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第一部
その290 SSの依頼
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「依頼? いきなりですね」
「いや、そうでもない」
十数分前にSSになったばかりですけど?
「我々はミケラルドがSSになるその時を待っていた」
あ、そっちの話ですか。
という事は狙いがあるのか。表情を見る限りかなり深刻そうである。
聞くだけ聞いてみるか。
「クルスには会ったな?」
それは、意外な問いかけだった。
「先程。その口調ですと、ご友人で?」
俺の質問にアーダインが一つ頷く。
「何、古くからの付き合いだ」
「何故クルス殿の名が?」
「聖騎士学校への冒険者招致の話は聞いただろう? それまでにクルスから「やってほしい」と頼まれた事がある。それがミケラルドへの依頼だ」
「……解せませんね。私以外にもSSの冒険者はいるでしょう。オベイルさんでも」
「いや、剣鬼にゃ荷が重い」
「SSSのイヅナさんでは?」
「相手が警戒してしまうな」
つまり、危ない橋だという事だ。
俺は溜め息を吐き言った。
「聞きましょう」
出来れば聞きたくないけどな。
「聖騎士学校への招致はランクAやランクSが対象だ。このランクAとランクSの選別を依頼したい」
「それこそ私が当てはまるとは思えないんですけど」
そもそもランクAやS冒険者たちとの面識自体が少ない。
剣聖レミリア、勇者エメリー、魔帝グラムスなんかは最早身内と言っていいが、それ以外にも多くの冒険者はいるだろう。
それこそランクAから十年隔ててランクSになった冒険者なんかも多数。
「向上心溢れるランクAやランクSの冒険者が、聖騎士学校への招致の話を受けた時、その冒険者はどうすると思う?」
「まぁ、タダで高ランカーの技や魔法を習うチャンスと考え、迷わず入学を決意するでしょうね」
「そこだ」
「へ? 金銭的な問題ですか?」
すると、アーダインは首を横に振った。
「違う。冒険者は必ずと言っていい程に集まる。当然、ギルドや法王国としては望むところだ。しかし、事はそう単純ではない。聖騎士学校の秘伝は表の光。しかし、それを裏に潜む闇が得た場合、これまでの均衡が崩れるとは思わないか?」
「っ! 闇ギルド……!」
「そういう事だ。冒険者ギルドに所属している闇人が必ずいる。中でも、実力を隠す者もいるはず。ミケラルドにはそういった闇の者を探し出して欲しい」
なるほど。つまり、俺であればそういった調査もある程度自由がきくという訳だ。だが、それは俺を深く知っている者にしかわからない事ではないか?
「参考までに、知名度……という点では私もそこそこ有名になってきたという自覚があるのですが、それでも私を選んだ理由をお伺いしたいですね」
そうなのだ。調査に赴けば、顔が割れている俺も、剣神イヅナ程ではないにしろ警戒されてしまう。それでも俺を選んだ理由がこのアーダインにはあるのだろう。
「それが、『剣鬼にゃ荷が重い』と言った理由だ」
「はて?」
「ミケラルド、我々の情報網を甘く見るな。お前が勇者エメリーに光魔法【歪曲の変化】を利用した事は知っている」
「あれ? バレちゃいました?」
「ほぉ、隠そうとしないのか」
「既に知っているそうなので、隠してもしょうがないかと。大方、勇者捜索依頼がリプトゥア国から入ったのでしょう」
「ギルド本部としては答える事は出来ないな」
「そして、それは指名依頼だった」
「面白い推論だ」
「私ならそうするだけですよ。何よりもギルドの信が厚い冒険者への依頼をとね。ならばその指名冒険者は簡単です」
「誰だというのかね?」
「……剣神イヅナと剣鬼オベイル」
アーダインは表情こそ変えなかったが、大きく鼻息をすんと吐いた。
「……何故そう思う?」
「え、だって二人から私の推薦があったんですよね? つまり、ごく最近二人がアーダインさんとギルド通信を通して話したって事。そして今回の依頼は人探し。リプトゥア国にいない勇者エメリーが行く場所は限られている。ガンドフか、リーガルか。はたまた法王国か。ならばその近くにいる優秀な冒険者に捜索を依頼するのが合理的。法王国のどなたかにも依頼は掛けたんでしょう。流石にその情報まではわかりませんが、顔見知りのその二人は予想出来ましたよ。で、イヅナさんは勇者エメリーの正体に気付いていた。国からの指名依頼があった以上、イヅナさんも断れない。そして依頼を受けた以上、ギルドへの報告義務がある。依頼発注から報告まで、そんなに間もなかったのでは?」
俺の質問を受け、アーダインがくすりと笑う。
「まるで依頼内容を覗き見たかのようだな」
「予想ですよ、予想」
「だが、一つだけ間違っていた点がある」
「それは残念です」
「依頼発注から報告までの間、その期間は長かった。剣神は早い段階で勇者エメリーの正体に気付いたと言っていたがね」
「それはちょっと気になりますね。何ででしょう?」
「剣神からはこう言われた。『そろそろボンがそちらに到着する頃だろうから報告する』とな」
「…………イヅナさんは何故そんな事を?」
「可能な限り時間を稼いだんだろうな」
それは、ちょっと意外……でもないか。
そう思い苦笑する俺だった。
「いや、そうでもない」
十数分前にSSになったばかりですけど?
