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第一部
その228 出陣、ミナジリ軍!
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「イヅナという男、中々強そうだったな? ミック」
「あの人の半径三メートル以内には入りたくないですね。そういえばジェイルさん、何か嬉しそうですね?」
「あの二人は知っているからな、懐かしくなっただけだ」
「え、アイビス皇后様以外に知り合いが?」
「件のイヅナという男だ。あの男の背中の十字傷は私が付けた」
何やってくれちゃってんの、この人?
剣神の背中なんて見る機会あるのだろうか?
「ジェイルが姿を晒せば、鬼と化すだろうな」
なんせ、元聖女アイビスの相方である勇者レックスを殺したのがジェイルだしな。
「リィたんが姿を晒せば、子羊と化すだろう」
アイビス皇后が鬼から子羊になる瞬間は見たいような気もする。
「それは面白そうだ」
リィたんと心は一緒。
「しかしミック、我々は縁があるな。あの男に……」
「そうですねぇ……」
「ドゥムガ、お仲間が沢山いるようだが?」
「リィたん、ありゃ仲間じゃねぇ。雑魚っていうんだ。ラジーンは護衛のがよかったんじゃねぇか? お仲間に会えただろうよ」
「ふん、我が目的はミケラルド様の護衛ただ一つよ」
我ながら中々面白い面子を揃えたのではなかろうか。
最前線に並び立つ五人は、ミケラルド、ジェイル、リィたん、ドゥムガ、ラジーンと全員ミナジリ領の戦力である。
冒険者ギルドの仕事を断った手前、魔帝グラムスと剣聖レミリアは参戦出来ないけどな。
そもそも雇用契約して色々制約を課しているグラムスはともかく、レミリアには転移魔法の事言えないしね。
「どうやらガンドフの軍も準備が完了したようだな」
ジェイルの言葉通り、背後で隊列を組んだガンドフ軍は決死の覚悟を顔に浮かべている。
「手はず通り、リィたんはドゥムガとチームを、ジェイルさんはラジーンとチームを組む事。ただし俺から二十メートル以上離れないようにね」
「本当に大丈夫なのでしょうか……?」
「案ずるなラジーン、今のミックはかつてお前と戦った時のミックではない」
リィたんに言われてはラジーンも黙るしかないだろう。
これを聞き、ドゥムガが頭を掻きながら言った。
「やれやれ、俺様と戦ってたのはつい数ヶ月前だろうが……」
これに対しジェイルが答える。
「お前も短期間で強くなったのだ。一族にその武を見せつけろ」
「当然、ぶちのめしてやるよ!」
ドゥムガだしな。一応釘刺しておくか。
「張り切ってるとこ悪いけど、あんまりやり過ぎないようにね。目的は魔族の撤退だから」
「へっ、そりゃどっちの魔族だ?」
「勿論向こう」
「ならぶちのめす他ねーよ」
俺の補助魔法と今のオリハルコン武具があれば、ドゥムガの戦力はSSに近くなるだろう。当然、ラジーンはSS以上の実力となり、ジェイルとリィたんは確実にZ区分の領域に入る。
ジェイルは元々SSS程の実力があるし、付与や補助魔法かけたら、そりゃZ区分に足突っ込むよなぁ。
で、俺がSSSの実力だと計算すれば、あら不思議。
眼前で吼えるドッグウォーリアやダイルレックスが可愛く見えてしまうのだ。
たとえ五千の軍隊だろうが、こちらが負ける要素は皆無。
可能であれば父の血を吸いたいところだが、おそらくそれは難しいだろう。
しかし、これに勝利すればミナジリの国家成立が確実になる。
そして高らかに宣言しよう。ミケラルド・オード・ミナジリの正体を……!
