177 / 566
第一部
その176 波乱
しおりを挟む
幸い、俺が魔法を発動した事に気付いた人間はそう多くはなかった。
ランクAの戦士系冒険者はまず気付かない。魔法に精通している高ランク冒険者は気付いただろうけどな。
どうやら観客たちは『盛り上がりが最高潮に達したと見計らったパーシバルが自らの魔法で防いだ』という認識になったらしい。彼は初手土塊操作を使ったから……その刷り込みなのであればそれはそれでいい。
「ミック、行け。あれ程の深手だ。おそらくレミリアを回復出来るのはミックしかいない」
レミリアの足、それと腹部も何ヶ所か雷の槍がかすめていたようだ。
血塗れになって倒れるレミリアをギルド職員と思しき人間が運んで行く。
「行ってくる!」
俺は言いながら駆け、レミリアが搬送されたであろう救護室へ向かった。
武闘大会が始まった直後だというのに……これが波乱の幕開けとならなければいいが。
「失礼! こちらにレミリアさんは運ばれましたか!?」
救護室に入ると、そこには見覚えのある魔法使いがおり、レミリアの重傷を前に顔を歪めていた。
「こ、こんな怪我……私には治せません……!」
涙目になっている女を横目に、俺はレミリアの症状を見た。
血が止まらず意識もない。あれはかなりまずい状態だ。
「き、君っ?」
「冒険者ランクAのミケラルドです。回復魔法には自信があります。是非彼女を」
レミリアを搬送したであろう男のギルド職員が俺を止めようとしたが、簡潔な自己紹介と要点を伝えると、彼は制止の腕を緩めた。
「失礼します」
俺は腰の打刀を置き、魔法使いの隣へ向かった。
「無理です! これほどの重傷、聖女様でもない限り――」
「――キッカ、いいからそこを離れて」
「え、私……貴方と会った事――…………はい」
虚ろになっていったキッカは、黙って一歩引き、俺に全てを譲ったのだった。
そう、彼女の名前はキッカ。
ナタリーをリーガル国へ送る途中、俺たちを襲った冒険者パーティにいた、僧侶風の女。彼女こそがキッカだったのだ。当然、キッカの血を身体に取り込んでいた俺の言う事だ。【呪縛】の効果があれば、彼女も押し黙ってしまう。
ギルド職員の反応は気になるところだが、それは今気にしている場合ではない。
「酷いな……」
後数分遅れていたら、彼女の命は助からなかっただろう。
「……!」
俺は天使の囁きを発動し、彼女の回復を図った。
「これは……!」
みるみる塞がる傷に、ギルド職員が驚きを露わにする。
「あなた、お名前は?」
俺はギルド職員にそう聞いた。
「え、リ、リプトゥア国の冒険者ギルド職員のラスターです」
人の良さそうな短髪の男――ラスター。
リプトゥア国のギルド職員に顔を売る機会と思えばいいか。
「ラスターさん、ここで見た事については全て極秘事項という事で宜しくお願いします」
「え?」
「これはランクA冒険者でありリーガル国の王商、そして子爵であるミケラルド・オード・ミナジリからのあなた個人への要請です」
使える手札は何でも使う。それがこの場の正しい選択。
何の罪もない男の血を奪おうという気にはならないしな。
……レティシアの件は俺の中で特例という事にしておこう。
「は、はい! かしこまりました!」
どうやら、ギルド職員であれば俺の噂くらいは知っているようだ。
余り利用したくないものではあるが、今回は仕方がないだろう。
「うぅ…………き、君は……」
気付いたのか、震える瞳で俺を見たレミリア。
「もう大丈夫、安心してください」
全ての治癒を終えた俺の声を聞き、彼女はまた糸が切れたかのようにプツンと意識を失ったのだった。
◇◆◇ ◆◇◆
「「この度は、本当にありがとうございました」」
救護室の外でラスターとキッカに頭を下げられた俺。
キッカの記憶だけはほんの少しいじらせてもらった。
曖昧な記憶ではあるが、俺とはかつて「回復魔法談義で盛り上がった仲」という事になっている。
「いえ、彼女が助かっただけで満足です」
率直な感想を言うと、ラスターが心配そうに俺を見る。
「しかし、この後試合があるでしょう。あれ程の魔力を使って――」
「――今日は一試合だけだから大丈夫ですよ。寝れば魔力を回復しますし、マナポーションだってありますからご安心を」
「そ、そうですか……で、ではリプトゥア国にいらっしゃった時は是非冒険者ギルドへ! 誠心誠意対応させて頂きます」
「助かります」
