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第一部
その289 総括ギルドマスター
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見上げる巨躯、刃物のように鋭い眼光、彫刻刀で彫ったかのような眉間の深い皺。白髪が交じったボサボサの黒髪。そして何よりでかい。剣鬼オベイルやシェンドのギルドマスター、ゲミッドもでかかったが、アーダインは何だろう……人間じゃない? 骨格からしてそんな感じがする。
身長が三メートルに近い人間なんて初めて見た。それでいて体幹がしっかりしている。やはりサイクロプス?
「ぶぁっはっはっはっはっはっは!」
俺の「SSS売って」発言に、思わず失笑したのか、アーダインは大きく笑った。小言男二人が倒れる程盛大に。
初対面にもかかわらず、涙を流す程笑うアーダインに、言った俺ですら面食らってしまう。
「はっはっはっは! ひっひ……くくくく……。あー、腹の底から笑ったのは久しぶりだぞミケラルド。なるほど、それがお前の地か」
「前例がない故に、不許可では納得できるものでもありません。前例がないからこそ自分がその前例になれればと思いまして」
「確かにその通りだ。だが、金銭でのランクのやり取りはギルドの管理者として認められるものではない。それがたとえランクGからFへの交渉であってもな」
厳しい目つき、というよりは固い意思のような目だ。
なるほど、法王クルスが信用するだけの人物に間違いないようだな。
それに強い。この法王国は強さのインフレでも起こしているのかってくらい強い人間が多い。
皇后アイビスはSS、法王クルスとこのアーダインは一線の剣神イヅナにこそ劣るものの、SSSの実力は持っているだろう。冒険者ギルドにもランクB前後の実力者がうようよといる。
武闘大会への参加者もリプトゥア国と法王国からが多かったそうだ。
ここら辺のモンスターの強さがわかってしまうな。
依頼のボードを見ても、倒した事のあるモンスターばかりであるが、ランクCとBの依頼が多い。そして何より、リーガル国ではひと月にあるかないかと言われたランクAの依頼が夜に残っている。
環境が人を強くする典型だな。
武力的にリーガル国やシェルフが、法王国やリプトゥア国に強く出られないのはこういった理由もあるのだろう。
「さて、ミケラルドよ。剣神イヅナに認められSSになったのだ。奥で説明をしよう」
ん? 認められ?
「え、もしかしてイヅナさんから連絡が?」
「剣鬼からもあったぞ」
「あっちゃー」
と、零してしまった俺を誰が責められよう。いや、ナタリーとか責めそうだけど。
アーダインはこう言っているのだ。
「報告があったぞ、剣鬼、剣神共に『ミケラルドを前に膝を突いた』と」
うん、今明確に言ったね。
アーダインは倒れ込んだ小言男二人を見ながらニヤリと笑った。
「もっと目を養え若人たちよ。その視線の先、見上げるは正に冒険者ギルドの頂点。ランクで実力の多寡を測るギルドとはいえ、ランクだけ見ている訳ではないと、今一度心に刻むのだ」
「「は、はい!」」
震える二人に言い聞かすように言ったアーダインは、振り返り俺を見る。
「奥だ」
アーダインが振り返った事による微風を顔に感じる俺。
この人、動く度に風を起こすな? 巨躯故に? いや、それもあるがそれ以上の魔力を感じる。風を纏ってるのか?
あぁ、簡易空調みたいなものか。この国南にあるだけに、他の国より少し暑いからな。なるほど、便利だな。
こんな感じかな?
「っ! ……見ただけで真似るか。これまで数多くの天才を見てきたが、お主は少し違うようだな、ミケラルド」
「これは……金になる!」
「感性はかなり違うようだがな、ははははは!」
「風魔法がお得意なようで?」
「冒険者時代は神風アーダインの名で通っていた」
確かに特攻しそうな顔をしている。あと身体。
モンスターが相手を人間と認識せずに戦っていた可能性もあるだろう。
アーダインが応接室の扉を開け、俺もその後ろに続く。
「ではこれは冒険者時代の名残と?」
「そういう訳でもない。ちょっとした鍛錬よ」
「鍛錬?」
ソファに座り聞くと、アーダインが親指で額を掻きながら言った。
「Z区分」
「っ!」
「これはミケラルドがランクSへ上がった時に、冒険者ギルドから説明があったと思う」
「えぇ」
「人間が遠く及ばない存在を総じて我々はそう呼んでいる。覚醒した勇者然り、魔王然り。そして世界各地で発見報告が相次ぐ特殊なモンスター然りだ」
特殊なモンスター……ね。
「これはそういった天災が訪れた時、怠けていた自分を後悔したくないためというエゴだよ」
「なるほど、だから鍛錬」
やっぱトップを走る人は皆違うな。
常に上を見続けている。俺も見習わなければ。
「SSに上がったのは事実でも、やはりミケラルドは依頼の消化数は少ない。これでは他のランクSからも不満が出るだろう」
「あー、やっぱり少ないんですね。そろそろだとは思ってたんですが、それでも少なかったか……」
「だが、その消化速度は他の冒険者とは圧倒的に違った。冒険者ギルドはこれを考慮したと明言しておこう。当然、剣神と剣鬼の推薦あっての事だ。これならば、多少の僻みやっかみはあろうとも、SSに上げて問題はないという判断だ」
「そういった話を聞くと、SSに上げてもいい人材が多くいそうな気もするんですが、そこらへんどうなんです?」
「そこでミケラルドにSS最初の依頼だ」
え、ダンジョン行きたいんだけど?