遠目に見えるスパニッシュが手を上げる。
「父上、申し訳ありませんが。開戦の合図は私がとります……!」
そう呟いた後、俺は大きく息を吸った。
「ミナジリ軍! 出陣!!」
たった五人のミナジリ軍が、五千の軍隊に向かい駆けた瞬間だった。
その足取りは軽く、まるで散歩に出掛けるかのようだった。
咆哮? 気合い? そんなものはない。彼らは静かに動いた。一人を除いて。
「だぁあああっはっはっはっはっは!! ダイルレックス種第一席のカイゼルはどこだぁあああ!!」
そう、一人を除いて。
全員への補助魔法――【パワーアップ】、【スピードアップ】、【ダークオーラ】、【ヘルメスの靴】、【疾風迅雷】。
遅れて動いたスパニッシュに、果たしてこれが防げるのだろうか。
「ミック! 合わせろ!」
「おう!」
「「はぁ!!」」
俺とリィたんが初手放ったのは風魔法【金剛斬】。
リィたんの一撃は数十体を巻き込み、俺の一撃は十数体を巻き込んだ。うーん、何ともアンバランスな合わせ技だ。とてもとても格好がつかない。
「ミック! 合わせろ!」
「はい、師匠!」
「「竜剣、竜巻!!」」
ジェイルがリィたんに対抗するかのように俺を巻き込んで放ったのは、竜剣の【竜巻】。
互いに十数体を巻き込み吹き飛ばしたところを見るに、成長しているのではなかろうか?
「そろそろ抜かれるな……!」
「抜かないと怒るくせに」
俺とジェイルはそんな小言を言い合った後、くすりと笑った。
ドゥムガの強烈なラリアットにより無数のモンスターが飛び、ラジーンの的確な急所攻撃は多くの魔族を巻き込んだ。
その死角をチームであるリィたんとジェイルが補う事で、俺も合わせ易くなる。
「えぇい押し返せ!」
スパニッシュの憤りが耳に届く。
だが、魔族であろうとなかろうと、いかんせん質が悪すぎる。
連れてきているドッグウォーリアとダイルレックスは平均ランクB~Aだが、それ以外のモンスターはD前後。
まるで数だけ揃えたかのようだ。まぁ、実際そうなんだろう。
この現状を見るに、魔族四天王の椅子は間もなくスパニッシュから離れる事になるだろう。それだけ差し迫った状況。それだけ彼は追い込まれているのだ。
「何とも嘆かわしい」
「あの人の半径三メートル以内には入りたくないですね。そういえばジェイルさん、何か嬉しそうですね?」
「あの二人は知っているからな、懐かしくなっただけだ」
「え、アイビス皇后様以外に知り合いが?」
「件のイヅナという男だ。あの男の背中の十字傷は私が付けた」
何やってくれちゃってんの、この人?
剣神の背中なんて見る機会あるのだろうか?
「ジェイルが姿を晒せば、鬼と化すだろうな」
なんせ、元聖女アイビスの相方である勇者レックスを殺したのがジェイルだしな。
「リィたんが姿を晒せば、子羊と化すだろう」
アイビス皇后が鬼から子羊になる瞬間は見たいような気もする。
「それは面白そうだ」
リィたんと心は一緒。
「しかしミック、我々は縁があるな。あの男に……」
「そうですねぇ……」
「ドゥムガ、お仲間が沢山いるようだが?」
「リィたん、ありゃ仲間じゃねぇ。雑魚っていうんだ。ラジーンは護衛のがよかったんじゃねぇか? お仲間に会えただろうよ」
「ふん、我が目的はミケラルド様の護衛ただ一つよ」
我ながら中々面白い面子を揃えたのではなかろうか。
最前線に並び立つ五人は、ミケラルド、ジェイル、リィたん、ドゥムガ、ラジーンと全員ミナジリ領の戦力である。
冒険者ギルドの仕事を断った手前、魔帝グラムスと剣聖レミリアは参戦出来ないけどな。
そもそも雇用契約して色々制約を課しているグラムスはともかく、レミリアには転移魔法の事言えないしね。
「どうやらガンドフの軍も準備が完了したようだな」
ジェイルの言葉通り、背後で隊列を組んだガンドフ軍は決死の覚悟を顔に浮かべている。