俺はラスターに微笑んで言うと、背後から小さな足音が近付いて来た。
「あれれー? その様子じゃレミリアは無事だったんだ~」
どの口が言うか、このガキんちょは……。
「パーシバルさん……今治療が終わったところです」
「ふーん、やっぱり君が助けたんだね」
見られたくないところを見られてしまったか。いや、もしかしてこいつ……。
「もしや、彼女の治療をなさりに?」
「ううん? 確認しに来ただけだよ。君の実力がどれ程のものかをね」
にゃろう、やはり俺の力を試したって事か。
「僕ね、相手の魔力を見ればどういう魔法を使えるか何となくわかっちゃうんだ~。だから、君が高位の回復魔法が使える事もある程度わかってたんだよ」
「……私が試合を止める事もわかっていたと?」
「君とリィたんだっけ? 二人のどちらかが止めるって事は想定済みさ。土塊操作を使えたって事は、土魔法も使うんだね。それは気付かなかったな~」
とぼけた言い方だが、これが本当とは限らない。
「では、レミリアさんはそれだけのために重傷を負ったというのですか?」
「ん? 違うよ?」
何か理由があったというのか。
「だってさ、さっきあいつ僕の事を止めたじゃん」
「……は?」
こいつは今、何を言ったんだ?
「せっかく面白いところだったのにね~――あ、君には感謝してるよ。リィたんとの勝負が今から楽しみで仕方ないよ、あははははっ」
悪気などどこにもない。
悪意などどこにもない。
彼は……こいつは……奴は、目の前にいた障害が邪魔だったというだけで、レミリアを大怪我させたと言った。……言ったんだ。
「虫は邪魔なだけ。あんなのは潰してポイだよ」
「っ!!」
瞬間、俺は自分の魔力を抑える事が出来なくなった。
ランクAの戦士系冒険者はまず気付かない。魔法に精通している高ランク冒険者は気付いただろうけどな。
どうやら観客たちは『盛り上がりが最高潮に達したと見計らったパーシバルが自らの魔法で防いだ』という認識になったらしい。彼は初手土塊操作を使ったから……その刷り込みなのであればそれはそれでいい。
「ミック、行け。あれ程の深手だ。おそらくレミリアを回復出来るのはミックしかいない」
レミリアの足、それと腹部も何ヶ所か雷の槍がかすめていたようだ。
血塗れになって倒れるレミリアをギルド職員と思しき人間が運んで行く。
「行ってくる!」
俺は言いながら駆け、レミリアが搬送されたであろう救護室へ向かった。
武闘大会が始まった直後だというのに……これが波乱の幕開けとならなければいいが。
「失礼! こちらにレミリアさんは運ばれましたか!?」
救護室に入ると、そこには見覚えのある魔法使いがおり、レミリアの重傷を前に顔を歪めていた。
「こ、こんな怪我……私には治せません……!」
涙目になっている女を横目に、俺はレミリアの症状を見た。
血が止まらず意識もない。あれはかなりまずい状態だ。
「き、君っ?」
「冒険者ランクAのミケラルドです。回復魔法には自信があります。是非彼女を」
レミリアを搬送したであろう男のギルド職員が俺を止めようとしたが、簡潔な自己紹介と要点を伝えると、彼は制止の腕を緩めた。
「失礼します」
俺は腰の打刀を置き、魔法使いの隣へ向かった。
「無理です! これほどの重傷、聖女様でもない限り――」
「――キッカ、いいからそこを離れて」
「え、私……貴方と会った事――…………はい」
虚ろになっていったキッカは、黙って一歩引き、俺に全てを譲ったのだった。
そう、彼女の名前はキッカ。
ナタリーをリーガル国へ送る途中、俺たちを襲った冒険者パーティにいた、僧侶風の女。彼女こそがキッカだったのだ。当然、キッカの血を身体に取り込んでいた俺の言う事だ。【呪縛】の効果があれば、彼女も押し黙ってしまう。
ギルド職員の反応は気になるところだが、それは今気にしている場合ではない。
「酷いな……」
後数分遅れていたら、彼女の命は助からなかっただろう。
「……!」
俺は天使の囁きを発動し、彼女の回復を図った。
「これは……!」
みるみる塞がる傷に、ギルド職員が驚きを露わにする。
「あなた、お名前は?」
俺はギルド職員にそう聞いた。
「え、リ、リプトゥア国の冒険者ギルド職員のラスターです」
人の良さそうな短髪の男――ラスター。
リプトゥア国のギルド職員に顔を売る機会と思えばいいか。
「ラスターさん、ここで見た事については全て極秘事項という事で宜しくお願いします」
