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第一部
その286 法問
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法王がミナジリ共和国に訪問する。略して法問Yeah!
などとふざけている場合ではない。それにこれだと違う意味になってしまう。
え、今この人何て言ったの? 一国の王が他国へやってくる?
飛行機飛び交う現代地球ならまだしも、陸路でえっちらおっちらと大変なこの世界でそれを行うのは、余りにもおかしいのでは? 正直バカなんじゃないか?
戦争でもないのに王が動くとかおかしいでしょう。
いや、シェルフとリーガル国の同盟調印式みたいな重大な出来事ならまだしも、「水平線の向こうを見たい」ばりのノリでこの人は「ミナジリ共和国を見たい」とか言ってきた。
「現実的とは言えないのでは?」
「どこぞの元首は鼻歌交じりに法王国へ来たと思ったが?」
盲点だった……!
「わ、私には冒険者という側面がありますから。それに、今回はお忍びとも言えますし? し?」
「ほぉ? ならば私が冒険者ならば行っていいという事になるが?」
「だからと言って、ならないでくださいね」
「それを止める権利がミケラルド殿にあると?」
「ないですが、大騒ぎになりますね」
「然り。当然それは理解している。だから私が大々的に動けばいいだけの事よ」
何でそうなった?
「やはりそちらに利がないか……」
「いや、寧ろとんでもなく利にはなりますよ。国民も喜ぶでしょうし、対外的にも宣伝効果は絶大です。特に――あ、いや。何でもないです」
「そうだな、リプトゥア国には良い牽制になる」
あえてこちらが伏せたのに、この人は……。
「……言い切りましたね」
「リプトゥア国がリーガル国にちょっかいを出している事は当然私も知っている。リーガル国と交友の深いミナジリ共和国へ行けば、リーガル国としても安心出来るだろう。更にミナジリ共和国との友好を示せれば、リプトゥア国にとって脅威ともなる」
「何故そんなにもミナジリ共和国を? また魔皇ヒルダさんですか?」
言うと、法王クルスは静かに首を横に振った。
「これはなミケラルド殿、私の予見だよ」
またも言い切ったな。
「逆にミケラルド殿に聞きたい」
「……何でしょう?」
「一年の内に冒険者ランクSとなり、一年の内に商人ランクSとなり、一年の内に国とのパイプを作り、貴族となり、果ては建国が許される程の信と巨万の富を手に入れた男――ミケラルド・オード・ミナジリ。ミケラルド殿が私ならば、この男に投資しないと言うのかね?」
あれ? こうして聞いてると俺って凄いのでは?
いや、でも雷龍シュガリオンに勝てなかったし……まだまだだよなぁ?
が、投資という観点なら――、
「それは……まぁ、しますねぇ……」
「私が厚意だけでミナジリ共和国へ行くとでも?」
この厳格な顔は……さっき王女クリスに向けた顔だな。
「来ますよね?」
瞬間、法王クルスは掌で自身の視界を塞いだ。
「バレたか~」
やっぱり面白いなこの人。
本当に俺に似ている。
「私はねミケラルド殿」
「はい?」
「君のファンなのだよ。待て、何故そんなに距離を置く?」
「おっとすみません、つい。で、毎日新たな草をミナジリ共和国へよこしていると?」
「それはそれ、これはこれだ」
「一国の長なんですから、もう少し言葉を選んで欲しいのですが」
「長同士は喧嘩相手になると共に友人にもなる。私は先王からそう学んだのだよ。だが、考えてもみたまえ。先に述べた偉業、剣聖レミリア、魔帝グラムスが住み着き、剣鬼オベイルを倒し、剣神イヅナにも打ち勝つ強者だぞ? 武を嗜む者として興味を持たぬ方がおかしいと思わないか?」
それを当人に言われても困るものなのだが、言わんとしている事はわかる。
俺もリィたんを超えようと、雷龍シュガリオンを超えようと必死だからな。
雷龍シュガリオンには、恐怖も畏怖の感情を抱きつつ、当然それは興味という意味でもある。
それにしてもこの人、本当に色んな情報持ってるな。
まぁ、オベイルとの戦闘は多くの冒険者が観てただろうから、人づてで聞いたのだろう。
俺はこめかみをポリポリと掻き、法王クルスを見る。
「わかりました、詳しい日取りは冒険者ギルドを通じて決めましょう」
「おぉ、それはいいな。わかった、【アーダイン】には私から伝えておこう」
「……アーダイン?」
「知らぬか? 冒険者ギルド本部のトップを? 総括ギルドマスターとも呼ばれているな」
「あー……そういえば法王国は冒険者ギルドの本部があるんでしたね」
「そして闇ギルドもな」
やっぱり知っているのか、自分の国に闇ギルドがあるという事を。
「闇ギルドについてはどれくらい知っている?」
「リプトゥアに支部、法王国に本部があり亜人差別主義者、そして魔族と繋がりがある……という事までは」
「もう一つあろう?」
「へ?」
「先日、破壊魔パーシバルの法王国入りを確認した」
「っ! ついに来たのか……!」
「我々としても破壊魔パーシバルと闇ギルドの接触は回避したかった」
……したかった?
「我々の監視の目を潜り、やつは姿を晦ました。ここ数日の出来事だ」
「……では、パーシバルが闇ギルドに接触した可能性は高いと?」
静かに頷く法王クルス。
「貴国が冒険者アドバイザー業を始めたように、我が法王国では闇ギルドに対抗すべく大きな事業を取り入れるつもりだ」
「というと?」
「聖騎士学校への冒険者招致」
何だ、俺には関係ないやつだ。
ないよな?
などとふざけている場合ではない。それにこれだと違う意味になってしまう。
え、今この人何て言ったの? 一国の王が他国へやってくる?
飛行機飛び交う現代地球ならまだしも、陸路でえっちらおっちらと大変なこの世界でそれを行うのは、余りにもおかしいのでは? 正直バカなんじゃないか?
戦争でもないのに王が動くとかおかしいでしょう。
いや、シェルフとリーガル国の同盟調印式みたいな重大な出来事ならまだしも、「水平線の向こうを見たい」ばりのノリでこの人は「ミナジリ共和国を見たい」とか言ってきた。
「現実的とは言えないのでは?」
「どこぞの元首は鼻歌交じりに法王国へ来たと思ったが?」
盲点だった……!
「わ、私には冒険者という側面がありますから。それに、今回はお忍びとも言えますし? し?」
「ほぉ? ならば私が冒険者ならば行っていいという事になるが?」
「だからと言って、ならないでくださいね」
「それを止める権利がミケラルド殿にあると?」
「ないですが、大騒ぎになりますね」
「然り。当然それは理解している。だから私が大々的に動けばいいだけの事よ」
何でそうなった?
「やはりそちらに利がないか……」
「いや、寧ろとんでもなく利にはなりますよ。国民も喜ぶでしょうし、対外的にも宣伝効果は絶大です。特に――あ、いや。何でもないです」
「そうだな、リプトゥア国には良い牽制になる」
あえてこちらが伏せたのに、この人は……。
「……言い切りましたね」
「リプトゥア国がリーガル国にちょっかいを出している事は当然私も知っている。リーガル国と交友の深いミナジリ共和国へ行けば、リーガル国としても安心出来るだろう。更にミナジリ共和国との友好を示せれば、リプトゥア国にとって脅威ともなる」
「何故そんなにもミナジリ共和国を? また魔皇ヒルダさんですか?」
言うと、法王クルスは静かに首を横に振った。
「これはなミケラルド殿、私の予見だよ」
またも言い切ったな。
「逆にミケラルド殿に聞きたい」
「……何でしょう?」
「一年の内に冒険者ランクSとなり、一年の内に商人ランクSとなり、一年の内に国とのパイプを作り、貴族となり、果ては建国が許される程の信と巨万の富を手に入れた男――ミケラルド・オード・ミナジリ。ミケラルド殿が私ならば、この男に投資しないと言うのかね?」
あれ? こうして聞いてると俺って凄いのでは?
いや、でも雷龍シュガリオンに勝てなかったし……まだまだだよなぁ?
が、投資という観点なら――、
「それは……まぁ、しますねぇ……」
「私が厚意だけでミナジリ共和国へ行くとでも?」
この厳格な顔は……さっき王女クリスに向けた顔だな。
「来ますよね?」
瞬間、法王クルスは掌で自身の視界を塞いだ。
「バレたか~」
やっぱり面白いなこの人。
本当に俺に似ている。
「私はねミケラルド殿」
「はい?」
「君のファンなのだよ。待て、何故そんなに距離を置く?」
「おっとすみません、つい。で、毎日新たな草をミナジリ共和国へよこしていると?」
「それはそれ、これはこれだ」
「一国の長なんですから、もう少し言葉を選んで欲しいのですが」
「長同士は喧嘩相手になると共に友人にもなる。私は先王からそう学んだのだよ。だが、考えてもみたまえ。先に述べた偉業、剣聖レミリア、魔帝グラムスが住み着き、剣鬼オベイルを倒し、剣神イヅナにも打ち勝つ強者だぞ? 武を嗜む者として興味を持たぬ方がおかしいと思わないか?」
それを当人に言われても困るものなのだが、言わんとしている事はわかる。
俺もリィたんを超えようと、雷龍シュガリオンを超えようと必死だからな。
雷龍シュガリオンには、恐怖も畏怖の感情を抱きつつ、当然それは興味という意味でもある。
それにしてもこの人、本当に色んな情報持ってるな。
まぁ、オベイルとの戦闘は多くの冒険者が観てただろうから、人づてで聞いたのだろう。
俺はこめかみをポリポリと掻き、法王クルスを見る。
「わかりました、詳しい日取りは冒険者ギルドを通じて決めましょう」
「おぉ、それはいいな。わかった、【アーダイン】には私から伝えておこう」
「……アーダイン?」
「知らぬか? 冒険者ギルド本部のトップを? 総括ギルドマスターとも呼ばれているな」
「あー……そういえば法王国は冒険者ギルドの本部があるんでしたね」
「そして闇ギルドもな」
やっぱり知っているのか、自分の国に闇ギルドがあるという事を。
「闇ギルドについてはどれくらい知っている?」
「リプトゥアに支部、法王国に本部があり亜人差別主義者、そして魔族と繋がりがある……という事までは」
「もう一つあろう?」
「へ?」
「先日、破壊魔パーシバルの法王国入りを確認した」
「っ! ついに来たのか……!」
「我々としても破壊魔パーシバルと闇ギルドの接触は回避したかった」
……したかった?
「我々の監視の目を潜り、やつは姿を晦ました。ここ数日の出来事だ」
「……では、パーシバルが闇ギルドに接触した可能性は高いと?」
静かに頷く法王クルス。
「貴国が冒険者アドバイザー業を始めたように、我が法王国では闇ギルドに対抗すべく大きな事業を取り入れるつもりだ」
「というと?」
「聖騎士学校への冒険者招致」
何だ、俺には関係ないやつだ。
ないよな?
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