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第一部
その272 不死者の行進
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「また聖水か……」
四階層、五階層は一~三階層の復習みたいなモンスターばかり出現した。
ソルジャースケルトンとジェネラルゾンビが一緒に現れたり、ゴーレムアンデッドが二体いたり。だが、その間手に入れたのは【聖水】のみ。
一階層は外れだったが、それ以外全て聖水というのは納得がいかない。
未だお宝と呼べるものが出現しないのだ。
いや、まぁ聖水もお宝といえばお宝なのだが、自分で生成出来るモノが宝箱から出て来た時の虚無感は、出来れば味わいたくないのだ。
かつてマッキリーのダンジョンにこもった日々を思い出すようなダンジョンだが、マッキリーのダンジョンはランクD。こちらはAである。油断こそ出来ないが、いかんせんこちらとの差があり過ぎる。
ランクSのダンジョンになると、もう少し変わるのだろうか。いや、このダンジョンに潜って更に成長したから、もしかしたらランクSダンジョンでもこんな調子なのかもしれない。
法王国にはランクSダンジョンとランクSSのダンジョンがあるそうだ。潜る人間なんてほぼ皆無らしいが、俺としては是非おさえておきたいところだ。
がしかし、どのダンジョンでも気を抜かないのは変わらない。
これまでの経験からして、そろそろ新モンスターが現れてもいい頃合いだが?
「……マジか」
眼前に広がる大きな空間。
そこはまるで武闘大会のコロセウムのようだった。
俺がそこへ着くなり、背後の上階への階段が塞がれてしまった。
まさかランクAダンジョンで回避不可の戦闘があるとは思わなかった。
いや、ランクAダンジョンだからなのかもしれない。
我が物顔ですやすやと眠る大きな個体は、まさに獅子。
だが、尾には蛇、そして胴体は完全に山羊である。
そしてやっぱり漂う腐臭。やっぱりこいつもアンデッドか。
「いや……でもな、最初に見たいのはフレッシュな個体なんだけどなぁ……」
これはある意味贅沢な悩みなのだろう。
目の前にいるのはどう見てもキマイラ。しかしアンデッドである。
普通のキマイラを倒してからアンデッドが順序として正しいのだろうが、先に強者側と出会ってしまうのは、やっぱりこの世界がゲームなんかじゃない証明なのだろう。
俺の魔力にあてられてか、キマイラアンデッドが不機嫌そうに目を覚ます。
だが、俺を肉眼で捉えた途端、奴は警戒心を強めたのだ。
「流石にそのサイズだとこちらの強さはわかるか」
アンデッド化して頭がパーになってしまうのはお決まりだが、どうやらキマイラアンデッドには知性というものが多少残っているようだ。
「お前は剣かな」
そう呟きながら俺は闇空間の中からオリハルコンの打刀を取り出す。
「はいよ、ごめんなすって」
俺は走り、キマイラアンデッドを通り抜けながら階下への出口へと向かう。
背後で倒れるキマイラアンデッドの身体が倒れる音と、指をちゅぴと鳴らし、奴の血を舐める音が重なる。
手に入れた能力は【領域】と【超毒耐性】。というかあいつ毒なんて持ってたのか。だが、これで更に毒には強くなった。寧ろ毒では死ななくなったのではなかろうか?
それにしても【領域】ってのは一体何だ?
意味はわかるが、効果が全くわからない。これは後程調べよう。
「……で、また聖水か」
……答えを出すにはまだ早いが、可能性の一つとしてこの攻略法が挙げられるのではないか? ま、これで最後まで聖水が続くようならそういう事だ。ダンジョンを研究し、考証する事は別に悪い事じゃない。今後の糧になるのであれば何でもやるべきだろう。
そう思いながら七階層へ向かい、
「おー、今度は正しい順序だ」
と喜んだのも一瞬。
奴はいきなり手に持っていた岩石を全力投球してきた。
「あっぶね!?」
奴はリーガルダンジョンのボスモンスター――サイクロプスのアンデッド。
やっぱり順序って大事だよな。世界が俺に対する修正パッチを適用してくれたのかもしれない。
スキップ気味にサイクロプスアンデッドの腕を駆けのぼって行く。
本来、鼻歌交じりに倒すモンスターではないのだが、俺は本道ではなく邪道を歩んでいるのだから仕方ない。
「後半はやっぱり打刀が活躍してるなー」
サイクロプスアンデッドの血をペロリ。【視野大拡張】と【超撃耐性】をゲット。サイクロプスって感じの固有能力である。この二つはサイクロプスから得た【視野拡張】と【打撃耐性】の上位互換だろう。
徐々にこういった上位固有能力が手に入るモンスターが現れ始めたという事だ。つまり、俺はもっと強くなれる。そういう事だ。