「え?」
「これはランクA冒険者でありリーガル国の王商、そして子爵であるミケラルド・オード・ミナジリからのあなた個人への要請です」
使える手札は何でも使う。それがこの場の正しい選択。
何の罪もない男の血を奪おうという気にはならないしな。
……レティシアの件は俺の中で特例という事にしておこう。
「は、はい! かしこまりました!」
どうやら、ギルド職員であれば俺の噂くらいは知っているようだ。
余り利用したくないものではあるが、今回は仕方がないだろう。
「うぅ…………き、君は……」
気付いたのか、震える瞳で俺を見たレミリア。
「もう大丈夫、安心してください」
全ての治癒を終えた俺の声を聞き、彼女はまた糸が切れたかのようにプツンと意識を失ったのだった。
◇◆◇ ◆◇◆
「「この度は、本当にありがとうございました」」
救護室の外でラスターとキッカに頭を下げられた俺。
キッカの記憶だけはほんの少しいじらせてもらった。
曖昧な記憶ではあるが、俺とはかつて「回復魔法談義で盛り上がった仲」という事になっている。
「いえ、彼女が助かっただけで満足です」
率直な感想を言うと、ラスターが心配そうに俺を見る。
「しかし、この後試合があるでしょう。あれ程の魔力を使って――」
「――今日は一試合だけだから大丈夫ですよ。寝れば魔力を回復しますし、マナポーションだってありますからご安心を」
「そ、そうですか……で、ではリプトゥア国にいらっしゃった時は是非冒険者ギルドへ! 誠心誠意対応させて頂きます」
「助かります」
俺はラスターに微笑んで言うと、背後から小さな足音が近付いて来た。
「あれれー? その様子じゃレミリアは無事だったんだ~」
どの口が言うか、このガキんちょは……。
「パーシバルさん……今治療が終わったところです」
「ふーん、やっぱり君が助けたんだね」
見られたくないところを見られてしまったか。いや、もしかしてこいつ……。
「もしや、彼女の治療をなさりに?」
「ううん? 確認しに来ただけだよ。君の実力がどれ程のものかをね」
にゃろう、やはり俺の力を試したって事か。
「僕ね、相手の魔力を見ればどういう魔法を使えるか何となくわかっちゃうんだ~。だから、君が高位の回復魔法が使える事もある程度わかってたんだよ」
「……私が試合を止める事もわかっていたと?」
「君とリィたんだっけ? 二人のどちらかが止めるって事は想定済みさ。土塊操作を使えたって事は、土魔法も使うんだね。それは気付かなかったな~」
とぼけた言い方だが、これが本当とは限らない。
「では、レミリアさんはそれだけのために重傷を負ったというのですか?」
「ん? 違うよ?」
何か理由があったというのか。
「だってさ、さっきあいつ僕の事を止めたじゃん」
「……は?」
こいつは今、何を言ったんだ?
「せっかく面白いところだったのにね~――あ、君には感謝してるよ。リィたんとの勝負が今から楽しみで仕方ないよ、あははははっ」
悪気などどこにもない。
悪意などどこにもない。
彼は……こいつは……奴は、目の前にいた障害が邪魔だったというだけで、レミリアを大怪我させたと言った。……言ったんだ。
「虫は邪魔なだけ。あんなのは潰してポイだよ」
「っ!!」
瞬間、俺は自分の魔力を抑える事が出来なくなった。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜
北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。
この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。
※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※
カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!!
*毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。*
※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※
表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる