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第一部
その212 リプトゥアのダンジョン2
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「よっ! ほっ! このっ! っと……はは、こりゃリィたん驚くぞ……!」
階下に降りながら得られた固有能力を試す事数分。
【静音】は文字通りの能力だった。どういう理屈かはわからないが、俺の周囲数センチ程で発生する音が全て静音化されている。足音から衣擦れ、ノイズに近いものはこれに適用される。当然、強く足踏みをするとそこそこの足音は聞こえるものの、意図しない限りは耳をすまさない限り聞こえる事はないだろう。
【怪力】に関しても考え得る能力だった。これによりリィたんとのガチンコバトルも多少は長持ちするのではないか? と、思いたいミケラルドである。
そして今現在試していたのが【瞬歩】。
キラービーエースから頂いたこの能力により、十メートル程の距離は瞬間移動とも言える速度で駆けられる。しかも、連発可能という事で、こちらが事故らないか不安になる程の有能な能力である。
因みに【強酸】と【猛毒】は試す気になれない。
【強酸】を吐いた瞬間に、歯が全て溶けるなんて考えたくもないし、毒は吐いても毒を持ちたくない系の純情男子がこのミケラルドなのだ。
「うーん、当たりがないなー」
やはり五階層毎にモンスターが変わるようで、六階層から十階層はエビルゾンビとキラービーエースの二種が現れる。
並行してアイテムも変わる訳でもなく、【豪魔の指輪】と【疾風の指輪】を手に入れた以外は、これまでとダブったアイテムばかりだった。
次なる階層十一階層へ到着すると、それはいきなり現れた。
跳びかかってきたのはミケラルド二人分程の体躯の大きな狼。
一瞬ダイアウルフかと思ったが、そもそもサイズが違い過ぎる。
こいつがアレだな、キッカが言ってた【銀狼】だな。
懐に潜り込み俺の首を噛み千切ろうとする銀狼を、優しく抱く。
「おぉよしよし。うんうんよし……よし」
と言いながら、銀狼の首をキュってしたらそのままあちらの世界へ逝ってしまわれた。
犬派の私としては非常に心苦しいが、相手はモンスターという事で心を落ち着ける他あるまい。
銀色の身体の銀狼……ならばここにいるもう一種は――つぉ!?
「あっぶね!」
通路の奥から見えた一瞬の閃光。
それが一瞬にして俺の前を通過していったのだ。
「強力なブレス!? なんつーモンスターだよ!?」
遠方に見えたのは金色の体毛をした銀狼にうり二つの狼。
「なるほど、あれが【金狼】か」
そう思うや否や、金狼は姿を隠してしまった。
直後、俺の下へ銀狼がまた二匹現れる。
「噛みつきと引っ掻きしかないだろ、お前らっ!」
打刀で真っ二つの銀狼たち。
その隙間から再度見えるブレスの光。
「にゃろう、厄介な……」
打刀に付着した血をペロリと舐め金狼を追うも、ここは奴のフィールド。
中々追いつく事は出来ない。【縦横駆け】と【地形無視移動】、それに【壁走り】を発動させ金狼との距離を縮める俺。
「追いついたぞ金色わんちゃんめ!」
金狼を行き止まりの壁際に追い詰めた俺がそう言うと、奴がゆっくり振り返る。
すると金狼は、ニヤリと笑ったように見えた。もしやこれは……――、
「罠!?」
俺が後へ振り返ると、通路奥では二匹の金狼が口を開いていた。
追い詰めた金狼もまた口を開き、前門の狼、後門の狼と……虎が迷子の窮地状態。
「はっ!」
毎度お馴染みの土塊操作により後方のブレスを防ぐ。
そして、【瞬歩】で金狼との距離を一瞬で縮め、成敗。
だが、軋んで音を立てる土壁は、金狼たちの二発目のブレスにより打ち抜かれた。
「ふっ!」
天井に張り付いた俺はそのまま駆け、自らのブレスで視界を失ってる金狼たちの背後へ回り込む。
「ガァ!?」
「グルゥ!?」
倒し終えたのも束の間、また背後から銀狼が迫って来た。
「なるほど、流石ランクAダンジョン。攻略のしがいがあるじゃん」
◇◆◇ ◆◇◆
「何だこれ?」
宝箱が出現し罠を解除すると、俺の眼前には真っ白なベストが現れた。
「へぇ、これが【防魔のジレ】ね」
まるでおっさんの時代感覚を下に見るような名称である。いいじゃないかベストで。
これを着れば魔法耐性が上がり、攻撃魔法に強くなるとか。
最近の相手はもっぱらリィたんだし、あってないようなものだが、着ておいて損はないだろう。
「お、おぉ? おっ?」
【防魔のジレ】を着るなり、その色は白から透明へと変わり、身体から消えていってしまったのだ。
「へぇ、キッカが言ってたのはこういう事か」
