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第一部
その270 糧
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硬度の高いモンスターだらけか。
オベイルからの情報ではあるが、有効に活用していこう。勿論、本来であれば何の情報も無しにこういったダンジョンを攻略出来なければいけないのだ。だが、死んではならない立場というのがそれを邪魔する。
……中々難しいものだな。
痒くもない頭を掻きながら、俺は歩を進める。
ガンドフのダンジョンは難度の割にそう深くない。
総階数なんと十。三十階層あったリプトゥアのダンジョンの三分の一である。
当然、その理由もある。
ダンジョンの難度は、そのダンジョンの最高難度の対象モンスターで決まる。つまるところ、ダンジョンのボスモンスターの討伐難度だ。
だから、その道程にもその難度に近しいモンスターが出現する。
リプトゥアのダンジョンにはランクB~Aのモンスターが出現していた。だが、このガンドフのダンジョンにはランクAのモンスターしか出ないというから驚きだ。
だからこその十階層……というのもまた違うのかもしれない。ダンジョンという存在は自然発生と聞くし、もしそれに意図か何か含まれていたらわからないが、少なくとも十階層だというのには理由は付くものだ。
オベイルとの戦闘中、俺たちを囲んでいた冒険者たちが潜るのは……二階層まで。
ダンジョンランクと同等の冒険者たちが、総階数の五分の一しか潜れないのは何故か。
風魔法【探知】に反応。
前方三十、右側の通路からやって来る。
「……なるほどな、最初から群れで登場か!」
現れたのはソルジャースケルトン。
壁を這い、天井を這う。身軽という言葉では片付かない骨のモンスターである。
まるでゴキブリのように進んで来るソルジャースケルトン。跳びかかってくるソルジャースケルトンをメイスで叩くと同時、腕に違和感を覚える。
「ん、やっぱりちょっと硬いな」
確かに打刀であれば、少々手こずったかもしれない。
だが、こちらの武器はメイスである。全て斬るだけでは何事も上手くいかないものなのだ。
そして何より、こちとら荒ぶる剣鬼を沈めた吸血鬼である。
ランクA相手ではものの数ではないのだ。
「あー……なるほど」
がっしゃんがっしゃん骨を粉砕していると、ランクA冒険者が深層まで潜れない理由を目の当たりにする。
通路の上、下、右、左から現れるのは正にゴキブリ。いや、ソルジャースケルトンなのだが、どうにも止まる気配がない。それは動きの事ではない。出現の話だ。
一体どこから現れているのかと思う程、奴らの数は止めどない。
ダンジョンの安全装置でも外れているんじゃないだろうか。
「九十二、九十三、四、五、六! お前らで百だ!」
最後にまとめてメイスを振り、四体のソルジャースケルトンを倒すと、その波はようやく収まった。
しかしピッタリ百で止まるとは中々面白い仕掛けだ。まるで誰かが楽しんでダンジョンを設置したかのようだ。まぁ、そんな存在がいたとすれば、それ即ち神の御業と言う他ない。
「一階で百体……ランクA冒険者ならパーティでもここで引き返す可能性すらある」
ソルジャースケルトンの骨粉をペロリ。
覚えた固有能力は【壁歩き】と【鋼の身体】。
そしてお宝は…………、
「悲しすぎる……」
まさか空とはね。
肩を落としながら二階層へ降りると、次なる敵が待ち構えていた。
階下に降りてすぐモンスターが攻撃を仕掛けて来るとは珍しい。
見た目は騎士風の鎧を帯びたモンスター。だが、この腐臭は……間違いない。
人間の死者の装備を自分の物とするゾンビ、ジェネラルゾンビだ。
武器も防具もまちまち。剣に短剣に斧か。一体盾しか持っていない奴もいる。だが、ゾンビのくせに動きが機敏だ。
構えも様になっていて確かにランクAの実力を匂わせている。
数は四体。それ程多くはないが、ダンジョンの通路ではこの数が適当なのかもしれない。
「どりゃ!」
俺はジェネラルゾンビの懐に潜り込んで、一気にかち上げる。
天井にめり込む程の威力だが、それでもまだ生きているところを見るに、生命力が高い事が窺える。
「おっと」
一撃の威力もそこそこ。
単純な戦闘力ではB前後といったところか。
だが、それ以上のタフネスが奴らをランクAに押し上げている所以だろう。
払い、叩き、かち上げ、打ち落とす。
打刀での攻撃で防具の隙間を狙う手も考えたが、特定の部位に拘るのは危険な相手だ。このままメイスで戦うのが正解だろう。
「よし、こんなもんか」
一体当たり三~四発の攻撃に耐えうる防御力。不死者とはいえ、恐ろしい相手だ。さて、ここからまた増えるのだろうな。
通路の奥に目をやると、また四体のジェネラルゾンビがこちらにやって来た。
「…………ん?」
走り向かって来るジェネラルゾンビたちの装備に見覚えがある。
剣に短剣に斧。そして盾のみの奴。
これは偶然か? そう決めつけるのは早計だが、考えてみる価値はある。