身長が三メートルに近い人間なんて初めて見た。それでいて体幹がしっかりしている。やはりサイクロプス?
「ぶぁっはっはっはっはっはっは!」
俺の「SSS売って」発言に、思わず失笑したのか、アーダインは大きく笑った。小言男二人が倒れる程盛大に。
初対面にもかかわらず、涙を流す程笑うアーダインに、言った俺ですら面食らってしまう。
「はっはっはっは! ひっひ……くくくく……。あー、腹の底から笑ったのは久しぶりだぞミケラルド。なるほど、それがお前の地か」
「前例がない故に、不許可では納得できるものでもありません。前例がないからこそ自分がその前例になれればと思いまして」
「確かにその通りだ。だが、金銭でのランクのやり取りはギルドの管理者として認められるものではない。それがたとえランクGからFへの交渉であってもな」
厳しい目つき、というよりは固い意思のような目だ。
なるほど、法王クルスが信用するだけの人物に間違いないようだな。
それに強い。この法王国は強さのインフレでも起こしているのかってくらい強い人間が多い。
皇后アイビスはSS、法王クルスとこのアーダインは一線の剣神イヅナにこそ劣るものの、SSSの実力は持っているだろう。冒険者ギルドにもランクB前後の実力者がうようよといる。
武闘大会への参加者もリプトゥア国と法王国からが多かったそうだ。
ここら辺のモンスターの強さがわかってしまうな。
依頼のボードを見ても、倒した事のあるモンスターばかりであるが、ランクCとBの依頼が多い。そして何より、リーガル国ではひと月にあるかないかと言われたランクAの依頼が夜に残っている。
環境が人を強くする典型だな。
武力的にリーガル国やシェルフが、法王国やリプトゥア国に強く出られないのはこういった理由もあるのだろう。
「さて、ミケラルドよ。剣神イヅナに認められSSになったのだ。奥で説明をしよう」
ん? 認められ?
「え、もしかしてイヅナさんから連絡が?」
「剣鬼からもあったぞ」
「あっちゃー」
と、零してしまった俺を誰が責められよう。いや、ナタリーとか責めそうだけど。
アーダインはこう言っているのだ。
「報告があったぞ、剣鬼、剣神共に『ミケラルドを前に膝を突いた』と」
うん、今明確に言ったね。
アーダインは倒れ込んだ小言男二人を見ながらニヤリと笑った。
「もっと目を養え若人たちよ。その視線の先、見上げるは正に冒険者ギルドの頂点。ランクで実力の多寡を測るギルドとはいえ、ランクだけ見ている訳ではないと、今一度心に刻むのだ」
「「は、はい!」」
震える二人に言い聞かすように言ったアーダインは、振り返り俺を見る。
「奥だ」
アーダインが振り返った事による微風を顔に感じる俺。
この人、動く度に風を起こすな? 巨躯故に? いや、それもあるがそれ以上の魔力を感じる。風を纏ってるのか?
あぁ、簡易空調みたいなものか。この国南にあるだけに、他の国より少し暑いからな。なるほど、便利だな。
こんな感じかな?
「っ! ……見ただけで真似るか。これまで数多くの天才を見てきたが、お主は少し違うようだな、ミケラルド」
「これは……金になる!」
「感性はかなり違うようだがな、ははははは!」
「風魔法がお得意なようで?」
「冒険者時代は神風アーダインの名で通っていた」
確かに特攻しそうな顔をしている。あと身体。
モンスターが相手を人間と認識せずに戦っていた可能性もあるだろう。
アーダインが応接室の扉を開け、俺もその後ろに続く。
「ではこれは冒険者時代の名残と?」
「そういう訳でもない。ちょっとした鍛錬よ」
「鍛錬?」
ソファに座り聞くと、アーダインが親指で額を掻きながら言った。
「Z区分」
「っ!」
「これはミケラルドがランクSへ上がった時に、冒険者ギルドから説明があったと思う」
「えぇ」
「人間が遠く及ばない存在を総じて我々はそう呼んでいる。覚醒した勇者然り、魔王然り。そして世界各地で発見報告が相次ぐ特殊なモンスター然りだ」
特殊なモンスター……ね。
「これはそういった天災が訪れた時、怠けていた自分を後悔したくないためというエゴだよ」
「なるほど、だから鍛錬」
やっぱトップを走る人は皆違うな。
常に上を見続けている。俺も見習わなければ。
「SSに上がったのは事実でも、やはりミケラルドは依頼の消化数は少ない。これでは他のランクSからも不満が出るだろう」
「あー、やっぱり少ないんですね。そろそろだとは思ってたんですが、それでも少なかったか……」
「だが、その消化速度は他の冒険者とは圧倒的に違った。冒険者ギルドはこれを考慮したと明言しておこう。当然、剣神と剣鬼の推薦あっての事だ。これならば、多少の僻みやっかみはあろうとも、SSに上げて問題はないという判断だ」
「そういった話を聞くと、SSに上げてもいい人材が多くいそうな気もするんですが、そこらへんどうなんです?」
「そこでミケラルドにSS最初の依頼だ」
え、ダンジョン行きたいんだけど?
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