消耗品装備というアイテムで、一度着れば効果は永続するものの世界から消失するのだという。まぁこれで俺の防御能力も上がった訳だ。
金狼と銀狼からの固有能力も良さそうなのだし、次の階層で早速使ってみる事にしよう。
階下に降りながら得られた固有能力を試す事数分。
【静音】は文字通りの能力だった。どういう理屈かはわからないが、俺の周囲数センチ程で発生する音が全て静音化されている。足音から衣擦れ、ノイズに近いものはこれに適用される。当然、強く足踏みをするとそこそこの足音は聞こえるものの、意図しない限りは耳をすまさない限り聞こえる事はないだろう。
【怪力】に関しても考え得る能力だった。これによりリィたんとのガチンコバトルも多少は長持ちするのではないか? と、思いたいミケラルドである。
そして今現在試していたのが【瞬歩】。
キラービーエースから頂いたこの能力により、十メートル程の距離は瞬間移動とも言える速度で駆けられる。しかも、連発可能という事で、こちらが事故らないか不安になる程の有能な能力である。
因みに【強酸】と【猛毒】は試す気になれない。
【強酸】を吐いた瞬間に、歯が全て溶けるなんて考えたくもないし、毒は吐いても毒を持ちたくない系の純情男子がこのミケラルドなのだ。
「うーん、当たりがないなー」
やはり五階層毎にモンスターが変わるようで、六階層から十階層はエビルゾンビとキラービーエースの二種が現れる。
並行してアイテムも変わる訳でもなく、【豪魔の指輪】と【疾風の指輪】を手に入れた以外は、これまでとダブったアイテムばかりだった。
次なる階層十一階層へ到着すると、それはいきなり現れた。
跳びかかってきたのはミケラルド二人分程の体躯の大きな狼。
一瞬ダイアウルフかと思ったが、そもそもサイズが違い過ぎる。
こいつがアレだな、キッカが言ってた【銀狼】だな。
懐に潜り込み俺の首を噛み千切ろうとする銀狼を、優しく抱く。
「おぉよしよし。うんうんよし……よし」
と言いながら、銀狼の首をキュってしたらそのままあちらの世界へ逝ってしまわれた。
犬派の私としては非常に心苦しいが、相手はモンスターという事で心を落ち着ける他あるまい。
銀色の身体の銀狼……ならばここにいるもう一種は――つぉ!?
「あっぶね!」
通路の奥から見えた一瞬の閃光。
それが一瞬にして俺の前を通過していったのだ。
「強力なブレス!? なんつーモンスターだよ!?」
遠方に見えたのは金色の体毛をした銀狼にうり二つの狼。
「なるほど、あれが【金狼】か」
そう思うや否や、金狼は姿を隠してしまった。
直後、俺の下へ銀狼がまた二匹現れる。
「噛みつきと引っ掻きしかないだろ、お前らっ!」
打刀で真っ二つの銀狼たち。
その隙間から再度見えるブレスの光。
「にゃろう、厄介な……」
打刀に付着した血をペロリと舐め金狼を追うも、ここは奴のフィールド。
中々追いつく事は出来ない。【縦横駆け】と【地形無視移動】、それに【壁走り】を発動させ金狼との距離を縮める俺。
「追いついたぞ金色わんちゃんめ!」
金狼を行き止まりの壁際に追い詰めた俺がそう言うと、奴がゆっくり振り返る。
すると金狼は、ニヤリと笑ったように見えた。もしやこれは……――、
「罠!?」
俺が後へ振り返ると、通路奥では二匹の金狼が口を開いていた。
追い詰めた金狼もまた口を開き、前門の狼、後門の狼と……虎が迷子の窮地状態。
「はっ!」
毎度お馴染みの土塊操作により後方のブレスを防ぐ。
そして、【瞬歩】で金狼との距離を一瞬で縮め、成敗。
だが、軋んで音を立てる土壁は、金狼たちの二発目のブレスにより打ち抜かれた。
「ふっ!」
天井に張り付いた俺はそのまま駆け、自らのブレスで視界を失ってる金狼たちの背後へ回り込む。
「ガァ!?」
「グルゥ!?」
倒し終えたのも束の間、また背後から銀狼が迫って来た。
「なるほど、流石ランクAダンジョン。攻略のしがいがあるじゃん」
◇◆◇ ◆◇◆
「何だこれ?」
宝箱が出現し罠を解除すると、俺の眼前には真っ白なベストが現れた。
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これを着れば魔法耐性が上がり、攻撃魔法に強くなるとか。
最近の相手はもっぱらリィたんだし、あってないようなものだが、着ておいて損はないだろう。
「お、おぉ? おっ?」
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「へぇ、キッカが言ってたのはこういう事か」
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