もしかしたらこのダンジョンの謎は意外と簡単なのかもしれないな。
そう考えながら俺は、足下のジェネラルゾンビの血を舐めるのだった。
オベイルからの情報ではあるが、有効に活用していこう。勿論、本来であれば何の情報も無しにこういったダンジョンを攻略出来なければいけないのだ。だが、死んではならない立場というのがそれを邪魔する。
……中々難しいものだな。
痒くもない頭を掻きながら、俺は歩を進める。
ガンドフのダンジョンは難度の割にそう深くない。
総階数なんと十。三十階層あったリプトゥアのダンジョンの三分の一である。
当然、その理由もある。
ダンジョンの難度は、そのダンジョンの最高難度の対象モンスターで決まる。つまるところ、ダンジョンのボスモンスターの討伐難度だ。
だから、その道程にもその難度に近しいモンスターが出現する。
リプトゥアのダンジョンにはランクB~Aのモンスターが出現していた。だが、このガンドフのダンジョンにはランクAのモンスターしか出ないというから驚きだ。
だからこその十階層……というのもまた違うのかもしれない。ダンジョンという存在は自然発生と聞くし、もしそれに意図か何か含まれていたらわからないが、少なくとも十階層だというのには理由は付くものだ。
オベイルとの戦闘中、俺たちを囲んでいた冒険者たちが潜るのは……二階層まで。
ダンジョンランクと同等の冒険者たちが、総階数の五分の一しか潜れないのは何故か。
風魔法【探知】に反応。
前方三十、右側の通路からやって来る。
「……なるほどな、最初から群れで登場か!」
現れたのはソルジャースケルトン。
壁を這い、天井を這う。身軽という言葉では片付かない骨のモンスターである。
まるでゴキブリのように進んで来るソルジャースケルトン。跳びかかってくるソルジャースケルトンをメイスで叩くと同時、腕に違和感を覚える。
「ん、やっぱりちょっと硬いな」
確かに打刀であれば、少々手こずったかもしれない。
だが、こちらの武器はメイスである。全て斬るだけでは何事も上手くいかないものなのだ。
そして何より、こちとら荒ぶる剣鬼を沈めた吸血鬼である。
ランクA相手ではものの数ではないのだ。
「あー……なるほど」
がっしゃんがっしゃん骨を粉砕していると、ランクA冒険者が深層まで潜れない理由を目の当たりにする。
通路の上、下、右、左から現れるのは正にゴキブリ。いや、ソルジャースケルトンなのだが、どうにも止まる気配がない。それは動きの事ではない。出現の話だ。
一体どこから現れているのかと思う程、奴らの数は止めどない。
ダンジョンの安全装置でも外れているんじゃないだろうか。
「九十二、九十三、四、五、六! お前らで百だ!」
最後にまとめてメイスを振り、四体のソルジャースケルトンを倒すと、その波はようやく収まった。
しかしピッタリ百で止まるとは中々面白い仕掛けだ。まるで誰かが楽しんでダンジョンを設置したかのようだ。まぁ、そんな存在がいたとすれば、それ即ち神の御業と言う他ない。
「一階で百体……ランクA冒険者ならパーティでもここで引き返す可能性すらある」
ソルジャースケルトンの骨粉をペロリ。
覚えた固有能力は【壁歩き】と【鋼の身体】。
そしてお宝は…………、
「悲しすぎる……」
まさか空とはね。
肩を落としながら二階層へ降りると、次なる敵が待ち構えていた。
階下に降りてすぐモンスターが攻撃を仕掛けて来るとは珍しい。
見た目は騎士風の鎧を帯びたモンスター。だが、この腐臭は……間違いない。
人間の死者の装備を自分の物とするゾンビ、ジェネラルゾンビだ。
武器も防具もまちまち。剣に短剣に斧か。一体盾しか持っていない奴もいる。だが、ゾンビのくせに動きが機敏だ。
構えも様になっていて確かにランクAの実力を匂わせている。
数は四体。それ程多くはないが、ダンジョンの通路ではこの数が適当なのかもしれない。
「どりゃ!」
俺はジェネラルゾンビの懐に潜り込んで、一気にかち上げる。
天井にめり込む程の威力だが、それでもまだ生きているところを見るに、生命力が高い事が窺える。
「おっと」
一撃の威力もそこそこ。
単純な戦闘力ではB前後といったところか。
だが、それ以上のタフネスが奴らをランクAに押し上げている所以だろう。
払い、叩き、かち上げ、打ち落とす。
打刀での攻撃で防具の隙間を狙う手も考えたが、特定の部位に拘るのは危険な相手だ。このままメイスで戦うのが正解だろう。
「よし、こんなもんか」
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「…………ん?」
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これは偶然か? そう決めつけるのは早計だが、考えてみる価値はある。
もしかしたらこのダンジョンの謎は意外と簡単なのかもしれないな。
そう考えながら俺は、足下のジェネラルゾンビの血を舐めるのだった。
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