドアに対し魔法を放っていたキッカが戻る。
「オッケー、これで外に情報は洩れないよ」
「風魔法【エアフィルター】……便利ですよね」
アリスが言うと、ハンが肩を竦める。
「特殊能力の【聞き耳】は厄介だからな。連中、監視専門みたいだし、用心に越した事はないだろう」
「ですね」
アリスが頷き、
「さ、いいぜ。ラッツ」
ハンの言葉によって皆がラッツに向く。
「では会議を始める」
法王国とリプトゥア国の国境付近。
地面から這い出て来る異形のモンスターが土煙を上げる。
「出たなモグラ野郎……!」
象の如く巨大なランクAモンスター【ジャイアントモール】を前に双剣を構える男、ハン。
ハンに突進するジャイアントモール。しかし、その脇腹を狙い真横から剛剣が振り下ろされる。
「ぬんっ!」
ラッツの大剣による強力な一撃により、ジャイアントモールの勢いが落ちる。
ニヤリと笑ったハンがその真上へ跳び上がる。
「キッカ!」
「任せて! 【パワーアップ】!」
後衛で杖を掲げたキッカがハンの力を底上げする。
ジャイアントモールの首に双剣を突き立てたハン。
「ギィイイイイイッ!?」」
苦しむジャイアントモールが痛みに仰け反る。これに更なる追撃が起こる。
胴体に降り落ちる光弾、光魔法の【ライトシュート】。
「ナイスだ、アリス」
仰け反った事による頭部下の空間。ここに潜り込んでいたラッツが、ジャイアントモールの顎下から叫ぶ。
「猛剣、獣斬!」
止めの一撃により、ジャイアントモールが断末魔すら発さずこと切れる。
「よっと」
跳び下りて来たハンとラッツがハイタッチすると、キッカが微笑む。
「なーにカッコつけてんだか」
そしてアリスに向く。
「アリス、どうしたの?」
キッカの問いにアリスが小声で言う。
「いえ、また視線が……」
「あー、また闇ギルドでしょ? いいのいいの。あんな奴らはただ監視してるだけなんだし」
「それでも、私が原因である事には変わりないです」
しゅんとするアリスの肩に、ラッツの手がポンと置かれる。
「心配する事はない。我々の実力は既にランクSパーティとも言える。あちらもそう簡単には手を出せないだろう」
「ラッツの言うとおりだぜ、アリスちゃん。大丈夫、何かあったら逃がしてやっから」
ラッツ、そしてハンの言葉に、アリスが小さく頭を下げる。
「すみません……だけど、ハンさんの厚意に甘える訳にはいきません。いざとなった時は、私も一緒に戦いますから」
自身の杖をギュッと握って気合いを見せたアリスに、キッカがくすりと笑う。
「だよね~、ハンの言い方だと何か重いよねー? うんうん、皆で一緒に戦おうじゃない。このオリハルコンズでさ!」
ミケラルドとアリスが作ったパーティ【オリハルコンズ】。そのパーティに加入したのがラッツ、ハン、キッカの【緋焔】だった。
「しっかし、一時的とはいえよくギルドが許可したよな」
ジャイアントモールの討伐後の帰り道、ハンが言った。
「アーダイン殿の配慮だろう。原則、パーティから脱退しなければ別のパーティには臨時で入る事しか出来ない。世界的に見て重要度の高い聖女のいるパーティ【オリハルコンズ】だ。ギルドとしてもその名は残したいところだろう。そして俺たちとしても愛着のある【緋焔】もな。どちらも欠けさせずに依頼に臨むのであれば、特殊事例も仕方のない事だ」
「臨時パーティでもよかったんだけどな」
「だから言ったろう、アーダイン殿の配慮だと。実績の積んだパーティを消すのは惜しいという判断だ」
「なるほどねぇ~」
緋焔というパーティを残しつつ、緋焔のメンバーをオリハルコンズに加入させる。超法規的な対応ではあるが、それには今後予定されている聖騎士学校入学への選別が理由にあった。ミケラルドはパーティを脱退した訳ではないが、現状戦線を離脱している。オリハルコンズに残ったメンバーは聖女アリスのみ。
この状態では、聖女アリスも緋焔のメンバーも選別に参加する事が出来ないのだ。かつて、冒険者ギルド総括ギルドマスターであるアーダインは、ミケラルドに言った。
――――パーティメンバーは四~五人。それとミケラルドだ。
選別を受けるためにはパーティメンバーは最低でも四人必要なのだ。それも、ランクSダンジョンに潜れる程の実力を持ったパーティでなくてはならない。つまり、それにはより練達したチームワークが必要となる。
オリハルコンズにはアリス一人、そして緋焔にはラッツ、ハン、キッカの三人のみ。これでは最初から選別から漏れてしまう。
だからこそミケラルドは緋焔を法王国へと向かわせた。そしてアリスと接触させたのだ。
法王国の首都に戻った皆は、ギルドへの報告後、打ち上げの後、部屋へと戻る。当然、アリスとキッカの部屋とラッツとハンの部屋は別だが、四人が集ったのはラッツとハンの部屋だった。
「アリス、宿の生活は慣れたか?」
「えぇ。アイビス様も言ってました! 『何事も経験じゃ』って!」
ラッツの質問に元気に返答したアリス。
部屋のドアに対し魔法を放っていたキッカが戻る。
「オッケー、これで外に情報は洩れないよ」
「風魔法【エアフィルター】……便利ですよね」
アリスが言うと、ハンが肩を竦める。
「特殊能力の【聞き耳】は厄介だからな。連中、監視専門みたいだし、用心に越した事はないだろう」
「ですね」
アリスが頷き、
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ハンの言葉によって皆がラッツに向く。
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