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第一部
その310 真・ご招待
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「いいじゃないですか、ケチ!」
「金払いは良い方だと自負してます」
「オリハルコンズのどこがダメなんですか!?」
「ちょっと恥ずかしいです」
「だ、だって決める時はそれでいいって!」
「私とアリスさんの距離がそれだけ近づいたって証拠ですよ。それに、パーティ代表はエメリーさんになるでしょう? アリスさんにそういった権限はないのでは?」
「エメリーさんならわかってくれます」
「でも、魔王レベルになると、オリハルコンは壊せそうな感じしません?」
「世界一の鉱石ですよ!?」
「相手も世界最強ですからね。ないとは言い切れません」
「む~、では【神の使徒】とかどうでしょう!?」
「超嫌です♪」
「何でですか!」
「アリスさんが二十歳くらいになればわかりますよ」
「そんな事ありませんー!」
「先代勇者一行のパーティ名は?」
「【聖なる翼】です!」
「うわぁ」
「ちょっと! 酷くないですか!?」
「だから最初【白き翼】とか付けようとしてたんですね」
「かっこ! いいじゃ! ないです! か!」
バシバシとテーブルを叩き、厨二ネームをアピールしてくるアリス。
誰だ、エメラ商会の応接室だからアリスも騒がないって言ったの?
完全に打ち上げ会場じゃないか、ここ。
「じゃあアイビス殿に聞いてみてくださいよ。その名前は今も恥ずかしげなく言えるかって」
◇◆◇ ◆◇◆
「という訳でミケラルドさんをお連れしました!」
まさかホーリーキャッスルに連れて来られるなんて想像してなかったぞ?
確かに、俺が忙しいって言う理由も、アリスが連れて行きたがらない理由もなくなったけどな? そうじゃないと思うんだ、おじさんは。
目を丸くした皇后アイビスは、ちらりと俺に視線を向けた。
「ミケラルド殿、ちとこちらへ」
「はい」
「ここへ」
「え、あ、はい」
俺はアイビスの隣に腰を下ろす。
「どうなっておる?」
アイビスが小声で俺に聞く。
「いつか勇者が魔王討伐に行く際のパーティ名で言い争ってます」
「何故妾がそれに巻き込まれている?」
「私が巻き込みました」
「何故じゃ?」
「確かアイビス殿には貸しがあったはず」
その貸しとは、以前オリハルコン輸送の任務の際、俺とオベイルが皇后アイビスに与えたもの。オベイルはオリハルコン武器精製の口利きをアイビスに約束させていたが、俺は保留にしていた。
「そのような貸しをここで使うと? この場で?」
正気を疑うようなアイビスの言葉に、俺はニコリと答える。
「面白いでしょう?」
「ちっとも」
「私は面白いです」
「くっ、これで法王国とミナジリ共和国の関係が悪化するとは思わなかったのかえっ?」
「ちっとも」
寧ろ、こんな事で悪化するんだったら、俺がアリスを振り回した段階で悪化しているだろう。
「……これで貸し借り無しじゃぞ?」
「勿論です」
「大きな手札をこんな事に使うのか、ミナジリ共和国の元首は……」
「アリスさんのため、言い換えれば世界のためとも言えるでしょう」
「まったく、大きく出たものよ」
といったところで、俺と皇后アイビスの密談が終わる。
アリスはニコニコとしながらそれを待っていた。きっと彼女には、これまでの経緯をアイビスに伝えているように見えた事だろう。
「さぁ、アリスさん。アイビス殿がお答え頂けるそうですよ。【聖なる翼】のパーティ名は、恥ずかしくなかったかどうか」
「恥ずかしいなんてそんな事……ないですよね?」
アリスがカタリと小首を右へ傾げ聞く。
すると対面に座るアイビスは右側へ顔を反らし言う。
「……そうじゃのう」
「ないですよね?」
アリスが小首を左へ傾げ聞く。
「そうじゃのう」
アイビスは左側へ顔を反らし言う。
「ミケラルドさん」
アリスのジト目が俺に向く。
「目が合いません」
「アリスさんとアイビス殿は心で通じ合ってますから」
「よくもまぁそう心にも思ってない事を言えますよね」
「心から思っていますよ。ただ心が作ったまやかしかもしれないだけです」
「まやかしじゃないですか!」
立ち上がったアリスが俺を睨む。
「見てくださいアイビス殿を。優しい目をしているでしょう」
「当然、通じ合っておる」
そればかりは目を見て言うアイビス。
「【聖なる翼】」
ボソリと言うアリス。
「話はもう終わったかえ?」
目を反らしながら言うアイビス。
「始まったばかりです」
「……はぁ、アリスも大人になればわかる」
大きく溜め息を吐いたアイビスが、観念したかのように言う。
「アイビス様が……ミケラルドさんと同じ事言った……」
ショックを受けてるのは別の事に関してみたいなのは気のせいだろうか?
「だそうですよ、アリスさん」
「私は絶対になりません!」
「なります」
「じゃあ賭けましょう!」
凄い、賭け事する聖女なんて初めて見たかもしれない。
「……いいでしょう。賭け事は普段しないのですが、こればかりは実体験ですから。おいくらに?」
「……金貨百枚」
「見栄を張りましたね」
最近の収入を考えれば当然か。
「白金貨百枚です!」
叫ぶアリスと目を丸くする俺。
そして、額を抱えるアイビス皇后だった。
「金払いは良い方だと自負してます」
「オリハルコンズのどこがダメなんですか!?」
「ちょっと恥ずかしいです」
「だ、だって決める時はそれでいいって!」
「私とアリスさんの距離がそれだけ近づいたって証拠ですよ。それに、パーティ代表はエメリーさんになるでしょう? アリスさんにそういった権限はないのでは?」
「エメリーさんならわかってくれます」
「でも、魔王レベルになると、オリハルコンは壊せそうな感じしません?」
「世界一の鉱石ですよ!?」
「相手も世界最強ですからね。ないとは言い切れません」
「む~、では【神の使徒】とかどうでしょう!?」
「超嫌です♪」
「何でですか!」
「アリスさんが二十歳くらいになればわかりますよ」
「そんな事ありませんー!」
「先代勇者一行のパーティ名は?」
「【聖なる翼】です!」
「うわぁ」
「ちょっと! 酷くないですか!?」
「だから最初【白き翼】とか付けようとしてたんですね」
「かっこ! いいじゃ! ないです! か!」
バシバシとテーブルを叩き、厨二ネームをアピールしてくるアリス。
誰だ、エメラ商会の応接室だからアリスも騒がないって言ったの?
完全に打ち上げ会場じゃないか、ここ。
「じゃあアイビス殿に聞いてみてくださいよ。その名前は今も恥ずかしげなく言えるかって」
◇◆◇ ◆◇◆
「という訳でミケラルドさんをお連れしました!」
まさかホーリーキャッスルに連れて来られるなんて想像してなかったぞ?
確かに、俺が忙しいって言う理由も、アリスが連れて行きたがらない理由もなくなったけどな? そうじゃないと思うんだ、おじさんは。
目を丸くした皇后アイビスは、ちらりと俺に視線を向けた。
「ミケラルド殿、ちとこちらへ」
「はい」
「ここへ」
「え、あ、はい」
俺はアイビスの隣に腰を下ろす。
「どうなっておる?」
アイビスが小声で俺に聞く。
「いつか勇者が魔王討伐に行く際のパーティ名で言い争ってます」
「何故妾がそれに巻き込まれている?」
「私が巻き込みました」
「何故じゃ?」
「確かアイビス殿には貸しがあったはず」
その貸しとは、以前オリハルコン輸送の任務の際、俺とオベイルが皇后アイビスに与えたもの。オベイルはオリハルコン武器精製の口利きをアイビスに約束させていたが、俺は保留にしていた。
「そのような貸しをここで使うと? この場で?」
正気を疑うようなアイビスの言葉に、俺はニコリと答える。
「面白いでしょう?」
「ちっとも」
「私は面白いです」
「くっ、これで法王国とミナジリ共和国の関係が悪化するとは思わなかったのかえっ?」
「ちっとも」
寧ろ、こんな事で悪化するんだったら、俺がアリスを振り回した段階で悪化しているだろう。
「……これで貸し借り無しじゃぞ?」
「勿論です」
「大きな手札をこんな事に使うのか、ミナジリ共和国の元首は……」
「アリスさんのため、言い換えれば世界のためとも言えるでしょう」
「まったく、大きく出たものよ」
といったところで、俺と皇后アイビスの密談が終わる。
アリスはニコニコとしながらそれを待っていた。きっと彼女には、これまでの経緯をアイビスに伝えているように見えた事だろう。
「さぁ、アリスさん。アイビス殿がお答え頂けるそうですよ。【聖なる翼】のパーティ名は、恥ずかしくなかったかどうか」
「恥ずかしいなんてそんな事……ないですよね?」
アリスがカタリと小首を右へ傾げ聞く。
すると対面に座るアイビスは右側へ顔を反らし言う。
「……そうじゃのう」
「ないですよね?」
アリスが小首を左へ傾げ聞く。
「そうじゃのう」
アイビスは左側へ顔を反らし言う。
「ミケラルドさん」
アリスのジト目が俺に向く。
「目が合いません」
「アリスさんとアイビス殿は心で通じ合ってますから」
「よくもまぁそう心にも思ってない事を言えますよね」
「心から思っていますよ。ただ心が作ったまやかしかもしれないだけです」
「まやかしじゃないですか!」
立ち上がったアリスが俺を睨む。
「見てくださいアイビス殿を。優しい目をしているでしょう」
「当然、通じ合っておる」
そればかりは目を見て言うアイビス。
「【聖なる翼】」
ボソリと言うアリス。
「話はもう終わったかえ?」
目を反らしながら言うアイビス。
「始まったばかりです」
「……はぁ、アリスも大人になればわかる」
大きく溜め息を吐いたアイビスが、観念したかのように言う。
「アイビス様が……ミケラルドさんと同じ事言った……」
ショックを受けてるのは別の事に関してみたいなのは気のせいだろうか?
「だそうですよ、アリスさん」
「私は絶対になりません!」
「なります」
「じゃあ賭けましょう!」
凄い、賭け事する聖女なんて初めて見たかもしれない。
「……いいでしょう。賭け事は普段しないのですが、こればかりは実体験ですから。おいくらに?」
「……金貨百枚」
「見栄を張りましたね」
最近の収入を考えれば当然か。
「白金貨百枚です!」
叫ぶアリスと目を丸くする俺。
そして、額を抱えるアイビス皇后だった。
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