七階層の宝箱は外れ。だが、きっと中身があったとしても聖水だったろう。
九階層と十階層は六~八階層の使いまわしモンスターだろうから、次の八階層が最後の新モンスターだろう。勿論、ここのボスモンスターを除いての話だ。
死者死者死者と視覚的にも嗅覚的にも辛いダンジョンだが、これが強くなるためなのだ。
皆のために、そして何より自分のためにも頑張ろう。
四階層、五階層は一~三階層の復習みたいなモンスターばかり出現した。
ソルジャースケルトンとジェネラルゾンビが一緒に現れたり、ゴーレムアンデッドが二体いたり。だが、その間手に入れたのは【聖水】のみ。
一階層は外れだったが、それ以外全て聖水というのは納得がいかない。
未だお宝と呼べるものが出現しないのだ。
いや、まぁ聖水もお宝といえばお宝なのだが、自分で生成出来るモノが宝箱から出て来た時の虚無感は、出来れば味わいたくないのだ。
かつてマッキリーのダンジョンにこもった日々を思い出すようなダンジョンだが、マッキリーのダンジョンはランクD。こちらはAである。油断こそ出来ないが、いかんせんこちらとの差があり過ぎる。
ランクSのダンジョンになると、もう少し変わるのだろうか。いや、このダンジョンに潜って更に成長したから、もしかしたらランクSダンジョンでもこんな調子なのかもしれない。
法王国にはランクSダンジョンとランクSSのダンジョンがあるそうだ。潜る人間なんてほぼ皆無らしいが、俺としては是非おさえておきたいところだ。
がしかし、どのダンジョンでも気を抜かないのは変わらない。
これまでの経験からして、そろそろ新モンスターが現れてもいい頃合いだが?
「……マジか」
眼前に広がる大きな空間。
そこはまるで武闘大会のコロセウムのようだった。
俺がそこへ着くなり、背後の上階への階段が塞がれてしまった。
まさかランクAダンジョンで回避不可の戦闘があるとは思わなかった。
いや、ランクAダンジョンだからなのかもしれない。
我が物顔ですやすやと眠る大きな個体は、まさに獅子。
だが、尾には蛇、そして胴体は完全に山羊である。
そしてやっぱり漂う腐臭。やっぱりこいつもアンデッドか。
「いや……でもな、最初に見たいのはフレッシュな個体なんだけどなぁ……」
これはある意味贅沢な悩みなのだろう。
目の前にいるのはどう見てもキマイラ。しかしアンデッドである。
普通のキマイラを倒してからアンデッドが順序として正しいのだろうが、先に強者側と出会ってしまうのは、やっぱりこの世界がゲームなんかじゃない証明なのだろう。
俺の魔力にあてられてか、キマイラアンデッドが不機嫌そうに目を覚ます。
だが、俺を肉眼で捉えた途端、奴は警戒心を強めたのだ。
「流石にそのサイズだとこちらの強さはわかるか」
アンデッド化して頭がパーになってしまうのはお決まりだが、どうやらキマイラアンデッドには知性というものが多少残っているようだ。
「お前は剣かな」
そう呟きながら俺は闇空間の中からオリハルコンの打刀を取り出す。
「はいよ、ごめんなすって」
俺は走り、キマイラアンデッドを通り抜けながら階下への出口へと向かう。
背後で倒れるキマイラアンデッドの身体が倒れる音と、指をちゅぴと鳴らし、奴の血を舐める音が重なる。
手に入れた能力は【領域】と【超毒耐性】。というかあいつ毒なんて持ってたのか。だが、これで更に毒には強くなった。寧ろ毒では死ななくなったのではなかろうか?
それにしても【領域】ってのは一体何だ?
意味はわかるが、効果が全くわからない。これは後程調べよう。
「……で、また聖水か」
……答えを出すにはまだ早いが、可能性の一つとしてこの攻略法が挙げられるのではないか? ま、これで最後まで聖水が続くようならそういう事だ。ダンジョンを研究し、考証する事は別に悪い事じゃない。今後の糧になるのであれば何でもやるべきだろう。
そう思いながら七階層へ向かい、
「おー、今度は正しい順序だ」
と喜んだのも一瞬。
奴はいきなり手に持っていた岩石を全力投球してきた。
「あっぶね!?」
奴はリーガルダンジョンのボスモンスター――サイクロプスのアンデッド。
やっぱり順序って大事だよな。世界が俺に対する修正パッチを適用してくれたのかもしれない。
スキップ気味にサイクロプスアンデッドの腕を駆けのぼって行く。
本来、鼻歌交じりに倒すモンスターではないのだが、俺は本道ではなく邪道を歩んでいるのだから仕方ない。
「後半はやっぱり打刀が活躍してるなー」
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死者死者死者と視覚的にも嗅覚的にも辛いダンジョンだが、これが強くなるためなのだ。
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