上 下
213 / 566
第一部

その212 リプトゥアのダンジョン2

しおりを挟む
「よっ! ほっ! このっ! っと……はは、こりゃリィたん驚くぞ……!」

 階下に降りながら得られた固有能力を試す事数分。
【静音】は文字通りの能力だった。どういう理屈かはわからないが、俺の周囲数センチ程で発生する音が全て静音化されている。足音から衣擦れ、ノイズに近いものはこれに適用される。当然、強く足踏みをするとそこそこの足音は聞こえるものの、意図しない限りは耳をすまさない限り聞こえる事はないだろう。
【怪力】に関しても考え得る能力だった。これによりリィたんとのガチンコバトルも多少は長持ちするのではないか? と、思いたいミケラルドである。
 そして今現在試していたのが【瞬歩】。
 キラービーエースから頂いたこの能力により、十メートル程の距離は瞬間移動とも言える速度で駆けられる。しかも、連発可能という事で、こちらが事故らないか不安になる程の有能な能力である。
 因みに【強酸】と【猛毒】は試す気になれない。
【強酸】を吐いた瞬間に、歯が全て溶けるなんて考えたくもないし、毒は吐いても毒を持ちたくない系の純情男子がこのミケラルドなのだ。

「うーん、当たりがないなー」

 やはり五階層毎にモンスターが変わるようで、六階層から十階層はエビルゾンビとキラービーエースの二種が現れる。
 並行してアイテムも変わる訳でもなく、【豪魔の指輪】と【疾風の指輪】を手に入れた以外は、これまでとダブったアイテムばかりだった。
 次なる階層十一階層へ到着すると、それはいきなり現れた。
 跳びかかってきたのはミケラルド二人分程の体躯の大きな狼。
 一瞬ダイアウルフかと思ったが、そもそもサイズが違い過ぎる。
 こいつがアレだな、キッカが言ってた【銀狼ぎんろう】だな。
 懐に潜り込み俺の首を噛み千切ろうとする銀狼を、優しく抱く。

「おぉよしよし。うんうんよし……よし」

 と言いながら、銀狼の首をキュってしたらそのままあちらの世界へ逝ってしまわれた。
 犬派の私としては非常に心苦しいが、相手はモンスターという事で心を落ち着ける他あるまい。
 銀色の身体の銀狼……ならばここにいるもう一種は――つぉ!?

「あっぶね!」

 通路の奥から見えた一瞬の閃光。
 それが一瞬にして俺の前を通過していったのだ。

「強力なブレス!? なんつーモンスターだよ!?」

 遠方に見えたのは金色の体毛をした銀狼にうり二つの狼。

「なるほど、あれが【金狼きんろう】か」

 そう思うや否や、金狼は姿を隠してしまった。
 直後、俺の下へ銀狼がまた二匹現れる。

「噛みつきと引っ掻きしかないだろ、お前らっ!」

 打刀うちがたなで真っ二つの銀狼たち。
 その隙間、、から再度見えるブレスの光。

「にゃろう、厄介な……」

 打刀うちがたなに付着した血をペロリと舐め金狼を追うも、ここは奴のフィールド。
 中々追いつく事は出来ない。【縦横駆け】と【地形無視移動】、それに【壁走り】を発動させ金狼との距離を縮める俺。

「追いついたぞ金色わんちゃんめ!」

 金狼を行き止まりの壁際に追い詰めた俺がそう言うと、奴がゆっくり振り返る。
 すると金狼は、ニヤリと笑ったように見えた。もしやこれは……――、

「罠!?」

 俺が後へ振り返ると、通路奥では二匹の金狼が口を開いていた。
 追い詰めた金狼もまた口を開き、前門の狼、後門の狼と……虎が迷子の窮地状態。

「はっ!」

 毎度お馴染みの土塊つちくれ操作により後方のブレスを防ぐ。
 そして、【瞬歩】で金狼との距離を一瞬で縮め、成敗。
 だが、軋んで音を立てる土壁は、金狼たちの二発目のブレスにより打ち抜かれた。

「ふっ!」

 天井に張り付いた俺はそのまま駆け、自らのブレスで視界を失ってる金狼たちの背後へ回り込む。

「ガァ!?」
「グルゥ!?」

 倒し終えたのも束の間、また背後から銀狼が迫って来た。

「なるほど、流石ランクAダンジョン。攻略のしがいがあるじゃん」

 ◇◆◇ ◆◇◆

「何だこれ?」

 宝箱が出現し罠を解除すると、俺の眼前には真っ白なベストが現れた。

「へぇ、これが【防魔のジレ】ね」

 まるでおっさんの時代感覚を下に見るような名称である。いいじゃないかベストで。
 これを着れば魔法耐性が上がり、攻撃魔法に強くなるとか。
 最近の相手はもっぱらリィたんだし、あってないようなものだが、着ておいて損はないだろう。

「お、おぉ? おっ?」

【防魔のジレ】を着るなり、その色は白から透明へと変わり、身体から消えていってしまったのだ。

「へぇ、キッカが言ってたのはこういう事か」

 消耗品装備というアイテムで、一度着れば効果は永続するものの世界から消失するのだという。まぁこれで俺の防御能力も上がった訳だ。
 金狼と銀狼からの固有能力も良さそうなのだし、次の階層で早速使ってみる事にしよう。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

最弱テイマーの成り上がり~役立たずテイマーは実は神獣を従える【神獣使い】でした。今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティーに所属するテイマーのカイトは使えない役立たずだからと追放される。 さらにパーティーの汚点として高難易度ダンジョンに転移され、魔物にカイトを始末させようとする。 魔物に襲われ絶体絶命のピンチをむかえたカイトは、秘められた【神獣使い】の力を覚醒させる。 神に匹敵する力を持つ神獣と契約することでスキルをゲット。さらにフェンリルと契約し、最強となる。 その一方で、パーティーメンバーたちは、カイトを追放したことで没落の道を歩むことになるのであった。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

処理中です...