「我々はミケラルドがSSになるその時を待っていた」
あ、そっちの話ですか。
という事は狙いがあるのか。表情を見る限りかなり深刻そうである。
聞くだけ聞いてみるか。
「クルスには会ったな?」
それは、意外な問いかけだった。
「先程。その口調ですと、ご友人で?」
俺の質問にアーダインが一つ頷く。
「何、古くからの付き合いだ」
「何故クルス殿の名が?」
「聖騎士学校への冒険者招致の話は聞いただろう? それまでにクルスから「やってほしい」と頼まれた事がある。それがミケラルドへの依頼だ」
「……解せませんね。私以外にもSSの冒険者はいるでしょう。オベイルさんでも」
「いや、剣鬼にゃ荷が重い」
「SSSのイヅナさんでは?」
「相手が警戒してしまうな」
つまり、危ない橋だという事だ。
俺は溜め息を吐き言った。
「聞きましょう」
出来れば聞きたくないけどな。
「聖騎士学校への招致はランクAやランクSが対象だ。このランクAとランクSの選別を依頼したい」
「それこそ私が当てはまるとは思えないんですけど」
そもそもランクAやS冒険者たちとの面識自体が少ない。
剣聖レミリア、勇者エメリー、魔帝グラムスなんかは最早身内と言っていいが、それ以外にも多くの冒険者はいるだろう。
それこそランクAから十年隔ててランクSになった冒険者なんかも多数。
「向上心溢れるランクAやランクSの冒険者が、聖騎士学校への招致の話を受けた時、その冒険者はどうすると思う?」
「まぁ、タダで高ランカーの技や魔法を習うチャンスと考え、迷わず入学を決意するでしょうね」
「そこだ」
「へ? 金銭的な問題ですか?」
すると、アーダインは首を横に振った。
「違う。冒険者は必ずと言っていい程に集まる。当然、ギルドや法王国としては望むところだ。しかし、事はそう単純ではない。聖騎士学校の秘伝は表の光。しかし、それを裏に潜む闇が得た場合、これまでの均衡が崩れるとは思わないか?」
「っ! 闇ギルド……!」
「そういう事だ。冒険者ギルドに所属している闇人が必ずいる。中でも、実力を隠す者もいるはず。ミケラルドにはそういった闇の者を探し出して欲しい」
なるほど。つまり、俺であればそういった調査もある程度自由がきくという訳だ。だが、それは俺を深く知っている者にしかわからない事ではないか?
「参考までに、知名度……という点では私もそこそこ有名になってきたという自覚があるのですが、それでも私を選んだ理由をお伺いしたいですね」
そうなのだ。調査に赴けば、顔が割れている俺も、剣神イヅナ程ではないにしろ警戒されてしまう。それでも俺を選んだ理由がこのアーダインにはあるのだろう。
「それが、『剣鬼にゃ荷が重い』と言った理由だ」
「はて?」
「ミケラルド、我々の情報網を甘く見るな。お前が勇者エメリーに光魔法【歪曲の変化】を利用した事は知っている」
「あれ? バレちゃいました?」
「ほぉ、隠そうとしないのか」
「既に知っているそうなので、隠してもしょうがないかと。大方、勇者捜索依頼がリプトゥア国から入ったのでしょう」
「ギルド本部としては答える事は出来ないな」
「そして、それは指名依頼だった」
「面白い推論だ」
「私ならそうするだけですよ。何よりもギルドの信が厚い冒険者への依頼をとね。ならばその指名冒険者は簡単です」
「誰だというのかね?」
「……剣神イヅナと剣鬼オベイル」
アーダインは表情こそ変えなかったが、大きく鼻息をすんと吐いた。
「……何故そう思う?」
「え、だって二人から私の推薦があったんですよね? つまり、ごく最近二人がアーダインさんとギルド通信を通して話したって事。そして今回の依頼は人探し。リプトゥア国にいない勇者エメリーが行く場所は限られている。ガンドフか、リーガルか。はたまた法王国か。ならばその近くにいる優秀な冒険者に捜索を依頼するのが合理的。法王国のどなたかにも依頼は掛けたんでしょう。流石にその情報まではわかりませんが、顔見知りのその二人は予想出来ましたよ。で、イヅナさんは勇者エメリーの正体に気付いていた。国からの指名依頼があった以上、イヅナさんも断れない。そして依頼を受けた以上、ギルドへの報告義務がある。依頼発注から報告まで、そんなに間もなかったのでは?」
俺の質問を受け、アーダインがくすりと笑う。
「まるで依頼内容を覗き見たかのようだな」
「予想ですよ、予想」
「だが、一つだけ間違っていた点がある」
「それは残念です」
「依頼発注から報告までの間、その期間は長かった。剣神は早い段階で勇者エメリーの正体に気付いたと言っていたがね」
「それはちょっと気になりますね。何ででしょう?」
「剣神からはこう言われた。『そろそろボンがそちらに到着する頃だろうから報告する』とな」
「…………イヅナさんは何故そんな事を?」
「可能な限り時間を稼いだんだろうな」
それは、ちょっと意外……でもないか。
そう思い苦笑する俺だった。
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