「手はず通り、リィたんはドゥムガとチームを、ジェイルさんはラジーンとチームを組む事。ただし俺から二十メートル以上離れないようにね」
「本当に大丈夫なのでしょうか……?」
「案ずるなラジーン、今のミックはかつてお前と戦った時のミックではない」
リィたんに言われてはラジーンも黙るしかないだろう。
これを聞き、ドゥムガが頭を掻きながら言った。
「やれやれ、俺様と戦ってたのはつい数ヶ月前だろうが……」
これに対しジェイルが答える。
「お前も短期間で強くなったのだ。一族にその武を見せつけろ」
「当然、ぶちのめしてやるよ!」
ドゥムガだしな。一応釘刺しておくか。
「張り切ってるとこ悪いけど、あんまりやり過ぎないようにね。目的は魔族の撤退だから」
「へっ、そりゃどっちの魔族だ?」
「勿論向こう」
「ならぶちのめす他ねーよ」
俺の補助魔法と今のオリハルコン武具があれば、ドゥムガの戦力はSSに近くなるだろう。当然、ラジーンはSS以上の実力となり、ジェイルとリィたんは確実にZ区分の領域に入る。
ジェイルは元々SSS程の実力があるし、付与や補助魔法かけたら、そりゃZ区分に足突っ込むよなぁ。
で、俺がSSSの実力だと計算すれば、あら不思議。
眼前で吼えるドッグウォーリアやダイルレックスが可愛く見えてしまうのだ。
たとえ五千の軍隊だろうが、こちらが負ける要素は皆無。
可能であれば父の血を吸いたいところだが、おそらくそれは難しいだろう。
しかし、これに勝利すればミナジリの国家成立が確実になる。
そして高らかに宣言しよう。ミケラルド・オード・ミナジリの正体を……!
遠目に見えるスパニッシュが手を上げる。
「父上、申し訳ありませんが。開戦の合図は私がとります……!」
そう呟いた後、俺は大きく息を吸った。
「ミナジリ軍! 出陣!!」
たった五人のミナジリ軍が、五千の軍隊に向かい駆けた瞬間だった。
その足取りは軽く、まるで散歩に出掛けるかのようだった。
咆哮? 気合い? そんなものはない。彼らは静かに動いた。一人を除いて。
「だぁあああっはっはっはっはっは!! ダイルレックス種第一席のカイゼルはどこだぁあああ!!」
そう、一人を除いて。
全員への補助魔法――【パワーアップ】、【スピードアップ】、【ダークオーラ】、【ヘルメスの靴】、【疾風迅雷】。
遅れて動いたスパニッシュに、果たしてこれが防げるのだろうか。
「ミック! 合わせろ!」
「おう!」
「「はぁ!!」」
俺とリィたんが初手放ったのは風魔法【金剛斬】。
リィたんの一撃は数十体を巻き込み、俺の一撃は十数体を巻き込んだ。うーん、何ともアンバランスな合わせ技だ。とてもとても格好がつかない。
「ミック! 合わせろ!」
「はい、師匠!」
「「竜剣、竜巻!!」」
ジェイルがリィたんに対抗するかのように俺を巻き込んで放ったのは、竜剣の【竜巻】。
互いに十数体を巻き込み吹き飛ばしたところを見るに、成長しているのではなかろうか?
「そろそろ抜かれるな……!」
「抜かないと怒るくせに」
俺とジェイルはそんな小言を言い合った後、くすりと笑った。
ドゥムガの強烈なラリアットにより無数のモンスターが飛び、ラジーンの的確な急所攻撃は多くの魔族を巻き込んだ。
その死角をチームであるリィたんとジェイルが補う事で、俺も合わせ易くなる。
「えぇい押し返せ!」
スパニッシュの憤りが耳に届く。
だが、魔族であろうとなかろうと、いかんせん質が悪すぎる。
連れてきているドッグウォーリアとダイルレックスは平均ランクB~Aだが、それ以外のモンスターはD前後。
まるで数だけ揃えたかのようだ。まぁ、実際そうなんだろう。
この現状を見るに、魔族四天王の椅子は間もなくスパニッシュから離れる事になるだろう。それだけ差し迫った状況。それだけ彼は追い込まれているのだ。
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